はい、申し訳ございません、前回から3ヶ月近く空いてしまいました。
前半の筆が乗らなかったり、気分転換に新しい小説書いてたり(未公開)、ウマ娘始めたりしてました。
次こそは、次こそはもっと短い間隔で投稿出来るよう努力しますので、今後とも宜しくお願いします。
あと、バトオペでジェガンとジェダのレベル1来ました、やったぜ。
全ての授業を終え、生徒達はそれぞれ部活動などに取り組んでいる頃、IS学園に存在する円形のアリーナ、そこでは二機のISが戦闘を行っていた。
黒と金の機体、それぞれ装備に差はあるが基となっている機体は同じ物であり、またパイロットの技量にも大きな差はなかった。
それぞれバンシィ・ノルンを駆るクロエとフェネクスを駆るリナ、共にラビットフット社に所属している二人が戦闘を行っているのは自分達の技量を向上させる為である。
二人は康太の支えになろうとしていた、だが既に康太の技量と機体は遥か高みに至っており、下手な技量のままでは逆に脚を引っ張る事になりかねない。
何より文化祭の時に何も出来ずに動きを封じられた経験がより強さを求める原動力となっていた。
それもあり、二人でこうしてぶつかり合って訓練をしていた。
全力でぶつかり合う事もあれば、条件を絞って普段とは違う動きを取り入れたり、全く別の機体を使用したりと、様々な訓練を行ってきた。
それもあり二人の技量は確実に向上している、だが康太が交戦した織斑マドカとの戦闘データを基にしたシミュレーターでは未だに勝てずにいる。
再現のみでのデータにも勝てない以上、本物に勝てる道理はない、加えて康太との交戦により直撃を喰らっただけにマドカもまたより腕を磨いているのは明らかである。
それでもリナはオールレンジ攻撃に対して反応出来るようになってきていた、完全に回避するにはまだまだ遠いが動きを予測出来るようになってきたのだ。
対してクロエは反応さえ出来ない事もあった、これは二人の機体操作の傾向の違いが生んだ差であった。
リナは機体を操る際に感覚的なものに頼る事が多く、クロエは理論的なものに頼るのが多い。
仮に感覚派、理論派と分類した時に前者は一夏や鈴が挙げられ、後者はセシリアやラウラが挙げられる、どちらも一長一短であり、感覚派は急なアドリブに強いがその時の調子に左右される事があり、理論派は安定しているが咄嗟の判断が遅いという傾向が強くなる。
なお、これに康太を当てはめると、始めは理論派であったがニュータイプ能力に目覚めてからは感覚的な動きが目立って来ていたりする。
そして、今回の二人の戦闘ではリナの方に軍配が上がった、クロエが自身に向けて放たれたハイパー・バズーカを回避したのだが、その回避した先に置くように放たれたビーム・マグナムの直撃によってシールドエネルギーが消し飛んだのだ。
その後、アリーナは消えていき、二人は休息と反省の為にシミュレーターから一度出てくる。
水分補給などを済ませつつ、一休みしてから口に出るのは先程の戦闘、特に止めとなった最後の攻撃に関してだ。
「あの動き、コウタさんが時折見せる物と同じでした。リナさんはどうやって私の動きを予測したのですか?」
「んー、やったのも撃ったのも、全部咄嗟の無意識だったのよね。こう、当たるって思ったから撃ったっていうか、自分でも良く分からないのよ」
最後の決め手となった動き、弾速の遅いバズーカに相手の注意を向け、回避した先に本命を置いておくというのは康太がイライジャ・キールの必殺技を再現した物であり、数ある戦術の中でも割りと使用頻度の多い戦法であった。
しかし使うには相手が回避に専念するタイミングや回避する向きと距離を正確に予測する必要があり、使い熟すにはそれなりの観察眼を要する技である。
例えば相手が咄嗟に攻撃を回避する時、右に避ける癖を持っていたとしよう。
このような相手と相対した時、戦闘中にその癖を見抜き、相手の意表を突き、動揺を誘ったところで相手に攻撃を見せ、回避に移った相手に偏差射撃で本命を叩き込む、相手を完全に理解してその動きを支配下に置かなくてはならないだけに、難易度は高い。
