ジェガン、IS世界に立つ!!   作:RABE

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今回は短編という事でいつもの半分くらいの長さになります、割りと本編と関係ない日常というか、コウタくん(ガンダム馬鹿)の暴走というか……

次回もこの位の長さの予定ですが、投稿間隔は空くかもです。

理由は、ここ最近、投稿が早かったのは先月末から入院してたからです。

確定診断はしてませんが多発性硬化症、発症は十万人に十人弱という指定難病だそうで、脳幹部分で脱髄を起こしてました。

幸いにも後遺症もなく明日退院なのでご心配なく、今日まで投稿しているように今後とも元気に投稿して行きますよ!


短編集①
ラビットフット社の歌姫


一人の少女が廃墟の中に佇んでいた。

 

かつて平和だった時は多くの人が行き交っていたであろうビル街は無惨にも崩れ落ち、地面に敷かれていたアスファルトには爆発によって大小様々な穴が空いている。

 

一面の灰色の空は日の光が地上に降りるのを阻み、昼にも関わらず薄暗い。

 

そんな中で少女は歌う、儚げに、だが感情の込められた歌は聴く者達の心にもしっかりと染み渡っている。

 

歌は終始英語にて歌われていた、その日本語歌詞は画面横に表示されている為に、英語が話せない大多数のこの場に居る者達も歌詞の意味は理解出来ていた。

 

そして少女が歌い終えた時、ノイズと共に画面が暗転し、それまでミュージックビデオを流していたテレビは元のニュース番組へと変わる。

 

『以上が現在人気急上昇中の歌姫、紫藤未来(しどう みく)による[EGO]でした!』

 

『ラビットフット社の公式アカウントで突如として動画投稿サイトに投稿されたミュージックビデオという事もあり、話題を集めましたからね。そして歌唱力もかなりの物で、プロ顔負けの歌声はあっさりと百万再生を突破、既に二百万再生を目前としている事からも人気振りが分かるというものですよ。加えて此方の歌詞ですが―――』

 

それは先日、動画投稿サイトに彗星のごとく現れた歌姫の話題であり、それがISの生みの親である篠ノ之束が保有する企業であるラビットフット社の所属ともなれば話題にならない方がおかしかった。

 

結果、歌姫自身の歌唱力もありあっという間に人気が広がった訳で、こうして朝のニュース番組にまで取り上げられる事態になったのである。

 

なおラビットフット社は基本電話対応をしていないので、メールによって謎の歌姫、紫藤未来のプロフィールを得ようと問い合わせが殺到しているのだが、世界中から問い合わせのメールが届くのを煩わしく思った束のプログラムにより振り分けられたメールは基本的に読まれる事もなく廃棄されているのだった。

 

結局、ろくな情報を集める事が出来なかったマスメディア等は仕方なく予想を語るしかなく、姓が同じという事と、少女の外見は長い黒髪をストレートにし、日系の容姿からラビットフット社のテストパイロットにして束の側近である紫藤康太の妹ではないかと、騒いでいる。

 

「ふーん」

 

なお、その康太自身はその事について興味津々といった様子のIS学園の生徒達の視線を気にした様子もなく食堂にて朝食のサンドイッチを食べながら暢気に過ごしていた。

 

「予想以上に騒がれるものなんだな」

 

とはいえ全く無関心という訳ではなく、口には出さないものの紫藤未来という存在の影響力が此処まで広がっている事には内心驚いていたりする。

 

それというのも紫藤未来という人物は現実に存在する訳ではなく―――他ならぬ康太自身だからである。

 

 

事の発端は康太の機体が二次移行を遂げて三日後の事だった、学生として授業を受けた放課後、ラビットフット社のラボに来てみれば新たな漂流物を発見したと伝えられた。

 

座標を伝えられ、身元を隠す為に新造されたジェガン・サーガを駆って辿り着いてみればそこにあったのは脇に抱えられる程度のコンテナ、データが収められた物なら儲け物だが部品等の現物としてはあまり期待出来ないと開けてみれば、中に入っていたのは大量のCDであった。

 

では中身は何かと言われればガンダムシリーズの各主題歌やBGM等が収められたサウンドトラックアルバムの詰め合わせであり、技術を期待していた束からすればハズレであったが、康太からすればお宝である。

 

持ち帰ったそれは束は興味がないので康太が全て引き取った、そしてそれを自室で自身のスマートフォンや音楽プレイヤーに即座にインストールのは当然の成り行きであった。

 

トレーニングでのランニング中など、様々な時に聴いている康太は自然とそれを口ずさむようになる。

 

そんな康太を見て、束がつい溢した一言が康太に衝撃を与えた。

 

「そんなに好きなら、動画とかで流して広めたらどうかな?」

 

「はっ!?」

 

その言葉はまさに康太にとって福音であった、ガンダムシリーズの魅力はストーリーや機体デザインのみに非ず、オープニングやエンディング、挿入歌、BGM、各シーンに合わせて奏でられる音楽によって作品が印象付けられ、場面が盛り上がるのだ。

 

ガンダムシリーズをそのまま公開する訳にはいかないが、音楽だけでもその魅力を伝える事が出来るなら、そう思った康太は止まらなかった。

 

