ジェガン、IS世界に立つ!!   作:RABE

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あけましておめでとうございます(大遅刻)

本当なら正月休みの時に書き上げるつもりでしたが、バトオペ2でジェガンD型実装!という時にまたPS4のコントローラーが壊れて、通販で届いた時には残り時間が無い!って状況で必死にミッションやってました、はい。無事に確保出来ましたけどね、運営様配布ありがとうございます。武装がA型より使い易くて良い機体です。

……はい、前回よりは間隔空いてないので、ユルシテ……ユルシテ……


71話 人の革新

「何が起きた!?」

 

制御を失い墜落していくIS、それ等を見ながら管制室に居た千冬は未曾有の事態に対し、まずは正確な情報の把握に努めた。

 

「分かりません!ですが、全てのISの駆動系などにエラーが出ているようです!生徒達の方はバイタルデータに異常なし、機体の保護機能は無事です!」

 

「動きだけが封じられたという事か?」

 

それに対し、各専用機の状況をモニターしていた真耶の報告から、敵が何らかの手段でISの動きのみを封じたのだと理解した。

 

管制室に設置された大型のディスプレイに映し出されている二機のIS、一機は以前に報告を受けていたプロヴィデンスだが、この状況を引き起こした黄金の機体にはどうしても警戒を強めなければならなかった。

 

だがその黄金の機体に対し攻撃が加えられる、シールドに接続された二門のガトリングガンから実弾を発射しつつ、右手に握ったビームサーベルで斬り掛かる機体、康太のガンダムデルタカイだ。

 

「紫藤は動けるのか!?」

 

「は、はい!紫藤くんの機体だけはエラーが発生していません。ですが、回線が閉じられています、此方からの呼び掛けに応じません!」

 

「回線を?どういう事だ?」

 

現状で戦闘可能であり、また敵が謎の光を放つ直前に何らかの警告を発した康太は確実に情報を持っている、それだけに可能ならば直接通信し敵の攻撃に対する情報を得たかったが、それが出来なかった。

 

ならば外から分かる範囲で分かる事はないか千冬は目を凝らす、とはいえISの戦闘は高速戦闘だ、あっという間に立ち位置が大きく変わり、静止する事などは殆んどない。

 

それでも世界最強としての眼は普段とは違う違和感を捉えた、それは撃ち合いを得意とする康太が今は格闘戦に持ち込もうと動き、また射撃も牽制などにしか使っていないという、普段の康太とは真逆の動きをしている事だった。

 

加えて、回避する時も必要最低限の動きに抑えている普段とは違い、大きく保険を取っているかのように見える動きがあったのだ。

 

そして一番の違い、それは全身を装甲で覆うタイプの機体にも関わらず、頭部のみ何も身に付けていないという姿だ。

 

頭部は人体にとって弱点であり、それだけにISも保護機能をそこに集中させる、僅かな負傷も許さないようシールドバリアもエネルギーを多く割り振られており、康太はそれを軽減する意味でも頭部には何らかの装甲を装備する事を好んでいた。

 

それを投げ打ってまでも非装甲にする必要性、それに対して千冬はまさかという思いを口にした。

 

「もしや、有視界戦闘しか行えないのか?」

 

頭部を全て覆えば当然肉眼で敵を捉える事は出来ない、その為、モニター等を介してセンサーが得た外の情報をパイロットに表示するのが全身装甲(フルスキン)の基本的な方式だ。

 

だからこそ今、センサーが使えない為に肉眼で視認しようとしているのではないか、千冬はそう考えた。

 

そしてそれは正しかった、自身を狙うドラグーンの攻撃を回避し、エネルギー切れで補給に戻った瞬間を狙い康太は通信を繋げて来たのだ。

 

『通信可能な全機に通達!敵の攻撃はミダス・タッチ・フラッシュシステムだ!あの光が一定の明滅パターンを取る事で、それをセンサーが読み込むと機体に対して運動プログラム停止信号を受けたよう誤認させるコンピューターウイルスだ!QRコード、その発展型だと思え!』

