まちカド☆白書   作:伝説の超浪人

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冷静に考えてみると、この子たちってフリフリ衣装で肉弾戦してるんだよなぁ。シャミ子に至っては日朝に出れない衣装ですね。
空き地ですげぇ戦闘するフリフリ衣装の高校生や20代……


19話「正義とは一体……後編です!」

炎の化身である『マキちゃん』を体の中に戻した真理さんは薄く笑いました。

 

真理さんから溢れる魔力は、浦飯さんを除けば今まで戦ってきた中で一番強い魔力でした。離れているのに、押し潰されそうな圧迫感です。

 

 

「す、凄い魔力です……!?」

 

「来るよシャミ子!」

 

 

真理さんは笑ったまま2本だけ立てた指を頭上に掲げ、真っ直ぐこちらへ振り下ろしてきました。

 

――――やばい!?

 

危険を感じた私は咄嗟に横に飛ぶと、地面に直線の傷が生まれました。

 

は、速い……!?しかも炎の使い手なのに刃なんですか!?

 

そう驚いていると、桃が「フン」とつまらなそうに反応しました。

 

 

「技が荒いですね。地面が少し焼け焦げてますよ?」

 

「ふふ、口では何とでも言えるよ?」

 

 

桃の言う通り地面の傷をよく見ると、縁の部分が少し焼け焦げてました。どうやら指先を下ろすことで、炎の刃を飛ばしているらしいです。

 

こんなもん人間が食らったら真っ二つ間違いなしです。しかもこの攻撃スピードも普通の人間だったら見ることさえ敵わないでしょう。

 

けど、今のパワーアップした私にとっては避けられない速度ではありません。霊丸は弾数制限あるので、遠距離での連発には不向き。

 

よって近づいて攻撃です。攻撃は最大の防御だ!

 

 

「行くぞ!突撃ー!!」

 

「ちょっとシャミ子!?」

 

 

桃の驚く声を置き去りにして突撃します。真理さんは迎撃として先ほどの攻撃を繰り出します。

 

2本の指を立てて振り下ろす動作は、一度見れば予備動作も大きいから避けるのも比較的楽です。

 

 

「うらぁ!」

 

 

2回避けてから一気に懐に潜り込み、その勢いのまま両拳による連撃を繰り出します。

 

 

「ふふ、中々早いじゃないか」

 

「(み、右手一本で防がれてます!)」

 

 

全力で繰り出している両拳の連撃を真理さんは右手1本で防ぎきってます。この人炎使いなのに体術も私より上手いんですか!?

 

相手のレベルに驚きますが、攻撃の手を緩めることなく、より早くより強くしていきます。

 

一段と力を込めて振り下ろした右拳をジャンプして避けられました。しかしそれによって真理さんは空中にいることになります。

 

 

「上か!バカめ、これで方向回避はできませんよ!」

 

 

私は右手の人差し指に妖力を集中させます。空中なら避けられないはずです。出し惜しみはナシです!

 

 

「くらいやがれ!」

 

「(あれは……!)」

 

「霊丸!!」

 

 

渾身の力を込めた霊丸を放ちました。霊丸は真っ直ぐ真理さんへ飛んでいきます。その霊丸を真理さんは見ているだけで、何か技を繰り出す気配もありません。

 

 

「(これはバッチリです!)」

 

「はぁっ!!」

 

「嘘ぉ!?」

 

 

確実に捉えたはずの霊丸は、気合いを入れた真理さんの右拳で殴るように弾かれ、明後日の方向へ飛んで行ってしまいました。

 

まさか片手だけで弾かれるとは……。

 

 

「やるじゃないかシャミ―――」

 

 

ショックを受けていた私に対し真理さんが何か語ろうとした瞬間、いつの間にか気配を消していた桃が飛んでいる真理さんのピッタリ後ろにつき、拳を振り上げてました。

 

 

「読めてるよ」

 

 

桃のいる方向へ振り返った真理さんは桃の拳の弾幕を両手で捌きます。さらに桃の右腕を掴んで、私の後方へ桃を投げ飛ばしました。

 

桃はそのまま何度か空中で回転し、見事に着地しました。そして真理さんも着地します。

 

 

