ジェガン、IS世界に立つ!!   作:RABE

66 / 82
65話 灰被り姫

今回の学園祭に於いて、当日に一番働いているのは間違いなく康太であると言えた。

 

学園内の警備に加えラビットフット社として新型MSの発表を行った後、午後三時頃になり康太は学園の第四アリーナに来ていた

 

此処では生徒会による劇が行われる予定となっており、何より学園祭に入り込んで来た亡国機業を誘き寄せる為の餌場でもある

 

そんな思惑が交差する中、更衣室の一室にて康太は一夏と一秋の男三人でそれぞれ衣装に着替えている最中であった

 

「楯無さんに言われたから来たけど、何で一秋兄と一緒に俺も王子の格好なんだ?」

 

「気にするな、脚本はあの会長だ。このくらいで驚きはしないさ」

 

「いや、それは気にした方が良いのでは……?」

 

そうして用意されていた衣装に袖を通したは良いが、織斑兄弟の格好は如何にも絵本などに載っているような王子様といったものである

 

「そういえば、ロシアには『金の国 銀の国 銅の国』という御伽噺があったな。『三匹のこぶた』みたいに、三兄弟の王子が出てくる話だ」

 

「確か楯無さんがロシアの国家代表だから、その劇をやるのか?」

 

「いや違うぞ」

 

「では何故言ったんだ……?」

 

単に康太が記憶の中から引っ張り出してきただけの話であり、ついでに言えば三兄弟の王子の内、長男次男は割りと碌でもない事をしたりする

 

そんなこんなで雑談を交えつつ準備をしていると、外の方からナレーションを務める楯無の声が聞こえてくる

 

『むかしむかし、あるところにアシェンプテルという少女が居ました』

 

「アシェンプテル?」

 

「シンデレラの本名だ。グリム童話のな」

 

「あ、演目はシンデレラなんだな」

 

「それは良いんだが、台詞とか大丈夫なのか?特に、何故か王子が二人居るし……」

 

「安心しろ、適当にノリでやって大丈夫だ。いざという時にはコアネットワーク経由でカンペ出してやる」

 

此処で初めて演目の内容を聞かされた一夏達、しかし台本もなければ王子が二人居るという状況に一秋は不安を隠し切れずにいた

 

それでも康太達がサポートに回ると聞かされて多少は安心する事が出来た

 

「さて、オレはもう直ぐ出番だから先に行くぞ」

 

「ああ、頑張ってな」

 

「応援しているぞ」

 

楯無のナレーションはシンデレラの境遇を語っていく、とはいえそれは簡潔に纏められたよく聞く御伽噺の内容ではなく、アシェンプテルという少女が母親を早くに亡くし、父親が再婚した継母とその連れ子達に苛められ、部屋を与えられず夜の寒さを凌ぐ為に暖炉の灰を被り、薄汚れた姿をしていた事から『灰被り(シンデレラ)』と呼ばれている等の、より原典に近い内容を語っていた

 

ある日、父親が娘達にプレゼントを贈ろうとし、連れ子の姉達が高価な宝石やドレスを願う中、アシェンプテルはハシバミの木の枝を望んだ、その枝を実母の墓へ突き立てるとあっという間に大きなハシバミの木になる

 

その辺りで康太は舞台に出る為に準備を始め、それを織斑兄弟は送り出すのだった

 

「にしても、康太のあの格好って何だったんだろうな?」

 

「明らかに洋風な劇には似合わない姿だったが……?」

 

 

(何でボクは此処に居るんだろう?)

