街に関してのオリ設定ありです。
さて、浦飯さんが喫茶店「あすら」で交渉してから1日経ちました。そのお店の魔族2名は協力してくれて、今日のお昼頃にばんだ荘の私の部屋に来てくれるそうです。
今回2名を呼ぶ理由は知っている情報を開示してもらうことと、今後有事の際協力してもらうことです。
先日大方の話は浦飯さんから聞いてます。しかしやはり細かい部分も聞きたいというのと、協力するからには一度顔を合わせる必要があるからということで、本日話し合いに来てくれることになりました。
まさかこんなにスムーズに事が進むと思っていなかったらしく、桃が驚いていたのが印象的でした。それに対して浦飯さんは「信用ねーな」とちょっと文句言ってましたが。
今は解散したそうですが、浦飯さんて魔族の国で一時期国家元首だったらしいですし、そういった交渉は得意なのかもしれません。
これから来てくれる2名はバクで喫茶店マスターの白澤さんと、妖狐のリコさんだそうです。いわばアニマル系といったところでしょうか。
お母さんもアニマル系の2名を迎えるために、いつもより多く野菜と果物を揃えています。狐だから油揚げの方がいいのではないのでしょうか?
「桃もそう思いませんか?」
「パーティーするわけじゃないんだから……それに肉食系かもしれないし」
「お肉ガツガツ系ですかね……?」
昔話の狐の場合は油揚げですが、実際の狐って何を食べるんでしょうか?はたまたベジタリアンかもしれません。ううん、お客様を招待したことなど我が家にはほとんどないのでかなり悩むところです。
「お、来たみてーだな」
浦飯さんがそう呟くと、門の方に人影が見えました。確かに、遠くからでも特徴的なシルエットをしているのが分かります。
近くまで来ると、確かにバクと狐の2名でした。この2人で間違いないでしょう。
「よう2人とも!今日は来てくれてサンキュな!」
私の手に持たれている邪神像の浦飯さんがそう呼びかけると、2人ともマジマジと邪神像を覗き込んでました。まぁ初見の人は普通はびっくりしますよね、これ。
「……ホンマに幽助はん、そのへんてこな像に封印されとるんやなぁ……ウチびっくりや」
「本当だね……あんなに強い彼がこんなへんてこな像に封印されているなんて……」
2人は我が家の邪神像をボロクソに評価してました。ちょっとかわいい感じのデザインだと思うんですけど……どうやら感性が違うようです。
「初めまして、吉田優子改めシャドウミストレス優子と言います。白澤さんとリコさんでよろしいですか?」
そう名乗ると、白澤さんのほうが目を丸くしてました。リコさんという方は薄く笑ってますが、何か変だったでしょうか?
「いや失礼、私はバクの白澤と申します。こっちがリコくんだ。いやー、浦飯くんから聞いていたが、やはりシャミ子くんは浦飯君とは声と雰囲気が全く違うな!びっくりしたよ」
「せやなぁ……よろしゅうな」
そう言ってリコさんは右手を差し出してきました。表情や雰囲気も何だか柔らかい感じの人ですし、今もニコニコしてます。魔族というと戦ってきた感じだったので、リコさんや白澤さんは怖い人たちじゃなくて良かったです。
私はそう思って右手を差し出して握手して、リコさんの目を見ました。
「ん~~……えぇな♡」
「え……?」
ポツリとリコさんが何かを呟きましたが、よく聞こえなくて聞き返してしまいました。するとリコさんは首を少し傾けます。
「おい、シャミ子に変なことすんじゃねーぞ」
