水星の魔女が始まって、12月予定だった筈のオルフェンズGもサービス開始。
はい、すみません、モチベーションが中々上がらず、遅くなりました。
息抜きに他の小説書こうとしても上手くいかず、半ばで放置してる書きかけの原稿が幾つか溜まったりもしてます。
次回こそは早めの更新を心掛けますので、今後ともよろしくお願いいたします。
なお、IS世界は2022年の設定らしいので、コウタくんは水星の魔女やオルフェンズGの詳細を知りません。
いつかそこに出るガンダムやモビルアーマーを出して驚愕させてやりたいですね、取り敢えず今週末からオルフェンズG始めてみます。
さて、オレが亡国機業に捕まってから一週間が経過した、流石にそれだけの時間があれば亡国機業の基地に辿り着くのに十分すぎるほどだ。
その間、オレが何をしていたかといえば、ISを介して篠ノ之博士に現状報告をしたり、マドカと様々なことで競ったり、部屋の中で適当な物を楽器代わりにして歌っていたり、色々だ。
そんな中で基地に着いてから一つの自由が与えられた、仕事とも言えるがオレの中では殆ど趣味と変わらない内容だ。
「これは?」
「ワタシ達の派閥とスコール達の派閥が保有する機体データよ。ワタシ達はこれをギフトと呼んでいるけど、要は貴方が知る世界の技術ね」
「ほほーう」
与えられた部屋の中にはやけに性能の良さそうなPCが置かれており、それまで殺風景な部屋だったのに比べて目立っていた。
加えてそれがガンダム世界の技術、オレ達が漂流物と呼んでいるそれだとなると興味は尽きない。
「それで、オレにどうしろと?」
「貴方の好きなように研究して貰って構わないわ。勿論、その内容は共有させて貰うけど、ワタシ達の機体データを見せるのはせめてもの誠意ね」
「普通は拉致してきた相手に協力なんてしないだろう。まあ、オレは普通じゃないけど」
むしろ興味津々だ、危険過ぎる代物には手を出すつもりはないが、多少は研究してもいいだろう。
そんな訳でしばらくの間、オレは亡国機業の技術開発に少しだけ協力することにした、ファイルが二つあり、片方にはトランプと、もう片方にはモノクローム・アバターとあり、それぞれの派閥という事らしい。
ざっと眺めてみると、トランプの方はSEEDに於ける連合側の機体が揃っており、モノクローム・アバターの方は連合、ザフトの機体が幾らか揃っているような状態だ。
恐らくだが過激派とやらはザフトの機体データを持っているのだろう、更に細かく見ていけばデータは虫食い状態らしく、根本的な部分で機体のコンセプトが分からないという状態のようだ。
例えばフォビドゥンのデータがあったが、ゲシュマイディッヒ・パンツァーの記述が見当たらない為に、そのままだとビームを曲げるという一番の特徴が無くなってしまう。
具体的な研究開発は後回しにするとしても、この辺りの情報が抜けているのは喉に魚の小骨が引っ掛かったような気分だ、取り敢えず先に研究しているらしい技術者が書き込んでいるメモがあったから、そこにゲシュマイディッヒ・パンツァーの大まかな概要を書き込んでおいた。
そうして色々と夢中になってデータを漁っていると、チャットらしきものが表示された。
どうやらメモに書き込んだのを見た技術者のようだ、色々と質問がされるのに答えていく。
そもそもどのような機能を持つ機体なのか分からなかった為、そのコンセプトが分かったことで研究開発が進みそうだということだ。
ついでに何か情報を得られないかチャットを続けていく、加えてそれらの情報は全てオレの心臓のISを通じて篠ノ之博士の元へと送られている、こっそりとコピーした機体データを含めて全てだ。
データの中にはサイクロプスなんて物騒な代物のデータもあったが、それも本来ならば月面での採掘用の機材だ、活用出来るだろうからそれも送らないとな。
それと、ついでにゲシュマイディッヒ・パンツァーの研究はしておきたい、今思いついたのだが、海底都市を建造してみるということを思い付いたのだ。
