ジェガン、IS世界に立つ!!   作:RABE

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いつもより短めですが、キリがいいので投稿。

書きたかったシーンだと筆の進みが違いますね、やっぱり。


76話 脱出

康太が脱走を始めた頃、亡国機業の基地は混沌の坩堝と化していた。

 

康太を確保しようと保守派と過激派が小競り合いを始めた中で、康太が脱走の為に様々な工作を始めたからである。

 

「第三防壁突破されました!ハッキング止まりません!」

 

「馬鹿な、我々のメインフレームは量子コンピューターなのだぞ!?電子戦特化のISでもこのような短時間で突破できる訳がない!」

 

その中でも警備部隊は眼の前の現実に打ちのめされていた、漂流物の理論を基に組み上げられた量子コンピューターはそれまでの常識を打ち破り、圧倒的な演算能力によって各国のセキュリティを無力化してきた。

 

だがそんな実績を誇る量子コンピューターが今、破られようとしていた。

 

演算能力は相手の方が上手であり、それだけでなく演算能力の差によって既に半分以上の障壁が突破されている。

 

そして残った障壁もまた、今破られた。

 

「掌握完了。全データの吸い出しを開始。お、あったあった。一番これが欲しかったんだよな」

 

そんな中、基地内の監視カメラを破壊し、そこから警備システムに侵入者した康太は目当てのデータを確認してほくそ笑む。

 

ISを通して康太が見ていたもの、それは基地の見取り図だった。

 

「研究データはそれぞれの実験場付近にあるとして、二箇所あるのは保守派と過激派で別れてるからか。オレの機体とかは格納庫か?まあ、全部回るだけだが」

 

量子コンピューターは既存のスーパーコンピューターが数十年掛かりで計算するような物を数秒で計算してしまえる次世代型コンピューターである。

 

コズミック・イラの世界ではこのコンピューターが一般的となっており、それらの技術を利用した亡国機業も保有している。

 

これによって電子戦では無類の強さを誇った亡国機業だったが、康太がバックアップを受けたのは第5世代量子コンピューターと呼ばれるヴェーダだ、根本的な能力が違い過ぎた。

 

既に警備システムは掌握した、亡国機業は基地内の監視カメラを確認することも出来ず、既に康太の現在位置を見失っている。

 

その上で未だに保守派と過激派の内部抗争は続いている、単騎で動くには丁度いい状況であった。

 

「んじゃ、一番近いのは第二研究室だな。お宝、あると良いけどなあ」

 

そう言って康太はデルタカイで移動を開始する、天井近くに張り付くように停まっていた為、時たま亡国機業の構成員が通り過ぎても混乱が続く基地内では見落とされていたのだ。

 

そして今もまた人知れず動き始めた康太を阻む者は周囲には誰も居ないのだった。

 

 

「ガフッ!?……クッ、あの男め……よくも私の機体を……!」

 

その頃、過激派トップであるクイーンは痛みを訴える身体を押さえながら移動していた。

 

康太との交戦に入った後、ソキウスが先に仕掛けるも結局はMSでしかないダガーでは相手にならず、武装を全て破壊するという手加減を加えた上で無力化された。

 

そして体勢を整えたクイーンに至ってはISの絶対防御があるからと一切の手加減なしに攻撃が加えられ、その機体は既に大破した上でISコアまで回収されてしまったのだった。

 

力の象徴であるISを失った今、彼女の頭にあるのは自己保身だ。

 

過激派といえども権力闘争はある、むしろ誰もが隙あらば周りを蹴落としてでも自分の地位を上げようとしているだけに他の派閥よりも激しいと言えた。

 

彼女等の中にあるのは自分が権力を握ることだけであり、同じ派閥の人間は仲間ではなく、目的は共通しているが、いずれは出し抜くことになる相手という、潜在的な敵という認識だけである。

 

だからこそISを失ったクイーンは既に後がなかった、このままでは直ぐに他の過激派の人間に引き摺り下ろされてしまうのは明白だった。

 

「終われない……私はまだ、終われないのよ……!」

 

そうして彼女は最後の手段を取ることにした、自身の部屋から続く隠し通路を使って基地の地下深くへと移動していった。

 

「これこそが最強の力……あの男が論文を出してまで警戒する程の、圧倒的な力なら……!」

 

それは地下に封印されていた、危険性を他ならぬ康太によって指摘され、不用意に動かすべきではないと亡国機業でも認めたが為に。

 

しかしその封印がクイーンの手によって解かれた、彼女は悪魔と契約したのだ、どうせ自分には破滅しか無いのなら、全てを道連れにするという邪気に満ちた心で。

 