 

告げられたのは敵機の能力の詳細、何故他の機体が動きを封じられ、康太だけが無事なのか、そして動けない以外は何の異常も起きていないISへの答えだった。

 

『此方はウイルスの感染を防ぐ為、センサーを始め全てをシャットアウトしてる。故に、通信も一方的に送信してるだけだ』

 

千冬は真耶を見た、通信について確認すると確かに送信だけしているらしく、此方の通信を受信はしていないようであった。

 

『ワクチンプログラムを開発している時間はない。対抗策としては―――クソッ、二つの眼と――――――フリッカー、融合頻度を―――』

 

恐らくは切り札を見破られたからだろう、康太に話をさせないように攻撃が苛烈なものになっていく。

 

そして、康太もまた回避する事に集中した事で自然と通信が途切れた。

 

「クッ、紫藤は何を伝えたかったんだ?」

 

眼とはセンサーであろう、それを二つ用意するという事は分かった。

 

だが問題はそれに続いたフリッカー融合頻度だ。

 

どのようにすれば敵のシステムを突破出来るのか、数少ないヒントから導き出すしかなく、また康太が通信をしてくるのを待っている訳にはいかない。

 

今はピットに生徒が使っていた訓練機がある、それを教員が使い戦線に加わる事が出来れば康太の負担はぐっと楽になるのだ。

 

だから千冬はその手の技術の専門家に託す事にした。

 

「整備班、今ので何か分かるか?」

 

『えーっと、二つの眼はセンサーを二個って事ですよね?で、フリッカー融合頻度ですが、フリッカーはテレビとかのモニターのちらつき現象で、融合頻度はそのちらつきを認識する能力です。なので、恐らくはセンサーを二つ載せて、それを絶え間無く切り替える事で敵の光を途切れ途切れに捉えて無力化するんだと思います』

 

「それは確かか?」

 

『光で送られてくる情報を全て処理したらウイルスとして完成するなら、一部を捉えるだけなら無意味な情報として処理可能かと』

 

「よし、直ぐに取り掛かれるか?」

 

『まず一機、急ごしらえですが二十、いや十分で仕上げてみます!』

 

普段整備課で教鞭を執る者に康太からの情報を全て話し、そこから推理して貰った。

 

それが通用するかは不明だが、試さない事には何も始まらない。

 

そのまま戦力として利用可能ならば続けて別の機体にも同様の処理を施せば良い、問題はそれとは別のところだ。

 

「何とか耐えろよ、紫藤」

 

敵との交戦を続ける康太が、それまで持ち堪えられるかだった。

 

 

苛烈極まる攻撃に曝される中、康太は必死に機体を操り続けていた。

 

マドカの駆るプロヴィデンスは拡張領域より予備のドラグーンを取り出し、それぞれが攻撃と補給を行う事で常にオールレンジ攻撃を可能としていた。

 

それだけではなくゴールデン・ドーンを駆るスコールは腕部より火球を放ちマドカの攻撃の穴を塞いでいく。

 

時としてシールドを用い、辛うじて存在していたスペースにて凌ぐ康太だが、連携が取れてきたのか徐々にその穴も無くなってくる。

 

早々に手を打たなければ詰む、そう頭では理解している康太だがどうしても攻め込むタイミングが掴めずにいた。

 

「このっ!」

 

「フフフ、無駄よ」

 

何より状況を打開するのに一番の障害となっているのはゴールデン・ドーンに搭載されている防御兵装である『プロミネンス・コート』だった。

 

現状、ミダス・タッチ・フラッシュシステムの影響から逃れる為に康太はセンサーを利用した射撃が出来ず目測と経験による勘のみで照準している。

 

それを補う為に弾をバラ撒くメガ・マシン・キャノンや散弾バズーカといった兵装を利用しているのだが、それは一発当たりの威力が低い為にゴールデン・ドーンの防御を突破出来ずに居た。

 

加えてマドカを倒すにはセンサーが無い状態では近接戦闘しか手が無く、甘い照準では難なく避けられて終わりだ。

 

