約束通り放課後に校門前まで行くと既にクロエが到着していた
とはいえ機体やその他の試作兵装を運んできた、というにはクロエは何も荷物を持っていないように見えるが恐らくはIS技術を用いた量子化を行ってコンパクトに纏めているのだろう、篠ノ之博士ならそれくらい普通にやる
「すまない、待たせた」
「いえ、問題ありません。それより、お一人多いようですが?」
「ああ、見学希望との事だ。安心しろ、企業スパイとかの類いじゃないのは確実だ」
それと今回は箒も同行している、昼休みの昼食時に食堂で模擬戦のことをどこから聞き付けたのか三年生の女子生徒がISの訓練を申し込んで来た際に反射的に箒が答えた事による成り行き、という形だが箒なので別に良いかとそのままだ
「突然で申し訳ない。私は篠ノ之箒という。一夏とその、ISの訓練に付き合う約束でな……」
「そうですか、貴方が。申し遅れました、クロエ・クロニクルと申します。ラビットフット社のパイロット候補兼メカニックになります。よろしくお願いいたします、篠ノ之様」
「箒でいい。名字はあまり好きではないのでな……」
「承知致しました、箒様」
篠ノ之博士を心から慕っているクロエからすれば同じ名字である事を疎ましく思っている箒はあまり相性が良くなさそうだがクロエはいつものポーカーフェイスを崩さずに応対した
取り敢えず立ち話もなんなので午前中の内に織斑教諭に申請を出して受理された第二アリーナに向かう
この学園には幾つかISの試合、訓練用のアリーナが存在しており、その中の一つである第二アリーナは基本的な円形状のアリーナだ
それとこのアリーナだが機密保持の観点からという理由をつけて模擬戦までの間、貸切にさせて貰った
オレの場合、初見殺しとも言える技能が多いからな、情報を隠すに越した事はない
そうしてアリーナのピットにまで移動したオレ達はまず一夏の機体のセッティングから行う事にした
オレの方の各種武装はインストールして後で確認するだけだ
「これが一夏の機体なのか?なんというか、白いな」
「ユニコーンだからな。ジェガンと同じく
「スゴいな、軽く手足を動かしてみても打鉄とは大違いだ。体に完全にフィットしてるよ」
「プロフェッサーが一夏さんの専用機とする為に身体データを完全に反映させたと仰っていました。恐らく、
「早いなあ。それでクロエ、武装の方はどうなっているんだ?」
普通のISは最初の姿から使用者に最適化する事で形状が変わると聞いていたがユニコーンの姿に変化はない
まあユニコーンはユニコーンだからな、変わったらオレが困惑する
そんなユニコーンの武装だが一夏に合わせた調整がされていた
「はい、まずこれが専用武装である【クレセントムーン】です」
まずはメインとなる武装、身の丈程の長さの巨大な剣、【クレセントムーン】からだ
片刃の大剣、といった形の【クレセントムーン】であるが、これは篠ノ之博士が設計した武器である
一夏との模擬戦から一夏は射撃より剣を使った近接戦闘が得意な事は分かっていた、故にその剣に威力を持たせたのである
なお実体剣としても使えるがその刀身に沿ってビームを通す事で威力が底上げされる、どうやらオレが話したクロスボーンガンダムのムラマサブラスターやSEED系の対艦刀を意識したらしい
更に刀身の部分にもサイコフレームが使われるというハイパー・ビーム・ジャベリンのデータも反映されているようだ
ふむふむ、大きさによる取り回し難さを考えて峰の方には小型のスラスターもついているのか
「―――以上が特徴になります。そしてもしも近距離まで近付かれた場合はビームサーベルを使うようお願いします。次に射撃武装ですが、このビーム・ガトリングガンになります」
次に紹介されたのはビーム・ガトリングガン、原作でもユニコーンが持ち出して色々な場面で使っていた武装である
これが選ばれた理由は単に弾幕を張るのに適しているから、一夏は射撃があまり得意ではなかったのでばら蒔く方が適していたのだ
