ARMORED CORE for Bidden【ACfb】アーマード・コア4   作:あきてくと

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一等星(カノープス)×銀の弾丸(シルバーバレット)

 

「Cross Air-Water!」

 

 外部拡声器を使って叫びながら、私は戦域を離脱。もちろんネオニダスが駆るシルバーバレットの妨害を受けるが、メノ・ルーが搭乗するプリミティブライトからのガトリングガンの的確な斉射と、不可思議な軌道を描くミサイルの牽制が戦線離脱を援護した。

 

 私はオーバードブースト(OB)と前方へのクイックブーストを併用して、ORCAの逆関節機と戦うセロとミド・アウリエルの方へと全速で向かう。こちらの声と接近を感知したミドはすぐさま反応。即座にその場から離脱し、追撃を速力で強引に振り切ってこちらへ向かってくる。

 

 ミドはすれ違いざまに「了解」とばかりに右腕部を掲げた。

 

 作戦符丁とは言っても何と言うことはない。『Cross Air-Water』とは、ECMジャマー下でもコミュニケーションが取れるように事前に共有していた指揮コールだ。

 

 各員のコールサインおよびコールナンバーはミドが『Air-1』、セロが『Fire-2』、私が『Water-3』 、メノが『Earth-4』。『Cross』の意味は、それぞれの持ち場の入れ替え。

 

 つまり『Cross Air-Water』とは、ミドと私の配置を入れ替えることを意味する。

 

 ミドが乗る高機動機のマグヌスなら、ネオニダスの素早い動きにもついていけるだろう。メノの実弾武装とも相まって、シルバーバレットの強力なプライマルアーマーも削りやすいはずだ。

 

 メノが秘密兵器と称した特殊なミサイルは、おそらく肉体と精神への負担と代償にAMSレベルを強制的に引き上げる高度神経接続負荷(オーバーロードフラッシング)によるものだろう。

 

 ちなみに、私が所属するインテリオル・ユニオンではリンクスへの負担が増大するオーバーロードフラッシングの使用は禁止されている。「こんな戦闘のために身を削る必要はない」とメノに言ってやりたかったが、せっかくの心意気をそんな無粋な言葉で汚すことはできなかった。

 

 周囲のMTやACや固定砲台やらは単独で移動する私に砲火を集中させる。それらはオーバードブーストで突進しながらクイックブーストで左右へ切り返して回避。王小龍から狙撃は、奴自身が立つスピリット・オブ・マザーウィルの高い中央塔の構造体を利用して射線を切る。

 

 外野からの攻撃は一切無視して、セロと逆関節機の交戦ポイントへと私は搭乗機(シリエジオ)を進めさせた。

 

 アリシアベースの中量逆関節機を操るのはエミリオ・ウォルコット。リンクス輩出の名門ウォルコットの銘を持つレイレナードのランク外。

 

 我々第1世代リンクスにつけられたランクはあくまで国家解体戦争での戦績を順位づけしたものだ。第2世代リンクスであるミドらには、その続き番が登録順で割り当てられる。それに対してエミリオ・ウォルコットには番号すら与えられていない。つまり、その存在すらこれまで認知されていなかったということだ。

 

  ランク外とはいえ、No.6(ひと桁)のセロと対等に戦えることから、その実力はかなりのものだと言えよう。

 

 眼前で接近戦を繰り広げる両者の武装は、セロがアサルトライフル(MR-R100R)レーザーキャノン(EC-O300)。それに対しエミリオがアサルトライフル(04-MARV)プラズマキャノン(TRESOR)

 

 両機が扱う武器種はよく似ている。エミリオの方がやや重装。しかし逆関節特有の鋭い跳躍挙動には、上昇能力に優れた空戦機であるユディトベースのテスタメントでもさすがについては行けないようだ。セロとエミリオは空中で幾度となく位置を入れ替えながら応戦。両機体の周囲にはクイックブーストの噴射炎が幾多も瞬く。

 

