ARMORED CORE for Bidden【ACfb】アーマード・コア4   作:あきてくと

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ブリーフィング

「おいおいおい。諜報の報告、桁ひとつ間違えてるんじゃないのか」

 

 目つきの悪い若い男が身を乗り出して、ローゼンタールの盟主たるハインリヒ・シュテンベルグに食ってかかる。

 

「いや、BFFのスピリット・オブ・マザーウィルの寸法は、多少の誤差はあれど、間違いなく全高600m(・・・・・・)全長2,400m(・・・・・・・・)だ。BFFは早期から巨大兵器の建造に着手していたのは知っているだろう」

 

 プロジェクタで投影されたスクリーンには、6本足に翼が生えたような奇怪な形状の機体、いや構造物と言うべきものが映し出されている。

 

 翼に見える一枚一枚は甲板になっていて、ACやMTの艦載や航空機の発着も可能らしい。甲板上1枚あたり2基のミサイル発射管が対空迎撃を担い、その下面につり下げられた320mm砲が全周囲の中近距離対地迎撃を行う。そのほか至る所に重機関砲が備わり、巨体故の動きの鈍さをカバーするようだ。まるで歩く要塞だ。

 

 そうでなくとも、これだけの大質量を破壊するのはネクストの高火力機であっても難しい。戦略兵器に相当するだけの火力を投じなければ完全な破壊は不可能だ。

 

「上空から何度か高高度巡航ミサイルによる攻撃を試みたがが、そのすべてがことごとく迎撃された。迎撃ミサイルに加え、前後両側に推定射程距離200km超の大口径実体砲(グレネード)が3門づつ備わっている。BFFらしく照準精度も極めて高い。静止物なら100km圏内は必中距離だ」

 

「どうやって破壊すんだよ。そんなモン」男はあきれたようにうなだれる。

 

「破壊する必要はない。あくまで第一目標はレイレナード・アクアビット残党が慣行しようとしている衛星の打ち上げ阻止だ。キリマンジャロ麓にあるサイロ施設からの打ち上げさえ阻止できればほかはどうでもよい。

 

 第二目標は旧レイレナードに所属し、今はORCAの首謀者と名乗るメルツェルという男。ほかにもアクアビットのテペス=V(No.7)とBFFの王小龍(No.8)、レイレナードの真改(No.33)エミリオ・ウォルコット( ランク外 )の計5名のリンクスが確認されている。

 

 最低でも4から5機の対ネクスト戦は避けられないだろう。ついでにいえば、スピリット・オブ・マザーウィルに艦載されるノーマルAC、MTも合計100機程度確認されているが、こちらは問題ないな」

 

 スクリーンには、アフリカのケニア周辺の地図が表示され。キリマンジャロの麓にあるロケット発射サイロ施設の位置と、こちらの侵攻ルートが表示された。端には数種類のBFF製ノーマルACとMTが表示され、敵ネクスト4機のうち、詳細が知れている3機の機体データが表示される。

 

「それだけの戦力をたった5機のネクストで相手にしろと」

 

 今度は目つきの悪い女のほうが、ハインに言及する。

 

「アナトリアの傭兵には別行動をとってもらうため、こちらの数は正確には4機だ」

 

 俺とフィオナの席の両隣にいたミド・アウリエルと、メノ・ルーが同時にちらりとこちらを伺い見るのを察知した。もっとも、こちらはなにも聞かされていないため、別行動にどういった意図があるかは俺にもわからない。

 

 目つきの悪い女が言葉を続ける。

 

「ふん、つまりこういう事だな。作戦の遂行は二段階に分けられる。まずスピリット・オブ・マザーウィルの有効射程外に円周状に配置された12門の対空用のソルディオス砲。ネクストでこのうち隣接するものをひとり1基づつ破壊し、航空戦力投入ルートを確保。

 

 補給後、ネクスト4機で化け物が撃ち放つ長距離砲撃をかいくぐりながら、およそ100kmネクスト単体で移動して懐に飛び込み、こちらの侵攻主力となる合計10機のFF130ーFERMI( フェルミ )に主砲と迎撃武装を向けさせないよう、我々に囮になれということだな。

 

 それも、状況によってはレイレナード・アクアビット・BFFのネクスト4ないし5機を相手にしながらだ。ネクストを撃破する必要はないが、主犯格の首を取れれば御の字。できなくともサイロもしくはロケットを破壊しろと。仮に、フェルミが全機墜とされたら?」

 

 そこまで確認をして、目つきの悪い女がハインを刺し貫くように見据える。

 

「ケニア沖合にいは輸送船をそのまま停泊させておくため、現場判断で撤退してもらって構わない。次の手を打つ」

 

「ほぉぅ。次の手とは」

 

「君たちがそこまで知る必要はない」

 

 その台詞を聞いた女が、堪忍袋の尾が切れたと言わんばかりに、テーブルを叩きつけながら急に立ち上がり、声を荒げて言う。

 

「大方、対施設装備のアナトリアの傭兵を別行動でサイロ破壊に向かわせるのだろう。陽動作戦? バカバカしい。我々はただの捨て駒か」

 