 

シャルロットは舞台に上がり、演技を続けながらふと思い返していた

 

始まりは一年生の専用機持ち達を楯無が集め、少し演劇を手伝って欲しいと言われ、生徒会長権限で報酬があると言われたからだった

 

そうして配役が決まっていく中、唐突にシャルロットがシンデレラ役に決まったのだ

 

正直、何故自分なのかとシャルロットは思っていたが、コアネットワーク経由でカンペが送られてくる為になんとか演技を続けられていた、何より一度引き受けると言ったのを投げ出す事はしたくなかったのもある

 

そういう訳で劇は進んでいき、先程は宮廷で行われる舞踏会に継母と姉達が向かっていき、一人留守番を言い付けられたシンデレラことアシェンプテルは実母の墓でもあるハシバミの木に祈りを捧げていた

 

(そういえば、継母との関係が悪かったところとか、ボクと似てるのかな?)

 

自分は既に関係も修復されたが、それまでの関係などを思い返しながらシャルロットは自身とアシェンプテルとの共通点を思い出す

 

そういう共通点から主役として選ばれたのかな、とキャスティングの理由を推測していると、ハシバミの木の陰から一人の男が現れる

 

「ふむ、何か困り事があるようだな、少女よ」

 

その男は和風な仮面を身に着け、濃い緑色を基調とした軍服の上に陣羽織のようなものを羽織り、左腰には一振りの日本刀が提げられていた

 

「ジャパニーズ・サムライ!?」

 

というかどこぞのブシドーな格好をしている康太であったが、シンデレラなのにとてつもなく和風な格好で登場した事にシャルロットは思わず叫んでしまう

 

しかしそんな声にも全くの動揺を見せないのがこの男である

 

「フッ、違うな。私の事は、そうだな、旅の魔法使いとでも呼んでくれ」

 

「明らかに腰に刀挿してるよね?」

 

「魔法使いだ」

 

「陣羽織とか」

 

「魔法使いだ」

 

「面頬みたいな仮面とか」

 

「何度言えば分かる、私はミスター・ブシドーではない!」

 

「そうは言ってないよ!?」

 

どう見ても魔法使いというには無理のあり過ぎる格好にも関わらず、魔法使いで押し通そうとする康太、終いには自分でブシドーと名乗っている事にシャルロットは思わずツッコミを入れてしまう

 

「そんな事よりも少女よ、何を悩んでいる」

 

「あ、流すんだ。コホン、実はお城の舞踏会に行きたいのに、私には着飾る為のドレスが無いのです。それで、どうしようかと考えていた内に、此処に……」

 

「ふむ、ならばドレスを用意すれば良い訳だ。魔法使いとして、そのドレスを魔法で用意してみせよう」

 

そう言って右手をシャルロットに向ける康太、シャルロットはどうやってそのシーンを表現するのかと思っていると、コアネットワークを通じて楯無より通信が入る

 

『シャルロットちゃん、康太くんの合図で貴方のISを起動させるのよ』

 

『えっ!?わ、分かりました』

 

「では行くぞ、3、2、1、今!」

 

ISを展開する、その指示に戸惑いながらもカウントダウンと共に指を鳴らした康太の合図に合わせてシャルロットは自身の愛機である『ストライク・ラファール・カスタム』をその身に纏う

 

「うむ、これならば城での舞踏会で後れを取る事もないだろう。活躍を期待しているぞ、少女よ!」

 

「え、えっと、ありがとうございます?」

 

「では、早速城に向かうが良い。ああ、そうだ。機体のシールドエネルギーが切れると魔法は解けてしまう。元の姿を王子に見られたくなければ、気を付ける事だ」

 

何でその辺りはIS準拠なんだろう、そもそもISをドレス扱いにする舞踏会って何なんだろう、と心の中で疑問は尽きないシャルロット、しかしそれらの疑問を必死に胸の内に押し込み、楯無のナレーションと共に舞台が暗転、お城の舞踏会のステージにする為にセットを切り替えていく

 

そんな中でシャルロットは今まで出番が無かった他の専用機持ち達と共に暗転した舞台の中で配置に着く、箒、セシリア、鈴、ラウラといった一年生の専用機持ち四人の他には学園の訓練機を扱う五人の生徒の姿もあり、その全員がISを纏っている