「いいね2人とも。さっきの……霊丸だったか?当たり所が悪ければダメージを受けていたところだったよ。

ボクの腕を痺れさせる攻撃を受けたのは久々だよ」

 

 

そう言いながら真理さんは右手をプルプル振っていました。

 

3人ともダメージはないですが、2対1でもこうまで上手く捌かれるとは……思っていた以上に真理さんの実力は確かなようです。

 

 

「せっかく修行してパワーアップした霊丸を片手で弾かれるのは、いささかショックです……」

 

「弱気にならない。強気で攻めるよ」

 

「おーい、代わってやってもいいぞシャミ子?」

 

 

桃が気合いを入れてきてくれた次の瞬間、浦飯さんがそんな提案をしてきました。

 

確かに浦飯さんに代われば勝てる可能性がぐっと高くなりますが、私は断ることにしました。

 

 

「そんな暇はありませんし、あの人とは私が戦います!目を覚まさせます!

……それに私から売った喧嘩です。自分の喧嘩を人に任せるのって、どうかと思います!」

 

 

正義の味方と言えど、何の罪もない子供を殺すのは見逃せません!だから私が倒して目を覚まさせたいのです。

 

それに一度仕掛けた勝負を勝てそうにないから、すぐ交代するのはすっごく負けた気分になるし無責任だと思います。

 

そう伝えると浦飯さんは嬉しそうに笑いました。

 

 

「分かってんじゃねーか!もしここでシャミ子がケツまくったらアイツより先にぶっ殺してやるところだったぜ!」

 

「怖っ!怖すぎです!じゃあ代わろうかなんて言わないでくださいよ!」

 

「ビビってねーか試しただけだ!ナーハッハッハ!」

 

「2人とも、緊張感をもう少し持って……」

 

 

桃が呆れながら私たち2人にツッコミを入れていると、真理さんもおかしそうに笑ってました。

 

 

「フッフッフ、中々面白いね君たちは。少し……いや、何でもないよ」

 

「………?気になるじゃねーか、言えよ」

 

 

含みのある言い回しに浦飯さんが突っ込むと、真理さんは首を横に振りました。

 

その表情は苦笑というより、どこか寂し気でした。

 

 

「いや、極々つまらないことさ」

 

「気になります!教えてください!」

 

「言えないね」

 

 

私が尋ねても、真理さんは先ほどとは違い少し意地悪そうな笑みを浮かべて否定してきました。良いじゃないですか教えてくれても!

 

 

「ケチ!教えてください!」

 

「ダメだよ」

 

「何か頭痛くなってきた……」

 

 

私たちの問答に桃が疲れているような表情をしていると、真理さんの魔力が高まりました。

 

どうやらここからが本番のようですね。桃もそう感じ取ったのか、一瞬で表情を引き締めました。

 

 

「そろそろお喋りは御終いにして……これからはギアを上げていくよ」

 

「気合い入れろよテメーら」

 

「はい!」

 

 

桃は無言で頷き、私が大きく返事をすると、それに応えるように真理さんの魔力がさらに高まります。

 

そして真理さんの両肩から炎の天使の様な羽が生えてきました。それが出現した途端、周りの温度は一気に上がりました。

 

―――――来る!

 

 

「『羽炎弾』」

 

 

言葉と同時に炎の羽から羽の形の炎が飛んできました。先ほどの指の攻撃とは比べ物にならない密度と速度です。

 

 

「ぬわー!?」

 

「ちっ……!?」

 

 

ギリギリで2人とも躱しました。炎弾の威力は一発一発が地面が高熱で溶けて大きな穴が空き、まるで爆撃のようです。

 

こんなのが絶えず撃ち込まれた日には人間どころか建物さえ跡形もなくなるでしょう。

 

このまま突っ込むのは自殺行為!ならば遠距離技には遠距離技です!

 

 

「くらえ!霊がーん!!」

 

 

横っ飛びで避けたと同時に霊丸を撃ちます。もし回避を選択すれば、そこへ桃が詰めてくれるでしょう。そうでなければ直撃です!

