もっと生臭さが欲しい気がする……!
『世間に対して立派な人になりなさい』
それが私に対する両親の口癖
父は弁護士。母は教師で、2人とも厳格だった
父は正義の弁護士と言われ忙しく、母も忙しいようだった。そう近所の人間から聞かされていた
そんな両親との記憶は成績で叱られたことくらいで、ほとんど一緒に過ごした記憶はない
いつも家のことは家政婦さんがやっていて、その家政婦さんとも話した記憶はほとんどなかった
ボクは立派な人間ではないから、両親から叱られてばかりで褒められないのだと考えた
それからの行動は褒められたい一心で、自分から率先して動くようになった
『血池さんはいつも率先してやって偉いですね』
そんなある日初めてボクを褒めたのは学校の先生だった。両親は褒めてくれないままだった
ボクは先生にどうしたら親の言う立派な人間になれるか、そして両親が認めてくれるか尋ねた
『先生や大人の言うことを聞いて、正しいことをすれば立派な人になれますよ。そうすれば大丈夫です』
このとき初めて明確な回答を得たように感じた
そこからの日々は大人の言う通りに行動し、学んだ
規律を守らず行動する人間を注意するようにもなった
そんなボクを馬鹿にするやつがいても、ボクは立派な人になる為に行動を変えなかった
そんなある日の出来事である。下校途中、倒れている蝙蝠が目に入った。その蝙蝠に近づくと、触る前に蝙蝠は喋り始めた
―――魔法少女にならないか?
最初は意味が分からず、断った。だが蝙蝠は言う
―――この世には悪事を働く魔族がいる。そしてそれを正すことが出来るのは、君の様に特別な才能を持つ人間だけだ
ボクは蝙蝠に聞いた。それは悪を挫く立派な正義の味方なのだろうかと
―――その通りだ
蝙蝠の答えがボクの人生の分岐路だったのだろう
魔法少女として契約し変身した姿はブーツとストッキング以外は全て赤色で、まるで血の色だった。ボクの赤い髪によく似ていた
それから街の魔族を狩って狩って狩って狩りつくす日々が続く
悪い魔族を倒すと、助けられた人たちは口々にボクに感謝する
言うことを聞かなかった者たちもボクの言うことを聞くようになった
『凄いね!真理ちゃんは正義の味方だね!カッコイイ!』
ようやく出来た友達の『マキちゃん』がそう言ってくれた瞬間、ボクはひどく感動した
―――正義の味方になれば、ボクは褒められる!敵を倒せば、褒められる!
安易な考えを碌に疑問にも思わず、信じ込んでしまうのも無理はなかった。幼かったからだ
毎日休まず街の平和を守った
戦いが日常となったボクの環境に転機が訪れたのは、中学校に入学してしばらく経った後だ
今から6年前の当時、魔族の活動が活発化しており、より手強くなっていた
噂では凶悪な魔族が復活し、それに呼応して魔族たちが全体的に強化されているというものだ
そんな中千代田桃と言った複数の魔法少女が活躍しているらしいと聞いている
だが地元を含めてここら一帯の地域を一人で守っている私には、遠征して千代田桃らに協力する余裕はなかった
幼少のころから戦い続けていたボクにとっても手強い敵が増えてきた。戦いは大きく派手になっていき、戦っている場面を多くの人に見られるようになっていった
感謝されるどころか、小学校からの唯一の友達である『マキちゃん』以外には、ほとんどの人から避けられるようになっていた
―――――いったい何故なのか
ボクは毎日皆を魔族から守っているというのに。ボクは正義の味方ではなかったのか。理由が思い至らなかった
むしろ助けたにも関わらず叫ばれて逃げられたり、罵倒されたこともあった
『真理ちゃん、頑張っているのにね。皆おかしいよ』
マキちゃんの言葉だけが救いだった。
―――――苦しいな 何でだろう
どんなに疑問に思っても、長年染み付いた正義の味方という名の戦いを止めることはなかった
『おぞましい子よ』
ある日の深夜、魔族を狩って自宅に帰ったときに偶然聞いた母の言葉だった。ボクは寝ていると思われているのか、そのまま隠れて両親の会話を聞き続けた
『嬉々として魔族を殺す化け物の子と言われたわ。あの子は私の世間体なんて何も考えてない!』
『私のところも支障が出ている。私に出資している方も、一昨日うちの子が取引現場の邪魔をしたと言っていた。大層お怒りになられてね』
一昨日の取引現場?