何度も模擬戦を繰り返した相手なら兎も角、所見の敵を相手に使うには厳しい技である、重力下で動きの遅いモビルスーツ相手ならまだしも、空中で三次元機動を得意とするIS相手には更に至難の業なのだ。
それをリナはクロエの動きを完全に理解した訳ではないにも関わらず、直感だけで最適解を導き出したのだ。
同じ事をやれと言われても再び出来る訳ではないが、そのようなアドリブに対する強さもまた感覚派の強みであった。
「勘は大事にした方が良いとは言われましたけど……」
「コウの場合、逆に勘がとんでもない事になってるのよね」
そう言って二人が思い出すのはニュータイプ能力によって殺気に対して敏感になった事で機体のセンサーより早く居場所を特定して来たりする康太の事だ。
その康太曰く、勘とは普段は意識せずに切り離しているが体が取得している様々な情報から脳が理解する前に発する警報のようなもの、という事らしい。
故に勘の鋭さとは直感的に最適解に到達する能力の高さと言える訳だ。
なお余談ではあるが、そのような持論を展開した本人は現在、漂流物として流れてきたガンダムシリーズの音楽を聞き、世界に布教しようと歌い、演奏し、撮影をしていたりする。
そんな中で歌からとある機体を連想し、そこからまた新武装と共に新機体の開発をしていたりするのだが、此処では割愛する。
「まあ、私ってそこまで色々考えるのって苦手なのよね。だから取り敢えずはこのまま突っ走るわ。兎にも角にも訓練に訓練に訓練!まず基本から鍛えていかないとしょうがないものね!」
「そうですね。一先ずはもう一戦、模擬戦を行ってから夕食にして、また模擬戦をしましょう。次は勝ちます」
「良いわね!けど、次も勝つわ!」
リナは自分が感覚派だと理解している、だからこそ多くの経験を積めば咄嗟の動きは経験を基にした最適解を取れるようになる、そう信じている。
それに加えて沈み込むのではなく顔を上げて真っ直ぐに突き進める精神こそがリナの強さだと、クロエは感じ取っていた。
しかし、だからこそ、理論派であり安定感こそが優位性となる自分の強みとは、高みとは何なのだろうかと、クロエはまだ答えを見付けられずにいた。
◆
キャノンボール・ファスト当日、見事なまでの快晴となった青空の下、IS学園の近くにある市営のレース場は満員となっていた。
キャノンボール・ファストはこれまで行われてきた既存のレースとは違い、絶対防御を持つISだからこそ可能な武器による妨害行為が正式に認められているレースだ。
故にレース運びに詳しくない素人目にも派手で、なにより空中を駆け抜ける姿は多くの者を魅了する。
それが入場者数に繋がり、事前予約のチケットはとっくに売り切れ、僅かな当日券を求めるも手に出来たのはほんの僅かであった。
また、それとは別口で専用の観客席が設けられ、そこには世界各国より訪れたIS関連企業の人間や軍属の人間、政府関係者の姿も見られる。
それぞれ優秀な人材を探したり、他国の新型機の情報を得ようとするなど、目的は違えど官民問わず多くの人間が注目していることに間違いはない。
そして今、IS学園二年生の最後のレースが終了したところであった。
「一着はサラ・ウェルキンか。あの時よりも更に動きが洗練されてるな」
「知ってるのか、康太?」
「夏休みにイギリスに合同訓練しに行った時にな。あの時はセシリアとイギリス王女の三人がかりで戦闘して、機体が中破まで追い込まれたよ」
「へぇ、そんな事があったのか」
そんな中で見事一着でレースを制したイギリスの代表候補生の姿を見て康太は夏休みでの事を思い出し、一夏はその言葉に感心する。
そして今のレースが最後なので次は一年生専用機持ち達の番であった、その後に訓練機でのレースと三年生のエキシビションマッチに続く、特に三年生は外部に自身の実力をアピール出来る数少ない機会だけに他の学年とは空気が違っていた。
とはいえ一年生の内はまだそこまで鬼気迫る雰囲気はない、勿論代表候補生として国家の威信を背負ってはいるが、康太などは勝利よりも新型機としてリゼルをお披露目して来場している各国の軍部や政府関係者にプレゼンする事の方に重点を置いていた。
尤も、そのためには一位という分かりやすい実績があった方が良いのだが、機体性能を見せ付ける事も忘れていない。