 

真理さんは霊丸を避けようともせず棒立ちでした。防御を選択したのでしょうか。

 

その次の瞬間、真理さんの胸から『マキちゃん』の顔だけが出てきました。胸の部分から出現したマキちゃんは不気味さが際立っていました。

 

 

「フッ……」

 

 

『マキちゃん』の口が開き、炎のレーザーともいうべき砲撃が放たれました。

 

均衡は一瞬。霊丸と砲撃両方が弾け飛んで消え、その衝撃は激しい土煙を巻き上がらせます。

 

 

「相殺!?」

 

 

避けるでもなく、防ぐことを選択した真理さん。

 

そこへ土煙に紛れつつ間髪入れずに飛び込んだ桃は、魔力を集中させた左拳を真理さんの顔面に振るいました。

 

 

「(もらった……!)」

 

「甘いなぁ」

 

 

―――その攻撃は、真理さんの体から出てきた炎の腕によって防がれてました。

 

その白い炎の手は、マキちゃんの腕です。顔を生やしながら、腕も生やせるとは……!

 

拳を捕まれたことにより一瞬硬直した桃の顎へ、真理さんが自身の右腕でアッパーを放つと、桃はまともに食らい、後方へ吹き飛んでいきます。

 

 

「桃!?」

 

「シャミ子、後ろだ!」

 

 

桃へ視線をずらした瞬間、浦飯さんから警告を受けました。返事を返そうとした瞬間、背筋がゾっとしました。

 

 

「人の心配をしてる場合かい?」

 

「(いつの間に後ろに……!?)」

 

 

後ろから真理さんの声がした瞬間振り向きますが、既に拳が目前に迫ってました。

 

目で追えても体の反応が間に合わず、ガードできないまま左拳で頬を殴られました。

 

 

「ガァ……ッ!」

 

「少し速度を上げたら着いてこれないようだね」

 

 

拳をまともに食らって吹き飛んだ私に真理さんは既に追いついてました。

 

真理さんの左蹴りが地面に対して水平吹き飛んでいる私のお腹にめり込み、さらに吹き飛ばしました。重く、芯に響く一撃です。

 

受け身も取れず、痛みで吐きそうになるのを堪えるのがやっとでした。

 

 

「グォ……!(つ、強い……!)」

 

 

距離が開くと、間髪入れずに『羽炎弾』が襲い掛かってきます。息をする間もなく、腕の力で地面を飛んでバク転など回転するように回避します。

 

そこへ復帰した桃が弾幕を掻い潜って接近戦を仕掛けます。

 

私にとってはほとんど隙間もないほどの弾幕に見えます。

 

しかし桃にとっては広範囲に展開することで、どうしても発生してしまう弾幕の隙間が見えているのでしょう。隙間を縫うように潜り抜けるその姿は、やはり桃の技術の高さを改めて認識させるものでした。

 

そして懐へ潜り込んで繰り出される拳の余りの早さに、私には霞んで見えます。

 

しかし真理さんはその早さすら両腕で捌き、クリーンヒットを許しません。

 

 

「さっきよりも速いじゃないか。じゃあマキちゃんに手伝ってもらおう」

 

 

体から生える様にマキちゃんが全身の姿を現しました。

 

反撃に出ていた真理さんからの攻撃を桃は捌いていたため、マキちゃんまで対応できず、マキちゃんの拳が桃の腹部に突き刺さります。

 

 

「ぐっ……!」

 

 

もう一撃加えようとした真理さんの背中から、私は突っ込みました。

 

最高速度で繰り出した右のパンチは空を切り、同時に屈んで躱した真理さんの足が私のお腹に入りました。

 

 

「ガハッ……」

 

「シャミ子君のスピードは既に見切っているよ」

 

 

衝撃に肺の空気が全て出てしまい、私の動きが止まる。

 

それとほぼ同時に逆の足の回転蹴りが私の脇腹にまともに入りました。

 

 

「シャミ子!?はぁ!」

 

 

マキちゃんに拘束されていた桃は無理やり拘束を解き、桃は真理さんの頭を殴りつけます。

 

ようやく真理さんに一撃が入りました。桃の一撃は鈍く重い音が響き、こちらでも相当な一撃が入ったのだと分かります。その証拠に、真理さんの態勢が崩れました。

 

桃がもう一撃繰り出そうとした瞬間、マキちゃんの両手を組んだ手が振り下ろされ桃の背中を強打し、さらに体勢を直した真理さん本人の炎を纏った拳に桃は頬を殴られました。

 

 