あれはたしか魔族を連れた連中が盗品らしきものを売買している現場だった
正義であるはずの父がそんな連中と関わりがある。その事実はボクの心を黒く塗りつぶし始めていた
『苦労して先生の罪状を揉み消して味方にしたというのに、まだ伝手はあるからいいものの、これ以上放って置くのは私たちにとってマイナスだよ』
『どうします?』
『まぁでっち上げて精神病棟に隔離するなりして……』
何を言っているのか、ボクには分からなかった。たまらずボクは音もなく家を飛び出した
何故頑張っているボクが、こんな目に合わなければならないのか。何故、ボクばかり。何故何故ナゼ――――
親しい魔法少女の仲間もおらず、ナビゲーターはいつの間にか姿を消し、一人でやってきた弊害なのだろうか
それから家に帰らず両親のことを調べ上げた
そして両親は正義の味方でも、立派な人間でもないことが分かった
母は教育委員会でトップに立つため多くの権力者とパイプを作っていた
パイプの作り方の一つとして、虐めの加害者の味方をしたこともあった。
加害者の親が名の知れた有名企業の重役だったため、虐めの被害にあった子の訴えを揉み消すなど双方の経歴に傷つかないよう処理していたりしていた。
父は正義の味方ではなく、金持ちや権力者の味方だった。その者たちの無罪を勝ち取ることで、自分の事務所を大きくしていった
その財は夜の街や女で使われていた。母もそれを黙認していた。母も似たようなものだったから
両親が離婚しないのは世間体のため
家を出てから数日後の雨の日だった。ボクはマキちゃんに会いに行った。この気持ちをどうすればいいか聞いてほしかったから
しかしマキちゃんはいなかった。マキちゃんの両親からマキちゃんが昨日から帰ってこないと聞き、探しに行った
聞き込みしたところ、複数の人間に連れられ、とある廃屋に入っていったという情報を手に入れた
目標の廃屋から、複数の人間の声がする。ボクは勢いよく扉を開け中に入った
――――そこは自分にとっての絶望だった
何も身に着けておらず、汚れて息絶えたマキちゃん
周りを囲む裸の男たち、散らばる錠剤と注射器
そこには人間しかいなかった
今まで人のために頑張った
今まで人の言うことを聞いて正しいことをして魔族を倒せばよかったと思っていた
人間は正義で、魔族が悪。きちんとルールを守る人が正義で、守らない人が悪
じゃあこいつらは……そして両親はなんなのだろうか。正義とは、悪とはなんなのか?種族は、立場は?
グルグルグルグルと考えて、たどり着いた答えがあった
―――――人間だって、悪じゃないか
★★★
「くっそ胸糞悪い夢ですね……」
私ことシャミ子は、今朝見た夢の後味の悪さに頭を思いっきり掻いてました。しかも長い夢です。めちゃ気持ち悪いです、トラウマもんですよあんなん。
何なんですか、あの胸糞の悪さ。碌な人が居ません。今まで戦ってきた魔族のほうがまだ分かりやすくてスッキリします。
思いっきり血池さんとか呼ばれてましたが、どうやらこの前来た血池真理さん……彼女の記憶を見てしまったようです。
そんな夢を見たことを浦飯さんに言いました。
「――――っていう夢なんですけど」
「そーいや桑原のバカも対戦相手の記憶を夢に見たことがあったっけな。今日来るんだから、本人に聞けばいーじゃねーか」
「明らかに真理さんのトラウマ話だと思うんですけど……」
「今回の夢があいつの記憶かどーかも分かんねーだろ。もしかしたらオレたちを戦わせようとしている第3者の能力かもしんねーしな。聞いてみて違ったら謝って終わりだろ」
そんなトラウマ話を根掘り葉掘り聞いてもいいのかって?
確かにこの前自分の記憶に入りましたが、都合よく他人の夢に入れると思えません。浦飯さんの言う通り、第3者の能力と言われたほうがスッキリします。
………なんか自分で言っていて悲しくなりました。
桃にも説明しましたが、凄い複雑そうな顔をしてました。
昨日桃が話していた内容というのは、真理さんの家族は全員亡くなっており、その後本人も失踪し、行方知れずだったそうです。
なのでこの前姿を現したときは驚いたそうなのです。
桃も浦飯さんの意見に賛成しました。
桃曰く
「押しが強い人でしたし、ハッキリさせないとシャミ子じゃ色々丸め込まれそうだから」
だそうです。私はそんな流されやすい女じゃないですよ!NOと言える女だということを証明してみせます。
「やぁ、今日は時間作ってくれてありがとう。返事を聞かせてもらっていいかな?」
人が寄ってこないような空き地に約束の時間通りに現れた真理さんは綺麗に笑ってました。うーん、夢で見たみたいに率先して魔族を殺していたような人には見えません。
考え込んでいたら、桃に脇を肘で突かれました。早く言えという催促です。
「この前の件なのですが、申し訳ありません。お断りします」
「……一応理由を聞いてもいいかい?」
私の言葉を聞いた真理さんが少し悲しそうな顔をして理由を尋ねてきます。良心に少しダメージが入りますが、頑張れ私!
