ARMORED CORE for Bidden【ACfb】アーマード・コア4 作:あきてくと
拠点防衛は難しい。拠点を攻める側と、守る側では圧倒的に守る方が不利だからだ。単機での拠点防衛戦は、いかに敵の目をこちらに向けさせつつ、素早く敵を殲滅させるかが重要になる。そのため、ほんの些細なミスの重なりが、取り返しのつかない結果になりかねない。
さらに、敵は一方向から来るとは限らない。アナトリアの北東側は山岳地帯で、東側には平地が広がっている。現在、敵は東側の平地から侵攻しているが、奇襲で攻め落とすなら、レーダーに探知されづらく、地の利が働く山岳側から攻めるのがセオリーだ。
つまり、今、東から侵攻している部隊は
アナトリアを、俺のネクストが発するコジマ粒子の汚染から防ぐために、高速移動可能なオーバードブーストも、ダメージを半減させるプライマルアーマーも使えない現在は、
たった1機で、この広いアナトリアを守りきるのは少々難しい。だが、やらなければならない。ここに住む彼らと、そして自分を守るために。
広域レーダーの監視を兼ねる、作戦オペレーターのフィオナには、山岳地帯の監視を厳にするように伝えてあった。俺は前進しすぎないように注意しつつ、マシンガンで敵陣に弾幕を張る。敵の足を止めながら、アナトリアへの長距離砲撃を防いだ。
マシンガンは速射性と命中率が高く、下手に前線を突破しようとする考えを抑制することもできるため防衛戦には有効な武器だ。ハワードの機転に感謝しつつ、マイクロミサイルと右腕のライフルで敵を撃破していく。
敵の部隊は、
最後方には2台のミサイル車両が控え、アナトリアを射程にとらえようと前進。さらに前衛の間を縫って、2機のイクバール社製の
2機のSELJQは、蛇行機動しつつショットガンを放ちながら両翼から迫る。俺は本隊にむけてライフルで牽制しつつ、左手から迫るSELJQをマシンガンで迎撃。SELJQは、最初の数発を回避したものの無数の銃弾に全身を貫かれ痙攣したように爆散する。
そのとき、アナトリアを射程に捕らえたミサイル車両から数発のミサイルが発射された。白煙を吐き出しながら小型弾頭が高速で頭上を飛び越えようとする。
右翼から迫るSELJQの手から繰り出されるパイルバンカーをジャンプして回避した。同時に、上昇途中のミサイルにマシンガンを乱射し撃墜させたが、1発撃ち漏らした。頭上を白煙が尾を引いて通り抜け、まっすぐアナトリアへと向かっていく。
空中で反転して、アナトリアに向かうミサイルめがけてライフルを放つ。呼吸を整えて1射。ミサイルの進行方向に照準を修正してもう1射。
弾道が空に吸い込まれて見えなくなってから、ワンテンポ遅れて爆発が起きた。ミサイルはアナトリアの手前2kmほどの距離で爆発した。
安堵するのもつかの間。後方からの強い衝撃に俺は弾かれた。ZENIGAMEの放ったグレネードキャノンの衝撃を受けて地面に背中から叩きつけられる。そこへ、SELJQがパイルバンカーを叩き込むために迫った。
安易に近づきすぎだ。俺は足でSELJQを蹴り飛ばすと、倒れ込んだSELJQをライフルで打ち抜く。そして、ブースターで飛び上がり、そのまま敵の頭上を飛び越え後方のミサイル車両めがけて空中から敵陣突破を試みる。
敵部隊は、ただの素人だと思っていたが、十分な訓練を受けているようだ。セオリーに従って迎撃していたのでは分が悪い。陽動に誘われたとしてもミサイル車両を潰すのが先決だ。
牧草の緑に覆われた地上からは、スプリンクラーのように対空砲火が放たれ、プライマルアーマーに保護されていない、むき出しの金属にぶつかっては弾痕を刻んでいく。機動戦とプライマルアーマーの使用を前提としているネクストの装甲はAC以下だ。
敵の照準を絞らせないために、マシンガンとライフルで弾幕を張り、複雑に空中を機動しながら後方のミサイル車両に向けて降下する。ミサイル車両は動きが遅く、装甲も薄いため近づいてしまえば格好の的だ。
上空からライフルで次々と打ち抜いては爆散させ、着地前にすべてのミサイル車両を撃破した。これでアナトリアへのミサイル攻撃は阻止できた。
しかし、敵の前衛にいたZENIGAMEとMTは前衛と後衛を入れ替えて、こちらに一層激しい砲撃を仕掛けてくる。その後方では、2機のMTが陣形を離れ、アナトリアへ向かうのが見えた。
舌打ちをしようとしたところで、フィオナからの通信が入る。
《レイヴン、山岳斜面に敵、大型機動要塞を確認! 迎撃できる!?》
案の定、陽動か。敵ながらいいタイミングだ。
「少々つらいがすぐに向かう。民間人の避難は完了しているか!?」
《大丈夫よ。みんなシェルターに避難しているわ!》
「了解した。フィオナも避難を」
《いいえ。私もここで戦うわ》
___こちらが避難しろといっても、素直に訊く娘ではないことは、ここ数ヶ月を一緒に暮らしていればわかる。「了解した」俺は渋々了承する。
敵陣に向けて肩のマイクロミサイルを2発だけ残して全弾放つ。後に控える敵にそなえて温存しておきたかったが仕方がない。おびただしい数の小型ミサイルがランダムに機動しながら水平展開する敵前衛に着弾し、爆炎と土煙を上げ、辺りの視界は一時利かなくなる。