 

混乱続く基地内であっても重要区画は命と引き換えにしてでも守らなければならない場所である。

 

例えば発電設備、此処が落とされれば使用可能な防衛設備も制限されてしまう。

 

そして研究施設も重要な場所だ、技術力によるアドバンテージは戦闘に於いて勝敗に直結する分野である、特に国家と比べて地力に差が出る亡国機業では少数精鋭を極めるしかなかったとも言える。

 

だからこそ機密情報も多い研究施設には常に警備がついている、しかし二機もISをつけたとしても、それ以上の戦力が相手ではどうすることも出来なかった。

 

「あああああッ!?」

 

「二つ!」

 

研究施設を守っていたのはラファール・リヴァイヴとジェガン・ライトアーマーの二機であった。

 

どちらも広く普及している機体だが、デルタカイを駆る康太を相手にするには力不足だった。

 

康太の姿を見つけるや即座に射撃を行った判断は良いが、リヴァイヴの実弾兵器ではデルタカイのマイクロハニカム装甲を貫けず、販売用として荷電粒子仕様のビームライフルを持つジェガン・ライトアーマーの攻撃は点でしかない為に回避される結果に終わる。

 

そんな射撃を掻い潜って接近した康太はシールドに懸架したままビームサーベルを発振し、二本の光刃がリヴァイヴを切り裂く。

 

距離が詰まったことでジェガン・ライトアーマーもまたビームサーベルで応戦しようとするが、斬り結ばれた互いの光刃は、しかし一瞬の拮抗の後、ビームサーベルごとジェガンが斬り裂かれた。

 

「ば、かな……」

 

「これで三つ!」

 

理由は簡単なことだ、ラビットフット社に関連する機体のビーム兵器は康太達が使用する機体と販売用の機体とでは使用する粒子が違うのだ。

 

ラビットフット社の機体はミノフスキー粒子を使用するが、販売用の物は荷電粒子を使用する、共に刀身の生成にはIフィールドを使用しているが、出力の差によってジェガン側が押し負けた結果となる。

 

同じ粒子を使っていたなら鍔迫り合いになったであろうが、その差によってクロスボーンガンダムのビームザンバーと同様の現象が生じたのであり、当然そのことを知っていた康太はこれを狙ったのだ。

 

残るのは機体の中枢を破壊されて擱座した二機のISのみであり、その両方からISコアの回収も行った康太はパイロットはその場に放置し、目的であった第二研究室に侵入する。

 

中にはISの研究開発を行っていた技術者が詰めており、また少数ながら居た警備兵も康太の姿を見ると手に持ったライフルを構える。

 

しかしその程度の火力ではISに有効打とならず、逆にデルタカイの頭部バルカンによる短連射によってライフルのみ破壊されてしまう。

 

「ほら、さっさと逃げるなら命だけは保証するぞ。それ以降は手加減する気もないがな。三分待とう、賢明なる判断を期待する」

 

とはいえ康太も好きで虐殺するような趣味はない、武器を突き付けながらも逃げるなら追わず、その機会を与える。

 

三分という制限時間で、しかし誰もが顔を見合わせると一人、また一人と出口の方へ殺到していく。

 

研究室内に誰も居なくなったことを確認した康太はビームサーベルを抜くと唯一の出入口である扉を炙るように振るう。

 

熱によって融解した金属製の扉はそれによって壁と溶接され、物理的に開く事が困難な状態になる。

 

部屋から出るときは扉を斬り裂けばいい、時間が稼げればそれで良いのだと康太は判断した、その理由はただ一つ、研究室の中に置かれている機体にあった。

 

「まあお宝と言えばお宝だな。ザフトのセカンドステージ、やはり開発していたか」

 

開発中だったのだろう、置かれていた機体はカオス、ガイア、アビスの三機、劇中に於いても強奪された機体だった。

 

機体を見る限り殆ど完成しているように見える、少なくとも外装は完璧だ。

 

それぞれメンテナンス用のベッドに寝かされており、その各端末にデルタカイを接続することで康太は今現在の開発状況を確認した。

 

「なるほど、有人での可変機構の解決に至ってなかったのか。最悪の場合、リリアナと同じように四肢を義肢に変えてでも、か」

 

セカンドステージの特徴として全ての機体が変形または合体機能を有している。

 

しかしモビルスーツならいざ知らず、生身で扱うISではその可変機構を行おうとすれば中身のパイロットの関節は完全に折れ曲がってしまうという問題があった。

 

そこを解決したのはリリアナのように元より手足が義肢の者か、デルタカイのように生体の量子化という離れ業を成し遂げた機体のみだ。

 

