結構会話が多い話になってしまいました、それと亡国機業の目的だとか設立の過程だとかの話は独自設定になります。
新たな敵の出現によりIS学園側と亡国機業側は互いに銃口を向けつつ、しかしそのまま睨み合いの状況に陥っていた。
数こそ多いがISは二機のみと戦力で劣る亡国機業、膠着状態になっているのはこれみよがしに人質を掲げているからだ。
その人質を失えば亡国機業はあっという間に数に押されてしまう、だから殺す事は出来ずとも目の前で痛めつけてみせる事は出来る。
加えて後ろに控える撮影用の機材を背負ったコマンドザクCCIという機体が厄介だった。
「見ての通り、此方には人質が居る。知らない仲じゃないでしょう?そして今の状況をネットを通じて全世界に配信している。そんな中で、人質を見捨てて撃てる?」
人質を取り、その様子を世界に見せ付ける事で学園側の動きを封じる、もしこのまま五反田蘭を見捨てるという選択肢を選べば世界中からのバッシングが殺到するというのは明白だった。
だからこそ誰も動けなかった、康太もまた右手に握っていたビームライフルの銃口を下ろし、口を開く。
「何が目的だ、亡国機業」
「貴方の身柄と、この場にある全てのISコア、と言いたいところだけど欲張り過ぎても良い事は無いわね。数十のISコアと一人の命だと、天秤の傾きが怪しいところだもの。だから、貴方の身柄のみを要求するわ、特異点紫藤康太」
本来ならISコアも回収したいが、それが数十機分ともなれば話が違ってくる。
亡国機業はテロリストだ、そんな組織に数十機ものISが渡ってしまえば下手な国家の戦力を超えてしまう、将来的な脅威を生み出さない為の致し方のない犠牲として人質が通用しなくなっても困る。
だからこそ『トランプ』の指揮官は康太の身柄だけを要求する、そうする事で後の判断は康太だけの物になり、仮に五反田蘭を見捨てても康太に対するバッシングが強くなるだけだ、我が身可愛さに人質を見捨てたと、外野から好き勝手に騒ぐに決まっていた。
「はぁ……良いだろう、投降しよう。が、その前に一つ聞かせて欲しい。お前達はオレを特異点と呼び、その確保に拘っている。何故だ?篠ノ之博士ではなく、オレに固執する理由は?」
「それを訊くの?ワタシ達の機体の名前を言い当て、その能力も知っている貴方が?」
「成程、愚問だったか。それにしてもGAT−Xシリーズか。やっぱり設計データ拾われてたんだな」
「その通りよ。だからこそ、我々は貴方を欲しがっているの」
「そうか。それで、投降するならどうすれば良い?」
「機体を解除して待機形態になったISは離れた場所に投げなさい。他の連中も、地上に降りて動かないように。余計な真似をすれば人質の命はないわ」
大人しく全てのISが地上に降り、康太は機体を解除すると腕輪とドックタグを外して地面に投げる。
それを『トランプ』の指揮官が近付いて拾い上げ、片方のクローで康太を掴むと蘭を下ろし、改めて両方のクローで康太を掴み直した。
これで蘭に代わって康太が人質という形になったのだ。
「ご、ごめんなさい康太さん……私のせいで……」
「気にするな、ミラージュコロイドステルスは捕捉が極めて難しいステルス能力なんだ。これは仕方のない事で、どうやっても防げなかった事だ。責めるなら自分じゃなく、そもそもこんな事をやらかしたコイツ等を責めろ。ほれ、早く教員部隊のところに行け。危ないぞ」
その際、震える声で蘭が康太へと謝罪するが、それを康太はあっけからんと受け流す。
そんなやり取りに指揮官は問いかけた。
「それにしても、随分とあっさり捕まったわね。ワタシ達には好都合だけど、何を企んでるの?」
「別に。そもそもISの防御性能が高いからな。撃ったらシールドバリアで防がれるし、絶対防御を貫通する威力となれば蘭を巻き込む。あの状況だと仕方ないと割り切るしかない」
「だとしても普通は嫌がるものよ?拷問に掛けられるだとか、考えていないの?」
「その時は、まあ何とでもなるはずだ。それに、オレも亡国機業に関して知りたい事がある。何が最終的な目的なのか、それをな」
「お喋りの時間ならこれからたっぷりあるわよ。各機、目的は達した。スコール達を回収し、我々も撤収する。負け犬とはいえ貴重な戦力には違いないからねぇ」