プロミネンス・コートを突破する為に火力のある攻撃、ハイ・メガ・キャノンやビームマグナムといった武装は溜めが必要であり、その一瞬さえもマドカの猛攻が赦さない。

 

ほんの一瞬、それだけの隙があれば打開策はある、ドラグーンの制御とBT粒子の偏向射撃の制御、その二つを同時に制御し続けるにはかなりの集中力が必要となり、それは長くは続かないと康太は見ていた。

 

だから相手の動きが乱れるのを待つ、康太とマドカの根比べが此処に始まるのだった。

 

 

「くっ……うぅ……ハァ、ハァ……どうにもならないんですの?」

 

レース場の地上、誰もが機体を動かそうと奮闘するもパワーアシストの切れたISは腕のみでも数十キログラムはある為に腕を持ち上げる事さえ出来ずに居た。

 

手足の一部のみに装甲を持つ者でさえその状態なのだ、全身を装甲で覆われている一夏などは身動きさえ取れずに居る。

 

その中でもセシリアは落ちた際に仰向けに倒れた為に上空で行われている戦闘の様子が目に入っていた。

 

無数のドラグーンとそこから放たれるBT粒子による偏向射撃、自分よりも遥かに使い熟しているそれを事前に知ってはいても、実際に目の当たりにするのとでは大違いであった。

 

加えて自分は地面に叩き落され、機体の解除さえも出来ず、何も出来ずただ転がっているだけだ。

 

「強くなると、誓った筈ですのに……!」

 

パワーアシストが切れている為に体を起こす事は疎か、腕のみを動かして銃口を向ける事さえ叶わない、また康太に全てを任せて頼り切りの状態となってしまった。

 

そんな己の情けなさに自然と涙が溢れ、頬を伝い雫となって地面に落ちていく。

 

だがそれによってセシリアの思考に天啓が降りた。

 

(涙、雫、ああ、そうでしたの、ブルー・ティアーズとはつまり―――)

 

自分にもまだ出来る事がある、改めてセシリアは機体の状態をチェックしていく。

 

(ブルー・ティアーズは反応無し、ですがイメージ・インターフェイスは使用可能、行けますわね)

 

使えないのは火器管制装置とパワーアシスト、そしてスラスターユニットのみだ。

 

なら手に持っているスターライトMk-Ⅲは問題ない、ゆっくりであるが指を動かすくらいなら問題ない。

 

通常は火器管制装置によって引き金を引かずとも発砲可能だが、セシリアは安全装置として引き金を引いても発砲可能に作った設計士に改めて感謝した。

 

ともあれ全ての準備は整った、成功するかも未知数だが奇襲となる初撃に全てを掛ける、その為に今にも引き金を引きそうな気持ちを抑え、一番最適な瞬間を狙っていた。

 

 

セシリアと同じように地面に落とされたクロエだったが、彼女もまた自分に出来る事をしていた。

 

(コンピューターウイルスによる機体のハッキング、それだけなら対応出来ます!)

 

クロエの駆るバンシィは動けない、だが元からクロエが所持し心臓と一体となっているIS黒鍵は外装を持たず、その能力は電子戦に特化している。

 

ミダス・タッチ・フラッシュシステムを受けた際、クロエはバンシィを通じてそれを見た。

 

それによりバンシィは動けなくなってしまったが、康太の説明を聞いて直ぐにウイルスの削除を試みたのだ。

 

とはいえベースとなっているのは宇宙世紀に於けるコンピューターウイルスだ、当然一筋縄でいかないが、それでも同じ宇宙世紀の代物に多く触れてきた経験を活かし解析、削除していった。

 

そうしてウイルスを駆除した時、上空では康太が苦戦していた。

 

根比べをしていたところが、最終的に決着をつけようとマドカが全てのドラグーンを射出、本来の倍の数のドラグーンによる全力の攻勢を仕掛けているところだった。

 

