まちカド☆白書   作:伝説の超浪人

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今回は幽助メイン
リコが色んな意味で強化されてます。こんなのリコじゃない!という意見もあるかもしれませんが、幽白成分込みのせいかもしれません。あとリコの方言は難しいので違っていたらすみません!!



15話「喫茶店あすらです!」

「浦飯さん、そろそろこの街の魔族を探してきてくださいませんか?」

 

「あん?」

 

夏休みに入って数日、シャミ子の部屋に入り浸っている桃はそう提案した。

 

引っ越してからは毎日ばんだ荘のお互いの部屋に行き来している3人は、今日も同じ部屋で遊んでいた。今日はミカンの部屋で集まっており、シャミ子が持ち込んだスーファミのマリオカートでミカンとシャミ子は勝負中である。そして幽助はそれを眺めていた。

 

「私じゃダメなんですか?」

 

シャミ子は画面から目を離さずヨッシーを操作しながら尋ねると桃は首を横に振った。

 

「相手の魔族がどの程度の実力か分からないからシャミ子だと危ないかもしれないし……ここは最大戦力の浦飯さんに行ってもらいたいんだ。結界が張られているので私たち魔法少女は近づけないし。小倉が作ってくれた魔力計も、結界の中に入られると機能しなくて……」

 

捜索にうってつけのアイテムである魔力計であるが、結界の中に魔族が引きこもってしまうと外に魔力が洩れないため発見することができないのだ。

 

そのため結界に引きこもった魔族を見つけるには、地道に結界の札が貼られている建物を見つけなくてはならないのである。

 

「なるほど……あーっ!バナナにー!」

 

「フフ、バナナを制する人はゲームを制するのよ」

 

「今結構真面目な話をしてるんだけど……」

 

桃の説明でシャミ子は納得したらしく、レースのほうに意識を戻した瞬間バナナを踏んだ。魔族捜索、つまりそこから千代田桜捜索へと繋がるのだが、どうにも緊張感がなく、桃はため息を吐く。

 

「桃ってば話すタイミング悪いのよ。もう少しで終わるわ、私の勝利で」

 

「負けませんよー!」

 

ミカンは柑橘系のキャラがいないのでキノピオで我慢していた。ピーチは桃の持ちキャラである。

 

「よし、久々のシャバだぜ!」

 

勝負に参加していない幽助は久々に自由になれると思い声が弾んでいた。幽霊騒ぎの時は僅かな時間の交代だったため、ストレスは発散できてなく、後でもっとあのクソ野郎をボコボコにしとけばよかったと語ったほどだ。

 

「あー、負けちゃいました。ところで浦飯さん、変な場所で遊ばないでくださいよ?私の体なんですから」

 

「わーってるって。その魔族に情報を吐かせりゃいいんだろ?例え罠があろうと、虎穴に入らずんば虎子を得ず!だぜ」

 

「つまり突撃ってことね……」

 

「ところで桃、魔族がどこにいるか分かったのかよ?」

 

闇雲に動いても時間の無駄であるし、魔族捜索を決めてから割と時間は経過している。そう言った情報がないか、幽助は桃に尋ねた。

 

「杏里から聞いたのですが、商店街の喫茶店「あすら」のマスターが魔族で、インパクトの強い外見だそうです。とりあえず得ている情報はそれくらいです」

 

杏里曰く喫茶店「あすら」は割と繁盛している店だそうで連日ランチは混雑しているらしく、リピーターが多いのだが取材は断っているという。

 

「杏里ちゃんはどっからそういう情報を仕入れているんですかね……?」

 

「割と謎よね」

 

「よっしゃ、早速突っ込んでみるか!」

 

そういうことでシャミ子と幽助は入れ替わり、幽助は1人でたまさくら商店街へと足を運んだ。

 

夏休みということもあり、商店街は人で賑わっている。

 

こうして幽助が歩いていても様々な店の店員は警戒せず普通に営業している。幽助が元の体で地元を歩いても入店すらさせてもらえないほど警戒されていたので、少し新鮮である。まぁシャミ子の体なので当然なのだが。

 

もっともその原因は無銭飲食やら万引きを繰り返した幽助のせいであるのだが、まぁ若気の至りというものだ。

 

少し寄り道しようかと考えたが、幽助としてもさっさと元の体に戻りたいので、今日はまっすぐ喫茶店あすらに向かった。

 

そして発見した喫茶店あすらは堂々と看板を掲げている店だった。表通りに面しており、隠す気など全くと言っていいほどない。外観も普通で、唯一おかしなところと言えば結界の札が壁にあられている点だけであろう。

 