派閥の間で権力闘争でもあるのだろう、最後の方はスコール達にも聞こえるよう、猫なで声のような口調をしていた。
そしてヘリにIS学園側から奪還したスコール達を載せ『トランプ』はその場を離れていく。
康太という生徒を人質に取られては教育機関の世間体として教え子を見捨てるわけにも行かず、動けずに渡してしまう。
明確な敗北、途中で優勢になったものの人質という手段に対して無力であった事を明確に印象付け、この件は終わったのであった。
◆
キャノンボール・ファストは中止となり、康太を除く全ての生徒は学園へと帰還した。
既に康太が連れ去られて数時間が経過している、人質という手段に対してアリーナでは他の観客が避難したシェルター前に陣取っていた楯無は専用機持ち達と共にラビットフット社のラボに居た。
そこには千冬も居り、今回の件に関する情報の整理と、今後の方針を定める為であった。
またミダス・タッチ・フラッシュによってウイルスに感染したISのウイルス駆除の為にでもある、各々のISは現在束の元にあり、その作業が行われていた。
そして、ラボの一室で現状把握の為の報告会が始まろうとしていたが、その空気は重い。
「まず今の状況からだけど、ごめんなさい、結論から言うと亡国機業を見失ったわ」
そんな中でまず楯無が口を開くが、それは決して信じたくない内容であった。
「日本側も衛星で追跡していたのだけど、彼らは海上で未確認の潜水艦に合流すると、そのまま潜航していったの。周囲に海上自衛隊の潜水艦は居なかったし、恐らく巡回ルートも知られていたのでしょうね。それと、彼等のヘリはアメリカ軍の識別信号を発信していた。けど、問い合わせたらそれは全て過去に戦地で撃墜された物ばかりだったのよ。文字通り亡霊の出現に彼等も慌てたらしいわ。そうでなくても二機のISが控えていた。康太くんが人質にされていた以上、追撃は出来なかったでしょうね。それと、これが彼等の母艦よ。衛星写真だけど、何とか収められたわ」
ミーティングに使えるよう壁に設けられているモニター、そこに映し出されたのは一般的に思い浮かべる潜水艦とはかけ離れた姿だった。
船首に見えるのは四基の大型のハッチで、似たような物が甲板中央に三基、艦橋の左右に二基ずつ設けられていた。
その内、艦橋横のハッチではヘリが着艦しており、航空機を運用可能なタイプだと分かる。
しかしどう見ても潜水艦とは思えない形状は、どちらかと言えば宇宙船のように見えるものだった。
「こんなタイプは見た事も聞いた事もないわ。かなり大型で、形状も独特なのに捕捉出来ないなんて技術の差が大きいのが分かるわね……だから、現状では彼等の足取りは全くの手掛かりが無い状況って事になるわ」
その言葉に更に場の空気が重くなる、誰もが顔を伏せて口を閉ざしていたが、そこに場違いなまでに明るい声が聞こえてくる。
「いやあ、流石はこーくんが警戒するレベル、中々に歯応えのあるウイルスだったね。これを狙われてないとはいえ戦闘中に処理出来たくーちゃんも偉いよ、うん!」
それは全員のISを受け取って早々に自室に引き籠もっていた束だった。
その時は康太の救出の為に素早く戦力を回復させようとしていたのかと思っていたが、今の様子にそんな気配は微塵もない。
「姉さん、康太が捕まったというのに何も心配じゃないというのか!?」
だからこそ束の妹として、部下であり仲間でもある康太の事を何とも思っていないような態度に箒が声を荒げる。
しかし束は何故自分が怒られているのか理解していない様子だった。
「え〜、こーくんならその内大暴れして勝手に帰ってくるってば。それより何見てるの?潜水艦?ああ、これさっきこーくんが言ってたボズゴロフ級潜水空母だね。やっぱり宇宙船の方をベースにしてるから形もそんな感じなんだね」
「待て、今何と言った?いや、それ以前に、『さっき紫藤が言っていた』だと?」
その反論に更に声を荒らげようとした箒だが、発言内容に違和感を感じた千冬が先んじて訊ねた事により遮られ、加えて全員が同じ違和感に気付く。
「え?こーくんがコアネットワーク通じて写真付きでボズゴロフ級潜水空母を教えてくれたんだよ。魚雷と兼用のミサイル発射管を備えてるけど、武装自体は少ないってさ。ウチにはシージェガンとか居るし、深海で適当に穴開けたら水圧でぺしゃんこに出来ると思うよ」