「私はこの街を守ります。その上で封印を解きます。それが私のやりたいことなんです。ですから、この街を出て活動する気はありません」
「……この街にこだわる必要があるのかい?」
「約束なんです。私の命を救ってくれた人との」
私は自分の胸を触りながらそう伝えました。桜さんがいなければ、私は死んでいた。ならその恩返しをするのは、当然です。
「そうかい。残念だな……」
予想より押しが弱いというか、このまま終わりそうな感じがしますね。
何か今なら夢のことをどさくさ紛れで聞けそうです。よし、行け私!
「ところで実は今日、真理さんの過去らしき夢を見たんですけど、それについて聞いてもいいですか?」
「ちょっ!?」
「……何だって?」
私の言葉を聞いた桃は叫んだ後、私の耳を引っ張りました。ちょっと痛いです!?
「馬鹿なのかなシャミ子は!?何でそんなストレートに聞くの!?」
「だ、だって他に聞き方なんか分かんないですよ~!?」
「………どんな夢だったんだい?」
先ほどと変わらない表情で、先ほどより少し声のトーンが低くなった真理さんが尋ねてきました。
「えっとですね………」
かなり言いにくい内容でしたが、今日の夢の内容を一部始終話しました。しばらくすると真理さんは薄く笑いました。
「誰かがコイツに見せた幻覚かもしんねーから一応聞いたんだが、実際どうなんだ?」
「凄いね……とても正確だ。それは間違いなく、ボクの過去の記憶だよ。第三者の幻覚ではなくね。
そんな能力が君にあったとは……もしかしてあのとき握手したから繋がったのかな?」
「いや、この他人の夢を見るのは初めてのことでして……発動条件は分からないんです。ごめんなさい、勝手に見てしまって」
接触して発動するのであれば、今まで該当する人はかなりいます。
極端な話、お買い物したときにお釣りを受け取る際に手が触れることもありますが、今まで発動しなかったので握手は恐らく関係ないでしょう。
「ふむ……なるほどね。で、私の過去を見た感想はどうだったかい?」
「……犯人の人はどうなったのか、気にはなります」
浦飯さんは夢の内容を話したとき「殺っただろーな」とか言ってましたが、真理さんは正義の味方と言ってたので捕まえたか改心させて真面目な人になったと私は思ってます。そんな思いを込めて質問しました。
「殺ったよ。その記憶の後すぐにね。
正確に言うと、その場にいた連中全員とその家族、そいつらの悪事を知ってて見逃した連中全部だけどね。
あと私の両親もついでに始末したよ。良い機会だったし」
―――――は?