ラビットフット社ではデルタカイのデータからリゼルにフィードバックされているが、それこそ過激派が康太に目を付けた理由でもあった。

 

「ま、その辺は帰ってからゆっくり弄るか。取り敢えず手土産に貰っていこうっと」

 

とはいえ問題点はそこのみであり、人型のまま運用するだけなら問題ないレベルまで完成はしていたこともあり康太は三機とも強奪することにした。

 

どの機体にもISコアは搭載されていなかったが康太の手元には過激派の機体から回収したそれが三つもある、それぞれの機体に搭載した後、空のエネルギータンクを満たすまでの間、康太が目をつけたのは研究開発に使われていたデータベースだ。

 

量子コンピューターを使用したそれは今まで積み重ねた研究開発のデータが収められている、そんな美味しい獲物に何もしないという理由もない康太は早速デルタカイで接続、コアネットワークを経由してヴェーダに繋ぎ、ハッキングとデータの吸い出しを開始した。

 

「博士、今聞こえますか?」

 

『おや、こーくんじゃないか。どったの?暇になって暴れ始めた?』

 

「そんなところですね。今は連中の開発データとか奪ってるところですよ。それと、その試作機も見付けたので強奪中です。もう少し暴れたら脱出するので迎えをお願いします」

 

『りょーかい!それにしても、試作機ってどんな感じなのかな?珍しい機体?』

 

「技術的にはそこまで。ただ、空戦、陸戦、水中戦に特化した感じの機体ですよ。しかもアニメでは三機とも強奪された機体です。運命的なものですね」

 

『アハハ、それは確かに面白いね!ま、迎えの件は分かったよ、ネェル・アーガマで行くから期待しててね!』

 

それとデータの吸い出しを行っている間に同じくコアネットワーク経由で康太は束と連絡を取る、単独でも帰還出来なくはないが、お土産も持って帰りたいことから迎えを頼んだのだ。

 

その間にデータの吸い出しも終わり、セカンドステージ三機のエネルギー補給も完了する。

 

康太は三機のISコアにデルタカイを繋げ、配下の無人機部隊と同じ機能を書き込んでいく。

 

「ISコア接続完了、パワーフロー良好。全兵装アクティブ、オールウェポンズ、フリー。システム、戦闘ステータスで起動」

 

サイコミュが無い為、普段のジェガン、リゼル部隊と同様とはいかないが、ある程度の自律行動を可能とした三機は康太の指揮下に置かれ、立ち上がっていく。

 

「さあ、次は格納庫だ、敵が出てくる前に潰すぞ」

 

 

ラビットフット社の地下ドック、そこでは集められた専用機持ち達が目の前の巨大な船を見上げていた。

 

「本当に完成してたんだな……」

 

「なんか、両端に青いパーツ追加されてるんだけど……」

 

ネェル・アーガマ、かつてシミュレーターで戦ったことのあるラビットフット社が建造していた強襲揚陸艦である。

 

以前工場見学として建造中のところを見てはいたが、それが完成した上で目の前に鎮座しているというのは圧巻の光景だった。

 

全長380メートル、米軍の最新鋭空母であるジェネラル・R・フォード級の337メートルを上回る巨体という身近に感じることのない大きさにただただ圧倒されていた。

 

「はいはーい、呆けてるところ悪いけど早速乗り込むよ!移動しながら説明するから、ちゃんと聞いておくようにね!」

 

『あ、はい』

 

とはいえいつまでも眺めている訳にもいかず、タラップを伝って乗船を始める面々を引っ張るのは束だ。

 

本人はいつものエプロンドレスにウサミミといった格好だが、その表情はいつも以上に輝かしい笑顔となっていた。

 

理由としては自分の作った宇宙船が動き出すのと、念願の宇宙に短時間とはいえ行けることなど、色々とある。

 

これから亡国機業と一戦交えるというのに嬉々とした表情との差が全員を困惑させるが、その内心を知るクロエや千冬は軽くため息をつく。

 

その間、束から作戦内容に関する説明が行われ、束と指揮を行う千冬、楯無は艦橋へ向かい、現地に到着して直ぐに発進できるよう専用機持ち達は格納庫横の待機室に集まった。

 

これから宇宙に上がるため、そこにあるシートに座りしっかりとベルトで身体を固定するのだ。

 

「遂に始まるんだな……」

 

「訓練は積んだとはいえ、いざその時となるとな……」

 

「だが私達がやると決めたのだ。ならばやるしかあるまい」

 

「そうね。でもコウが暴れてるんだもの、案外私達の出番なんてないかもしれないわよ」

 