「他にもビーム・マグナムやハイパー・バズーカもありますが、一夏さんが使いこなせるかは未知数です」
「うっ……精進します……」
「はい。それとハイパー・バズーカですが通常の炸薬のみでなくベアリング弾を発射する散弾仕様とありますので、当てられないのであればそちらを使用するのも手です。装甲に対しては威力は落ちますがISですので生身の搭乗者を狙えばシールド・エネルギーを使用しますので有効です」
正直に言えばオレがISで驚いた点が此処である、いくらシールドバリアーがあるとはいえ生身を晒す事だ
機動性を上げる為に装甲を削るのは解るさ、アストレイ系の機体だって『当たらなければどうということはない』というコンセプトで装甲を削り軽くしてるからな
でもせめて散弾くらいは防げる装甲は欲しい、精神的にも
「むう、銃を使うのか?」
「何だ、箒は嫌いなのか、銃?」
「その、なんだ。千冬さんが現役の頃は一振りの剣のみで世界の頂点を取ったのを思うとな」
「アレは極端な例外と思った方が良い。オレも映像は見たがあれって第一世代機の試合だろう?今は機動性も火力も装甲も当時とは大違いだ。オマケにオレや一夏の機体みたいな全身装甲な機体はあの能力と相性が良い。あの程度のレーザーブレードならある程度は耐えられるし、実体剣でも装甲で受け止められる。技術は日々進歩しているんだ。その状況で剣のみで天辺取るなんてそれこそ世界大会の織斑先生以上の腕が必要とされるだろうな。けど銃で牽制でもいいから撃てば相手は動く。牽制にしろ攻撃にしろ、相手は動く。そこからあの大剣による一撃だ。少なくとも剣のみと銃があるのとでは戦術の幅が段違いであり、それ故に例え銃が苦手だとしても―――」
「ああ、すまない、私が間違っていた。要は剣道とは違うという事だな」
「まだ語り足りなかったんだが……概ねそうだな。というか剣道基準で考えてたのか?剣道は空を飛ばないだろう」
「確かに、それもそうか」
「まあ完全に無駄じゃないとは思うけどな。体の使い方は経験がある方が鋭くなるだろうし。まあ、空中だと踏み込みをどうするかが問題なんだが」
ビルド系みたいに宇宙や空中でも足場を生成出来れば良いんだがな、その辺りは篠ノ之博士ならやってのけそうではあるが
「では一夏さんはアリーナの方で実際に動かして慣れて下さい。今までの打鉄も速度に特化させた改良をしていましたがユニコーンはそれ以上です。その高速機動に慣れなければまずまともに動く事さえ出来ません。そして次にコウタさんですが」
「よし来た」
「武装に関しては完全にデータの通りの仕様なのでコウタさんの方がよく理解しているかと。ただ有線でのオールレンジ攻撃可能な武装、という要求の例の兵器なのですが、機能自体は完璧に仕上がっています。ただ、色々と機能を詰めたいとプロフェッサーが仰られまして、結果このサイズになりました」
「こ、これは」
一夏の方はカタパルトに乗ってアリーナへと飛んでいったので、次はオレの番となったのであるが、スターク・ジェガンへの換装パーツを含む各種武装についてはクロエの言う通りオレはそれがどんな武装かは見れば分かるので説明は割愛、篠ノ之博士に頼んでいたインコムの方だけ説明して貰う事になったのだが、クロエが空中に表示したディスプレイに映し出された画像を見て驚く
確かにこのデータもあったとは思うんだが、こうして組み合わせると不思議な物だな
まずインコムとはガンダムMk-Ⅴに初めて搭載された有線式の遠隔操作式攻撃端末である
円形状のユニットが一般的であり、ビームガンを備え本体から射出、有線で制御を行い敵機の背後等に展開、射撃を行う
ガンダムシリーズに於けるファンネル等の兵器に近いが一番の特徴は一般兵にも扱える点である
有線という関係上、射程距離や角度に制限が掛かるもののニュータイプ能力を持たない一般兵でも擬似的なオールレンジ攻撃が可能となる点が画期的だろう