「結界の札もあるし、ここみてーだな」

 

どうにも外からでは店の中の魔族の魔力を感じられないので、敵の強さが分からない状態である。確かにこれでは経験が浅く実力がまだまだ足りないシャミ子では危険かもしれない。

 

幽助は敵の強さを肌で感じられない状況をどこか懐かしく思っていた。ちょうど仙水たち……能力者たちを捜索していたころにそっくりである。店に入って対峙したのは室田だったか。

 

開店時間前で準備中という看板が立てられていたが、そっちのほうが邪魔も入らないであろうから都合がいい。幽助は躊躇なく扉を開けた。

 

「さて、鬼が出るか蛇が出るか……たのもー!」

 

勢いよく開けると、まだ開店前で店はガランとしていた。気配は2つ。そのうちの一つがこちらへ近づいてきた。

 

「いらっしゃいませ」

 

青髪のウエイトレスの格好をした少女が幽助の目の前に立った。獣耳と尻尾が生えており、誰がどう見ても純粋な人間とは言えないだろう。どうやら妖狐らしい。

 

「ここのマスターに話があるんだが、今いるか?」

 

「一応開店前なんやけど……お客さんじゃなさそうやね」

 

「まぁな。用事が終わったらビール一杯でも頼むからよ」

 

「把握。マスター呼んでくるわ」

 

少女は幽助を上から下までじっくりと観察して、奥へと引っ込んだ。どこか粘つくような視線を向けられて少し鬱陶しく思ったが、幽助は大人しく待った。

 

「僕に用があるのは君かい?」

 

「ああ……ってあんた、何だその怪我?」

 

少しして現れたのは白色の胴体以外は黒一色で、鼻が少し長い獣であった。

 

二足歩行だが、左腕を三角巾で吊るしており、足も痛めているのか杖を突きながらやってきた。どう見ても怪我人である。いや、この場合は怪我魔族であろう。

 

「マスターの白澤だ。この間バクだけにバク転に挑戦したら失敗してしまって、それで傷だらけなのだ。こっちの子はリコくんだ」

 

リコと呼ばれた妖狐の少女はほんの僅かに頭を下げた。どうやら今この店にいるのはこの2人だけらしい。

 

「あんたバクなのか……てっきり豚かと思ったぜ」

 

「結構失礼だな君!」

 

白澤の体型としては誰がどう見ても肥満である。幽助としては豚みたいな妖怪はよく見ていたし、暗黒武術会の観客にもいたような気がするので物珍しくはない。しかし豚とバクは白澤としてはだいぶ違うらしく、憤慨していた。

 

「まぁまぁマスター、最近結構太ってきたし、しゃーないんちゃう?」

 

「それを言われると……」

 

リコと紹介された少女は白澤の肩に手を置いて耳元で話しかける。かなり距離が近い行動であったが白澤はお腹をさするだけで、それ以外の反応は示さなかった。

 

一瞬幽助は「この2人デキてんのか?」などと考えたが、どうも白澤の方はそういった気がないように見える。

 

「(まぁどうでもいいか)」

 

正直からかいのネタにはなるが、今日は真面目な話で来たので後回しにすることにした。

 

「早速こちらの用事をすませてーんだが、いいか?」

 

「バイトの面接かね?」

 

「ちげーっての」

 

バイトではないと分かると、白澤はひどく驚いた様子だ。どうもこの白澤という魔族はマイペースらしい。幽助から見て隙だらけ……というより喧嘩もしたことがないであろう立ち振る舞いに見える。

 

それより注意すべきは後ろの獣耳の女の方であろう。この白澤と違い、立ち振る舞いから見てかなり場数は踏んでいるように見えた。

 

「何!?バイトでなければ何だというんだね?」

 

「消えちまった千代田桜っつー魔法少女の行方と、この街の結界について聞きたいくてな」

 

そう言った瞬間、リコの魔力が乱れた。魔法少女、という言葉に反応したのか、又は千代田桜を知っているのかは分からないが今は先ほどと同じ魔力に戻っている。

 

幽助はそのリコに口元に笑みを浮かばせながら尋ねる。

 

「あんた、リコっつったな。何か知ってんのか?」

 

「魔法少女は嫌いなんや。でもその千代田桜はんは知っとるえ」

 

「ホントかよ」

 

リコはちらりと白澤を見ると、白澤も頷いた。どうやら2人とも面識があるらしい。いきなり大当たりと言ったところだ。

 

「どこで知り合ったんだ?」

 

「元々この店は千代田桜どのの斡旋で始めることが出来てね。しかし私が最後に会ったのはその開店前の10年前なのだ。桜どのはもしや行方不明なのか?」

 