「幽助はんてば、いけずやわ~。よろしゅうな、シャミ子はん」
「あ、はい……」
特に何もされてないのですが、浦飯さんから注意を受けたリコさんは少しむくれてました。その後にこりと笑ったリコさんからパッと離された手が何故か少し気になりましたが、まぁ気のせいでしょう。
2人を伴って我が家へ招待します。どうやら白澤……マスターの方は雑食らしいので何でも良いそうです。リコさんは酢抜きのおいなりさんを希望してました。
「リコ君、初対面の方の家でその注文はやめたまえっ!」
「オメー結構厚かましいやつだな」
「いやー、居候みたいな幽助はんには言われとうないですわ」
「確かに……この人ビールとかめっちゃ飲みますし……」
「おい、そこはフォローしろよシャミ子」
浦飯さんがそう言ってきますが、結構浦飯さんて注文細かいんですよね。まぁ酒飲ませておけば結構そっちに気を取られるので、お酒中心にしてますが。
とりあえず注文通り2人の前に品をお出しします。ニコニコして2人とも美味しいと言ってくれました。お口に合って何よりです。
「……そろそろよろしければ、姉の件について最初からお聞きしてもよろしいですか?」
流れを切るように桃がそう言うと、何人かは姿勢を正しました。
リコさんとマスターは浦飯さんから聞いた話をもう一度一通り話してくれました。うん、やっぱり聞いていたのと同じ内容です。
「バクさん、今の話もう一回して!」
「ピィィェ!?」
すると話の途中で一緒に話を聞いていた妹の良子が、マスターの鼻を掴んだではありませんか!マスターは痛みで悲鳴を上げます。良の力で悲鳴を上げるということは、このマスターは武闘派ではないようです。
あ、ダメダメ。情報分析している場合ではありません。失礼を働いた良を叱らなくては。
「ちょっ、良!?お客様の鼻を絞ってはいけません!」
「でもこのバクさんすごく大切なことを言ってる!」
大切なこと?一連の話で何かおかしな点があったのでしょうか?
良に先を話すよう促すと、良は桃から譲ってもらったパソコンで今までの話を時系列順にまとめてスライド式で発表し始めました。いつの間にそんなハイテク技術を……。
簡単に言うと、マスターが千代田桜さんがいなくなってから3日後の12月28日に、ショッピングセンターマルマ前に現れた白い猫がマルマの向かいの建物……「せいいき記念病院」の壁に消えていくのを目撃したとのこと。
またリコさんが言うには、魔法少女は魔力切れになるとコアになるそうで、動くタイプとそうでない2種類が存在しているそうです。壁に消える猫なんて普通じゃないですからね。まずコアとか魔法関係でしょう。
さらに10年前の12月28日のせいいき記念病院に私は入院していて、私は覚えてないのですが、お母さんが私が「白い猫に会って一緒にお喋りした」と話していたことを話してくれました。喋る猫も普通じゃないから、壁に消えた猫と同じ猫でしょう。
つまり白い猫は消えた千代田桜さんのコアである可能性があり、何かしら私が会話をしているということになります。
確かにマスターは大切なことを言ってました。てゆーかよく気づきましたね。さすが私の妹です!良の頭を撫でると、良は恥ずかしそうにしてます。
「偶然にしちゃ出来過ぎだな」
「シャミ子、そのとき猫と何をトークしたか覚えてない!?」
桃が私の角を両手で掴むと、じっと目を見つめてきました。きょ、距離が近いです……!