 

何故ISを展開して待機しているのか、そしてその中でもクロエやリナの姿が見えない事を気にしつつ、シャルロットは何が始まるのか待ち構える

 

心做しか箒や鈴、ラウラはどこかソワソワした様子なのが引っ掛かっていると舞台がライトアップされ、お城の中のような内装の部屋と、部屋の奥に見える玉座には織斑兄弟が二人並んで座っている、というよりも手と足が玉座から伸びた枷に拘束されて囚われていた

 

まず初見で何が起きるのか予想出来ない中、楯無のナレーションが続く

 

『年に一度行われる王国の建国祭に於ける舞踏会、しかし今年の舞踏会は特別だった。次期国王候補である二人の王子、その婚約者には強さと美しさを兼ね備えた少女こそが相応しい!次代の国母を決めるため、今此処に舞踏会の幕が上がる!』

 

そんなナレーションと共に普段の試合でも聞こえるブザーの音が鳴り響く

 

それと同時に動き出す役者達、ある者は別の者との戦闘を開始し、ある者は真っ直ぐに王子の下へと向かい、ある者は行かせまいと妨害する

 

シャルロットにも隣の生徒が構えた銃器からの射撃が襲いかかり、反射的な動きで咄嗟にシールドを構えた事で防ぐもまだ理解が追い付かない、だがそんな状況でも一つだけ理解出来た事があった

 

「これじゃあ舞踏会じゃなくて武闘会じゃないかあ!?」

 

兎に角これが終わったら康太を一発殴ろう、それくらいは許される筈だと決意したシャルロットに、その康太から通信が入る

 

『他には舞台裏で説明していたんだが、此処でお前にも説明しておこう。一般参加枠の生徒含めて十人でのバトルロワイヤル形式での戦闘だ。最後の二人になるか、玉座まで行って王子を確保すれば勝利になるぞ』

 

『それ早く教えて欲しかったかなあ!?って、それより一夏達は大丈夫なの!?あそこ流れ弾とか危ないよね!?』

 

『安心しろ、あそこにはシールドバリアが張られている。流れ弾程度は問題なく防げる』

 

そんな言葉と同時に流れ弾が一夏の方へと飛んでいき、当たる直前にシールドバリアによって弾かれる

 

確かに無事ではあるが、何も知らない一夏の表情は思いっきり引き攣っていた

 

精神的には兎も角、安全が確保されている事に一先ずは安心したシャルロットだが、そこでやけにやる気を見せている箒と鈴、ラウラの事を訊ねた

 

『ああ、それか。今回参加してるメンバーだが、報酬のスイーツ券の他に、王子を確保した者には更に特別報酬が用意されてるんだ』

 

『その特別報酬って?』

 

『確保した王子に対して、生徒会権限の許す限りで好きにして良い権利』

 

『そ、それって!?』

 

『生徒会プロデュースでデートのセッティングをする事も可能だ。生徒会やらラビットフット社やらの指示で、一夏にお前と学園の外でデートさせる事も可能だぞ』

 

そんな康太の言葉にぐんぐんとモチベーションが上がっていく事がシャルロットは自分でも分かった

 

更には只でさえやる気が漲って来ているところに駄目押しとばかりに悪魔(康太)の囁きは続く

 

『それと、これは箒や鈴には言ってないが、望むなら生徒会権限でお前と一夏を再びルームメイトにする事も出来るぞ』

 

途端に、シャルロットの頭の中では短い時間ではあったものの一夏と同じ部屋で過ごした記憶が蘇る、それと同じ日々をこれからもという魅力に抗える筈もなく、実現したこれからの三年間をすこしばかりのピンク色を含め妄想したシャルロットの目は、明らかに変化していた

 