「そーなんだ。だから今知ってそうな魔族を探しててな。リコっつったか、あんたは何か知ってるか?」

 

その問いにリコは首を横に振った。どうやら行方は知らないらしい。

 

「ウチも昔は色々転々としててな。その時出会ったのが桜はんで、料理がしたいと希望したらここを紹介してくれたんや。ウチも最後に会うたのはマスターと一緒や。でも何で桜はんの情報と結界について集めておるんや?」

 

「簡単に言うとな……」

 

幽助はこの街に来てから……というより幽助が封印されてからの経緯を話し、シャミ子の家族の話やこの街の結界そのものが弱まっており、それにより強力な魔族が集まりつつあることを話した。結界を改めて強化するには千代田桜の力が必要であり、また吉田家の封印もどうにかしてほしいと考えていると話した。

 

魔族との戦闘の話になると白澤は顔が青ざめていったが、リコは全く変わらない様子だった。彼女が大きく反応したのは、幽助の封印と、今はシャミ子の体を借りているという点だった。

 

「なるほど……それは一大事だ。ぜひ我々も協力をさせてほしい。いいかいリコ君?」

 

「ウチはええよ。でもさっきまでの話がホンマかどうかちょーっとわからんからなぁ……?」

 

リコは口角に右手の人差し指をつけて、悩んでますといった具合のポーズを取った。外見はかわいらしさがあるが、どうにも胡散臭さが鼻につくような仕草で、幽助を苛立せたいらしい。

 

「オイ、何が言いてぇーんだよ?」

 

幽助もそれが分かっているので、目を細めて胡散臭そうに見ると、リコは少し笑った。

 

「話通りなら幽助はんはとっても強力な魔族らしいけど、そんなお人が知らぬ間に封印されるなんて、ちょっと考えられへんし……ちょーっと嘘くさいなぁと」

 

「……それで?」

 

「今の話で今すぐ実際に確かめられることと言うたら、幽助はんが本当にウチより強いかどうかだけやもの」

 

せやろ?と笑って確かめるリコの目はとても楽し気である。無論それを聞いた白澤はギョッとしていたが、リコは明らかに無視していた。そして幽助も体を動かせるチャンスに喜んでいた。

 

「いいね、久しぶりに喧嘩ができらぁ。で、どこでやる?」

 

「ふふ、嬉しそうですなぁ。近くに良いところがあるんで、そこに案内しますわ」

 

そう言ってリコは先頭になり店の裏から出ていき、幽助はそれにホイホイ従った。白澤が何度かリコにやめるよう言うが、大丈夫と言ってリコは聞く耳を持たず、白澤は折れた。

 

少し歩くと、都内では珍しく林がある場所だ。無論狭い土地だが、少し体を動かす分であれば可能な広さである。

 

「ここでええやろ。開店時間も近いことやし、手早く終わらせましょ」

 

「言ってくれんじゃねーか。そんなに自信があんのか?」

 

振り返ったリコの表情は不敵である。明らかに挑発であるが、幽助はわざと乗った。喧嘩の前のこういった軽口の言い合いも、実は幽助は好きなのだ。

 

それにこのやり取りは、北神と初めて会って手合わせしたときの会話に似ている。あのときは北神の能力と心理トリックに一杯食わされたが、今回はどう来るのか……幽助は楽しみだった。

 

「はて、どうやろか?」

 

いつの間にか、リコは木の葉を指に挟んで持っていた。

 

「さて、準備はええですか?」

 

「いいぜ。来いよ」

 

「それじゃ、失礼……」

 

指に挟んでいた木の葉を離すと、1枚だった木の葉が徐々に増えていき、リコの周りを包むように覆っていく。

 

一瞬リコの体が木の葉に覆われて見えなくなるほど、辺りに木の葉が増えていった。

 

「(まるで蔵馬みてーな技だ。植物の操作系か?)」

 

今の目の前で起こっている光景は、かつて暗黒武術会で蔵馬対鴉戦で蔵馬が最初に見せた技に似ている。たしか風華円舞陣といったか。

 

しかし操作系などとそう思わせておいて、別の能力者である可能性も十分あり得るのだ。幽助は先ほどまでの言動から、リコは真っ向勝負を仕掛けてくるタイプではなく、罠に嵌めるタイプだろうと予測していた。

 

ただこのまま待ったところで事態が好転するわけでもない。故に仕掛ける。

 

「うらぁ!」

 

幽助は始めの位置から移動せず、右のアッパーカットを繰り出した。妖力と拳の速さが合わさった一撃はアッパーカットの風圧のみで、舞っている木の葉を吹き飛ばした。

 