それに当時は入院していて、大体意識がもうろうとしていた時期だったので何をしていたかなんて覚えてません。
「そ、そんな昔の会話覚えてないですよ~」
「思い出して!頑張って思い出して!!ひねり出して!!」
「愉快なお人やなぁ」
「あああ、揺らさないで~!」
桃が私の頭を掴んでシェイクしてきますが、思い出せません。素直にそう伝えると、桃の腕の力が抜けていきました。
「忘れた記憶を思い出す方法とか、何かないの浦飯さん?」
「記憶を探し出すね~。柳沢の模写があれば記憶も簡単に探れるんだが……」
「ほほう、どういう能力なのかね?」
「能力が模写って奴でな。相手に触れることで姿形・記憶・声紋・指紋……霊力とかの気紋までコピーできるんだ。あいつに隠し事はできねーな」
「チートすぎるな……その人に連絡は取れないのかい?」
マスターの言う通り、その人が私に触れば全ての記憶が探れるのならその人に丸投げしたいんですが……浦飯さんの仲間は一向に見当たらないみたいですし、望み薄でしょう。
「他の連中もどこにいるか連絡つかねーからダメだな。いねー奴の能力を言っても意味ねーし、別の方法を考えよーぜ」
「ですね。別の方法を考えましょう」
柳沢さんの模写があれば一瞬で解決できたのに、なんだか悔しいです。それにしても記憶を探し出すなんて、まるでRPGみたいな感じですね……記憶のダンジョン的な。
私は記憶を探るという言葉で、この前見た番組を思い出しました。
「そういえば浦飯さん。いつも私と浦飯さんが寝てるとき話している封印空間みたいに、記憶を探っていくとかできないんですかね?この前TVで前世の記憶を探るみたいな番組やってたじゃないですか」
「あの胡散くせーやつだろ?あんなんやらせだってーの」
「……今聞いたシャミ子はんの能力は寝られるときも発動できるみたいやし、記憶も見れるかもしれへんな」
浦飯さんの否定の言葉でダメかな~と少しへこんだ私に、リコさんがそんなことを呟きました。
毎日夢の中でやっていることと言えば、修行しているか遊んでいるかの2択だったので、記憶を探すなんて考えもしなかったです。そっか、あれは一応能力の範疇に入るんですね。
「おお、確かにいけるかもしれねーな」
「それは思いつきませんでした!」
「……浦飯さん、シャミ子……」
桃がすっごい呆れた顔で私たちを見てますが、思いつかなかったんですからしょうがないと思います。私は悪くねぇ!
「……つまりシャミ子の能力を十分に発揮したまま寝ることが出来れば、記憶を探ることが可能かもしれないということですね?」
「せや。問題はどうやって発動したまま寝させるかやけど……」
桃が質問するとリコさんが答えました。うーん、まるで思いつきません……。
何かいい案はないかなと思い、ちらりとお母さんの方を見ると、お母さんは両拳をぐっと胸の辺りで握ってました。え、ファイトってことですか?やだ、ただの精神論ですよソレ……。
「だったらよ。幽体離脱させて、霊体のまま変身して妖力を高めた後自分の体に戻ればいいんじゃねーか?霊体でも能力は使えることはオレが経験済みだから大丈夫だ」
浦飯さんの発言におお、と数人漏らしました。そういえば前に浦飯さんは霊界のクーデターの時に霊体のまま闘ったとか言ってましたね。何でもありですねこの人。
「でも霊体になるって、具体的にどうやればいいんですか?」
「霊体になるコツは起きながら寝る感じや。後は慣れですわ」
そう言ってリコさんの体から霊体がすっと体から浮き上がり、そしてすぐ戻りました。な、なんという早業……。
「そーそー、そんな感じ。無理だったら霊体だけ起こせるかリコ?」
「寝たってくだされば、すぐできますよって」
「まだ午前中なのに寝れませんよ」
そう言った次の瞬間、後頭部に衝撃が走りました。そしてすぐ机に突っ伏している自分の体を上から見ている状態になっており、そんな私の後ろには桃が杖を持って立ってました。もしかしてこれは幽体離脱をすでにしている状態ですか!?
状況を見るにもしかして桃が後頭部叩いて気絶させたんですか!?殺す気ですか!