出番となり、それぞれピットからコースに移動する専用機持ち達、その最後方から康太もまたリゼルを展開する。
しかし以前見た装備とは変わっている事にクロエとリナを除く専用機持ち達は動揺していた。
「紫藤康太、リゼル・ハーフディフェンサー、
機体本体に大きな変わりはなく、腰にブースターが増設されている以外の見た目はウイングユニット装備のリゼルと似ていたがバックパックが大きく変わっていた。
肩幅までの辺りにはボックス型のコンテナがあり、背部には大型のビームサーベルが備えられている。
そして両端には先端部にビーム砲を備えた大型のブースターを備えた主翼が伸びていた。
これはリゼルの二つのディフェンサーユニットを組み合わせた物で、前衛向けのaユニットではミサイルを撃ちきった後が重しとなり、後方支援向けのbユニットでは二門のメガビームランチャーは取り回しが悪い。
故にaユニットの中央部分とbユニットの端のブースターを組み合わせた形で康太が組んだのだ、そもそも僚機が存在しない為に連携を考慮せず単機での戦闘力を伸ばす目的で作成されたのだ。
そんな機体を駆り、事前のくじ引きで決められた順番に従い右端に立つ康太、コースには左右へ曲がりくねるように幾つものカーブがある為に完全に不利という訳ではないが、最初のカーブが左折になっている為に距離が少しだけ長くはなっている。
しかし康太は気にせずにスタートの時を待つ、それを示す赤ランプが一つずつ点灯していき、三つ点った次の瞬間、緑色をしたランプが一気に点灯した事でキャノンボール・ファストの幕が上がる。
それと同時に、参加している全ての機体からの攻撃が康太へと集中した。
「お前ら後でぶっ飛ばす!」
「まあこうなるよな」
誰もが事前に示し合わせた訳ではないが、初見殺しの技や機能を多用してくる康太が見慣れない装備の機体でやってきた、その事実だけで全員が警戒するのは当然であった。
結果として九機のISからの集中砲火には流石の康太も抜ける事は出来ず、頭を抑えられた上に回避する為にコースを逆走し始め、その姿がコーナーの向こう側に消えていくまで続いた。
それだけのリードを得て全員が動き出す、中でも動きが一番早かったのは龍咆の射程距離の関係で早めに攻撃を打ち切った鈴であり、他の者達も康太に向けて牽制はしつつも後を追うように前進する。
兎に角まずは速度を稼ぐと誰もが攻撃を控え、最初のコーナーを曲がり、直線を利用して次のカーブを曲がれるまでに加速、そのカーブの次から本格的に動き出した。
一夏もまた先頭より少し下がった辺りで前に出るタイミングを図っている。
その機体はいつもと違い、フェネクスと同じ仕様となっておりユニコーンガンダムペルフェクティビリティと呼ばれる物になっており、クロエのバンシィもまた同じ仕様となっている。
「先に行かせてもらうよ、一夏!」
「シャルか!」
そこに後方より追い上げてくる機体、シャルロットのストライク・ラファールが現れ、スペキュラムストライカーの翼下に備えられたミサイルポッドから無誘導ロケット弾やミサイルが放たれる。
「この程度なら!」
だがこれまでの戦いで成長してきた一夏は、この量なら捌ききれると右手にビームガトリングガンを呼び出し、後ろに向けて発砲する。
高速機動中であり、後ろから追い縋る形のロケット弾やミサイルが着弾するまでは少しばかり余裕があり、弾幕を展開する事で一夏は次々にそれらを迎撃していく。
だが迎撃の方に気を取られた為、直線が終わり次のコーナーに入ろうとしている事に気付くのが遅れ、慌てて曲がろうとするがタイミングがズレたことで外に膨らむ形でロスしてしまう。
その間にシャルロットはコーナーの内側を抜けていき、先頭争いに加わろうとしている。
レースだけでなく相手への妨害と、それらの対処、やるべき事が多く、一瞬足りとも気を抜いていい時はないと一夏は意識を改める。
それに対して先頭集団、鈴を先頭にラウラが追い、その後ろにリナの三人が固まり、少し後ろをシャルロットが追いかける展開となっている。
「折角のリード、このまま逃げ切らせて貰うわ!」