今の宇宙飛行士は宇宙服を着込んでプールで無重力空間に対する訓練を行ったりする、勿論地球の重力の影響はあるが、少しでも無重力空間に近付けるためだ。
そしてオレが海底都市の建造を思い付いたのは、そこでのデータは必ず宇宙開発に必要なデータを得ることが出来ると思ったからである。
例えば海底都市だけで酸素や水の循環システムを作ることが出来れば、それはそのまま宇宙で月面都市やスペースコロニーを建造する際に応用が利く、加えて地球上に建造する為、有事の際に宇宙に比べて素早い対処が可能となる利点もある。
その建造にはISやMSを使えばいい、そのノウハウは先程も述べたように宇宙開発にも応用出来るからだ。
しかし水圧という難点があり、既存の水陸両用MSはそのまま装甲だけで耐えきることで対処している。
そこにゲシュマイディッヒ・パンツァーを利用すればフォビドゥンブルーのようにより深くまで潜ることも出来る、エネルギー切れに関しては船から有線ケーブルでの電力供給を行えば解決だ。
オレの研究対象ではないが深海に関する研究をしている人達にも有用だろう、建造した海底都市はそのまま研究機関として利用しても良い。
うん、そんな訳で長々と述べたが目の前にエサが置かれているからといって、決してガンダム作りたい欲が出た訳ではないぞ、これは今後のラビットフット社の活動にも有用と言える研究なんだ、使う使わないはともかくとして、ラビットフット社の予算は全く使わずに研究開発が出来るからなのだ。
技術的な目新しさのないカラミティやレイダーより研究対象としては適切だし、別の技術に繋がるかもしれないからな。
というよりも、オレがこの場を離れるとなったら研究データは全て削除するからな、恐らくだがこの基地も大きな被害を受けることになる筈だ、だから問題ないだろう。
よし、取り敢えずはミラージュコロイドを応用したビームサーベルの磁場固定技術から調べてみるとするか。
◆
「それで、彼の様子はどうかしら?」
康太が研究に入ってから更に数日、ジョーカーはスコールと対面していた。
互いに別の派閥の長であり、同時期に活動を始めたこともありライバルのような関係ではあるが、それでも過激派よりは話も通じるということでこうして顔を合わせての情報交換などは行っていた。
まずは過激派の動きに関して互いに把握していることを共有し、そのあとでスコールの方からジョーカーに訊ねたのは康太の現状に関してだ。
今は研究に取り組んでいるとマドカを通じて把握しているが、具体的にどの程度まで研究が進んでいるのか気になったのだ。
「それに関しては順調といったところね。パイロットではあるけど、技術者としても中々に優秀だわ。その機体を知っていたというアドバンテージがあっても行き詰まっていた機体データの解析と研究開発が驚くほどに進んでいるもの。既に実証実験の段階に入っているわ。とはいえ進行状況を聞く限り、既に殆ど完成したと言ってもいいわね」
「そう。此方のデータには手を付けていないみたいね」
「そもそも研究対象としてあまり魅力を感じていないといったところね。今の実証実験も別の機体に繋げる為の試験らしいわ」
そんな二人の視線の先には分厚い防弾ガラスの向こうに居る康太の姿だ、フォビドゥンのシールドを模した装置が一枚だけアームに固定されており、そこに有線で繋いだ端末で作業を行っている。
「ところで彼の後ろにある機体は何かしら?」
「今回の実証実験では実際にビームを撃つ必要があるのだけど、流石にISを渡すわけにはいかないからザクをあげたのよ。そうしたら片手間に改造してたわ」
「データで見たグフ・イグナイテッドに似てるわね。けどバックパックからして違うし、武装も左腕に集中しているように見えるから別の機体かしら?」
「本人もグフ・カスタムって呼んでいたわ。恐らく、専用のカスタム機か装甲の形状が違うことから別の機体なのでしょうね」
そんな作業中の康太だが、その背後には一機のMSの姿があった。
その正体はジョーカーの言う通り、与えられたザクをベースに康太なりに改造を施したグフ・カスタムだった。