「ガハッ!」

 

「ぬぐ……!」

 

 

しかし桃もただではやられません。頬に一撃をもらった瞬間、桃の左蹴りが真理さんのお腹へめりこみます。防御を捨てたカウンターが見事に決まったのです。

 

そして桃は私の隣まで吹き飛ばされ、それとほぼ同時に、体勢は崩れながらも真理さんは『羽炎弾』を繰り出してきます。

 

体勢が悪く避けられないと感じた私と桃は、魔力を全開にして防御します。

 

 

「うわー!」

 

「くそっ……!」

 

 

カウンターをもらったせいで真理さんの攻撃が今までより精度が悪くなったとはいえ、初めてまともに赤い炎弾を受けました。

 

熱さと痛さを同時に味わいます。その威力は凄まじく、爆風に堪えきれず、さらに吹き飛ぶことになりました。

 

 

「……桃、大丈夫ですか……!?」

 

「大丈夫……!シャミ子は……?」

 

 

そう言いながら桃は立ち上がりました。桃がこんなに傷ついているのは初めて見ました……。

 

私の危機管理フォームは炎でボロボロになり、体もかなりやられました。だがライバル(桃)が立っているのに、座っているわけには行かない!

 

 

「まだまだ行きますよ!ふんぬ!」

 

 

闘志を燃やし、跳ねあがるように立ち上がると、真理さんは「へぇ」と感心したように呟いていました。どうやら桃からもらったダメージは引きずってないようです。くそぅ、余裕ぶってからに。

 

 

「存外タフじゃないか、シャミ子君。少し驚いたよ」

 

「ふん、笑わせないでください。こんな攻撃なんて効かないです!

自慢じゃありませんが、私は毎日のように浦飯さんの殺人パンチを受け続けてきた女です!」

 

 

嘘です。

 

超効きまくってます。痛いし熱いし、足がガクガクするのをやっとのことで堪えているんですからね。

 

 

「……本当に自慢にならないんだよ」

 

「やかましいですよ桃!?」

 

 

どうして桃は水を差すんですかね!真理さんも笑ってるし!

 

しかしこのままではジリ貧です。2人がかりでこれではかなり不味いです。

 

真理さんは強い!

 

真理さんの身体能力、格闘戦への対応から見て間違いなくこちらより経験が上!だからろくに連携攻撃になってない私たちの攻撃は通じてないのでしょう。

 

そして炎の能力。マキちゃんを模して作った炎のようですが、マキちゃん自体は自動操縦ではなく、真理さんの手動による操作と見ていいでしょう。

 

その証拠に真理さんのそばをほとんどマキちゃんは離れません。もし自動操縦で外敵を排除するのであれば、こうして一か所に固まっているところを攻撃しないわけがない。接近してくるなり、遠距離技を絶えず継続するでしょう。

 

手動であるから、距離を離して運用するとその分制御が難しくなるのは道理!ましてやマキちゃんは人型。四肢を動かすのですから、ボールやファン〇ルを飛ばすより遥かに難易度は上がるはずです。

 

言うなればあの能力は魔力を炎にする変化・炎を人型に形どる具現化・そしてマキちゃんを手動操作する操作。この3つを同時併用しているのがあの能力でしょう。かなり扱いずらいと思われます。

 

だから基本は自分の肉体で戦い、手数が足りない場合は一部や全身を出現させ、狭い空間範囲内……真理さんの間合いでのみ数的優位に立てる様生み出したのがマキちゃんでしょう。

 

それを証拠に、桃の攻撃や私たち2人の攻撃で捌ききれなかったタイミングでマキちゃんを出現させてます。

 

これを突破するにはマキちゃん込みでも捌ききれない攻撃、もしくは遠距離からの一撃を繰り出す必要があるのですが……あー、わからん!!

 

このままじゃやられてしまう。そう考えた私は浦飯さんに助言をもらおうかと一瞬考え、腰に手を伸ばすと、いつもの邪神像の手触りがありませんでした。

 

 

「あ、あれ!?邪神像がない!?」

 

 

ようやくここで私は腰にあるはずの邪神像のがなくなっていたことに気づきました。いついなくなったんでしょうか……まさか戦闘中に壊れたんじゃ……!