まだ油断は出来ないが、コーナーが続けば射線が通らなくなる為に中段で混戦となるよりコース取りのみに集中出来るという状態を維持しようと鈴が粘る。
元より射撃武装の少ない甲龍である、撃ち合いになれば不可視の砲弾とはいえ、今回は装甲が強固な機体が多い、体勢を崩そうにも、推力が高ければ無視して突っ込んでくる可能性もあるだけに先頭を突き進む事を選択した。
そしてコーナーを抜け直線に入ったところで瞬時加速により更に距離を稼ごうとする、その目論見は成功し再びコーナーに入ろうとした瞬間、強力なレーザーによる一撃が鈴を襲う。
「くっ、セシリア!」
「あら、外してしまいましたわね」
直前に気付いた鈴が身を捩らせて回避したことで直撃は免れたが、セシリアにそこまで気にした様子はない。
当たれば御の字、元より鈴の体勢を崩す事を目的として直線に入ったところで次のコーナーに入ろうとしていた鈴を素早く狙撃したのだ。
そして、体勢を崩した事で鈴は失速し、その隙を突いてラウラが先頭に立つ。
「って、速っ!?」
「この機体、重装型と侮って貰っては困るな」
そんなラウラは普段のフルアーマーシルヴァ・バレトから、フルアーマーとなる武装を外し通常のシルヴァ・バレトの状態でこの場に参加していた。
重装型である為に鈍足に見られるかもしれないが、その分だけ大型のバックパックより生み出される推力も大きいのだ。
それに加えて正確な操縦技術を誇るラウラの技量が合わさる事で多少不利に思われる状況であっても他の機体に劣らないだけの力を見せていた。
「行かせないわよ!」
だがそれを阻もうとリナがアームドアーマーDEの先端にあるメガキャノンとビームマグナムによる高火力攻撃を仕掛ける。
余波だけでも損傷を受けかねないそれを鼻先に立て続けに放たれてはラウラもリナに対処しようとし、左腕のシールドを向ける。
そこに備えられているのはシルヴァ・バレトの原型機であるドーベン・ウルフのビームランチャーをショートバレル化した物である、ビームマグナムには劣るものの十分な威力のビームが放たれ、リナに迫る。
それをアームドアーマーDEを向けてIフィールドで防ぐリナ、そんな二人が争っている中をシャルロットが潜り抜けようとするが、その動きに気付いたラウラが動く。
「させん!インコム!」
「流石に気付かれるよね」
オールレンジ攻撃を可能とする有線式のビーム砲、それがそれぞれ二つの方向からシャルロットを狙い、そちらに気を取られた瞬間にシルヴァ・バレトの右手が射出される。
インコムと同じく有線式ハンドと呼ばれる武装であり、その手にはビームサーベルが握られ、そのままシャルロットに斬り掛かる。
それを対ビームコーティング処理が施されたシールドで受け止めるシャルロット、そこにインコムからのビームが放たれようとするが、高速切替で呼び出したショットガン、レイン・オブ・サタディで素早く撃ち抜き無力化する。
一瞬の攻防、だがそれにより完全に全員の脚が止まってしまった事で後続からの集団が追い付いてくる。
先行しつつ、足止めとしてハンドグレードを後方にばら撒いているクロエ、それを必要最小限の射撃で切り抜けるセシリアと散弾バズーカとビームガトリングガンによって強引に突破する一夏、最後方で斬り結びながら前に出るタイミングを虎視眈々と狙っている一秋と箒だ。
脚が止まってしまった為に後ろから追い上げる形で速度の乗っている後方集団の方が有利、直ぐに加速に移らなければあっという間に追い抜かれてしまうと判断した先頭集団は戦闘を切り上げて加速に移ろうとする。
だがそこにビームが飛来する、完全に直撃する軌道で放たれたそれを防ぐためにも、加速を止めてシールドなり回避なりを選ばなければならなかった。
そしてビームが襲ったのは先頭集団のみではなかった、追いつこうとしている後続にも一拍遅れて飛来し、同じように防御に回った事で足が止まる。
最後方からの射撃、それを理解した全員が攻撃してきた者の正体を悟る。
「康太!」
「もう追いついてきましたのね。ですが、可変機であれば弱点は分かっていますわ!」