これを凌げば全てのドラグーンはエネルギー切れにより康太の反撃のチャンスとなる諸刃の剣、だが外野から余計な横槍が入る事を良しとしないマドカが明らかな時間稼ぎを行っている康太に対して賭けに出たのだ。

 

それまでのドラグーンだけでも避けるのに精一杯だった中で一気に倍となった事で流石の康太も回避する事は出来ず、スラスターやセンサー、関節部といった比較的脆い部分への被弾を避け、残りはシールドや出力を高めたシールドバリアで受け止めていた。

 

トライコアに加え無人機分のISコアによるエネルギー総量があるとはいえ燃費もそれなりに喰らうデルタカイは叶うことならできるだけ被弾を減らしたいところだが、此処が使い時とばかりに康太はシールドバリアを使用する。

 

そんな中、康太の背後でスコールが巨大な火球を生み出し、放とうとしていた。

 

今の状況でそれだけの攻撃を受ければ流石に絶対防御が発動する、パイロット保護の為に通常のシールドバリア以上にエネルギーを消費するそれが発動すれば康太の継戦能力は更に低くなるだろう。

 

だから撃たせない、此方が動けないと敵が思っている今ならば不意討ちとして絶好の機会だ。

 

クロエは普段閉じているその目を開く、通常の人間よりも遥かに早く、遠くを見渡す事が出来るように強化されたその目を。

 

「リミッター解除、撃ちます」

 

アームドアーマーDEに装備されたメガキャノン、そして両手で構えたビームマグナム、そこから高火力のメガ粒子が放たれる。

 

「なっ!?ぐ、ああぁぁぁぁぁっ!?」

 

突如としてクロエが動き出した事に対して完全に虚を突かれたスコールは火球を消すと回避に入る。

 

だが二門のメガキャノンからの攻撃は時間差によって放たれた事で一発目を回避しても二発目が直撃、それにより動きが鈍ったところにリミッターを解除されたビームマグナムの一撃が迫る。

 

普段の試合では絶対防御を貫通する事から使用と出力に制限を掛けてあるそれを、完全な威力で受けた事でスコールは左腕を消し飛ばされる。

 

直前にプロミネンス・コートによる防御を行っていたとはいえそれも直ぐに貫かれ、ゴールデン・ドーンの左腕諸共に失ったのだ。

 

「バーンッ」

 

更にクロエの攻撃から一拍遅れてセシリアの放ったレーザーが弧を描きマドカの背に命中する。

 

それによって体勢を崩すマドカ、その隙に康太は切り札を使用する。

 

「サイコミュ系リミッター全解除!」

 

音声入力によって機体に施されていたサイコミュシステムの箍が外れていく、それと同時にデルタカイの各部から青い光が見え始めた。

 

「システム起動、『NT−D(ニュータイプ・ドライブ)』!!」

 

そして康太がシステムの名を唱えた瞬間、デルタカイの全身から青い光が溢れ出す。

 

それがデルタカイの姿をマドカから隠した事で目眩ましの効果も発揮し、何者に邪魔される事なく攻撃へと移った康太はビームサーベルを右手に保持すると後方のスコールに向けて振り抜いた。

 

「亡霊は、暗黒に帰れぇっ!」

 

距離もある為に通常は届く事はない筈のそれは、突如として刀身が延長された事でゴールデン・ドーンの右手に握られていた杖が両断される。

 

同じく今しがた使用していたビームサーベルも限界を超えた出力を無理矢理に引き出された為に爆発するが、康太は既にその時にはサーベル本体を捨てていた。

 

そこに体勢を立て直したマドカが再びドラグーンを展開し康太を狙うが、康太もまたフィン・ファンネルを展開し、拡張領域からも追加で四基を呼び出し、自身の周囲を囲うように展開する。

 

そして全方位のドラグーンより放たれるビームとレーザーの嵐、だがそれは同時に展開されたフィン・ファンネルより発せられるビームの幕により阻まれ、デルタカイにまで貫通出来たものは一つも無かった。

 