それだけでなく、拳の衝撃波は正面の地面も吹き飛ばしつつ、リコを襲った。

 

衝撃波を横に躱したリコは木に足をかけ、そのまま木を蹴り幽助へ突撃した。

 

交差する視線。幽助は余裕をもって、突撃からの首を狙った爪攻撃を躱すと同時に交差するように左拳を彼女の顔面目掛けて繰り出した。

 

「何!?」

 

確かに左拳は直撃した。しかし拳がリコの顔面に命中した瞬間、彼女の顔が木の葉になって、木の葉が無数に舞った。

 

木の葉で作った分身である。正確に言えば木の葉のみで人の形を作り、木の葉にまるで実体のような質感と色合いを持たせたのだ。

 

「(本体はどこだ!?)」

 

幽助はリコの魔力を探そうとするが、殴ってバラけた木の葉が幽助の手や足にくっつき始めていた。

 

「ちっ!」

 

幽助は藻掻くが瞬く間に木の葉は足から首まで覆い、口に迫ろうとしていた。

 

「頂きや」

 

その瞬間、木の陰からリコが魔力を込めたため光り輝いている木の葉を指で挟み突撃してきた。狙いは首筋。

 

「嘘だよバーカ」

 

だが幽助はその姿を見て笑った。ここでリコは先ほどまで焦って抵抗していた姿はフェイクと気づくが、一瞬遅い。

 

「はっ!!!」

 

全身から妖力を放出することで、纏わりついていた木の葉もろともリコを吹き飛ばす。

 

空中で回転することで上手く着地が取れたリコが顔を上げた瞬間、頬に衝撃が走る。数m吹き飛ばされて体勢を立て直すと、拳を振りぬいたままの姿勢の幽助が立っていた。

 

「とりあえず思いっきり手加減してやったぜ」

 

「……いややわぁ幽助はん。乙女の顔を殴るなんて、ひどいお人や」

 

「オレは喧嘩するなら老若男女容赦しねーぜ」

 

頬を手で拭って、リコは立ち上がった。殴られた割にはあまりダメージはなく、少し口の中を切った程度だ。

 

先ほどの魔力で強化した木の葉の拘束をただのパワーの放出で剥がした手並みの良さ。リコはその時感じたパワーも相まって、嬉しそうに口角を上げた。

 

「まずはどんなもんか様子見ってことだ。久しぶりの喧嘩だし、もっと楽しみてーからよ」

 

「そうやねぇ……ウチも久しぶりの喧嘩やし」

 

リコはそう言いながら、ポケットに手を突っ込む。何か道具を用いるつもりだろうか。幽助は注意深く観察した。

 

そしてリコが取り出したのは――――白旗だった。

 

「参りましたわ。ウチの負けです」

 

「……何ー!?」

 

むしろここからが本番だろうと意気込んでいた幽助は大声を張り上げた。その様子を見てリコはニコニコしている。一杯食わせたので嬉しいのだろうか?

 

「おい、こっからが本番だろーが!なんで辞めんだコラァ!!」

 

「いやぁ、元々幽助はんが強いいうのは知ってはったし、本当に直で試したかっただけなんですわ」

 

ホンマですよ?と語るリコを幽助は胡散臭そうに睨みつけた。幽助としてはどうにもこっちの反応を見てからかっているだけの気がして、気分が良くない。

 

「知ってただぁ~?どこで知ったっつーんだよ」

 

「実は少し前の夜に買い物に外出していたらかなりの魔力を感じましてな。その方向を見ると赤い一撃で天狗みたいな魔族を倒して、そのままその赤い一撃が空に消えていったのを遠くから見てたんですわ」

 

赤い一撃と言われ、幽助は一瞬悩んだが、こちらに来て霊丸を空に向けて撃ったのは一発だけである。

 

そう、ミカンが来た日にシャミ子と入れ替わって、カップルを喰った天狗の魔族を倒したときのことを思い出した。

 

「夜って……ああ、思い出した。確かあの天狗みてーやつか。でもあんとき他の魔族の気配はなかったはずだぞ?」

 

「ウチ、目がいいんですわ。それにあれほどのパワー、感じないほうが間抜けですわぁ……マスターは家でぐーすか寝ておったけど」

 

リコは頬に手を当てて悩まし気な息を吐いた。馬鹿にしている雰囲気ではなく、見た目に似合わない妖艶な雰囲気を醸し出していた。

 

幽助は別に惚気話は聞きたくないので、あえて触れることはしなかった。

 

「んじゃテメーは、マジでオレを試したってことかよ」

 

「そうや。ホンマに強かったら協力したろ思うとったんですわ。巫女さん……今は魔法少女やったか?ウチはそいつらが嫌やから、強い相手の言うことなら聞こう思うとったんですわぁ」

 

プライドの問題やね、と悪びれもなく宣うリコの様子に、幽助はまだ納得してなかった。

 

「理由は分かった……でもオレはまだ戦い足りねーぞ!続きやんぞコラァ!」

 

「いやー、血の気の多い方や。でもこれ以上やったらマスターが大変なことになってしまいますよって。ホレ、そこ」

 

リコの指さした方向を見ると、地面に上半身が埋まっている白澤の姿が!