かつての模擬戦に於いて、可変機は飛行形態の速度こそ驚異的ではあるが武装を腕で保持するという事が出来ない以上、射撃の際には武装を固定している部分を真正面に向けなければならないという事をセシリアは見抜いていた。
今回も同じ、初撃こそ反応が遅れたが、カウンターを狙うことが一番的確な攻撃のチャンスと見ている。
そして武装を向け、誰かを狙おうとした瞬間にセシリアは引き金を引く。
放たれる高出力のレーザー、それは違わず康太の駆るリゼルを撃ち抜く直前、その姿が上へとズレた事で空を貫く。
「なっ!?」
基本的に可変機のスラスターは後方へ向く事で爆発的な加速力を得ている、姿勢制御用のサブスラスターは存在するが、それも機体を大きく移動させるだけの推力はない筈だった。
ならばどうやって、セシリアが次に見たのは戦闘機然とした姿から足を生やしたリゼルの姿であり、脚部のメインスラスターからの推力で上へと移動したのだと理解した。
部分的に変形する、そんな予想外の手段で回避した事に誰もが意表を突かれ、そのままリゼルは高度を落としつつ地面を滑るように進んでいく。
バックパックのスラスターは後ろを向いており、その推力は前へと機体を推し進め、時として地面を蹴る事で左右への瞬発力を確保する、咄嗟に手に持った射撃武器で攻撃を加えるが、その尽くが当たらない。
点による攻撃はまず当たらない、面を覆う攻撃も最低限の動きで迎撃され、ガトリングによる連射は追い付こうとした次の瞬間には側宙によって全く別の場所に移動される。
まるで人型と戦闘機のいいとこ取りのような動きに誰も対処し切れずにいる中で、リナだけは反応が違っていた。
「まさか本当に実現するなんて!」
「知っているんですか、リナさん?」
「えぇ、前に可変機の勉強で戦闘機の映像を見ていたコウに、それなら良い物があるって勧めたのよ。そう、マクロスを!まさかバルキリーの三段変形を再現してくるとは思わないわよね、アハハハッ!」
『笑ってる場合か!』
リナの言うマクロス、バルキリーとやらが分からないまでも、そこからヒントを得た康太が更に予測困難な動きをするようになった原因という事は分かった為、全員の声が綺麗に揃った。
そしてそんなやり取りをしている間にも康太は距離を詰め、ディフェンサーユニットに装備されているコンテナより大量のマイクロミサイルが放たれる。
距離が詰まっている中でミサイルによる弾幕、一夏やクロエといった機体に頭部バルカンが備わっている者達は咄嗟に弾幕を張り迎撃していく。
撃ち落とせなかった物はシールドを使用し、それも無い者はシールドバリアにて防ぐ、幸いにもミサイルが小型だった事から炸薬量は少なく大きな損傷を負う事はなかったが、視界がミサイルの爆炎に包まれた瞬間を狙いウェイブライダー形態に変形したリゼルが間を抜けて全員の前へと飛び出した。
「しまった!?」
「お先に!」
ミサイルによる攻撃は目眩まし、それに注意を集めた上で前へと抜け出す事が康太の目的だった。
そして一度離されてしまえば速度で人型の機体を上回る可変機であるリゼルに追い付くのは不可能に近い、全員が康太を追い、その背へと攻撃を仕掛けるが推力を全開にしつつ壁を蹴って無理矢理にコーナリングしていく康太の姿は直ぐにカーブの向こう側へと消えていった。
これで追い付くのは不可能、康太を止めたければ周回遅れで待ち構えて完全に機体を破壊するしかないが、そこまでやる程に勝利に執着している訳ではない。
むしろアレは特殊過ぎる事例という事にし、二位の座を掴む方が現実的と判断した事でレースは再開される。
足が止まった分を取り戻すために加速し、自身より先に進もうとする相手には妨害を、独走状態の康太との差は開くが、そこはもう諦めた。
そして、そんな一人旅をしている康太だが、既にゴールを過ぎようとしていた。
このレースは全部でコースを三周するようになっているのだが、独走状態になれた事でこのまま全員を周回遅れにしてやろうかと考えていた時、康太は直感のままに機体を操作、ウェイブライダー形態から変形し人型になると脚部を前に向けてスラスターを全開、脚での瞬時加速をも利用しての無理矢理な急ブレーキを掛けた。
