ARMORED CORE for Bidden【ACfb】アーマード・コア4   作:あきてくと

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メノ・ルー×BFF②

僕は、姉さんとひとつになれたのさ(私は、ジーンとひとつになれたのよ)

 

 私は、彼女らが発した言葉の意図がくみ取れず思考を巡らします。1機を2人で操縦しているのですか。ですが、タンデムのネクストなど聞いたことがありませんし、まともに動かせるとも思えません。

 

 片方がオペレーター役というのなら分かります。それとも肉体的にひとつに? そんなことをわざわざ私に宣言したところで何になるというのでしょう。あと考えられるのは。

 

「AI化された人格___の統合ですか」

 

 私の質問に、彼女らは含み笑いをしながら答えます。

 

ご名答(ご名答)

 

 ということはつまり、彼らはすでにお亡くなりになっているということになります。気色の悪さに吐き気を覚えます。こんな命をもてあそぶような真似を主がお許しになるはずがありません。生命への冒涜です。アクアビットはここまでやるのですか。

 

今の僕には、姉さんの全てがわかるよ。(今の私には、ジーンの全てがわかるのよ。)

 

 お互いの思考も。(お互いの思考も。)お互いの気持ちも。(お互いの気持ちも。)何もかも。(何もかも。)

 

 だからメノ・ルー、(だからメノ・ルー、)お前をどうしたいのかも。(あなたをどうしたいのかも。)

 

 遠くから撃ち殺すなんてもったいない。(遠くから撃ち殺すなんてもったいない。)

 

 まずコックピットから引きずり出して、(まずコクピットから引きずり出して、)

 

 生きるのが嫌になるくらい辱めてやる。(生きるのが嫌になるくらい辱めてあげる。)

 

 それから殺してやるよ(それから殺してあげるわ)

 

 BFFに所属していたフランシスカとユージンの人格移転型AIが搭載されたヘリックスⅣは、左背面のスナイパーキャノンをパージしました。先ほどの宣言どおり、私をコックピットから引きずり出すべく接近戦を仕掛けてくるようです。

 

 ハウリングのような不快な電子音を発しながら、左腕のマシンガン(03-MOTORCOBRA)と右腕の長射程ライフル(051ANNR)を構え、4本の脚で地面を蹴りつつメインブースターを連続で吹かして急速接近してきました。闇夜にメインブースターの派手な噴射炎が目立ちます。

 

 BFFフレームは、実弾防御重視の中遠距離狙撃機。対して、こちらも実弾に対して高い防御力をもっているGAのサンシャインですからそう簡単にはやられはしないでしょう。しかし機動力には雲泥の差があります。実弾兵装しか持たない近中距離機のプリミティブライトに、わざわざ遠距離武器を捨てて接近してくれるのは好都合ですが、接近されすぎてはこちらが不利になります。

 

 私は両肩のミサイル(POPLAR01)を牽制として斉射し、すぐさま迎撃のために腕武器を構えなおします。連続発射された左右合計16発のミサイル弾頭は、直進に近い軌道を描いて、こちらに突進してくるヘリックスⅣ( 熱 源 )に向かって誘導されます。

 

 しかし、相手の両肩からぶら下がるように備わったBFF製フレア(051ANAM)から発光体が散発的に発射され、赤外線探知で誘導された16発のミサイル弾頭は、敵機ではなくそれぞれの疑似熱源をターゲットと誤認してあらぬ方向へ向かいます。

 

 ヘリックスⅣは悠々とこちらへ直進。そして、射程へ捕らえたこちらへ向かってライフルとマシンガンを射かけてきます。私は後退しながら、ガトリングガンとバズーカで迎撃しますが、素早く左右へ動かれこちらが放った弾丸は虚空を切るばかりです。

 

 エネルギー効率に劣る四脚型に対しては、向上したプリミティブライトの上昇性能を活かして上空に逃げたいところですが、ソルディオス砲の対空砲撃があるため、高度を上げすぎる訳にはいきません。頭を押さえつけられたような感覚に加え、高度調整にも意識を割かなくてはならないことに息苦しさを覚えます。

 

 相手の執拗な突進を横方向にかわしては、距離をとってミサイルを放ちますが、決定打は与えられません。ミサイルへの対応は恐ろしく速く、こちらのランチャーのハッチが開いた瞬間に向こうはフレアの準備をしているようです。

 

 フレア発射までの動作ラグを反応速度の速さで補っています。運良くフレアに誘導機能を阻害されなかった弾体も、細かな足運びとクイックブーストの機動で見切られ避けられてしまいます。

 

 人格移転型AIは、人間の柔軟な状況判断能力とそれを遙かに越える思考速度と反応速度を有していると聞き及んでいます。また身体がないため、パイロットにかかる慣性加速度も無視できます。それは事実上、ネクストの機動性を100%発揮できるということです。

 

 射撃はベテランのそれのように正確。回避の際の切り返し速度は異常ともいえるほど速く、ぬるい狙いの射撃は一発たりとも命中する気配がありません。なにより目を引くのはあの4脚の足運びです。

 

 ネクストの基幹操縦システムであるAMSは、パイロットが行う身体動作思考を機体に模倣させます。二足歩行が標準である人間では4脚の完璧な独立制御は難しいため、四脚型はシステムによる補助が必要不可欠であり、通常のリンクスが乗る四脚型の動きはプログラム制御が介入するため画一化された動きに収まるのが普通です。しかし彼女らが動かす脚部は、それぞれがまるで本当の生き物のように生めかしく動きます。

 

 制動をはじめ、歩行、走行、跳躍のいずれの動作も個々の脚が素早く正確で効率的な動作をします。後ろ脚で地面を蹴りつつ、前足で方向転換。時には一本の脚を軸に他の脚で地面を蹴って急速旋回。安定性に優れる代わりに小回りが利かない四脚型の欠点を足運びによって完璧に解消しているといってもよいでしょう。

 

 それは身体感覚の支配を脱した人格移転型AIだからでしょうか。それとも2つの人格で機体を制御しているからでしょうか。どちらにせよ、二足歩行に慣れ親しんだ我々人間では到底不可能な動きです。その様相は4足動物というか、まるで虫のようです。ちなみに私は虫が大嫌いですッ。

 

 こちらの至近距離を周回するような機動で背後の位置を取ろうとするヘリックスⅣに対し、私はそうはさせまいと断続的にバックブースターを吹かして後退します。足運びができないように海上へ逃げようともしましたが、相手の高い機動性がそれを許さず、こちらは翻弄されるばかりです。

 

 高威力の弾丸を連続で吐き出すマシンガン(03-MOTORCOBRA)がこちらのプライマルアーマーを減衰させるとともに、高威力のライフル弾がプリミティブライトの厚い装甲板を直接叩き、コックピットにいる私の聴覚野に連続した轟音が届きます。

 

 ダメージモニタリングはオレンジを示す箇所が増えてきました。このままでは勝ち目がありません。本当にコックピットから引きずり出されて辱められてしまいそうです。とはいえ具体的に何をされるのでしょうか。

 

 もちろんどんなことであれ、辱められるのは御免被ります。仕方がありません。できることなら避けたかったのですが、使うしかありませんか。高度神経接続負荷(オーバーロードフラッシング)を。

 

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