原型機と違うのは実験の為にビーム兵器の使用が可能な点であり、その為に左腕のガトリングガンもビーム仕様に変更されていた。
何故ザク・ウォーリアからのグフ・イグナイテッドではないのかといえば、その時の康太の気分の問題でしかない。
そして中身の方は康太の動きに可能な限り追随できるよう駆動系を強化されており、MS同士に限るが原型機同様に近接戦闘では無類の強さを発揮する機体となっていた。
そんなグフに、全ての準備を整えた康太は乗り込んでいく。
機体を立ち上げると近くに立て掛けていたザク・ウォーリア用のビーム突撃銃を持つと固定されたシールドへとビームを放っていく。
それらのビームはシールドの表面で屈折し、その後方へと逸れていくことでシールドは全くの無傷であった。
同じく左腕のガトリングガンも試すが細切れに放たれるビームは先程と同様に後方へと逸れていき、完全にゲシュマイディッヒ・パンツァーが機能している事が確認できた。
「成功ね。あとは技術は出来たのだから、次は攻撃に転用するだけだわ」
その結果を見てジョーカーは満足そうに頷いた、フォビドゥンのゲシュマイディッヒ・パンツァーは攻撃として誘導プラズマ砲フレスベルグがあり、一度しか曲げられないがビームの直進するという性質から射線を読まれにくいという利点がある。
現時点でビーム兵器はジェガンをはじめとして広く配備されるようになり、対ビーム処理を施したシールドなどで防ぐか、もしくは銃口の向きから射線を読んで回避するしかない。
その対処法を潰せるのだから、この兵装がどれだけのアドバンテージを獲られるか、ジョーカーは頭の中で戦術を構築していた。
だがそんな思考を直ぐに塗り替えるような出来事が起きた、康太の居る試験場の隔壁が一部開き、その中から一機のISが現れたからだ。
現れた機体は打鉄だ、広く普及しているだけに亡国機業でも扱っているが、そのパイロットを見てジョーカーは一気に表情を険しくさせる、打鉄を駆るのは過激派に所属する人物だったからだ。
「そこの貴方、今は大事な試験の真っ最中よ。訓練がしたいなら他へ行きなさい」
それでも怒気を抑えつつジョーカーは打鉄のパイロットへと告げる、だが言葉はなく、嘲るような笑みと共に中指を立てるというジェスチャーが返ってくるのみだった。
「このっ……!ハーレクイン、直ぐに第二試験場へ向かって。過激派の連中が彼を奪いに来たわ」
それを見て一瞬血が登りかけたが、直ぐに通信を信頼できる副官に繋ぐと指示を出す、過激派が何をしに来たのか、それは康太の身柄を押さえ、次は自分達の持つ技術の研究をさせようという魂胆なのだろう。
だがそれを許すわけにはいかない、だからこそ実力行使を行ってでも阻止する必要があった。
しかしハーレクインからの副官は予想を裏切るものであった。
「すまないジョーカー、直ぐに動けそうもない。向こうのエースが私を足止めに来ている」
「なっ!?」
その頃、ハーレクインを行かせない為に過激派きってのエースが別の場所で彼女と対峙していた。
基地内での私闘は御法度であり、訓練施設以外でのISの展開など行わないという暗黙の了解がある中での強硬手段に、いよいよ過激派は自重しなくなったかとジョーカーは察した。
現に基地内の通路ではハーレクインの行く手を遮るように一機のISが展開しており、ハーレクインもまた対抗して愛機であるロッソイージスを展開している。
二機のISは原点となる世界で開発元が違う勢力の機体だ、だがその姿は何処か似通った部分を感じさせるものであった。
それはそもそものベースとなった機体が同一だからであり、もしも康太がその機体を見たのであればその対決を興奮した様子で眺めていただろう。
過激派のエースが操るダークグレーの装甲色を持つ機体、その名をプロトセイバーと言った。
◆
さて、暇すぎたのと趣味を満足させる為に軽く研究を進めていた訳だが、見知らぬISとそのパイロットが唐突に現れた辺り、とうとう過激派とやらが仕掛けに来たのかね?