なおガンダムMk-Ⅴは後にネオ・ジオンの手に渡りドーベン・ウルフとなり、それが連邦軍に接収されてシルヴァ・バレトになるという数奇な運命を辿った機体でもある
それはさておき、インコムではあるが実は似たようなコンセプトの地球連邦軍の兵器が過去に存在している、それが今目の前の画面に映し出されている【遠隔誘導操作用ボールユニット】である
見た目はファーストにも登場しているモビルポッドであるボール、それをオレンジに塗装したような感じだ
それが左右二機、画面の中のジェガンのバックアップに接続される形で備えられていた
機体本体がジェガンである事を除けばその姿はまさにNT試験用ジム・ジャグラーのものであった
「一応、コウタさんの要求にあった仕様は全て備えています。武装にも改良が施されていますので別物です。ご確認下さい」
「ああ、分かった」
促されて確認、篠ノ之博士がどういった改良をしているのか記されたデータを閲覧する
まずボールの上下に備えられているビームキャノン、設定ではモビルスーツ用のビームライフルの転用であったそれは出力の向上から威力はジェガン用のビームライフル並みになっていた
更にZ系列の武装データを取り入れたらしく砲口部からビームサーベルの発振も可能、射撃のみでなく格闘戦にも持ち込めるらしい
それからサイコミュの追加、基本は自動操縦だが手動での指示を出す際に脳波でのコントロールも可能、これはニュータイプ能力がなければ使えないがシステムの切り替えを可能としていた
そしてボール本体もジェネレータの内臓によりビーム兵器の使用が無制限、射出後に撃ち切ったボールを本体に回収してエネルギー供給という手間が省けている
まさにジェガン時代の技術で蘇ったジム・ジャグラー(ジェガン・ジャグラー?)といった様相である、不満どころか強化されて嫌な筈がない
「予想外だけど、これは良い機体だ!特にスターク・ジェガンと装備の干渉がないのが良い!併用した際の機動力は格段に上がるだろうな!」
唯一干渉するのは肩部のミサイルランチャーのみだが、ISは武装を量子化して格納しておけるのであまり問題がない、必要なら場に応じて切り替えるだけだ
そしてその場合でもボールのビームキャノンは使用可能なので火力が下がるなんて事はない、むしろ連射可能な分火力は向上している
「喜んで頂いて何よりです。プロフェッサーも作った甲斐があるというものです」
「色々と準備して貰って、本当にプロフェッサーには頭が上がらないな。次の模擬戦、勝ってジェガンの性能を世界に示して機体の売上に繋げないと」
第二世代機であるジェガンが第三世代機であるブルー・ティアーズを打ち負かす、それは絶好の宣伝の機会となるだろう
それだけに負けられない、
「よし、今から訓練してくるな!」
「あ、一つだけプロフェッサーからの伝言です。ビーム兵器ですが現在使用に関して制限されています。その為、各種ビーム兵器は全てレーザー兵器としての使用になります。理由はお分かりですね?」
「電波障害の危険性だな。余計な事してジェガンの売上に響いてもだし、了解」
「はい。ですがレーザーでも通常のIS相手には十分な威力となりますのでご安心を」
「分かった。確かオルコットのブルー・ティアーズもレーザー主体だったな。なら一夏の訓練としては十分な相手になれるか」
そうと決まれば早速機体の訓練に移る、先に出ている一夏はどんな動きをしているか分からないが、このジェガン・ジャグラーなら一夏も対ブルー・ティアーズ戦に対する訓練となり、オレは武装の練習と一石二鳥だ
機体を展開してジャグラーに換装、カタパルトまで移動してアリーナへと発進する
「紫藤康太、ジェガン・ジャグラー、
発進時の掛け声は大事、やれば気分が上がる
その後、アリーナにてまだユニコーンの機動性に慣れずに振り回されいる一夏を的にレーザーの雨を降らせる事になるのだが、それは割愛しておこう
アリーナの使用時間ギリギリまで練習し、クロエを校門まで送った後は寮に帰った
