ARMORED CORE for Bidden【ACfb】アーマード・コア4 作:あきてくと
あれが噂のリンクス戦争の英雄、アナトリアの傭兵か。BFFとレイレナード本社を潰した元レイヴン。それにしても、噂通り本当に手足が無かったな。まあ、神経接続でコントロールするネクストなら関係ないか。
先だってのラインアークの侵攻作戦は気乗りせず出撃を辞退した。私の代わりに出撃したアルドラの
「臭いと思わんか」
ドッグに向かう通路を歩きながら、私は前を見たまま後ろを歩く3人に訊く。すぐ後ろにいたメノ・ルーは鼻を
「私のことはスミカでいい。この作戦。胡散臭いことこの上ない。そもそも、なぜアナトリアの傭兵の行動を隠す必要がある」
作戦の筋は概ね通っている。しかし、どこか全容がぼやけているように感じる。わずかに、ほんのわずかに合点がいかない部分がある。どこが、と指摘できない点がもどかしい。
「当然。所詮は傭兵だ。信用に足る相手じゃない。それに、言葉足らずはオーメルじゃ日常茶飯事だぜ。気にしたところで仕方がない」
「ほう、セロ。なら、お前は作戦で上に死ねと言われたら、黙って死ぬのか」
「それでも僕は生き残るさ。
増長。というわけでもないのだよなコイツの場合は。確かにお前は天才だよ。国家解体戦争のときは15歳くらいだったか。その時点でNo.1リンクスであるベルリオーズに匹敵するほどのAMS適正を有しており、かの戦争では6番目に戦果を上げたのはオリジナルリンクスなら周知の事実だ。だが、今回ばかりは___。
「とにかく、部隊指揮を任されているのは私だ。勝手な行動は許さん。今作戦では私の指示に従ってもらうぞ。
周辺対空防衛のソルディオス砲破壊はともかく、100機ほどのノーマルと、4機ないし5機のネクストを相手にしなくてはならないんだ。それもあの化け物じみたデカブツの支援砲撃のなかで。こちらも作戦を立てる必要がある。お前たちなら、この無茶な作戦をどう戦う?」
「ええと。敵機を射程に捉えたら即撃ちますッ」
「回避をしつつ速やかに接敵し、最低限のターゲットだけを迅速に破壊します」
「んなもん、相手を片っ端からぶっ飛ばせばいいだけだろう」
はぁ。と思わずため息が出る。
「すまない。聞き方が悪かったか。質問を変える。組織戦闘もしくは2名以上で連携戦術をしたことはあるか」
「ソシキセントウ? レンケイセンジュツ?」
メノは目をぱちくりさせてこちらを伺い見ている。はぁ。
「GAの少佐なら戦闘指揮くらいは執ったことがあるのだろう?」
「ええと、その、組織戦闘とはどの辺から組織戦闘になるのでしょうか。私は少佐とは名ばかりで、ほとんど単独行動ばかりだったもので……すみません」
はぁ。
「念のため聞くが『連携』という言葉もちろん知っているよな」
「もちろん」「当然です」「基本だろ」
絶対に嘘だ。お前らに
こいつらと顔を合わせたのは今日が初めてだが、こいつらは輪をかけて我が強く、協調性というものがまるでなっていない。これほどの凸凹パーティも珍しいほどに。
「そう。もちろん当然で基本だ。そして連携には機体特性と武器選定がもっとも重要だ」
さてと、コイツらにどこからどう説明すればよいものやら。
「例えば、私が搭乗するシリエジオはエネルギー防御に優れた機体だ。外部レーダーが搭載しており、今作戦には長距離砲撃が可能な試作のレールガンを携帯する。そのため、私がしんがりで索敵と援護射撃に徹するのが順当だ。ただし、足の早さはメノの中距離重武装のサンシャインと同程度だ。我々では軽量機であるユディトの戦闘速度にはついては行けん。
しかし、高速機のユディトとはいえクイックブーストの発動間隔は大きな隙になる。それを我々後衛が援護してカバーすることで、お前たち前衛はずっと戦いやすくなるはずだ。ただし、ある程度近い距離にいなければお互いに援護したくてもできない状況に陥る。そのため規定の距離を保った行動を心がける陣形の維持が組織戦闘では最重要だ」
「今回、私はユディトではなく、アスピナと共同開発した別の高速機を使います」
ミドが言う。ブリーフィングであのオーメルのハゲのヒゲが言っていた『マグヌス』というやつか。
「なるほど。切り込み役として敵の攪乱には最適だな。ならセロ。お前の役割はミドの援護も兼ねた前衛の遊撃手だ。ただし前には出過ぎるなよ。我々後衛の射程範囲内にとどまるんだ。そうすればお前の尻は守ってやれる。このように攻撃タイミングや役割を分担し、総体としての戦力を高める。これが連携戦術の目的だ」