対立派閥のジョーカーは役に立たなそうだし、この場は自力で切り抜けるのが正解か、幸いにもオレが趣味で改造したグフ・カスタムに搭乗しているタイミングで助かった、乗り込むにも少なからず隙きが出来るからな。
相手はジョーカーの方を挑発するとオレに向き直る、打鉄の代名詞とも言うべき日本刀型のブレードたる『葵』を突き付けながら。
「さあ、此方に来てもらうわよ特異点。言っておくけど拒否権なんて無いわ」
そして一方的に要求を述べるが、それに従う道理はない。
オレを拉致するという形になったジョーカー達ですら礼儀は尽くしてきたのだ、データ欲しさもあったとはいえ、こうして研究はしているようにな。
だから返答は決まっている、左腕にマウントしているシールドからヒートソードを引き抜き、一言だけ告げる。
「断る」
「そう、だったら手足の一本くらい覚悟しなさい!」
その答えにむしろ望んでいたとばかりにブレードを構えスラスターを噴かせる打鉄、斜めから袈裟斬りにしようとするのが見て取れた。
最高速度はやはりISの方が上、色々といじったグフ・カスタムだがグフ・イグナイテッドに似たバックパックを取り外して軽量化した代わりに瞬発力の高いロケットモーターを搭載したバックパックを付けている。
それは燃料を大量消費する代わりに爆発的な加速を得られる装備だ、今の状態では役に立たない。
あっという間に距離を詰めてくる打鉄、構えの通り斜め上段からの袈裟斬りが来るが、オレは前に倒れ込むようにしてその一撃を回避する。
「なっ!?」
「ふんっ!!」
だがそんな攻撃は織斑教諭の太刀筋に比べれば天と地ほどの差がある、ISのパワーの使い方が下手くそ過ぎだ、本当に上手い使い手であれば全身の駆動系を連動させてスペック以上の斬撃を叩き出すことも可能だ。
そして避けられるなんて想像もしていなかったのだろう、一瞬呆けた顔をしていた打鉄のパイロットに対して飛び上がると同時にバックパックのロケットモーターを起動、肩部スパイクで相手の顎を打ち上げるようにタックルをお見舞いする。
「ッ!?」
流石に装甲の無い生身の部分とはいえ絶対防御によって防がれる、だが下からかち上げられた勢いは殺す事が出来ず、大きく後ろに仰け反る形になった。
「そこっ!」
そしてそんな大きな隙を逃すわけにはいかない、仰向けに倒れる形となった打鉄の脚をヒートソードで斬りつけ、その装甲を抜く。
更には追撃として今の切断面に向けてヒートロッドを射出、電流を流して内部の電気回路を破壊していく。
普段は装甲などで防護されているが、直に電流を流すというのは想定外なのだろう、立ち上がろうとした打鉄の脚は全く動作せず、パワーアシストの切れた状態では生身の人間が機体を動かすのは厳しい。
その隙にもう一度ロケットモーターで移動、背後に回ってカスタム・ウィングも斬りつけ飛行能力を奪う。
ISの厄介な点、機動力さえ奪ってしまえばそこまで脅威にはならない、被弾にさえ気をつければ良いのだから。
そして両腕もヒートソードで切断し、同じくヒートロッドでショートさせてしまえば身動きのとれなくなったISの出来上がりだ、ISコアは流石に篠ノ之博士謹製だけあってヒートロッドの電流くらいではビクともしないが、周辺機器はあくまで工業製品だ、幾らでも突ける点はある。
屋内という戦場、パイロットの練度、機体に対する理解度、様々な要因が噛み合いながら起きたのは一対一という状況でMSがISを撃破するという結果だ。
「さて、このままISコアを強奪して基地から離脱、でも良いわけだが―――」
もう少し潜入できないか粘ってみるか、いざという時にはデルタカイを起動するだけだが、それだけに何処まで欲張ろうかと悩ましい。
ここで見たのは亡国機業の一派閥のことだけに過ぎない、可能ならば別の派閥の様子も見て多角的に見定めたいところではある。
いっそのこと強行偵察としてこのまま軽く押し掛けてみるか、そう考えたところで機体のカメラを入口に向ける。
移動の為ではなく、新たな気配を感じ取ったからだ。
「ロングダガーとデュエルダガー?」
感じたのは二つの気配、それらが同じように室内に入ってきて、纏っている機体を見るとカラーリングこそ違うが同一の構成の機体だった。
コーディネーター用のロングダガーと、ナチュラル用のデュエルダガー、名前こそ違うが基本的な能力は同一の二機が並んでいたのだ。
「紫藤康太、我々は貴方を連れてくるように命令を受けている。共に来て貰いたい」
