ARMORED CORE for Bidden【ACfb】アーマード・コア4   作:あきてくと

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メノ・ルー×BFF①

 2時方向。おおよそ50km先に闇夜を切り裂く青緑色の閃光が走りました。その高エネルギーは海面に着弾し、遠方の海上では水煙がもうもうと立ち上っています。あれはおそらくセロさんが担当しているソルディオスのコジマ粒子砲の光です。セロさんは無事でしょうか。

 

 月が出ているとはいえ、この暗い夜の海と、不穏なコジマの光に不安な気持ちが頭をもたげますが、私はそれを振り払って低い姿勢を保ったまま海上を進みます。なにより、私は私の仕事をしなくてはなりません。プリミティブライト(  愛 機  )を駆って、私に割り当てられたソルディオス砲の破壊に向かいます。

 

 スミカ姉さんのアドバイスに従い、この作戦にあたってブースター構成を変更しました。GAが擁するサンシャインの性能の高さは、スミカ姉さんも評価してくださっていましたが、クーガー製のブースターに関しては「あらゆる面において性能不足」と、厳しいご意見をいただきました。実際はそんな丁寧な口調ではありませんでしたけれど。

 

 それに両背中のミサイルも、弾数が多く継戦能力の高いものへと変更しました。もっともミサイルに関してはスミカ姉さんに言われたからではなく、元からこちらを使う予定でした。

 

 ミサイル開発に関しては、クーガーと同じくGAの完全子会社であるMSACがほぼ市場を独占状態です。いつも使用している大型ミサイル(BIGSUIX)の代わりに、この作戦にあたって装備したのは、誘導性の高い弾体を8発連続発射できるミサイルランチャー(POPLAR01)を両背面に。MSACの技術部で特別に開発していただいた特殊弾体が役に立てばよいのですが。

 

 愛着ある2門の大型ミサイルがないおかげで、ちょっと背面が寂しく、なんだかスースーします。けれど代わりに装備したミサイルランチャーは非常に軽量なため、垂直推力に優れたメインブースター(CB-JUDITH)と相まって、私のプリミティブライトが、本当に乗り慣れた重量級のサンシャインかと疑ってしまうほど軽快に動きます。帰ったら、ローディさんやエンリケさん達にも社外ブースターへの変更を勧めてあげましょう。

 

 それにしても、インテリオルの高度なネクスト運用方法は驚異的ですね。部品開発思想からネクストの扱い方のひとつひとつまで、我々GAの先を進んでいます。ウッド閣下に、もっとインテリオルと友好関係を築くべきと進言しなくては。

 

 思いを巡らせているうちに高波の向こうに陸地が見えてきます。レーダーと望遠カメラで確認すると敵守備隊はノーマルACやらMTやらがまばらにいるだけです。おそらく守備本隊はセロさんの方へと応援に向かったのでしょう。この程度の残存戦力ならサンシャインにとってはお話にもなりません。

 

 私は機体制御にアクセスし、全武装をアクティブに切り替えました。それからいつも通り、会敵予想までの残りわずかな時間でお祈りを捧げます。どうぞ私をお守りくださいプリミティブライト(  主 の 光  )よ。心の中で手早く十字を切ります。

 

 沿岸部に配置された敵守備隊がようやくこちらに気づき、ノーマルやMTからの砲撃が始まります。気をつけるべきはBFF製MTの狙撃のみです。その他、小火器の弾丸はプライマルアーマーが守ってくれるため無視します。それにGAの厚い装甲は実弾ではそうそう破れるものではありません。

 

 私はほとんど回避行動を取ることなく、ターゲットを照準に捕らえては、慈悲を込めて両腕に構えるガトリングガンとバズーカを斉射。敵のノーマルACやらMTやらが、砕け、弾け、すぐさま鉄塊と化しました。上陸前だというのに、海岸の守備隊はすでに壊滅状態です。私は悠々とアフリカの大地へ上陸します。

 

 しかし、砂浜から陸地へ足を踏み込もうとした瞬間、視界の隅で発砲と思われる閃光が瞬きました。とっさに横へ回避します。が、回避しきれず右肩のフレアポッドが轟音とともに貫かれました。ポッド内部に込められたフレア弾体が暴発し、全弾が狂ったように吐き出され続けます。

 

 これでは敵に位置を教えているのと同じです。私はすぐさまフレアポッドをパージし、追撃を避けるため機体に回避行動を取らせ続けます。

 

 危なかったです。サイドブースターもインテリオル製に交換していなければ直撃でした。スミカ姉さんに感謝をしつつ、現状把握と敵機の分析に取りかかります。口径と弾速から鑑みて、おそらくスナイパーキヤノンによる狙撃でしょう。だとすれば撃ったのはBFFの王小龍(ワン・シャオロン)氏でしょうか。

 

 レーダーにはまだ機影は映っておらず、狙撃手の姿も捕らえられません。ですが、遅れて届いたタンという短い発破音の到達時間から、それほど遠い距離ではないことが予想されます。

 

 機体に不規則な回避行動を取らせつつ、私は弾道位置から割り出した位置に砲口を向けます。しかしすぐに反撃はしません。おそらくこちらの射程圏外ですし、ようやくフレアの暴発が収まったのに、マズルフラッシュを発しては再びこちらの正確な居場所を教えるだけです。それに、まっとうな狙撃手ならすでにその場にはいないでしょう。

 

 強めの月明かりと暗視カメラで視界はそれほど悪くありません。機体を再び後退させながら視野を広げて狙撃手の位置を慎重に探ります。

 

 すると内陸のやや奥まった小高い丘の上に、こちらを見下すように四脚型のネクストが1機、月明かりをキラリと反射させました。敵機は狙撃位置から動いていませんでした。それどころか隠れる気すらないようです。

 

 望遠用のサブモニタを呼び出し、敵機を拡大表示させます。モニタに小さく映ったのはBFFの四脚機。おそらく王小龍氏ではありません。カラーリングと武装構成が違います。武装はBFF製に加えレイレナード製のものも混じっています。あれは作戦データにない機体です。

 

 視界に捕らえた敵機から通信が入ります。本来姿を隠すべき狙撃手から通信とは、先方さんは頭がイカれていらっしゃるのでしょうか。 私は少々困惑しつつも通信を受諾すると、1つのチャネルから2人の声がしました。その声は聞き覚えのあるものでした。私は彼女ら(・・・)を知っています。

 

こんばんは、メノ・ルー。(こんばんは、メノ・ルー。)南極のスフィア以来だね。会えて嬉しいよ(南極のスフィア以来ね。会えて嬉しいわ)

 

 旧BFFに所属し、ヘリックスⅠに搭乗していた姉のフランシスカ( No.19 )。それとヘリックスⅡに搭乗していた弟のユージン(No.20)。名門ウォルコット家の姉弟。なら機体の方は、さしずめヘリックスⅢ。いえ、四脚型ですからヘリックスⅣと言うべきでしょうか。まあ、どちらでもいいのですが。

 

「こちらとしては、まったく嬉しくありませんが。それより、あなた方は___」

 

 以前、南極のコジマ発電施設スフィアで撃退した*1彼女らの消息はつかめませんでしたが、どうやらORCAに合流していたようです。ですが、なんだか様子がおかしいです。言葉遣いはわずかに異なりますが、声はピタリと重なって聞こえます。それに動きも変です。時々ひきつったように脚部が不気味に動きます。

 

僕は、姉さんとひとつになれたのさ(私は、ジーンとひとつになれたのよ)

 

 

*1
『断章 レオハルトより現状報告』参照

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