 

 

「それはこれのことかい?」

 

「くそ~、これじゃ手も足も出ねぇぜ」

 

「いや、元々ないじゃないか」

 

 

真理さんが掲げたのは邪神像でした。何やら浦飯さんが間抜けなこと言ってますが無視です。

 

しかしいつ奪われていたのか、全く分かりませんでした。

 

それはつまりスピードが完全にこちらを超えている証拠です。

 

 

「い、いつの間に!?」

 

「……!」

 

「せっかくの勝負だし、これで小細工されると興ざめだしね」

 

 

そう言って真理さんの後方にある遠くの瓦礫の方へ浦飯さんが投げられました。

 

壊されないで良かったですが、また投げ捨てられてますねあの人。

 

 

「2人で突っ込めよー!」

 

 

そう言い残し、浦飯さんは姿が見えなくなりました。2人で突っ込めって言っても、さっきまでやっていたのに返り討ちにあっちゃいますよ……。

 

 

「やれやれ。噂じゃ千代田桃はここ最近で弱体化して他の魔法少女を呼んだなんて聞いていたが、眉唾じゃなくて真実のようだね。世界を救ったにしては余りにも弱すぎる。思った以上に弱体化しているようだね。

やはり『正義』を為すためには力が必要だというボクの考えは間違ってないな」

 

「(こうまで実力が落ちるものだったとは……!)」

 

 

桃は真理さんの言葉に、小さく舌打ちをしてました。明らかにイラついてます。

 

やっぱりそうなんだ。確かに桃の血を吸い取った後はしばらく体調も悪かったし、変身することさえままならないほど弱体化していましたが、やはり同じ魔法少女でもそうかんじられてしまうほどなんですね。

 

もし私が桃の魔力を取らなかったら、こんなに桃が傷つくことはなかったのに……。

 

今更しても遅い後悔を噛み締めていると、桃の右手が私の左手を握りました。

 

顔を上げると、桃と目線が合います。桃の瞳は私を責めているものではなく、いつもたまさくらちゃんのことを語る時と同じ、熱い目をしていました。

 

 

「シャミ子。今から考えた作戦を伝えるよ。このままじゃ負ける」

 

「は、はい」

 

「じゃあ……」

 

 

突然桃から小声で伝えられた作戦は、浦飯さんが以前一度話していたものでした。さきほど浦飯さんが言っていたのは、そーゆーことだったんですね。

 

でも上手くできるでしょうか……。

 

そう考えていると、桃が私の手を強く握ってくれました。

 

 

「そ、そんなことしたら下手したら桃が危ないですよ!?」

 

「大丈夫。今のシャミ子ならできるよ。頼りにしてる」

 

 

その言葉は、私の心にストンと落ちてきました。そして心の底から燃え上ってきました。

 

一杯迷惑かけている私を頼りにしてくれているんだ!ならそれに答えるのがライバルってもんです!

 

 

「行くよ!」

 

「はい!」

 

「……作戦会議は終わりかな?」

 

 

私は立ち上がらず膝立ちで妖力を高めます。

 

桃は杖を出し、杖の先から桃色の魔力で作り出した刃を発生させました。全身の魔力を高めて突進しました。その速度はまるで桃色の流星です。

 

しかしそれを見ても真理さんは薄く笑うだけでした。

 

 

「やれやれ、玉砕覚悟の特攻か………なら一思いに殺してあげるよ!千代田桃は要らないからね!」

 

 

そう宣言すると、マキちゃんが真理さんの右斜め前に立ちはだかり、口を大きく開けました。

 

そしてその口には、今まで以上の炎が圧縮され、マキちゃんの口に集まっていきます。明らかに霊丸を相殺したとき以上の力を感じます。

 

けど強力になる分チャージまでに時間がかかる技を選択したのはミスでしたね!!