「おのれ桃!いきなり攻撃するとは、殺す気かー!」
「後で何か奢るから、今回はこのまま行って」
「微塵も誠意が感じられない!?」
「大丈夫だ。オレも幽体離脱のときはお袋に気絶させられたからな。早く変身して、自分の中に入れよー」
「ああもう、魔族使いの荒い人たちですね!桃は後で覚えてろー!」
私は怒りながら変身し、自分の中に入りました。
目を開けるとそこは病院でした。しかし普通の病院とは違い、一本道で奥まで見えないくらい長い廊下が目の前に広がっていました。短い間隔でかなりの数のドアが設置されており、まるでダンジョンのようです。
少し歩くと注射器やら点滴の吊るす装置みたいなのが勝手に廊下を動き回っていました。殺気とか敵意とかは感じないので悪いものではないようですが、どうもこちらに近づいてきています。
「はたして倒していいんでしょうか……?」
自分の記憶の物体を倒したら、後で記憶を失うなんてのは御免です。私は間を縫うようにして走り抜けました。注射器たちは動きが遅いので、少し早めに走れば追いつかれません。
「しかし都合よく猫さんとの会話の記憶を探し出さなくては……」
何度か注射器たちに遭遇しましたが、上手く躱しつつ廊下をしばらく走ります。しかし道がずっと続いているだけで終わりが見えません。やはり廊下にあるドアを開いて確かめるしかないのでしょうか。
周りに何も潜んでいないことを確認して、とりあえず一番近いドアを開けると、小さな自分が注射されているシーンでした。逃げ出さないように看護師さんたちに抑えられ、半泣きで注射されている光景は当時とても怖かったことを鮮明に思い出す光景でした。
すぐさまドアを閉めると、私はドアにもたれかかって、ため息を吐きました。
「どうやら、このドアの向こう側に記憶があるみたいですね……」
今更ながら、自分は病院という場所が好きでなかったことを思い出しました。魔族に覚醒するまでは頻繁に通っており、走るどころか通学さえまともにできなくて、同い年の子のように行動できないことがとても嫌だったことを自覚させられるからです。
だから魔族になってからはそんなことはなく、体が思うように動かせる喜びが勝って、今日までツライ修行も続けることが出来たのです。
昔のことに目を背けていたわけではないですが、憂鬱とした気分になるのは避けられませんでした。
それから十数回ドアを開けて確認しましたが、何度開けても目的の白猫の記憶を見ることが出来ませんでした。
注射、点滴、呼吸器、薬品の匂い……ドアを開けて記憶を見るたび、段々と昔に戻っていく気がしました。
より気分が沈んできても、全く関係ないように注射器たちは群がってきます。それを見ると、心の中にドロッとしたものがへばり付く感覚でした。
「……ええい、邪魔です!ショットガン!!」
力を込めたショットガンは、目に映っていた注射器たちを粉々にしました。前とは違うんだ……そう思い、私は握った右拳を見つめました。
『中々やるね。かなり強くなったみたい』
「だ、誰ですか?」
突然頭の中に響く知らない女性の声。話しかけられることがないと思っていたので、思わず尻尾が稲妻型に硬直しました。
『こっちこっち!』
呼ばれたほうを見ると、オーロラの様な光が蠢いてました。うーん、こんな知り合いはいないから……。
「……浮遊霊さんですか?」
『違う違う!ちょーっと魔力を集中して!自分の中で高める感じ!』
「こうですか?」
言われた通り妖力を高めると、光は段々と人の形を成していきました。そして現れたのは黒髪の年上の女性でした。
「ご協力ありがとー!魔法少女、千代田桜―――ただいま見参っ!久しぶり、シャミ子ちゃん」
「えっ………ええぇー!?」
桃色と白色の服で、黒髪の美人な女性は私の両手を握ってきました。な、何で私の中に千代田桜さんが……?