『えぇっ!?』
それに対して束が何となしに返答するが、それはつまり康太の手元にはコアネットワークに接続可能なISが存在するという事であり、全員が驚愕の声を挙げる。
あまりの大声に束は耳を押さえて顔を顰める程であり、それを見て全員が多少は落ち着きを取り戻す。
「全くもう、こーくんが武装解除に置いたISは二つ、予備のフラッグとキャノンボール・ファストで使ってたリゼルの二機だけだよ。それに、今のこーくんが生きてる限りISを捨てるなんて出来る訳ないじゃん」
『あっ……』
それを聞いて思い出す、康太が地面に捨てていたのは予備機でもあるフラッグの待機形態である腕輪と、ドックタグだった。
これまでドックタグがジェガンの待機形態としての姿だったが、今の康太の愛機であるガンダムデルタカイはそもそも康太と融合し心臓の位置にあるのだ。
そこまで知らされているのはこの場に居る者達のみ、何も知らない者からすれば未だにドックタグこそガンダムデルタカイの待機形態だと思うだろう。
「そもそも、こーくんなら人質交換であの赤毛の子が解放された時点で機体展開して攻撃に移れたよ。そして今も逃げたりせずその場に留まってるのは何となく分かるでしょ?」
「成程、捕まったと見せ掛けて潜入している訳か」
「そういうこと!あと、教えなかったのはあの場で言ってたら隠せそうに無さそうだったからじゃない?皆の顔に出るかもしれないし、後は私もだけど学園側の人間を完全に信用してないんだろうね。少なくとも教員か生徒の何処かに一人二人はスパイが居るって思ってるし」
その説明に誰もが納得し、そして安堵した。
束が始めに言っていた言葉はただの事実であり、本当に全てが終われば康太は勝手に暴れて戻ってくるのだ。
なにしろ今度は人質はなく、周りは全て敵、容赦する必要もなく全ての火力を叩き付ける事が出来るという訳なのだから。
「まあ実際に暴れるってなったら迎えに行くよ。実は、建造中だったネェル・アーガマが完成したのです!向こうの度肝を抜くと同時に試験航行を行うから、皆いつでも動けるように準備しててね!大気圏離脱して、大気圏突入までやるよ!フッフッフッ、色々なテクノロジーを思う存分試せるねえ」
そして康太の動きと連動して動けるように束もまた準備を進めていた。
実際のところ、空路よりも重力や空気抵抗の存在しない宇宙の方が遥かに速度を出せる為、宇宙に出るというのは理に適っているのだが、全員の目には束が救出作戦に託けて取り敢えずやりたい事を全部やってやろうという思惑もあるように見えた。
それは間違いのない事実ではあるが、結果として康太の援護になるなら良いかと結論付けられた。
そんな中、束が持っていた端末から着信を知らせる通知音が鳴る、康太からの通信が入った事を知らせる音だ。
「丁度良くこーくんから連絡が入ったよ。何か伝えたい事があるのかな?」
そう言って束は端末を操作すると康太からの通信をモニターに映し出す、写真などではなく康太の視覚を直接送信してきていたのだ。
映し出された光景、そこはレストランかと見紛うばかりの内装が施された一室だった。
そこにはテーブルクロスの掛けられた長めのテーブルの上にパンやサラダ、ステーキにスープといった数々の料理が並べられており、康太が攫われた事とその対策を考える為にまともに食事を摂っていなかった全員が途端に空腹を覚える程だ。
加えて『A5ランク牛のサーロインステーキ』等と表示されている辺り、誘拐はしたが客人待遇で饗されているらしく、ひとまずは安心した、かと思えば『自白剤入りコンソメスープ』等と表示されている為に判断が付かない。
そして、康太の座る席の対面に立っているのはネロブリッツを運用していた『トランプ』の指揮官の女だろう。
黒のドレスに身を包み、武装こそしていないが胸元にはISの待機形態と思わしきネックレスがあり、側には赤い軍服のような物に身を包んだ女が控えているが、ロッソイージスのパイロットだろうか。
敵の指揮官との対談、だからこそ康太は通信を繋げてきたのだと理解し、全員がその様子に固唾をのむ。