 

 

「もんもー!!」

 

 

私は突進している桃の背中に霊丸を撃ち、桃の背中にぶつけます。

 

全身で受け止めた霊丸の威力は、桃の勢いをロケット噴射のごとく爆発的に加速させました。

 

 

「はあぁー!!」

 

「何ィ!?」

 

 

霊丸を受ける前の桃のスピードに合わせていたチャージを取りやめ、マキちゃんの口から炎の砲撃が放たれました。

 

しかし慌てたのか狙いが甘くなった砲撃は、桃が突撃しながらも首を傾けることでギリギリ回避することが出来たのです。

 

そしてその勢いのまま、杖から発生していた魔力の刃が真理さんの鳩尾に突き刺さりました。

 

 

「くそっ……!」

 

「危なかったよ……!もう少しで大穴が空くところだった……!」

 

 

――――しかし刃はわずかに刺さっただけで、体を貫通するほどではありませんでした。

 

折りたたんで縦にした左腕を刃と自身の間に割り込ませ、右手は桃の杖を力強く掴んでいました。あの状況から致命傷を避けたのです。

 

まさかあの一瞬で左腕を捨てる選択を選んだ判断に、私は驚きかけました。

 

真理さんは勝ち誇ってました。

 

 

「これで……!」

 

 

かなりの笑みを浮かべて、マキちゃんが桃の背後から右腕を振りかぶります。その一撃で桃を沈める気なのでしょう。

 

―――――だが安心するのはまだ早い!

 

私は無言で霊丸を発射しました。文字通り不意打ちです。

 

 

『もしこの刃の一撃で決まらない場合は、もう一撃頼むね』

 

 

桃がそう提案したからこそ、失敗しても動揺することなく私は霊丸を撃つことができました。

 

相手が一撃を受け止めて油断しているこの瞬間が、最大の隙です!

 

今日4発目の霊丸です!これで決まらなければ打つ手なし!いけぇー!

 

 

「何だと!?」

 

 

発射音と撃つ際の発光で気づかれたのか、真理さんは驚愕していました。2回連続で桃ごと霊丸を撃ってくるとは思ってもみなかったようです。

 

2本の矢ならぬ2発の霊丸作戦!

 

そして撃った瞬間、桃は変身を解いてました。変身を解くということは、杖も解除されるということ。

 

真理さんが右手で握りしめていた杖がなくなれば、真理さんと桃を繋いでいたものが消失することを意味します。

 

急に杖が消失したことで僅かながら反応が遅れ、桃がギリギリで体を横に逸らすことで、真理さんにとってはまさに急に目の前に霊丸が出現したように見えたことでしょう。

 

右手は杖の消失により、一瞬のみ何もない空間を彷徨い。左腕は犠牲にしたことで自由が利かない状態。

 

その動揺から、霊丸が真理さんの頭に直撃しました。

 

爆音とともに、遥か後方に吹き飛ばされる真理さん。そして瓦礫の中に突っ込んでかなりの土煙が舞い上がりました。

 

ようやく私の一撃がまともに入った気がします……。

 

ハッキリ言ってこれで全くダメなら私はもう打つ手がありません。何故なら妖力がさっきの霊丸ですっからかんであり、今や普通の女の子レベルの強さになってます。つまりはガス欠です。

 

 

「やりましたかね……?」

 

 

桃の傍まで歩いて、桃に確認すると、桃は首を横に振りました。

 

 

「……本当なら追撃したいところだけど、相手のほうが範囲技や遠距離は優れている。迂闊に踏み込めない」

 

 

桃も遠距離技はありますが、主に格闘戦主体です。下手に追撃してカウンターを受けるのは避けたいところです。

 

 

座って休みたくなるのを堪えて、真理さんが吹き飛んだ先を見つめていると、瓦礫の山が爆発し、瓦礫の破片がものすごい勢いで吹き飛んで行きました。

 

 

「やっぱり~!」

 

 

その破片が吹き飛んだ中心部から、禍々しい魔力を纏った真理さんが出現しました。

 

その姿は傷つき、唇や額、左腕から出血しています。

 

けれど激しい魔力から発せられる威圧感ともいうべき風が吹き荒れ、全く弱っているようには見えません。

 

情けない話ですが、その風だけで私は吹き飛びそうになってました。

 

 

「霊丸……見た目以上の威力だったよ。おかげでこちらも余裕はない状況さ……!」

 

 

真理さんはそう言いながら、今までで一番大きな羽を両肩から生やしました。フルパワーで来ますか……!