それでも立て続けに射撃を続けるマドカだが、ドラグーンとフィン・ファンネルのそもそものサイズ差に加え先に展開していた事でドラグーンの方が息切れとなる。

 

「フルバースト!」

 

その時を逃さず、フィン・ファンネルと自身が持つ火器から全方位に向けて攻撃を放ちドラグーンを撃墜していく。

 

撃ち洩らした物もあったが、それは一斉射の後にエネルギー切れとなったフィン・ファンネルを高速で激突させて逃がさずに殲滅した。

 

それによりフィン・ファンネルも破損してしまうが、全てのドラグーンを撃ち落とす方を優先した事で康太もマドカも残る武装は機体に保持している分だけとなる。

 

そこに機体を回復させたクロエが背中合わせに並び立ちスコールへと相対する。

 

状況としてはそれで五分五分、そう見えただろうが康太は通信を繋いだ。

 

「一夏、リナ、シールドを寄越せ」

 

『えっ?わ、分かった』

 

『……勝ってね、コウ』

 

その相手は機体を封じられた一夏とリナで、二人は康太に対して武装のロックを解除する。

 

それと同時にユニコーンとフェネクスの二機の背中に取り付けられていたアームドアーマーDEはサイコフレームを青色に光らせ、スラスターを使わず浮遊すると康太達の周囲を囲むように展開した。

 

オールレンジ攻撃は互いに使えない、そう思われた戦場はあっさりと逆転したのだった。

 

「クロエは金色の方を頼む、俺はプロヴィデンスをやる。無理に仕留めようとせず、堅実に行くぞ!」

 

「はい、コウタさん!」

 

自身はマドカと戦闘しつつ、ドラグーンへの対処が無くなった事から二基のアームドアーマーDEをクロエの援護に回す康太。

 

クロエもまたビームマグナムの他に左腕にジェスタ用のビームライフルを装備し、連射の利かない欠点を補おうとする。

 

片腕を失った上に主兵装をも失ったゴールデン・ドーンには万全の状態となったクロエの相手は厳しい、康太は無理せずとは言ったが遠からず撃破は可能だろう。

 

加えて杖を斬り落とした事でミダス・タッチ・フラッシュシステムが使用不可となった、それにより康太もクロエもセンサーの使用が可能となっており、条件はレースでエネルギーを消費していたとはいえクロエに有利だ。

 

更にはセシリアからの援護射撃もある、それだけの材料があってクロエが敗れる事は殆んど有り得ない状況だった。

 

しかし、戦闘を開始しようとしたクロエの背後に、地表付近から高出力のビーム攻撃が放たれる。

 

センサーに何の反応もなく、更には射点に目を向けても何の姿も見えない、完全に虚空より放たれたビームは、しかしサイコミュにより邪気を捉えた康太がシールドファンネルとなったアームドアーマーDEを割り込ませる事で防ぐ。

 

それと同時に康太はマドカを放置して射程に向かう、ビームの通った道は熱が残っており、その端が先程の攻撃を行った者の位置となる。

 

無視された形となったマドカは直ぐに康太を追うが、背後より撃ったビームは同じく康太が従えていたシールドファンネルに防がれる。

 

その間に康太はビームライフルを発射、姿の見えない敵の位置を予測して撃つが、既に移動したのか何もない宙を貫く。

 

すると逆に康太に向けて攻撃が虚空より放たれる、荷電粒子砲、散弾、ミサイル、連射される実弾、だがそれ等の攻撃から康太は敵機の正体を見破る。

 

「成程、ミラージュコロイドだな」

 

声が聞こえた訳ではない、姿が見えている訳でもない、それでも敵機の動揺した気配が康太には伝わってきた。

 

その機を逃さず康太はシールドに懸架されているビームサーベルを左手に握ると投擲する。

 

回転しながら飛んでいったそれは先程の一斉射を行ってきた位置に向かうが、それを敵機はスラスターを使いギリギリで回避する。

 

未だに姿は消したままだが熱源は誤魔化せない、センサーにハッキリと映るその姿を見て康太はビームライフルの狙いを修正、再び射撃する。

 