しかもイメージしていたのとは違って、何だか明るい方ですね。もっと街の平和を守る、使命感が強い方をイメージしてました
「す、すごい!ミッションコンプリートです!まさかコアの白猫を探しに来たら本人が出てくるなんて……桃もきっと喜びます!……いや待って、久しぶり……なんですか?」
「今シャミ子ちゃんが言ったみたいに、私のコア……白猫のときも会っているし、何度かお見舞いに来たこともあるんだよ?まぁその時のシャミ子ちゃんは意識があんまりなかった時だったから覚えてないだろうけど……」
「そうなんですか……すいません、覚えてないです」
10歳で退院するまでの頃は本当に起きてるか寝てるか自分でも区別がついていなかったので、誰と話していたかほとんど覚えてないのです。謝罪すると、桜さんは「いいよいいよ」と手を横に振ってくれました。
そしてやはり白猫は桜さんのコアだったようです。皆の予想が当たりましたね。しかし桜さん本人が見つかれば、桃のことも含めて街の困った問題はすべて解決です。
「シャミ子ちゃんは随分強くなった……だからこうして会えたんだ。それだけでも嬉しいよ」
「そんな……ここから脱出すれば、また桃と昔の様に暮らせますよ?」
「そうもいかないんだ。私のコアは君の中に埋め込んじゃったのだ。だからここを離れることができない」
「なんですとー!?」
衝撃的な発言でした。私の中にコアがあるなどと……そのようなことがあろうはずがありません。それでは6年近く桜さんは私と心で同居していたことになります。
「どうせなら同居より同棲のほうが響きがよくない?」
「それはちょっと違う気が……」
「あはは、冗談冗談。その時の経緯を口で説明するのは大変だから、自分の記憶……白猫を強くイメージしてみて。要領としては高めた気をさっきの技みたいに一点に集中させて、記憶を思い出す感じ」
「なるほど、集中ですね……」
目を瞑って高めた気を集中し、白猫と病院の部屋をイメージします。30秒ほどでしょうか、それくらいの時間が経つと桜さんに肩を叩かれました。目を開けると、目の前には少し開けられた病室から、白猫と小さな私の会話が聞こえてきました。
――妹の分まで呪いを背負ったことで、魂はスカスカとなっていた私は瀕死の状態で。私の呪いを緩和するために魔力が減った桜さんは強敵との戦いでコアになるまで魔力を消費していた――
――このままコアになったまま何もできないよりは、君の命をコアで支えよう――白猫はそう言って花の様なコアになり、私の中に入っていきました。
「だから、私は帰れない」
そう言って、桜さんの体は少しづつ薄くなっていきました。まるで消滅するかのように。
「あ、消滅するわけじゃないよ?君から日々掠め取ってた微量な魔力でこの体を形成しているから、もうなくなりそうなんだ。だから質問は早めにね?」
「待ってください!それじゃ、いったいどうすれば桜さんを助け出せるんですか!?」
そう聞くと、桜さんはニヤリと笑いました。あ、なんかこれ無茶振りされるときの笑顔な気がします。
「簡単だよ。君が超強い魔族になって、封印を解けばいい。あの封印はそういうものだから」
どうやら邪神像による一族の呪いは、強さで解除されるものらしいです。しかし今もそこそこ強くなってきたと思うのですが……。どうやらその程度ではビクともしない呪いのようです。ガッテム!
「ちなみにどれくらいですか?」
「ムフフ、そうだねぇ……今の強さじゃ足りないから、私や桃ちゃんを超えるくらいかな?」
「あ、なるほど……もしや浦飯さんほどとは言いませんよね……?」
「誰それ?」
少し意外でした。私の中で同棲している桜さんは浦飯さんのことを知らないそうです。てっきりこういう自分の中にいる人とかって、記憶とか全部知り尽くしているとか思ってました。
「何故か私が魔族に覚醒したら、いつの間にか邪神像に封印されてた人です。桃をほぼ無傷で倒すパワーの持ち主です」
「あの子を無傷で?いやー、さすがにそのレベルじゃないかな~……?」
その答えに私はほっと息をつきました。もし浦飯さんと同じくらい強くならなきゃなんてことになったら、修行が何年必要になるんですかねぇ……?話に聞く戸愚呂って人で、老人になるくらいの年齢ですから、私じゃ100年じゃ無理です。
「ところで一族とは全く関係ない浦飯さんが邪神像に入っている理由はご存知ですか?どうも私とは関係ないみたいですけど……」
気になっていることを聞くと、桜さんは目を閉じて首を横に振りました。どうやら桜さんも分からないそうです。
「私にもその浦飯君が封印されてしまった理由は分からないな~」
「結界が弱まっているせいなんですかね?」
「結界が弱まっている?そんな馬鹿な……少なくとも、しばらくは大丈夫なくらいに設定してあるはず……」
そう言って桜さんはブツブツと呟き始めました。どうやら結界が弱まっていることは桜さんにも想定外だったらしく、邪魔しちゃいけないとは思いますが、時間がないので聞きたいことを聞きましょう。
「結界が弱まっている理由は分からない。この街は特別なの。だから、守ってほしい」
「それは魔族も魔法少女も安心して暮らせるからですよね」
「違うんだ……光と闇のバランスは崩しちゃいけない。それがこの街の古くからの決まり事なの」
決まり事とは一体何なのでしょうか?話している間に、桜さんは下半身が光となって消えていました。もう時間がありません。
「最後にお願いがあるの。桃ちゃんのことを見ていてほしいの、あの子不器用だから……」
「大丈夫です。奴は宿敵ですから!」
――ありがとう。じゃあ、またね――
そう言って、桜さんは消えてしまいました。
その瞬間、私は目を覚ましました。
周りを見渡すと、皆に抑えつけられている桃がいました。それを見て良はアタフタしてます。いや、どういう状況ですか?