 

 

「さぁ、受けてもらおう!ボクの全力を!!」

 

 

私はこの瞬間迷ってしまいました。浦飯さんから教わった、私の命を燃やして妖力に変換するかどうかです。

 

通用するのか?死にたくない、でもやらないと死ぬ。

 

頭の中が今までで一番回転したんじゃないかと思うくらい考えました。だが決められなかった。

 

真理さんの攻撃を防ぐ手段はない。そう諦めかけたその瞬間でした。

 

 

「ちっ!新手か!?」

 

 

凄まじい速さの光の矢が連続で真理さんを襲います。真理さんはこれを避けつつ、さらに後退しました。こ、この技は……!

 

 

「大丈夫2人とも!?」

 

 

現れたのは変身したミカンさんでした。

 

電柱の上に立っているミカンさんは矢の連続攻撃を繰り出し、真理さんは技を繰り出すこともできず、さらに後方へ下がって回避していました。

 

 

「ミカンさん!」

 

「ミカン……ナイスタイミングだよ……」

 

 

何度か矢を放ちながら、電柱の上から飛んだミカンさんは私たちの隣へ着地しました。

 

 

「ごめんね2人とも。桃のline見て急いでは来たんだけど、時間かかっちゃって……!」

 

 

どうやら桃がlineを送ってくれていたそうです。転校手続きで実家の方に戻っていたミカンさんですが、急遽駆けつけてくれたんですね。マジ女神。

 

 

「いやマジで助かりました。死ぬ寸前でした」

 

「右に同じ」

 

「……とりあえず無事……じゃないにしろ間に合ったみたいね。そこのあなた!今引くなら見逃してあげるわ!引かないというのなら、こちらも応戦するまでよ!」

 

「……確かに分が悪いが、ここで引き下がってはこちらの傷ついた意味がなくなってしまうのでね。見たところ君は接近戦向きではないようだが、この距離まで詰めたのは失敗じゃないか?」

 

 

確かに言われてみると、ミカンさんは長距離射撃が得意と聞いていますので、こうまで詰めるのはちょっと良くないかもしれません。

 

だがミカンさんはその言葉に対して不敵に笑いました。

 

 

「ふん、甘いわね!ショートケーキにメープルシロップかけるくらい甘いわ!こっちには浦飯さんがいるのよ!」

 

「ナイスだぜミカン!」

 

 

いつの間にか救出されていた浦飯さんがミカンさんの腕の中にありました。ちゃっかり回収してたんですね、ミカンさん。

 

 

「しかもスイッチオンよ!!」

 

「あ……ちょっとま――――!」

 

 

私の言葉が届くより先に、ミカンさんは邪神像のスイッチを起動しました。それと同時に、私の意識も真っ暗になりました。最後まで見届けたかったのに―――

 

 

★★★

 

 

途端に雰囲気が変わったシャミ子に、真理は少なからず驚いていた。先ほどまでとは魔力の質も量もケタが違う。まるで別人であるように感じられた。

 

 

「君はシャミ子くんではないようだね。その声からして、さっきの像に入っていた魔族かな?」

 

「おうよ。スイッチ入れ替えると、中身も入れ替わるってことよ。今の中身は浦飯幽助だ」

 

「……それで?次は君が相手をしてくれるのかい?」

 

 

どうやら本当に別人であるらしい。声も違うが、迫力がケタ違いだ。ハッキリ言ってこれほどの相手だとは思ってもみなかった。

 

 

「(万全な状態でも、とてもじゃないが無理だな)」

 

 

真理は自身と幽助の戦力差をそのように分析していた。まともに正面からやりあえる相手ではない。普段なら関わらないよう行動するレベルの相手だ。ハッキリ言って今の傷ついた状態から逃げれる相手ではない。

 

そう分析しつつ、真理は地面に垂れた血液も燃やしながら自身の傷口を自身の炎で焼くことで塞いでいた。

 

魔力を魔族に吸い取られれば、著しく弱体化する。それは目の前の千代田桃を見れば明らかだった。

 

もし千代田桃が弱体化してなければ1対1でも勝ち目は非常に薄かったであろう。しかし今は2対1でも圧倒出来た。それほどまで弱体化してしまっては、今後の活動に支障が出てしまう。

 

シャミ子は欲しいが、弱体化してまで欲しいわけではない。既に真理の中では撤退の意思を固めていた。

 

ただ相手が見逃してくれるかは別物であるが。

 

だが浦飯幽助の今までの言動から考えると――――

 

 

「あ?この喧嘩はシャミ子と桃とテメーの喧嘩だろ?俺が手ぇ出す理由がねーよ」

 

「ふふ、そうかい」

 

 

真理はまぁこう言うだろうなとは踏んでいた。この男の魔族は、どうやらバトルジャンキーでしかも律義な性格なようだ。いや、単純なだけか?