まず調べたのはアーティストに関して、各楽曲のアーティストはこの世界にも存在した、ガンダムシリーズが存在しないからガンダムシリーズに関する楽曲は存在しないが、某秋葉を拠点とする有名アイドルグループのプロデューサーのように、同じ人物は存在しているのだ。

 

それは歌手も同じであり、この世界では歌っていないとはいえ音源そのまま流すのは無用な混乱を生じさせてしまう、でも歌を広めたい、そんな葛藤の中で康太は一つの結論に辿り着く。

 

そうだ、オレが歌えば良いんだ。

 

正直に言うと康太はこの頃、キャノンボール・ファストに関する訓練や機体調整も同時に進行していた、そこで趣味であるガンダム関係の事も動かして多少―――いやかなり寝不足だったのだ。

 

そんな訳で徹夜テンションで勢いだけはあったし、寝不足で判断力は落ちていた康太は色々と暴走した。

 

まず音楽だが演奏は全て自身で演奏をし直した、作曲や作詞は変えられないにしても、それをそのまま使うよりは全てを自身の手で再現する事がせめてもの礼儀だと思ったからだ。

 

とはいえ康太は中学生の頃に、自分でもガンダムシリーズの楽曲を弾きたいと思った事もありギターを始めとして幾つかの楽器を弾く事が出来た為に、問題はなかった。

 

とはいえ時間は少なかった為にその時は三曲のみとした、三曲分の各パートを一つずつ演奏し、それを編集で一つに纏めて楽曲は作る。

 

次に歌唱パートであるが、そこでも康太は妥協をしなかった。

 

ガンダムシリーズの楽曲は割りと女性ボーカルが多い、始めから男性ボーカルの楽曲をやれば良いのではという点に、曲を完成させていざ歌おうというタイミングで康太は初めて気付いたのだ。

 

しかし既に演奏は終えている、ならばそのまま突っ走れと暴走してる思考のまま康太は次にボーカル探しをする事にした、がガンダムシリーズを知っている者が少数な為、そして真にガンダムへの想いを持っている者が居ない為、何よりもこれは自分が始めた事だからと結局は自分で歌う事を決めた。

 

そしてその結論に至った結果、また暴走してるままに康太は考えた、自分が女になれば良いのだと!

 

とはいえ実際に性別を変える訳ではなく、いつものシミュレーター上で自分のデータをベースに女性型のアバターを製作したのだ。

 

それには無駄にヴェーダを使用し、自身の遺伝子情報から女性だった場合の予想図を作り、それを元に声が形成されていく。

 

そして、そのアバターを使用して康太は歌った、作ったのは声帯だけでありそれだけで歌が上手くなる訳ではない、何度もリテイクを繰り返し、自分の歌を聴いて、駄目な部分をその都度直していった。

 

そうして完成した歌を康太が納得出来るレベルになった後、ようやく康太はそれを有名な動画投稿サイトにアップロードしたのだ。

 

選んだ楽曲は[EGO][RE:I AM][bL∞dy f8]の三曲、妥協を一切許さずに康太が歌い切った三曲が投稿されたのは土曜日の夜遅くだった。

 

しかもシミュレーターを利用していた関係で舞台も整えやすかった事もあり、ミュージックビデオの撮影まで手早く行えたのだ。

 

楽曲によっては激しい戦闘シーンを交えており、普通に作ったのであればかなりの費用が掛かるような事も、康太は全て個人製作でやっていた。

 

そして何よりも歌唱力である、ファンとしての面倒くs……一切の妥協を許さない精神が下手な歌を歌う事を禁じ、元より決して音痴ではない歌声が仮想空間なので現実の声帯にダメージが行く訳でもない為、どれだけでも歌い続けられる環境により上達し、プロに並べるまでになっていた。

 

そんな色々と常識とはかけ離れた要素が組み合わさり生まれた康太の歌は、歌詞が英語だった事もあり日本のみならず海外圏でも話題となり、再生回数が積み重なった結果、日曜日には既に百万再生を超えるに至ったのであった。

 

 

そんな訳で月曜日の朝、朝食を食べ終えた康太は食後のコーヒーを飲みながら先程から続いているニュース番組を適当に眺めていた。

 

テレビは再びミュージックビデオを流しており、[bL∞dy f8]を流しながら紫藤未来―――康太の女性アバターは、康太が女性らしい機体という事で天使と安直に選んだウイングガンダムスノーホワイトプレリュードを駆り戦闘シーンを繰り広げている。

 

完全に女性に成り切る為、男性が魅力的と感じる動きを取り入れたそれは無意識に歌舞伎の女形やシェイクスピアの時代に少年俳優が女役を演じていた歴史に通じる物があった。

 

とはいえ―――

 

『また複数のレコード会社が紫藤未来さんと契約を結ぼうとしているとの情報もあり―――』

 

「ん、キリマンジャロのフルシティロースト、苦味が強いが……こりゃ良いな」

 

プロとしてのスカウトの話題が出ても、当の本人は最近になって拘りだしたコーヒーの味についての感想しか出てこないのだった。

 

 




小ネタ

某秋葉を拠点にする有名な大型アイドルグループのプロデューサー……えっ!?と思うかもしれないが実は機動戦士ガンダムZZの第一期オープニング曲の作詞をしていたりする。



コウタくんの選曲は完全に私の趣味です。
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