『当然だが、シンデレラが絶対に勝つなんて決まってる訳じゃない。他の参加者もお前を狙ってくるだろう。だがそれで諦められるようなお前じゃないだろう?さあ、武器を取れ、望む未来を勝ち取る為に、その手で勝利を掴んで見せろ!』

 

次の瞬間、一夏に接近していた一般参加の生徒に向けてシャルロットはビームライフルを放っていた

 

直ぐ目の前を通り過ぎた一撃に怯んだその生徒は足を止めるが、康太が要らないからと装備を引き継いだシャルロットはスペキュラムストライカーの推力で一気に接近、高速切替で展開した六ニ口径連装ショットガンのレイン・オブ・サタディで刺突するように銃口を叩き付けると、そのままゼロ距離にて発砲する

 

弾頭をスラッグ弾にしており、それを連装式のショットガンよりゼロ距離で放たれればその衝撃は計り知れず、攻撃を喰らった生徒はシールドエネルギーこそ残ってはいたが、そのまま意識を失い戦闘不能となる

 

『ラウラ!』

 

『む、シャルロットか。何だ、言っておくが一秋は渡さんぞ』

 

『大丈夫、ラウラの好きな人を取るなんて事はしないから。それより、此処は同盟しよう。ボクは一夏を、ラウラは一秋を、他の人達に渡さないように、利害は一致しているよね』

 

『ふむ、そうだな。シャルロットと共になら、私としても悪くない』

 

まずは一人を撃破したシャルロットだが、それで有利になる訳でもなければ逆に強敵として狙われる事になる

 

だが狙っている相手が明確で競合せず、現ルームメイトで気心の知れているラウラに呼び掛け、確実に勝利する為の布石とする

 

何よりも今注意を引き付けたのがシャルロットだ、ラウラはノーマークとなり一秋に接近するのも容易となった

 

ならば一緒に幸せな結末を迎えるのに力を貸すのは悪くないと、玉座の置かれた階段位置に辿り着いたラウラはその火力をシャルロットを狙う者達へと向ける

 

シャルロットは四方八方から狙われていたが、機動力に関してはトップクラスであるスペキュラムストライカーを装備し、過去最高の集中力で以て致命的な被弾は抑えていた

 

そしてラウラの準備が整った事を確認すると瞬時加速で一気に一夏の下へと向かう

 

当然、他の者達からの追撃が行われるが、その動きを妨害するように放たれたラウラからの攻撃がその進路を確保する

 

此処に来て他の参加者達はシャルロットとラウラが組んでいる事を悟るが時すでに遅く、そのままシャルロットは一夏の玉座に辿り着き、支援を終えたラウラも直ぐ後ろの一秋を確保する

 

それにより勝者が決まった事で終了のブザーが鳴り響く、箒や鈴と一般参加の生徒達は出し抜かれた事で思わず声を上げてしまうが、シャルロットとラウラは満面の笑みを浮かべて王子の下へと近付いていく

 

そしてその手が玉座に触れようとしたその時、突如として玉座の下に穴が空き、一夏と一秋の二人はその中へと落っこちていった

 

『のわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………ッ!?』

 

「い、一夏あッ!?」

「か、一秋ぃッ!?」

 

反応する間もなく消えていった二人の名を呼ぶシャルロットとラウラ、既に穴は塞がれ追い掛ける事も出来ずに呆然としていると、一人の男が拍手をしながら現れる

 

「こ、康太……」

 

「むぅ、どういうつもりだ、康太!玉座に辿り着く事が勝利条件ではなかったのか!?」

 

「確かにその通り。しかし、次代の国母としてライバルを出し抜いた者が勝者と、民が認めるだろうか。否!そのような結果は決して認められる筈が無い!故にこの私、王国武士団団長、ミスター・ブシドーが貴殿らとの勝負にて全ての者に納得が行く形で引導を渡す!」

 

「王国武士団って何さ!?」

 

「私は国王陛下より独自行動の免許を与えられている。そして王国武士団に所属するのは私のみ。つまりはワンマンアーミー、たった一人の軍隊なのだよ」

 