俺は、煙が流れてゆく敵左翼風下から敵陣に飛び込み、照準をつけないないままマシンガンとライフルを水平射撃で乱射する。ほとんど視界の利かない中で、砲火の瞬きと銃撃音と爆発音だけが響く。それは除々に少なくなっていき、煙が晴れたころにはMT1機だけが立っていた。
残った1機を躊躇なく撃ち抜くと、アナトリアに向かった別働隊に追すがる。遠くに見える二つの豆粒めがけてブーストを全開にするが、およそ時速400kmで移動しながらも、ちっとも変わらない景色に焦りと苛立ちを覚える。
ようやく射程に捕らえた2機のMTを、速度を保ったままライフルで撃ち抜き、今度は北側にそびえる山岳地帯へと全速力で向かう。
防衛対象であるアナトリアに近づくにつれ、アナトリア市街地を囲む石壁と、コロニーでもっとも高い建物である教会の尖塔が少しづつ大きく見えてくる。
右手前方の崖の上には、アナトリアに歩を進めていく巨大な鉄の固まりが確認できた。体積にすれば、およそネクストの20倍ほどだろうか。周り景色と比べると、その非現実的なスケールに違和感を抱く。
《レイヴン! 敵機の照会が完了。侵攻中の敵機動要塞は、GAE社製GAEMーQUASARと確認。4足歩行の大型機動兵器。主武装は大口径マシンガンと
巨大な敵機動要塞は、4本足の歩みを止めた。中央の本体部分をわずかに低く屈め、機首に延びる3本の主砲と思わしきものを、3本指のようにワラワラと動かし始めた。
《それに、高威力のグレネードキャノンと、エンジンには___》
主砲がピタリと動きを止めると、先端から光が瞬いた。少し遅れて衝撃波と発破音がこちらにも届く。同時に、さっきまで見えていたアナトリアの教会の尖塔が爆発でへし折られ、瓦礫をまき散らしながら落下していく。
無線機からも爆発音が轟き、通信がとぎれる。
俺は鳴らない舌打ちをしつつ、全速力で突進しながら、まだ射程に届かない鉄の塊に向けてライフルを放つ。運動エネルギーを失い、放物線を描いたライフル弾など大した威力ではない。それでも奴の注意をこちらに向けなければならない。俺は敵のやや上方へ向けてライフルを撃ち続ける。
敵がこちらに気づき振り向いた。同時に、敵機上方から垂直ミサイルが放たれ、高い放物線を描いて頭上からこちらに向かってくる。距離を詰めるために回避はしない。ライフルで1発づつミサイルを撃ち落としていく。そこへ、先ほどの主砲が放たれた。それでも前進は止めない。前方へジャンプして回避。同時に最後のミサイルも打ち落とす。
俺はそのまま飛び上がり、崖の上の巨大兵器を眼下に見下ろせる位置まで上昇。そして、降下しながら射程に捕らえた敵に向けて左手のマシンガンを放つ。しかし、無数の火線は、敵の厚い装甲で阻まれ、弾丸はその場にパラパラと落ちる。
右手のライフルを放つが、当たった瞬間に120mmのライフル弾があらぬ方向へ跳ね返る。ならばと左肩のマイクロミサイルを1発だけ放つと、無数の小型弾頭が崖の上の巨体めがけて一斉に向かう。全弾命中し、爆炎と黒煙が上がった。やったかと思った瞬間、重々しい回転音と同時に、黒煙切り裂いて無数の弾丸が向かってきた。
クイックブーストで辛くも回避し、今度は奴の直上からライフルを射かけるが、ライフル弾は硬質な音を響かせてすべて跳弾した。そのうちの1発が真正面に跳ね返り、左手のマシンガンに当たって動作不能になる。
ふん、ちょうどいい。俺は邪魔になったマシンガンを投げ捨てると急降下し、近接戦を仕掛ける。一発一発がライフル弾並の威力があるマシンガンの弾幕を回避しながら、格納されたレーザーブレードを構えて敵機に取り付き、ブレードを振るう。
レーザーブレードの鋭い光条が敵装甲にぶつかり、輝く粒を振りまきながら水しぶきのように散る。レーザーブレードは当たった瞬間にかき消えた。
立て続けに移動要塞の装甲に向かって虎の子のブレードを振るうも、数万℃あるはずの超高温プラズマ粒子は装甲を溶解できず、巨大兵器の装甲にぶつかってはかき消える。突き刺してようやく表面がわずかに溶けた程度だ。
対粒子装甲。噂には聞いていたが完成していたのか。装甲に電気を流して強力な磁界をつくり、プラズマを形成する磁力線を攪乱する対プラズマ装甲。もちろん、その仕組みはそんなに単純ではないのだろうが、とにかくコイツにレーザーブレードは通用しない。だが、装甲に覆われていない主砲や関節部なら___
いきなり、巨大兵器がその場でぐるりと旋回した。見かけによらず素早い動きで上に乗った俺を振り落としにかかる。俺はこらえきれずバランスを崩し、崖下まで転落する。
ブーストで姿勢を整えたものの、さらにヘビーマシンガンと主砲で追い打ちをかけられ、俺は後退せざるを得なくなった。そこへフィオナから通信が入る。
《___レイヴン、こちらは無事よ。ちょっと、通信が切れただけ》
「フィオナ、今すぐ司令室から避難するんだ」俺は再びフィオナに避難をすすめる。
《だから、私も戦うってば。まだ敵の増援だってあるかもしれない》
確かにそうだが、こちらには、もう打つ手がない。
「この
俺は、精一杯の嘘をついた。