このなかで一番の食わせ者である天才坊やには、ある程度好きにやらせるのがいいだろう。
「だがこれは基本だ。これはノーマルACやMTなどの雑魚が相手の場合で、複数のネクストを相手にするともなるとまったく状況が変わってくる。そして、向こうも同じく陣形を組んでくるだろう。だがそれ故に動きも予測しやすい。
対エネルギー防御に優れたテルスはこの2機と相性がいい。ネクスト戦に突入したら私が前に出て盾になるから、前衛は後ろに下がれ。全体の動きとしては王小龍の射程外ギリギリまで後退してとどまるのが理想だ。そうすれば真改の馬鹿は意地でもこちら追ってくるだろう。奴らを分断し、まず1機を撃破できれば後の処理は容易い。
ただしこれも、この該当3機が相手の場合に想定される、ごく単純な戦法にすぎない。相手の武装や動き、地形によって、臨機応変に陣形と戦術を変える必要がある。
レイレナードのもう1機の素性は知れないし、首謀者のメルツェルという男もリンクスではあるそうだから最大5機を相手にする場合も想定しなくてはならない。それもスピリット・オブ・マザーウィルの支援砲撃のなかでだ。
癪には触るが、狙撃戦を得意とするBFFがいる以上、敵の連携は1手も2手も上と見るのが妥当だ。当然、奴らも陣形を組み、まずこちらの攪乱を狙ってくるだろう。わずかにでも陣形を崩されれば負けると思え。
十分な防衛戦力が整った要塞攻略ほどの難関はないからな。戦況は圧倒的に我々に不利だ。だが、個々の能力では十分に通用する。それを最大限に活かすための連携戦術だ。我々が勝つにはそれらを徹底する必要がある」
ネクストでの組織戦闘は、まったなしの超高速で動くチェスゲームのようなものだ。その都度判断をしていたのでは到底間に合わない。判断にはなによりも経験と使える引き出しの多さが物をいう。そしてネクストを駒と見立てた場合、その働きは
「お前たちの機体構成や戦闘データは事前に確認させてもらっている。データシート通りのいつもの機体で出撃するつもりなら一言二言文句を言わせてもらうそ。ミドは先にマグヌスとやらの詳細を知らせてくれ。それに応じて各機の装備細部と戦術パターンに微調整を加える。
メノは援護射撃と制圧射撃で前衛を支援するのが主な役目だ。だが敵の武装によっては盾なることも覚悟しろ。ただし両背中の『
「はい。姉さんッ」と返事をしたのはメノだけだった。
「だ・か・ら、返事をしろ。返事を」
「はい」「ああ」
そういうところがなっていないといっているんだ。まったくオーメルはリンクスにどんな教育をしている。自由にやらせすぎだ。まったく。この凸凹パーティをまとめるために、ここはひとつ、お姉さんがひと肌脱がなくてはな。
「それから、紅海を通ってケニア沿岸まで船が到着するまでには丸1日以上かかる。その間、のんびりとクルージングの旅ができるとは思うなよ。ひたすらシミュレーターでの連携確認だ。いいな」
「あん? 船?」
「なんだセロ。お前、ブリーフィングを聞いていなかったのか」
「船で移動なんて、そんな事は一言も」
「ソルディオス砲の対空砲火があるため、空からは接近できない。4機もの
セロの顔色がみるみるうちに青ざめていく。どうした。オーメルの天才坊やは船酔いでも怖いのか。まあいい。
一般兵器に対して圧倒的な機動力と防御力を誇るアーマードコア・ネクストとはいえ、最大限に能力を発揮するには、戦況にあわせた機体の素早いセットアップが必要不可欠となる。ネクストの搭乗者はリンクスと呼ばれはするものの、その本質は旧アーマードコアを駆って幾多の戦場を渡り歩いたレイヴンと変わることはない。
私はレイヴンという人種と直接面識がないため知らないが、フリーの傭兵なら、企業が抱える
さて、どうなるかな。これからアフリカ東岸で起こる戦闘は、規模としては小さなものだが、互いの戦力は国家解体戦争以来最大のものとなるだろう。
ふむ。クイーンが3か。
「このなかでお前が唯一の男だ。お姉さんたちの紳士的なエスコートに期待するぞ。セロ」
と、振り向いてセロに声をかけたが、当の本人はうつむいたままブツブツと呪詛の念を唱えている。やれやれ、さっきまでの威勢はどうした。そんなに船が嫌か。
ふふん。ゲロでも吐いたら笑ってやる。だとしてもシミュレーター訓練で手は抜かんからな。覚悟しとけよ。