ゴールを目の前にし、二周目もあるというにも関わらず不自然な減速、その動きを見ていた観客達が疑問を抱く間もなくリゼルの目の前を上から通り抜ける火線があった。
「チィッ!!」
即座に残っていたミサイルを発射、撃ち尽くしたコンテナをパージし、左腕のシールドに内蔵されているビームキャノンを三連射、バックパックのビームキャノンも同じく連射していき、それらは全て先程のビームが飛来してきた康太の頭上へと向かっていく。
コンテナに半分残っていたマイクロミサイルは十を超える、だが網目のように張り巡らせたビームにより迎撃され、康太が放ったビームは回避され、またはシールドに受け止められる。
だが康太は相手がそれらの攻撃に対処している間に上昇する、全ての攻撃を捌き切った敵もまた同じように降下しながら迎え討とうとしている。
リゼルの右手に装備されたビームライフルの先端より出力されるビームサーベルを薙ぎ払うように振るい、相手もまた左腕のシールドより出力した大型のビームサーベルで横薙ぎにする。
互いのビームサーベルをシールドで受け止める形で鍔迫り合いになり、二人の視線が交差する。
「織斑マドカァァァァァッ!!」
「紫藤康太ァァァァァッ!!」
通信などは一切使わず声のみでのやり取り、二人の間でのみ通じたのも束の間、互いに相手の横腹へと全く同じタイミングで放たれた蹴りにより体勢を崩し、次の瞬間には即座に距離を取り体勢を立て直す。
その際に康太は身に纏っていたリゼルを解除し、デルタカイへと乗り換える。
マドカの駆るプロヴィデンスに対抗する為に二次移行を果たした愛機、かつての文化祭での雪辱を晴らすまたとない機会であった。
そこまでしてようやくスタジアム内では警報が鳴り響く、所属不明、正体不明のISの乱入、それが選手の一人である康太と戦闘状態に入った。
競技ではなく本物の戦闘、平和に慣れきった日本に於いて遠い世界の出来事のように感じられていたそれが目の前で繰り広げられる事に観客達はパニックを引き起こす。
それを視界の端に捉えるが康太にはそれに対処している余裕はない、右手の武器を威力と射程のあるロングメガバスターから陸戦型のビームライフルに換装し、左手のシールドにはメガマシンキャノンを装備し、油断なくマドカの動きを注視していた。
「康太!」
そこに康太の背後より他の専用機持ち達も集まってくる、エネルギーの総量こそ減っているものの、九機という数は決して無視出来るものではない。
「流石に一人でこの数は厳しいわよね、M。約束通り、事前のプランで行くわよ」
だがそこに一機のISが降り立つ、プロヴィデンスの隣へと降りてきたその機体は黄金の装甲を持つ機体、ゴールデン・ドーンであった。
「待て、スコール。この程度の雑魚共など、何の障害にもならん」
「確かに貴女の実力ならそうかもしれないけど、紫藤康太を相手取りながらそれが出来るのかしら?」
かつての戦闘では足手まといとなったオータムが居たとはいえ、最終的にはその場に放置して全力で落としに掛かり、痛み分けに終わっている。
加えて今回は康太の機体が二次移行を果たした事で圧倒的に機体性能が向上している、そこに歯牙にも掛けない程度の実力とはいえ九機もISが居るのだ、スコールの言葉に即座に反論は出来なかった。
その沈黙をスコールは肯定と受け取った、その機体の右手には本来の武装ではない、大型の杖のような物が握られている。
何か仕掛けてくる、それを感じ取った全員が攻撃を仕掛け、それを阻むようにマドカがスコールの盾となり、その隙にスコールは杖を起動させる。
「さあ、黄金の王の前に平伏しなさい!」
「まさか!?全機センサーを切れ!奴を
黄金の王、その言葉に反応した康太は周囲へと警告を発するが、既に時遅く杖からは光が放たれる。
「うっ!?……………あれ、何ともない?」
その光に対し全員が腕などで顔を覆うが、その光が消え去った時、機体に異常は見られず、一体何の意味があったのかと康太以外の誰もが不思議に思った。
だが次の瞬間―――
「何だ!?機体の制御が!?」
「お、落ちる!?うわあぁぁぁぁぁっ!?」
―――全ての機体が制御を失い、高度を維持する事ができなくなった事で地上へと落下を始めるのだった。