暫くは自宅から登校という事だったが急いで学園側が寮の部屋を確保したとSHRの際に副担任の山田先生から鍵を渡されたのだ
「そういえば康太の部屋って何処なんだ?俺はまさかの箒との相部屋だったけど……」
「オレか?オレはほら、そこだ」
寮の入口を通って早速、一夏が疑問を口にした
幼馴染とはいえ年頃の男女が同じ部屋なんて、と思うが事情を知っているだけにその組み合わせは必然と理解している
というのも、こっそり学園のコンピューターにハッキングを仕掛けて一夏と箒が相部屋になるように手を回した人がいるのだ、具体的には頭にウサミミつけた女性である
IS学園のセキュリティは当然だが高度な防壁が存在するのだが物ともせずに突破してやった事がそれだけである、ある意味能力の無駄遣いと言える
なお本人達は知らない、世の中には知らない事が良いこともある、具体的には黙っていた方が面白いからな
そしてオレの部屋だが、オレは階段の下の部分を指差しておいた
「なあ、俺の見間違いでなければ倉庫って上に書かれてるんだけど……」
「見間違いでも何でもなく、元は倉庫だぞ。個室用意されるまで、何処でも良いから女子と相部屋とかマジ勘弁、精神的に緊張で死ねるって交渉したら通ってな。一応、中はある程度改装済みって話だ」
どうなってるかは知らん、が今鍵を開けて中を確認した
階段の下だから斜めになった天井がまず特徴だろう、細長い部屋は四畳程のスペースがあり、フォークリフトで使うようなリフトの上に敷かれた畳がある
ふむふむ、天井は秘密基地的な感じがして好きだし、私物も着替え程度しかこの世界にはないから横にある小さめのタンスに収まる
私物となる物は後日買い足していくとして、寝床は敷き布団と完全に和室になっているな
結論、十分暮らすに問題ない部屋だ、特に畳最高、寝転がれるぜ!
「和室だと!?ズルいぞ康太、私とて洋室より和室の方が良い!」
「残念だったな、此処はオレの部屋だ。というかシャワーがないからアリーナとかまで行かないとならないのが面倒な点だな」
普通の部屋はシャワー付きらしいのだが元が倉庫である為に指定のシャワー室を使うしかないのだ
そこが不便といえば不便だが我が儘を通して貰ったので気にしない、その程度の事は受け入れよう
その後、尚も和室に関して強いこだわりがある箒が近くにある寮長室から出てきた織斑教諭に注意されてお開きとなった
シャワーは訓練後にアリーナで浴びていたし、その後は食堂で夕飯を済ませてから布団を敷いて寝る
その時に胸元から一つのT字型の金属片、サイコフレームを取り出して眺める
クロエが去る時に渡されたのだが首にかけられるように紐を取り付けてある、複製したサイコフレームの一つらしい
これ単体でも力を発揮出来るなら、もしニュータイプとして覚醒した時に何らかの反応を示す筈、そう篠ノ之博士から預けられたそうだ
なので今後はこれも肌身離さず持ち歩く事にした、アクセサリーとしては武骨だがその意味を知っているだけに気にはならない
とにかく初日は終わりだ、今のところはオルコットとのトラブルがあったものの上手くやっている
明日からも学業の他に訓練や体力作りとしてトレーニングをするんだ、テレビなんかの娯楽もないし、寝てしまおう
こうしてオレのIS学園での初日は幕を閉じるのだった
という訳で登場した武装紹介
○クレセントムーン
……サイコフレーム搭載の対艦刀といった武装。名前の由来は天下五剣の中で一番英名にしたら格好良かった三日月宗近から拝借
○ジェガン・ジャグラー
……NT試験用ジム・ジャグラーのボールユニットをジェガンに合わせて搭載したオリジナル機。しれっとボールが強化されている。ジム・ジャグラーは元々Gジェネ登場の機体であり、カタナで出てくるまで公式に居るのか怪しい機体だったりした。
以上、簡単な解説でした
マイナー機体本当好き、その内もしかしたらトルネードガンダムとか出てくるかも?