「断ると言ったら?」
「無理矢理にでもと言われている。しかしそれを為すことは本意ではない。そして、そちらも我々と戦闘を行うには万全とは言えない筈だ」
先程のISパイロットと違って平坦な声ながらも理性的な内容だ、最初からこんな態度なら偵察も兼ねてついて行くこと一択だったんだがな。
とはいえ中性的な声だ、乗ってる機体もだが話し方を聞いているとどうしても関連付けずにはいられない。
「良いだろう、機体から降りる。とはいえ一つだけ要望がある。顔を見せて欲しい、流石に相手の顔が見えないというのは不信感がある」
「それで貴方が納得するのなら。ただし機体を降りるのは私だけです」
「それでいい」
機体を降りたとはいえ何かしないとは限らない、だからこそ一人は顔を見せるがもう一人は機体に乗ったまま備える、しかし誠意を見せるならそれには応える、向こうが機体を降りるのと同時にオレもグフ・カスタムから降りる。
そして実際に見たその顔にオレはやっぱりかという思いを抱く、中性的であり無表情なその顔は見たことがあるからだ。
「ああ、なるほど。これで見極めることが一つ増えたな」
機体もその繋がりなのだろう、顕になったその顔はソキウスと呼ばれた者達と酷似していたのだから。
◆
「それで、お前達の名前は?」
「僕はナインと呼ばれている。彼はファイブだ。姓を聞きたいのであれば、全員がソキウスと呼ばれているよ」
「やっぱりソキウスシリーズか」
その後、機体はその場に放置して、オレは一応ということでハンドカフによって両手を前に拘束された上で前後をソキウスに囲まれたまま通路を進んでいた。
既に二人はロングダガーに乗り込んでいる為、傍目から見れば今の状況で逃げ出すことなんか出来ない。
勿論、最終手段としてISを展開して逃げることは可能だが、やはり情報収集は必要だ。
「僕たちのことを知っているのか?」
「ナチュラルに従うように作られた調整された戦闘用コーディネーター、服従遺伝子を持ちマインドコントロールによって制御下に置かれている。そう言われて、どんな気分だ?」
「別に。だけどナチュラルに従うように、という命令は僕たちにはない。きっと、元になった存在は貴方の言うような存在だったのかもしれない」
「何?」
「僕たちは試験管の中で生まれてきたんだ。急速に成長させ、一般的な知識を機械で書き込んで生産された兵士。そして今はあの方に従うように命令されている」
「あの方ってのは?」
「革新派のトップにして、これから貴方に会って貰う方だ」
ソキウスだがナチュラルへの服従ではなく、個人への服従か、出来なくはないのかもしれないが、それはつまりソキウスのような戦闘用コーディネーターを生み出す技術を保有しているということだ。
そしてそれに伴うマインドコントロールの技術も保有している、天才的な素質と絶対の忠誠心を持った兵士を量産可能とか厄介なことこの上ないぞ。
だがそうしている内に着いたらしい、扉が開かれ中へ案内されると、まず正面には豪奢な椅子に座り高い位置から見下ろしている女の姿があった。
それはまるで王が座る玉座のようで、自分こそが支配者だと主張しているようだ。
「来たか、紫藤康太よ。私が亡国機業、改革派を率いているレッド・クイーンだ。クイーンと呼ぶがいい」
そしてその女は自らを赤の女王と名乗った、よく見れば玉座の背もたれはチェスのクイーンを模しているようにも見える。
「それで、女王様はオレに何の用があるので?」
「うむ、単刀直入に言おう。我が軍門に降れ、紫藤康太」
「そっちもスカウトって事か?それにしては手荒な勧誘だったが」
思い出すのはさっきのパイロットだ、一方的に上から目線で要求するだけ、そして目の前のコイツも大して変わりはしない、それでも多少は接触を行う。
「我々改革派の目的は力による管理だ。分かるだろう、圧倒的な性能を持つISはその保有数によって簡単に国家間のパワーバランスを左右することが出来る、そして多くても一国に二十のISしか存在しない。だが我々が少なくとも全体の過半数のISを持つことが出来れば、それは国どころか世界でさえも凌駕する力となる。そうして他国のISを奪い、その殆どを手中に収めることが出来れば対抗勢力など存在しなくなる。反乱を起こそうとも、勝てぬと分かっていれば反乱など起きようがない。そうすることで世界は真に統一され、平和な世界を実現することが出来るのだ」