 怒り狂いながら叫ばれる女の鋭い指摘に対しても、ローゼンタールの盟主は動じない。両脇のミド・アウリエルとメノ・ルーが再びこちらをちらりと伺い見るが、何度も言うように、何も知らされていないのに話の矢面に立たされるのはいい気分ではない。ハインは落ち着いた態度のまま、女に対して返答をする。

 

「彼らを放置すれば、今後世界がどうなるかわからない。彼らの強引なやり口はこれまでの経緯から知っているだろう。それに、奴らの手の内にあるジョシュア・オブライエンの動きが掴めない以上、もっとも確実な方法をとる必要があるのだよ。

 

 下位のリンクス全員には、プロトタイプネクストによる再侵攻に備えて企業の重要施設防衛に当たらせる。君たちは、余力がない現在の我々が用意できる最高戦力としてわざわざここに招いたのだ。それを分かってほしい」

 

 ふん、と女は鼻から息を吐き出す。そしてあきれたように言う。

 

「相変わらず、煽てるのが上手いなハイン。国家解体戦争のときも、お前のその饒舌に一杯食わされたよ」

 

「お褒めに預かり光栄だ」

 

 ほくろの口元からため息が漏れた。それから再び女の目に鋭い光が宿る。

 

「ふん。いいだろう。そのかわり現場指揮は私に任せてもらうぞ。ただ言いくるめられて死ぬのは御免だからな」

 

「もとより、そのつもりだよ。君なら安心して任せられると判断したから、わざわざ召還したのだ」

 

「そのわりには、こんな陳腐な部屋でブリーフィングとは、待遇が悪いなァ」

 

「それはオーメル側に言ってくれないか。___デイブからは何かありますか」

 

 これまでやりとりを部屋の隅で黙って見守っていただけのデイブと呼ばれたスキンヘッドで白髭の男は、急に話題を振られてやや驚きながら言う。

 

「ふむ。ここの待遇の悪さについては詫びよう。それはさておき、リンクス諸君には依頼受諾にはオーメルの総意として心より感謝申し上げる。どうか我々の力になってくれ。___それとこれはオーメル側の業務連絡だ。アウリエル。今回の作戦は良いデータ収集になる。マグヌスを使いなさい」

 

「承知しました。デイブ」

 

「それから、セロ。作戦中はお姉さんたちの言うことをよく聞くんだぞ」

 

「ったく。子供扱いすんなよ」

 

 その言葉にセロと呼ばれた若い男が反発する。まるで祖父の忠告に反発する孫のように。オーメルの重役と思われる男はさらに続ける。「女は怒らせるとと怖いからな。とくに___」

 

 先ほどまで張眉怒目だった女をちらりと伺い見ると、女に睨まれたようだ。苦笑いを浮かべながらデイブという男が肩をすくめておどけてみせると、きっちりと着こなしたスーツに皺がよった。それを見たフィオナとその隣にいたメノ・ルー、それにハインまでもが小さく声を上げて笑う。

 

「ああ、そうだ。念のため作戦に参加するメンバーの紹介をしておこう。___GA所属のメノ・ルー(No.10)少佐。どうかよろしく頼む」デイブに呼ばれたメノ・ルーが椅子から立ち上がり面々に頭を下げる。

 

「インテリオル・ユニオンの霞スミカ(No.16)氏。お手柔らかにな」口元のにほくろがある目つきの悪い女が、憮然とした表情のまま、腕組みをした手だけを小さく挙げた。

 

「オーメルからセロ(No.6)それに、ミド・アウリエル( No.30 )だ」目つきの悪い男が、鼻から息を吐き出す。ミド・アウリエルは誰にでもなく目礼をする。

 

「それから___すまんが、本名はなんといったかな。とにかく、ご存じリンクス戦争の英雄ことアナトリアの傭兵だ」

 

 本名___。本名と言う言葉を使われた(・・・・・・・・・・・・)ことにひどい違和感を覚えたが、さしあたり俺は首肯で挨拶を返す。

 

「出立は明朝だ。それまで各自、装備や連携確認を行ってくれ。オーメルは君たちの働きに期待する。ブリーフィングは以上だ」

 

 デイブの激励の言葉に「はいッ」と気張って答えたのはメノ・ルーだけだった。他の面々は黙ってのろのろと立ち上がり、ぞろぞろとブリーフィングルームを出て行く。しかし、俺たちは出撃準備どころか機体さえない。どうするのか問おうとした矢先、その意図を察したらしいフィオナが先に口を開いた。

 

「失礼します。我々に関する行動の指示はありませんでしたが、どうすればよいのでしょうか」

 

 それを聞いたデイブはハインに目配せをし、それに対してハインは小さく頷く。

 

「ああ、すまない。話がややこしくなるためブリーフィング内での説明は省かせてもらった。説明をするために場所を移そう。私に着いて来てくれないか」

 

 デイブと呼ばれていた初老の男がにやりと笑いながら、そんなことを言った。

 

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