「ビームコンフューズ!」

 

だが狙いは敵機ではなく、その背後を通り過ぎたビームサーベルだった。

 

ライフルの射撃により本体である柄を破壊されたビームサーベルは内部に収めていたメガ粒子を周囲に散弾のように撒き散らす。

 

それを背後から受けた為に装甲を持たないスラスターにダメージを受ける敵機、またメガ粒子を浴びた箇所は透明化が解除され、その姿を現す。

 

「クソがッ、何でバレた!?」

 

「やはり、ヘイルバスターか!」

 

現れたのはバスターの改良機であるヘイルバスターであり、オータムが使用していた。

 

これはアラクネが破壊された事により予備パーツにISコアを組み込んでもコアが馴染むまでまともに戦闘が出来なくなり、ならば機動性を発揮出来ずとも限定的に戦闘が可能な機体として亡国機業が保有していた機体の中で一番適していた機体だからだ。

 

スコールがミダス・タッチ・フラッシュシステムでセンサーを封じ、その隙にミラージュコロイドによって密かにアリーナへ潜入する、そのまま戦闘に勝利出来れば良し、出来ずとも超高インパルス長距離狙撃ライフルなどで不意を討つという作戦だった。

 

だがそれも全て破綻してしまう、ニュータイプとしての勘の良さを発揮した康太に初撃を阻まれ、その武装から正体を看破され、コアが馴染んでいない事によって機動性は悪化している事によりオータムはあっという間に窮地に追い込まれた。

 

そこに先程の一斉射を切り抜けた康太が瞬時加速により迫る、それに対してガンランチャーで弾幕を張ろうとするも、既に懐に入り込まれている。

 

打つ手無し、そう悟った時にはデルタカイの膝がオータムに叩き込まれていた、鋭利なパーツによりニークラッシャーという武装として転用可能部位で瞬時加速を追加した膝蹴りを受け、大きく吹き飛ばされたオータムはアリーナの壁に激突すると意識を失う。

 

そんな康太の背に追い縋るようマドカが迫り、左腕から高出力のビームサーベルを発振するが、しかし複数の射撃が飛んできた事で後ろに下がった。

 

攻撃の飛んできた方角を見れば、そこにはジェガンや打鉄、ラファール・リヴァイヴといった学園の訓練機を身に纏う教師陣が居た。

 

ミダス・タッチ・フラッシュシステムが無くなった事で千冬が即座に送り込んだ増援部隊、二十は下らないその数は半数はスコールと戦闘を行うクロエの援護に向かっており、二機はオータムの確保に向かうが残りは康太の援護に駆け付けていた。

 

その全てがマドカを取り囲み銃口を向けている、どう足掻いたところで圧倒的に不利な状況は覆す事は出来ない。

 

「この、雑魚共が!邪魔をするな!」

 

だがマドカは動いた、射撃を掻い潜り一機に迫るとその勢いのままタックルを繰り出し、体勢を崩した相手をビームサーベルで斬り捨てる。

 

そして斬った相手を踏み台に別の機体へとビームライフルを撃ちながら迫るも、康太がシールドファンネルを左右から挟み込むような形でぶつけた事で勢いが止まる。

 

そこに殺到する集中砲火、あっという間に装甲は千切れ飛び、頭部を覆っていたバイザーも砕け散りながら、マドカは地上へと叩き落される。

 

「ぐぅ……お、おのれ……」

 

割れたバイザー、その下から出てきた素顔は織斑千冬に酷似していた、それを怒りで歪め、なおも立ち上がろうとする姿に教師陣は動揺し思わず攻撃の手を止めてしまう。

 

その間に康太は地上へ向かうと、マドカの前に降り立つ。

 

「こんな決着はオレも望んではいなかったんだがな……」

 

「全くだ……」

 

センサーの回復と共に顔を覆っていた装甲を解除し、マドカに告げるその表情には不満の色が浮かんでいた。

 

それに対し決着を望んでいたのは自分だけでないと理解したマドカは一転して苦笑する。

 