「答えになってないよ!?」

 

その男、あいも変わらずに仮面に陣羽織の康太が現れ次々に展開を変えていく中でシャルロットはツッコミを入れるが、康太はどこ吹く風である、そして先程否定したくせに自らブシドーを名乗っていた

 

「さあ戦え少女達よ!この私、ミスター・ブシドーとその愛機、新慈絵丸(ねおじぇがん)が真に女王に相応しいか、見定めてやろう!」

 

そう言うと康太は腰の刀を抜き頭上に掲げる、すると瞬く間にISが展開されていくが、その姿は通常のジェガンとは違い何処か日本の武士が着ていた鎧兜を彷彿とさせる装飾が施されている

 

そして日本刀型のブレードを構えると、シャルロットとラウラへと斬り掛かった

 

その踏み込みは力強く、動きも迷いなく鋭かった為に、やらなければやられると二人は意識する

 

『ほら、派手にやるぞ。さっきまでは割りと本気の戦闘だったが、観客には多少物足りないものだ。だからオレ達は派手に観客を魅せるようにやるんだ。勝ちは譲るが、場を盛り上げてくれ。尤も、この程度で敗れるようならそれまでという事だが』

 

だがそこにコアネットワークを通じて康太から通信が入る、確かに先程の戦闘はシャルロットが勝利を優先した為に短時間で終わった、派手な戦闘が短時間で終わっては観客も興醒めだろう事は予想がつく

 

だからこそ康太は観客を魅せる為に殺陣をやろうというのだ、通信を聞いたシャルロットとラウラは理解したところで同じ様に近接戦闘を行うべく、シャルロットは装備をキャリバーンストライカーにし、ラウラも得意とするナイフ戦を行おうと拡張領域より予備武器であるアーマーシュナイダーを取り出し構える

 

それから展開されたのは剣劇の舞台、数的な不利をものともせず刀一本で二人の猛攻を凌ぎ反撃までしてみせる康太と、演技を半ば捨て本気で勝つという気迫で以て相対する

 

そして慣れない武装で苦戦するのは康太だ、新慈絵丸の装甲は装飾が施されているだけで硬くはない、むしろ通常のジェガンよりも脆いものとなっていた

 

これは自衛丸と同じく単に外見だけを変更する為の物である事が理由であり、この事から康太が本気で勝ちを狙っている訳ではない事を二人は理解する

 

とはいえそれはそれ、シャルロットは説明不足で舞台に放り込まれた事に対する意趣返しを含め、止めとばかりにシュベルトゲベール改をフルスイングし、康太の新慈絵丸の胴を横薙ぎに捉える

 

それが決め手となりシールドエネルギーが枯渇した新慈絵丸、機体が解除され、生身の状態となった康太は、実際のダメージは少ないが瀕死の状態を演じ、ゆっくりと立ち上がる

 

「見事だ……それでこそ、次代の国母として相応しい……ならば、私がこのまま留まる理由もなし。武士道とは、死ぬことと見付けたり!」

 

次の瞬間、陣羽織の内側に隠していた短刀により自らの腹部を貫く康太、なお短刀の刃は本物ではなく、突き立てたところで刃の部分が柄の中に引っ込んでいく玩具である

 

とはいえ咄嗟だった為にそれが本物の刃に見えたシャルロットとラウラは驚くが、次の瞬間赤色の煙幕が康太の姿を包み隠し、その間に舞台に設けた穴から康太は姿を消す

 

『それじゃあ後はエンディングだから、上手くやれよ。オレの出番は終わったから、更衣室に戻るから』

 

『えぇ、康太、今ハラキリしたけど大丈夫なの……?』

 

『あれは玩具だ、一切怪我なんてしてないから気にするな』

 

『あ、そうだったの?なら安心かな。でも心臓に悪いから、今度からは事前に説明してよ、本当色々と』

 