『色々と立て込んでいたけど、お腹も空いたでしょうし食べながら話しましょう。改めてワタシは亡国機業戦闘部隊『トランプ』の指揮官、コードネームはジョーカーよ。歓迎するわ、紫藤康太クン』
『ジョーカーか。確かにトランプに於いては鬼札だが……一人がジョーカーなら、もう一枚のジョーカーはどう呼ぶんだ?』
『私のコードネームはハーレクインだ』
『……ジョーカーと並ぶと、別のキャラクターを思い出すな。綴り違うけど』
『あら、博識ね。部隊の中にはコミックスがモチーフと思ってる人間も居るのよね。モチーフはイタリア喜劇のキャラクターよ』
食前酒代わりのジンジャーエールを飲みつつ、康太はジョーカーと名乗った女と会話を行う。
そしてハーレクインと名乗った女の方に視線を移すと問い掛けた。
『ザフトの赤服を着てるのは?ザフトでも、ましてやコーディネーターでもないと思うんだが?』
『デザインが気に入った、趣味だ』
『そうか』
ザフト、コーディネーター、康太の口から何らかの固有名詞が飛び出し、それに対して亡国機業の二人もその意味が通じている様子だ。
それ等の固有名詞に対して何処かで聞いた覚えがあるが、しかし一夏達は思い出せなかった。
『ふふ、やっぱり知っているのね。ザフト、コーディネーター。単語とその意味はワタシ達も知っているわ。でも、細かくは知らない。是非教えてくれないかしら』
『あ、これ美味いな。ん、ザフトはコズミック・イラと呼ばれた時代に於いて存在したスペースコロニー群にして国家、『プラント』の政党並びに軍事組織の名前だ。で、そこの国民の殆どがコーディネーターと呼ばれる、遺伝子操作によって生まれた人間達だ』
『そのコーディネーターというのは、試験管ベビーなのかしら?』
『いや、受精卵に遺伝子操作を加える形だ。そうして生まれてきたのを第一世代と呼び、コーディネーター同士の子供を第二世代と呼んでいる。ただし、遺伝子操作の弊害から第三世代以降の出生率が極端に低くなっていて、婚姻統制が敷かれていた。早晩、国家として維持出来なくなるだろうな。そして、コーディネーターに対して遺伝子操作をしない従来の人間はナチュラルと呼称されている』
『そういう形だったのね、よく分かったわ。それと、そのコーディネーターっていうのはどれだけの超人なのかしら?』
『身体能力は下手なオリンピック選手を超えるし、頭脳も遥かに優れ、加えて病気に対して高い抵抗力を持っている。まあ、生まれたばかりから超人って訳じゃなくて、ちゃんと努力しないと才能は開花しないけどな。それと、単に生まれつき天才になれる素質があるって確定してるだけで、ナチュラルの天才には及ばない、なんて事もある。その時代、『乱れ桜』の異名を持つエースパイロットはナチュラルでありながら並のコーディネーターの反応速度を上回っていたそうだ』
コーディネーター、そしてコズミック・イラ、その辺りの単語を聞いてまずセシリアが思い出した、その言葉が何処で使われていたのかを。
「コズミック・イラ、確か以前シミュレーターで康太さんがフリーダムを使用した時のミッションがそんな時代ではありませんでしたか?」
「あっ、確かに!」
「いや、だがあれは架空の設定ではなかったのか?だが、そうなると、それを亡国機業が知っているというのは―――」
「まさか、康太って本当はこの世界の人間じゃなくて―――」
そんなセシリアの言葉で他の者達も合点がいく、そして康太の本当の出生を知らぬが故に深読みが始まっていく。
『そうなのね。因みに、貴方はコーディネーターなのかしら?』
『いや、違うぞ。定義としては生まれはナチュラルだ。あとコズミック・イラ生まれって訳でもない』
しかしそれは直ぐに康太の口から否定される、だが康太の謎自体は残ったままだ。
『そう、違うのね。なら別の質問も良いかしら?』
『その前にオレからも質問だ。色々と答えたんだ、構わないだろう?』
『そうね。確かにフェアじゃないわ。機密もあるけど、可能な限り答えるわよ。何が聞きたいのかしら?』
『亡国機業の最終的な目的だ。各国からISコアを奪う、今回の様に人を拉致する、色々とやっている様だが、それ等は手段であって目的じゃない。世界征服だなんて子供みたいな目的じゃないだろう?』
だが康太からの質問はそれに匹敵する程の謎であった。