「もし次があるなら、その時は互いに万全の状態で、真正面からやり合いたいものだ」

 

「私もだ。だが、今この時だけは―――」

 

「ああ、今だけは―――」

 

「「―――この一撃をッ!」」

 

マドカは残っていた左腕のビームサーベルを発振させ振るい、康太もまた拡張領域より予備のビームサーベルを取り出して振るう。

 

示し合わせたように動いた両者は交差し、互いにビームサーベルを振り抜いた形で静止する。

 

その次の瞬間、デルタカイの左の主翼が斬り裂かれる、だがマドカの方はそのまま倒れ伏すと共に機体が解除された。

 

「これで一勝一敗、次に持ち越しだな」

 

「は、前のアレを私の勝ちとするなら、そうなのだろうな……」

 

倒れ伏しながらも、満足気な笑みを浮かべるマドカ、時を同じくしてスコールもまた撃墜され、捕縛されようというタイミングであった。

 

予想外の事態は起きたものの、これで騒動は収束する。

 

 

 

 

 

―――筈だった。

 

 

 

 

 

「あれあれ?あれあれあれぇ?スコールちゃん達やられちゃったのぉ?だらしないなぁ、亡国機業で一番強いって話だったのになぁ、情けないよねぇ」

 

突如として響く新たな声、咄嗟に全員が身構えるが、その声の主の姿は見えない。

 

そんな中、センサーが敵機の位置を捉える、場所はアリーナの観客席、そこに一機の黒い機体が居た。

 

その場の全員が新手に対して武装を向ける、アリーナと観客席の間には流れ弾による被害が及ばないようシールドバリアが張られているが、それも管制室で操作すれば消す事が出来る。

 

そうなれば一機程度、あっという間に排除出来るのだが、相手は余裕そうな態度を崩さない。

 

「おおぉ、恐い恐いぃ。そんな殺気を向けないでよぉ。ワタシは確かにぃ、そこのMなんかの足元にも及ばない実力だけどさぁ、弱いなら弱いなりにぃ、準備してる物なんだよぉ?」

 

人を嘲るような口調のまま、その人物は左手で上を指差すと、同時に機体の上部に新たな影が浮かび上がっていく。

 

それは機械で出来た一対の巨大なクローであり、黒い機体の背後に繋がっている。

 

だが一番の問題はそのクローの中に人が捕らえられている事だ。

 

その人物は康太も知っていた、赤毛にバンダナを巻いた姿の少女、五反田蘭である。

 

そして、新手が身に纏っている機体も名を呟くのだった。

 

「ネロブリッツ……」

 

先程のヘイルバスターと同じくミラージュコロイドを装備する機体、加えて空から円錐状に見える紅い機体が降りてきて、その隣に並び立つ。

 

「ロッソイージス……」

 

「アハハッ、流石は特異点だねぇ、ワタシ達の機体も知ってるのかぁ。まあ良いけどねぇ、この状況で何が変わるって訳でもないしさぁ」

 

更に、上空には大型輸送減ヘリであるCH−47チヌークが複数現れ、その輸送スペースより無数のMS、ザクシリーズが降り立つ。

 

「そういえば名乗ってなかったねぇ。ワタシ達は亡国機業の実働部隊が一つ、『トランプ』。単刀直入に言おう。投降しろ、特異点」

 

それ等の機体が展開し、観客席に降り立ち、その銃口をIS学園側に向けると、黒い機体、ネロブリッツのパイロットはそれまでの口調から一転、冷たささえ感じる口調で告げたのだった。




なお、『トランプ』は本作オリジナルの部隊です。

軽く編成を言うと、索敵機一機含めた十三機のMS部隊四つで一個大隊、そこに切り札ことIS二機を加えた形がトランプと同じ枚数という事で名付けました、機体の方もデルタアストレイのラスボス二機です、黒と赤でこれもトランプ要素ですね。


次回予告?
コウタくん「捕虜の扱いは、南極条約に乗っ取ってくれるんだろうな?」
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