『まあ、善処しよう』

 

出来れば確約して欲しいんだけどなあ、というシャルロットの声を無視し、康太はそのまま舞台の下を進み更衣室に辿り着く

 

一先ずは役を演じきった辺りで一息つき、仮面を外す

 

その時、誰も居ない筈の更衣室に足音と拍手の音が響いた

 

「なかなかに個性的な舞台でしたね。そして、見事なアクションだったと思います」

 

「この場は関係者以外立入禁止の筈だ。部外者はお引き取り願いたいのだが?」

 

「それは大変失礼致しました。ですが、こうでもしなければ他社を出し抜けないと思ったので。申し遅れました。私、こういう者です」

 

姿を現したのは茶色の長髪が特徴的なスーツ姿の女性であった

 

更衣室は現在男子用となっており、それ以前に学園の関係者でもない者が入るのは常識的に考えても有り得ないのだが、女性は気にした様子もなく名刺を取り出すと康太へと手渡す

 

そこには『IS装備開発企業みつるぎ 渉外担当・巻紙礼子』と記されているのだが―――

 

「亡国機業所属のオータムさん、ね」

 

「テメェ……」

 

「気付かれていないと思ったか?こっちにも独自の情報網は存在するさ」

 

偽りの身分ではなく、真に属する組織とそこでのコードネームを告げられ、それまで浮かべていた人の良さそうな笑みを一変、鋭い視線で康太を睨む巻紙礼子改めオータム

 

独自の情報網(リナのアニメ知識)という圧倒的なアドバンテージにより相手の状態を看破した康太は薄く笑みを浮かべ相手を挑発する

 

「ハッ、けどテメェのISはエネルギー切れだ!そんな状態でこのオータム様に勝てる訳がねえだろ!」

 

しかし先程の舞台にて康太は機体のシールドエネルギーを消耗している、その為正体がバレたところで有利な状況なのは自分だと信じて疑わないオータムは自身のISであるアラクネを起動させた

 

「まあ普通はそう思うよな。けどよ!」

 

オータムがアラクネで康太を捕らえようとした次の瞬間、康太が手にしていたスイッチを押す

 

すると更衣室を埋め尽くすかのように白い煙が充満していき、康太の姿を覆い隠す

 

「目眩ましか!だが、ISのセンサーなら―――なにッ!?」

 

ただの煙幕程度、ISのハイパーセンサーに掛かれば無いも同然、そう高を括っていたオータムだが、著しく機能を制限されているセンサーの反応を見て動揺する

 

その動揺した隙を突いて横合いから煙の尾を引きながら現れた康太が警備の際にも使用していた日本刀型のナイフを振るうと的確にオータムの喉元を斬り裂いた

 

当然ISを展開している以上は絶対防御により搭乗者の安全は保護されている、今も絶対防御どころかシールドバリアのみで防げた事からオータムには傷一つ付いていない

 

だが斬り付けられた時にオータムは気付いた、黒い強化服姿の康太が明らかに小馬鹿にしたような表情でオータムを見ていた事に

 

お前なんてISが無くても十分だ、言外にそう告げているかの表情にオータムは頭に血が上っていくのを感じていた

 

再び煙幕の中に身を隠していく康太、それを追ってオータムもまた煙の中を突き進んでいく

 

そんな様子を背後から近付いてくる気配で察した康太、まず康太自身が圧倒的に不利だと思わせる状況に持ち込むという計画の第一段階は成功したと見て次の作戦に移るのだった




新慈絵丸……いつもの武者系の中で、ジェガンらしい外見になった慈絵丸、Gキャノンやヘビーガンと共に居た事から元ネタはジェガンのJ型以後の機体と思われる。

新SD戦国伝 地上最強編にて登場する、なお武装は刀くらいしか確認されていない為に、今回もコウタくんは日本刀型のブレードしか使用していない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。