 双方の距離が離れれば、セロはレーザーライフル(ER-O200)双対PMミサイル(MP-O601JC)を放つ。対するエミリオはハイレーザーライフル(HLR01-CANOPUS)双対PMミサイル(MP-O601JC)で応戦した。

 

 私のシリエジオが腕部に携えたレーザーライフルとレールガンは、高い弾速に特徴があるため重装備の相手ほどよく刺さるはずだ。

 

 まもなくレールガンの有効射程距離に入る。しかし、作戦時間が残り少ないため短期で決着をつけたい。少なくともレールガンの必中距離と言える300程度までは接近したいところだ。

 

 私の接近を察知したエミリオはセロと攻防を演じながらも、こちらにカノープスの銃口を向ける。私は放たれた極太の青色レーザーを前/横/前の連続機動(連弾)で回避しつつさらに肉薄する。

 

 連続機動の重力加速度変化で内蔵がシェイクされる。膨大な熱量を持つハイレーザーの余波にさらされて装甲温度上昇のアラートが頭に鳴り響く。対エネルギー防御に優れたシリエジオとはいえ、カノープスの直撃を受ければ致命打になりかねない。

 

 理想的な位置につけたところで、ここぞとばかりにオーバードブーストをカット。なおも慣性で前へ進もうとする機体を、最大出力のバックブーストで抑え込む。

 

 同時にコンクリート壁にでも叩きつけられたような衝撃。1,000km/h近くの速度から一瞬でその場で停止するような急制動に、内蔵だけが身体を突き破って前方へ飛び出しそうな感覚に襲われる。

 

 レッドアウトは起こらないため視覚に変化はないが、無理な機動で目眩に吐き気、激しい頭痛に耳鳴り。意識が飛びそうになるのを気合の発声で必死に保つ。

 

 それらとの対価として、跳躍したエミリオの横斜め下の死角に機体を滑り込ませることに成功した。今なら、リロード中のカノープスは確実に撃たれない。混濁する意識のなかで、私は本能的に照準を絞る。

 

 マーカー脇に示された相対距離は、理想に近い300弱。しかし、すぐには撃たない。与えられた持ち時間を最大限に使う。

 

 空中でセロの攻撃を回避したエミリオはスピリット・オブ・マザーウィルの飛行甲板へと降下挙動に入るが、ネクストはこの状況からでもクイックブーストで回避運動が可能だ。

 

 レールガンはまだ撃てない。狙うは着地の瞬間。脚部が接地し、膝関節部が縮みきるまでの僅かな間。逆関節機のブースター噴射口に注意を払いながら、焦らず、呼吸を整え、その一瞬だけを狙って私は仮想トリガーを弾く。

 

 しかし、奴のクイックブーストのタイミングは絶妙だった。これだけの近距離、なおかつ音速の数倍の速度で放たれた高質量弾は、機体脇をかすめるにとどまる。そのままクイックブーストの勢いで異形の脚部を縮め、その反発で逆関節機は再び鋭い跳躍。

 

「セロっ!」

 

 私は上空で待ち構えるセロに一声。そのタイミングを狙っていたかのように、セロがクイックブーストの加速を乗せたドロップキックで上昇途中にあった逆関節機を蹴落とした。

 

 蹴飛ばされたエミリオは、姿勢を取り戻せないまま甲板と甲板の間を落ちていく。ダメ押しに、私も機体のロックオンシステムに任せてレーザーライフルで追撃。射撃は横へのクイックブーストで回避されたが、浮上してくる様子はない。

 

 それどころか落下速度を高めながら落ちていき、地表を覆う砂塵に隠れて見えなくなる。

 

《チッ、エネルギーが。よりによってこの上空で。くっ、ダメだ、飛べん》

 

 ライフル弾が飛んでくるが、落下姿勢で放たれた苦し紛れの射撃ではこちらに当たるはずもない。

 

 スピリット・オブ・マザーウィルの空中甲板は地上500m以上のところにある。逆関節機とはいえ再浮上してくるまでにかなりの時間が稼げるだろう。

 

「セロ、ナイスシュートだ」

 

《ナイスアシスト。けど、無茶すんな》

 