それに対してジョーカーは笑みを浮かべる。
『そうね、本当のところは世界征服を狙ってる人間も居るみたいよ。けど、少なくともワタシは別ね。時に、亡国機業がいつから存在しているかはご存知かしら?』
『第二次世界大戦の後から存在が知られるようになったという噂だけは』
『それは紛れもない真実よ。亡国機業は第二次世界大戦後、主に米国が中心になって生まれたわ。その理由は核よ。広島、長崎に投下された二発の原子爆弾、それが戦争を終わらせたけど当時の人達の中にはその力が自国に向けられる事を恐れ人達が居たの。いえ、大なり小なり全ての人がその力を危惧したでしょうね。その中でも強く恐れた、それなりの力を持っていた人達が中心となって設立されたのが亡国機業の母体となった組織よ。軍人、政治家、資本家、取り敢えず垣根を超えてアメリカに核の脅威が降り掛からないようにする組織だったのだけど、世界はそう単純じゃないわ』
『東西冷戦、相互破壊確証による睨み合いの時代か』
『その通り。核兵器は当時のソ連も持つようになった事でアメリカだけの物じゃなくなった。何かの拍子に小さな火種が核戦争の引き金になりかねない時代よ。特にキューバ危機ね』
『世界が核戦争一歩手前まで進んだ事件か』
『そう。当然、当時の人々は戦慄した。けど水面下で様々な動きをしている中、彼等はソ連にも似たような組織がある事を知った。その組織と協力し、なんとかキューバ危機は乗り越えられたわ。そして、二つの組織は同盟関係を結び、その後も似たような組織が合わさって、それが今の亡国機業という存在に変わったわ』
『成程、つまりISをかき集めているのは白騎士事件の影響か』
『その通りよ。ワタシ達の目的は核戦争を未然に防ぐ事。その為にもあれだけのミサイルを迎撃してみせたISは何としてでも集める必要があったの』
語られた内容は真実かどうかは分からない、だがジョーカーの語り口は熱を持ち、真剣にその事を目指しているのだと感じられるものであった。
そして、だからこそISを強奪している理由にも納得がいく、白騎士事件によって放たれた二千を超えるミサイルを一基残らず破壊してみせたISの力は亡国機業にとって希望に見えただろう。
『けど、最近は少し違って来たのよね。ISを集めて、貴方と同じようにテクノロジーを回収して、少し亡国機業は力を付け過ぎたかもしれないわ。力で世界をコントロールする事で核戦争を無くす、そんな主張をする過激派の数が増えてきたのよ』
『核の力を知らない世代の台頭、時代が移り変わった事で組織の腐敗も始まったか。まあ元より権力者が作った組織だからな、世界を支配して戦争を無くすのは良いが、その後は世界を自分達の好きなように書き換えるつもりか』
『そのつもりなのでしょうね。しかも中心になっているのは女尊男卑の思想に侵されたISパイロット中心なのよ。本当に頭の痛い話だわ』
だが問題を抱えていない訳ではないらしい、ジョーカーは額に手を当てて思い悩んでいるような仕草を見せたが、そのまま視線を康太に移すと、本命と思われる言葉を切り出した。
『だからワタシ達と組まないかしら?紫藤康太クン』
◆キャラクター紹介◆
ジョーカー……亡国機業『トランプ』の指揮官の女性、ネロブリッツのパイロット。スコールに負けず劣らずの美貌を持つ赤毛の女性。必要とあれば手段を選ばない冷徹な判断を下す事も出来る。現在の亡国機業の姿勢に対して思うところがあるらしい。スコールとは敵ではないが部隊の予算の取り合いで険悪な時もあるが基本的に悪友に近い。撃破されたスコールを煽ってはいたが、割りといつもの事であるし、ちゃんと回収はしている。なお、容姿はアストレイシリーズのプロフェッサーに近い、かもしれない。
ハーレクイン……ジョーカーの副官、ロッソイージスのパイロット。パイロットとしての技量はジョーカーより上だが、組織よりジョーカーに忠誠を誓っている。手に入れたデータの中にあったザフトの制服を気に入り、赤服を着用している。冷静沈着で寡黙な性格だが、日常生活に於いては天然な部分もある。黒髪を後ろで束ねており、赤服も相まってシホ・ハーネンフースのように見える。コードネームの由来はイタリア喜劇の登場人物から、決してハーレイ・クインではない。