 

しかも何やらビクビクしている。呼吸ができず危ない状態かもしれない。

 

「このまま続けたら、くそ雑魚のマスターは余波で粉々になりますわ。協力者が物理的に消えますが、それでもやります?」

 

「……あー!あの豚弱すぎんぞ!!確かに情報知っているやつを粉々にするわけにはいかねーし……だーっ、今日はやめにしてやる!でも今度はマジでやるからな!いいな!?」

 

「いやぁ、生粋のバトルマニアですわぁ」

 

幽助は文句を言いながら、白澤を地面から引き抜いた。幽助は文句を言いながら白澤の状態を確認している。

 

2人は全くリコの方を気にしていなかった。そんな2人の様子を少し離れたところから見て、リコは唇を少し舐める。その瞳は黒く濁っていた。

 

――――マスターも見てる前で本気でやったら嫌われてまうしなぁ、こんな良い相手は心行くまで楽しみたいですし……ふふ。

 

下腹部が熱くなるのをリコは感じていた。幽助という魔族の強さは自分の想像の上を行っていた。だからこそ心行くまで戦いたい。

 

何故なら自分も戦いが大好きなのだから。

 

リコは白澤と出会うまで各地を転々とし、いろんな場所で料理を続けてきた。そして同じように魔法少女も料理し続けてきた。

 

魔法少女はそのシステム上、魔族討伐に精を出す者がほとんどだ。魔族を狩るごとにポイントが溜まり、一定数溜まると願いが叶うのだから。だから料理で評判になると、どこからか噂を聞きつけた魔法少女が襲ってくるのだ。

 

曰く、料理で人心を操る卑劣な魔族である。だから滅すると。

 

それは間違いではない。リコの料理は魔力を込めることで、リラックス効果を生んだり、中毒性を生み出すことが出来る。その効果を上手く使っているから、喫茶店「あすら」は繁盛している。もっとも白澤には中毒性があることまでは言ってないが。

 

その能力の匙加減次第では魔法少女にバレない程度にすることもできるが、そうはしない。

 

獲物がかかるのを待っているのだ。この身は魔族、追われて当然なのだ。だから襲ってくるのを待っている。でも魔法少女は追い詰めたと勝手に勘違いしてくれる。

 

それが楽しいのだ。魔法少女たちが思惑が外れた時に浮かべる表情、劣勢になっているときの表情、そして散る間際の表情。全てが好きだ。

 

わざと恨みを残すよう、2人組で来たら片方は消滅させ、もう片方は残したりもした。そうすることで恨みが熟するのを待って、実力と恨みが熟れたところを収穫するのだ。

 

――――積み上げてきたものを自分の手で崩すとき、何とも言えず快感だった。

 

だがこの街でそれをやるには白澤と魔法少女。この2つが自分たちの戦いの邪魔な要素であろう。ならば邪魔されないためにはどうするか。

 

そう、一旦戦ったことによりそこそこ腕は立つが幽助であれば完全に抑えられると認識させることができる。

 

しかもその戦力が協力してくれるというプラスの感情を魔法少女たちに持たせることが出来る。魔法少女は傾向として良い子ちゃん……言うなれば根の部分では素直な人間が多いからだ。

 

場合によってはそいつらとも遊ぶこともできるし、正の感情を刺激すれば誘導もできるだろう。結界が緩いとなれば、今後面白い魔族がやってきて戦えることもできるかもしれない。その魔族に釣られて、新たな魔法少女も来る可能性もある。

 

「しばらくは退屈しなさそうですわぁ……❤」

 

ぽつりと溢した言葉は、薄気味悪さだけが残った。

 

 

つづく




ネット上だとリコに対してマイナスイメージがあるという意見もありますが、実際ちょっと薄気味悪いというか、普通に皆に紛れているんだけど、根本的な部分で人外的な感覚を持つキャラっていうのは結構好きです。樹とか好き。

ただ作者の技量で彼女を上手く生かせているかは不安しかないですね……。
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