「おう、戻ったかシャミ子!何かわかったか?」
「あ、はい。ところでどういう状況なんです?」
「それがよー。桃の奴がシャミ子が心配だから「私もシャミ子の記憶の中に入るー!」とか無茶言って聞かねぇから、皆で抑えつけたんだよ。こいつ無駄にパワーあるから」
「ちょっと浦飯さん!」
確かにこのメンバーの中には、私の記憶まで導くサポートとかガイド役の能力を持っている人はいないから、桃の要求は無茶そのものです。指摘されて皆に圧し掛かられている桃は顔を赤くしてました。
「私を気絶させたくせに……」
「だって、心配だったから……」
「大丈夫です。それよりも、記憶の中で見たことを話しますね」
私は見てきたことを話しました。すると、やはりショックだったのか、皆黙ってしまいました。
しばらくして、始めに口を開いたのは桃でした。
「姉のコアはしばらくシャミ子が預かっていて」
「でも、それじゃ会えるのがいつになるか……」
「姉も言ってた通り、私以上にシャミ子が強くなればコアは取り出せるんでしょ?結界のことは姉も分かってなかったみたいだし、しばらくは皆で街のことを守る必要がある。だから、解決方法は強くなればいいんだよ」
確かに桜さんてば、結界のことに関しては何もいい案は言ってませんでしたね。ということは修行を重ねて治安維持を行う……。いつもと変わらないってことじゃないですかー!
「だな。オメーが強くなってコアが解放されれば、術に詳しい桜も解放されて、ついでにオレも解放だ。なーんだ、簡単じゃねーか!」
「で、でもそこまで強くなるには一体どれくらい時間がかかるか……」
「大丈夫やシャミ子はん」
悩んでいる私の肩をそっと支えてくれたのはリコさんでした。その表情は柔らかく、包み込むような笑顔でした。や、やっぱりこの人はこの2人と違って脳みそ筋肉ではないのですね……!
「シャミ子はんならきっと強うなれますわ。ウチが保証します……♡」
何故でしょうか、今背筋がゾっとしました。え、この人もしかして安心枠ではない?
その時桃が私の手を握ってきました。その瞳はどこか優し気で。
「シャミ子、一緒に頑張ろう」
「……はい!」
そうです。皆の言う通り、強くなれば解決するんです。これから私、頑張らないと!
決心を新たに、気合いを入れました。
しかし1つだけ気になってました。光と闇のバランスを崩さないことが、古くからの決まりだと。その言葉が、どうしてもずっと耳に残ってました。
後書き
ほぼ原作通りなのに長い……すみません!サポートご先祖がいないから記憶の中まで入れないので闇落ちピーチは先延ばし。
しかしここのリコは変態臭い。まぁヒソカリスペクトだとしょうがないね。
何か暗い、闇を感じさせる魔法少女を出したくなってきた……!