私は彼女の言っていることが一瞬理解できませんでした。
真理さんはまるで昨日食べた夕飯のメニューを語っているかの様に、平然と語っていました。
何故人を殺しておいて、変わらない表情なのでしょうか。しかも事件に関わってないであろう家族……そして自分の両親まで。
先ほどまでの気安さすら感じていた真理さんが、途端に理解しがたいモノに私には見えました。
「な、何で……殺したんですか?」
「簡単さ。彼らが『悪』だからだよ」
「……悪ですか。しかし加害者の家族や事件に関係ない人たちまで手にかける必要はないと思うのですが」
事もなげに言った言葉に、桃がいつもより荒れた口調で答えました。
殺気混じりの質問も、真理さんの飄々とした表情を崩すことはできません。
「あの連中は未成年がほとんどだった。盗み・飲酒・喫煙・暴力……反社会的行為を行っているのを、ボクがしかるべき場所に報告したり直接懲らしめたりして、退学になったり職場を首になった連中だった。
ボクに力で敵わないことを知っている奴らは、普通の女の子のマキちゃんを狙ったんだよ。
マキちゃんは私の一番の友達……いや、親友だった。
そんな奴らの大半は未成年だ……いずれは社会復帰してしまう。マキちゃんにあんなことをしたのを忘れて、普通の生活に戻り、平和に暮らすんだ。
―――――こんな『悪』を野放しにしていいのかい?」
「………」
真理さんは力強く右拳を握りました。未だに彼女の中で怒りの炎が燃え上っているように見えました。
「ボクの父や母にしたってそうさ。『悪』の行為を権力で握りつぶして無罪を勝ち取り、その後の人生を彼らは謳歌できる。人の死や尊厳を踏みにじってね。
だからそんな連中を『悪』として裁くのさ……ボクが『正義』としてね。
今にして思えばあの事件と両親の件は種族問わず『悪』を気づかせてくれるものだったと思うよ。
そして今は探偵として『悪』を裁いている。もちろん依頼料はもらっているし、ターゲットの情報は十分調べているから問題ないよ。
ボクは法律で裁けない『悪』をいつも裁いているのさ」
両手を開いて、真理さんは高らかに宣言しました。芝居がかった演技のようで、その目は私たちを見てませんでした。
あの光景を見たら、おかしくなってしまうのも無理はないと私も思いました。それほど、キツイものでしたから。
私も犯人の人たちはとても醜く見え、吐き気を感じるほどでした。
それでも、真理さんの行為は理解したくありませんでした。目的のためなら、人殺しをしてもいいのでしょうか?
「殺すまではやりすぎですが……犯人そのものは罰を受けるべきというのはわかります。しかし、その家族や直接関わっていない人たちは関係ないでしょう」
「わかってないな」
桃の指摘に、真理さんは鼻で笑い飛ばしました。
「犯罪を行う人間は本人の資質と言うのもあるが、大抵は環境によるものが多い……貧困・生活・仕事・家庭・学校だったりね。
何事も例外はあるが、本人の思考が根本的にイカレてる理由の多くは家庭環境によるものが多い。
家庭内暴力を受けて育った子供は、家庭を持ち子供ができると、自身の子供に暴力を振るうようになるケースと同じさ。
イカレたモノを生み出した原因は根元から絶たねばならない。
――――まぁ、雑草駆除みたいなものさ」
「んじゃ何か?その持論で行くとテメーは自分の親を殺ったくせに、自分は殺さねーで生きてんのかよ。言ってることズレてんじゃねーか」
挑発するような浦飯さんの言葉に、真理さんは笑いながら肩をすくめました。
「ボクは『正義』だからね。両親という『悪』は絶つ必要があれど、ボクは死ぬわけには行かないよ。正義の味方は残しておかなきゃいけないと思わないかい?」
「ケッ、都合のいいヤローだな。じゃあこの前の依頼の方はどうなんだよ」
両親を殺したことも真理さんは否定せず、浦飯さんは吐き捨てるように言いました。真理さんはそれも大して気にしてはいないようです。
「この前の依頼もドラッグの製造元の殲滅だった。ボクはマキちゃんの一件からドラッグは大嫌いでね……必ず潰すようにしているんだ」
私の脳裏には、マキちゃんの最期の光景が浮かびました。吐き気を催すシーンですが、確かにあの現場にはドラッグがありました。
あの惨劇の原因を作り出したものと考えれば、潰したくなるのは当然でしょう。それほどのシーンでした。
「ターゲットは社長の男で、4人家族だった。その4人と部下の魔族や人間まとめて全員始末したけどね。
男には大きな男の子供と小さな女の子供が1人ずついた。
あの場で子供ということで見逃してやっても、家族を殺された逆恨みから後々『悪』になって悪が広がることを考えれば、必要な殲滅だったと判断しているよ。
ドラッグも絶ち、『悪』を殲滅。アフターケアもばっちりさ。
――――――正義の味方としては当然の行為さ」
その言葉を聞いた瞬間、私は全速力で真理さんの左側に近づき、全力の右拳で左の頬を殴りつけました。
「(速い!?)」
真理さんはそのまま吹き飛んで壁に激突し、壁が壊れることでようやく止まりました。
もうこんな話は聞きたくありませんでした。こんな胸糞悪いことを嬉々として語る姿に、私の頭の中は怒りでいっぱいでした。
「いい加減にしろキサマ……確かにお友達を手にかけた犯人やドラッグばら撒いた人は悪いでしょう……!