語られた内容は、ISという力による統治だ、抵抗が無意味としればそもそも争いは起こらない、そうかもしれないが、その程度で止まるなら戦争など存在しないのも確かだ。
「無理だろう、ISは単体の兵器として見れば確かに強いが、それだけで世界がひっくり返ることなんて有り得ないことだ」
例えISを倒せずとも、兵站を狙う手もある、碌な整備も補給も無しに戦えるなんてことは幾らISでも不可能だ。
「だからこそお前を誘っているのだ。あの天災は殆ど表に出ないが、お前は違う。そしてお前には天災との繋がりがある。お前達が我々に協力してくれるなら、この統治は盤石なものとなる。その技術力、生産力、何よりISコアの製造技術があればな!」
そういうクイーンの言葉は確かに正しいだろう、オレ達は独自の生産拠点を保有し、更にはISさえも増やせるのだ、もしも一国に肩入れすれば、あっという間に軍事力のバランスは壊れてしまう。
だからこそオレ達は戦力として何処かに加担する気はない、そんな事よりも早く宇宙に出たいからだ。
なので返答は最初から決まっている。
「断る」
「そうか。ならば、力尽くで従わせてやろう!」
当然ながら受け入れる気はない、その答えにクイーンは玉座から立ち上がるとISを展開、右腕の巨大な爪で切り裂こうと突っ込んでくる。
コイツ等自分の思い通りにならないなら武力行使って短絡的すぎるだろう、ちょっとは交渉って言葉を知らないのか。
取り敢えず初撃は地面を蹴って横っ飛びに避ける、それに対して向こうはオレに反撃手段が無いと思ってるのか、余裕綽々といった様子でゆっくりと此方を向く。
「流石に避けるか。だが何処まで続くかな?」
改めてクイーンの駆るISを見る、名前の通り赤い装甲を持ち、右腕には盾と一体化しているクロー状の武装、何よりラビットフット社にて現在はストライカーパックの試験用として作ってあるだけに見間違いようもない機体。
「テスタメント……」
別にウチの格納庫から奪取されたとかではないだろう、どうにも亡国機業はSEED系の機体を多く保有しているらしいし、単純に被っただけだな。
原作でもテスタメントは二機存在したし、ある意味では運命とも言えるのだろう、まあ中身まで同じとは限らないけどな。
「知っていたのか。とはいえ感謝するぞ、お前達のがストライク・ラファールとやらを開発してくれたお陰でこの機体の優位性は飛躍的に高まったのだからな」
確かに戦場でストライカーパックを使う機体が増えれば、同じストライカーパックを使うテスタメントは装備を奪って活動時間の延長などの戦術の幅が広がる。
それは確かにクイーンにとって好都合だっただろう。
とはいえ、いい加減にこの茶番にも飽きてきたな。
「今後とも、同じように私の為に働くがいい、紫藤康太」
「お前の為に作った訳じゃない、それはシャルロットたちの為のものだ。そして、何度でも言うがお前に従うつもりは毛頭ない」
「ならば心変わりするまで痛めつけてやろう。それでも従わぬというなら、脅威の芽は摘ませてもらうとしようか!」
再び向かってくるクイーン、今度は逃がすつもりもないのだろう、右腕のクローと、左側からディバインストライカーを変形させたクローで挟み込もうとしてくる、だがもう避ける必要もない。
「なっ!?」
即座に心臓のISコアからデルタカイを呼び出し、身に纏う。
向こうはオレがISを持っているなど予想もつかなかったのだろう、動揺して動きが止まった瞬間を見てビームサーベルを両手に握り、それぞれのクローに対して斬りつける。
それによって武装に損傷を受けたテスタメント、思わず後ずさるが、そこを逃さず左腕のシールドに武装を呼び出し、先端部分で相手の腹部に打突を見舞う。
「持ってけ!」
加えてシールドに呼び出した炸裂ボルトによって爆発による追加ダメージも与えておくのも忘れない、それによりテスタメントは打突と爆発で大きく後方へと吹き飛んでいった。
「クイーン様!」
そして、主人が傷つけられた事でソキウス達も前に出てくる、だが機体はMSであり、パイロットがコーディネーターだとしても苦戦のしようもない相手だ。
「さて、これまでの分、しっかりと利子つけて返して貰うとしようか」
具体的には格納庫に行こう、オレの予備機のジェガン・サーガとフラッグ、それとキャノンボール・ファストで使ってたリゼルの回収もしないとだからな。
そして、お前達の持っているガンダムやら何やら、根こそぎ奪わせて貰おうか!