 高G機動による血流異常と内臓損傷で荒ららぐ息を抑えながら称賛の声をかけると、セロも珍しく讃辞と慰労の言葉を返す。いつもこんな態度なら、可愛いものなのだがな。だからと言って、年寄り扱いはしてくれるなよ。

 

「時間がない。逆関節機が再浮上してくる前に、お前と私でシルバーバレットを抑える。行くぞ」

 

《おう》

 

 メノとミドがネオニダスと戦っている戦域へ戻ろうとしたところで、外部マイクが重々しい重低音を捉えた。周囲から押し寄せる射撃や砲撃の音とはまったく質が異なる、大型重機の稼働音のような腹に響く重低音だ。

 

「何の音だ」

 

《見ろ。マザーウィルの主砲が動いてやがる》

 

 言われたとおり、すぐ側にあるスピリット・オブ・マザーウィルの主砲を注視すると、本当に砲塔の基部が動いていた。右舷に目をやれば、もう片方の主砲も稼働している。砲塔はなおも微動を繰り返す。照準合わせ動作か。しかし、何に対して。

 

 砲口が向けられた先は、遥か虚空。狙いはまさか___

 

 聴覚野をつんざく炸裂音。視覚野を突き刺すマズルフラッシュ。それが3連続で繰り返される。強烈な衝撃波で一瞬視界がブレる。大気の震えが機体を通してコックピット内にまで伝わった。

 

 砲撃の先は我々が来た方向。その遥か遠くの空に視線を向けると水平方向に広がる複数の影を捉えた。望遠カメラで確認したそれらは、広く隊列を組んでこちらに接近する10機の空中要塞フェルミ(FF130-FERMI)

 

「どうなっている。フェルミの侵攻が定刻より早い」

 

 長距離無線で戦闘指揮所(CIC)へ問い合わせようにも、妨害電波で通信は不可。プラズマキャノンの影響はすでに極小だが、スピリット・オブ・マザーウィルから長距離無線帯域に向けてECMジャマーが発せられているようだ。

 

 直近で主砲発射の爆音と閃光にさらされたせいか、頭がグラグラする。打開策を練るも、何も思いつかない。混乱しながらも、とにかくネオニダスとの交戦領域に向かって機体を進ませる。

 

 幸い、メノもミドもしっかりと生き残っている。大きな損傷もなさそうだ。しかし忌々しいネオニダスの奴も健在だった。突然の砲撃には彼女らも驚いた様子だったが、その停滞も一瞬で、すぐさま戦闘機動に移り変わる。

 

 徐々に大きく映る視界では、ミドのマグヌスと、ネオニダスのシルバーバレットが空中で交差しながら火線を交える。素早い両機は、互いに弾が当てづらいようで膠着状態の様相だ。しかし、メノから放たれる牽制射撃がシルバーバレットをかすめて動きを抑える。シルバーバレットの周囲には時折プライマルアーマーの光が灯った。

 

 こちらも、まもなくシルバーバレットをレールガンの射程に捉えられる。私より先行していたセロはすでに攻撃を開始していた。

 

「シルバーバレットはこちらに任せろ。メノとミドは主砲の破壊を」

 

《はいッ》《了解》

 

 私は自身の混乱を振り払うように叫ぶ。同時に、メノたちを混乱させないように明確な作戦指示を明瞭な言葉にして。

 

 予定時刻より早期に侵攻を開始したフェルミのおかげで、こちらの動きは制限される。もはや行動を隠す意味もない。また、その時間的余裕もない。

 

 スピリット・オブ・マザーウィルの主砲を破壊できなければ、フェルミが落とされる。そうなれば作戦失敗だ。

 

 なぜこうなった。まさか我らがレオーネメカニカの暴走? それとも、我々の作戦遂行の遅さに業を煮やしたオーメルの指示か?

 

 あと、考えられるのはORCAの裏工作。だとしたら、スパイの存在はこちらのかなり根深いところにまで潜り込んでいることになる。

 

 なるほどな。これが、奴らが余裕をぶっこいていられる理由か。まったく、とんだ“盤”狂わせだよ。クソが!

 

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