それでも何の関係もない小さな子供まで手にかけるなんて……どうかしてます!それじゃお友達を殺した人たちと変わらないじゃないですか!?」
真理さんの話を聞いているときに脳裏に浮かんだのはお母さんと良の姿でした。
もし真理さんに私が『悪』と認定されれば、何もしていないお母さんと良まで殺されてしまう。真理さんはそう言った話をしてました。
確かにドラッグや悪事を働く人は『悪』でしょう。そこは人喰いの魔族と戦った私も同意します。
それでも何もやっていない小さな子供まで殺すなんて、合理的だったとしてもやっぱり認められません。そんなものは正義の味方ではありません。ただの殺人鬼です。
私は力を高め、危機管理フォームに変身しました。
「あなたは……私が止めます!」
「凄い……シャミ子の体を覆う魔力が一段と凄くなった。感情で魔力は上下するにしても、あんなに極端に上がるとは……」
「あいつはどーも感情でかなり戦闘力が変わるからな。普段ダメダメなだけに差が激しいぜ」
瓦礫の中から真理さんが出てきました。
変身してなかったとはいえ、全力で殴ったにも関わらずほとんどダメージを受けた様子もなく、ケロっとしてました。
「……驚いたな。さっきまでとは別人のような力強さだ」
真理さんは口に着いた自分の血を右手の甲で拭い、笑ってました。
「ますます気に入ったよ。ここで負かして、上下関係を叩き込んだら連れ帰るとしよう」
そう言うと、真理さんの姿が一瞬にして変化しました。
ほとんど黒で覆われた衣装で、時折赤い線が入っていました。魔法少女にしては随分暗い色でした。
「やはり、闇落ちしている……!加勢するよシャミ子!」
「もんも……!?」
変身した桃が私の隣に立ちます。これが闇落ち魔法少女……!
真理さんの恰好がどうこうというより、今まで感じたことないほど禍々しい魔力の動きがひどく不気味でした。
「それと一つシャミ子君の言葉に対して、訂正したいことがある。
――――マキちゃんは汚れなき天使さ。『いつも一緒にいる』ボクには分かる……あんなカスどもと一緒にされては困るな」
……は?聞き違いでしょうか。とっくに亡くなったはずのマキさんといつも一緒にいるとは、何を言ってるんでしょうか?桃も同様に顔を歪めてました。
「イカレてんのかテメー。そのマキってやつはとっくに死んだんだろーが。幽霊も見えやしねーぜ」
「フフフ、なら紹介するよ。これが『マキちゃん』だ」
真理さんが胸を撫でたかと思いきや、白い何かが盛り上がっているのが見えました。それと同時に、周りの温度が凄まじい熱さになっていきます。
「なっ……!?」
「ひ、人の顔の……炎!?」
胸から現れたのは少女の顔をした白い炎でした。
いえ、顔だけではありません。真理さんの胸から飛び出し、羽の生えた真っ白な裸の女の子の炎となって私たちの目の前に現れました。その炎の女の子の顔を真理さんは愛おしそうに撫でました。
「見えるかい?これが『マキちゃん』さ。
死んだあの日から炎となって、いつもボクと一緒にいるんだ。
最近仕事が忙しくて語らう時間が減ってね。だからシャミ子君を雇おうとしたのさ。
どうだい皆――――マキちゃんはキレイだろう?」
心底寒気がしました。もうまともに直視すらしたくないほどの、狂気がそこにはありました。
ただ一つだけ確かなことがありました。
「じゃあ、逝くよ?」
その狂気を止めなければ殺される……それは確かでした。
つづく
3分割の2つ目終了。自己満足な話ですが、次でこの話はラストです。
人間味の無い、能力の外見だけは烈火の炎の紅麗な彼女。
作中語ってはいませんが、紅麗のようにマキちゃんの魂を炎に変えてます。それまでは普通の炎でした(不死鳥じゃないよ?)
中々イカレたキャラって難しいです。
真理の質問に答えた小学校の先生は、真理の家庭環境がおかしいことに気づいてはいましたがあえてスルーしてます。下手につついて訴えられたりしたら大変なためです。仕事上のクレーム対応は嫌なものですからね。
これは中学校の先生も同様です。魔法少女なんていう劇物に触れるのはタブーというのが周囲の大人の認識でした。
マキちゃんもそれに気づいていたので、真理には伝えず周囲の悪意から真理を守ろうと防波堤を作っていた子です。
真理の家庭は両親とも「ダンバイン」のショウ・ザマのお母さんが両親になったイメージです。あなた、宇宙人なのよ!
ちなみに前回のお話で、金庫なんか自分で開けろや!と思われた方もいらっしゃるでしょうが、火の能力者が無理やり開けようとしたら中身まで燃えるためカットしました。