「あ、言えてる。着いたら何食わぬ顔して船に乗り込んでくる感じが想像つくわね」

 

「確かに、自由に暴れだすとそうなるかもしれませんわね」

 

「うん、初めは心配だったけど、定期的に送られてくる報告で直ぐに不安も薄れちゃったもんね」

 

「むしろ亡国機業に同情することになるかもしれんな。そうだろう、姉上」

 

「そうですね。むしろ現在進行系で敵のISを鹵獲しているようなので、皆さんの予想通りといったところです。あと姉ではないです」

 

決戦に対する不安はある、だが最後のクロエからの報告に誰もが康太らしいと苦笑する。

 

訓練は積んだ、対策も身に着けた、連携は強化された、ならばあとはその全てを亡国機業にぶつけるだけ、そう意気込みを新たにする。

 

対してネェル・アーガマの艦橋では―――

 

「よーしっ、全気密隔壁閉鎖!ドック注水始め!」

 

艦長席に座る束、指揮の為にセンサー長の席に千冬が、オペレーターとしては楯無が、機関長の席にエイフマン教授が座り、砲術長の席にリリアナ、操艦を担う航海長の席にはミネッサが着いている。

 

「おい束、本当にこの面子で戦艦を動かせるのか?」

 

「大丈夫大丈夫!結構な部分をオート化してるから、最悪の場合は音声入力で艦長だけでも動かせるよ!」

 

「まあ、儂は戦闘には詳しくないのでな、核融合炉の機嫌を見たり機体を見たりしか出来ぬが、問題はなかろう」

 

「んー?取り敢えず、敵を見つけたら撃てばいいんだよね?」

 

「何で私ここで舵を握ってるのかしら……私って研究者の筈よね?」

 

「本当に大丈夫なのかしらね……」

 

まずまともに軍艦を動かす訓練や教育を受けた人間はおらず、この場の半分が技術者という有様である。

 

それでもやるしかない、これ以外の方法だと目的地に着くまでに何時間も掛かってしまうからだ。

 

幾ら康太でもそんな長時間、補給なしで戦闘は出来ない、だからこそこの手段しかない。

 

技術面にそこまで詳しくはない楯無は上手くいくことを祈るだけである、そしてネェル・アーガマが収められていたドックへの注水が終わり、その船体が完全に海水に覆われた。

 

「んじゃ、メインゲート開放!固定アーム解除!微速前進、ネェル・アーガマ発進だよ!」

 

その中をネェル・アーガマが進んでいく、ラビットフット社がIS学園の地下にある都合上、発艦時は水中にゲートを作らざるを得なかったことから、水中での運用も可能としたネェル・アーガマはそのまま動き始める。

 

「日本政府には連絡済みよ。周辺の航空機、船舶にも退避命令を出してあるから、存分に行けるわ」

 

「センサーにもそれらしい反応は無いな。浮上出来るぞ」

 

そうしてゲートを完全に抜けたネェル・アーガマは針路に何も障害物がないことを確認すると浮上を開始する。

 

海水を船体のあちらこちらから滴らせつつ、次の瞬間にはシールドバリアによって完全に海水が弾かれたネェル・アーガマの姿はIS学園のみならず、最寄りの街からも目にすることが出来た。

 

「フフン、此処までは問題ないね。それじゃあ次に行くよ、ローエングリン1番2番、発射用意!照準、成層圏!」

 

「えっと、これだね。チャージ完了、いつでも行けるよぉ」

 

「射線上にも人工物なしだ」

 

「なら発射!」

 

そんなネェル・アーガマの両舷に取り付けられた青いパーツから砲門が迫り出し、放たれたのはアークエンジェル級などに装備されている陽電子破城砲ローエングリンである。

 

何故このような装備がされているのかといえば、実験装備である。

 

ミノフスキークラフトを装備している為、ネェル・アーガマは自力での宇宙に上がれるが、今回は速度を重視していることもあり

採用された。

 

元よりマスドライバーだけでなく様々な方法で宇宙に出ることを検討しているラビットフット社で、今ある装備で一番に速度を確保出来るのがアークエンジェル級と同じくプラズマブースターを運用するという方法だった。

 

故にネェル・アーガマに装備されていないローエングリンをブースターに追加し、その発射によって生まれた真空状態によって空気抵抗の存在しない中を進み、更には発生した地場を利用して船体表面のプラズマをブーストさせることによって一つの誘導体として発進させるのだ。

 

これによりネェル・アーガマという巨体からは想像できないような速度で地球の重力を振り払っていった。

 

そしてこの日、ネェル・アーガマという存在は人類にその姿をありありと示したのであった。

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