 

その言葉に、ミカンと言われた新手の魔法少女は反発した。

 

 

「ちょっと何言っているのよ浦飯さん!ここで見逃したらまた来るかもしれないでしょ!?倒せるときは倒さないとだめよ!」

 

「案外脳筋だなミカン。けどよ、真剣勝負に水差されて決着つけられたらマジでムカつくもんだぜ。

オレも仙水と戦った時、親父に体乗っ取られて勝手に決着つけられて腹が立ったから、親父に会ったときは殺しにいったかんな~」

 

 

そう言いながら浦飯幽助はゲラゲラ笑っていた。どうやら勝負は白黒はっきり自分でつけないと気が済まないタチらしい。どうやらある意味ではとても分かりやすい性格のようだ。

 

言っても聞かないと判断したのか、千代田桃とミカンは首を横に振っていた。

 

 

「オメーもよ、自分の手で戦いてー相手が違う誰かに倒されたら腹立つだろ?」

 

 

真理は浦飯に指をさされ、そう尋ねられた。

 

――――自分の中での忌まわしい記憶。マキちゃんの最期の光景を思い浮かべ、その下手人が誰かに勝手に殺されていたとしたら――――

 

 

「確かに、殺したいほど腹が立つね」

 

 

そう答えると、浦飯はニカッと笑みを浮かべた。打算など何もない、心からの笑顔に見えた。

 

―――――こんな笑顔を見たのは、いつぶりだろうか

 

 

「だろ?だから今回は見逃してやるぜ」

 

「なら、次は負けないようシャミ子君をもっと鍛えておいてくれ。ボクも君に負けないよう強くなるつもりだ。――――正義を為すために」

 

「おう!」

 

 

幽助としては少しこの女に言いたいこともあったが、あえて言わなかった。

 

この真理と言う女は確かに殺しをやっているが、左京みたいなブラック・ブック・クラブ(B・B・C)の連中の様に人を賭けの対象としたり、おもちゃにしているわけではない。

 

全部自分でやっているから、後ろで見ているだけのあの連中よりマシな部類だ。

 

人間の中にはB・B・Cの連中や神谷drのようにどうしようもない連中もいる。こーゆー奴も必要かもしれねーなと思うのは、魔族になった影響だろうか。

 

殺しをやめろと言葉にするのは簡単だ。だがその決着も含めて、実行するのは自分ではない……シャミ子の役目だと幽助は考えていた。

 

 

「(出来の悪い弟子を持つと苦労するぜ)」

 

 

幻海ばーさんもこんなことを思ってたのかなーと少し懐かしくなった。

 

 

「では諸君、また会おう……ああ、最後に一つ」

 

「あんだよ」

 

「ここ最近、いろんな場所で魔族が凶暴化しつつあるらしい。何かの前触れかもしれないから、気をつけてくれ」

 

「……何で教えてくれるんです?」

 

 

桃がそう尋ねると、真理は少し唸った。

 

 

「何……戦ってくれたお礼さ。じゃあね」

 

 

そう言って真理は高く跳躍し、屋根から屋根へ飛び移り、あっという間に姿を消した。

 

 

「ケッ、キザなやつ」

 

「ようやく一段落ねー……」

 

「でもさっき言っていたことは本当なんでしょうか」

 

「さぁな」

 

 

何とか魔法少女を退けたシャミ子たち。意味深な言葉を残して去った彼女から与えられた敗北の経験を糧にして頑張るんだシャミ子!

 

 

つづく




はい!前振り長い割に、戦闘シーンは短い矛盾!

何故か所々緊張感のない戦いになってしまった気がする……。

作中でも言ってますが、桃は最盛期よりかなり弱体化しています。

本編でも変身するだけで疲れてしまうレベルに落ち込んでいるので、こんな感じのイメージです。

なお千代田桜さんが言った「桃より強くなると……」のフレーズは、最盛期のことを指します。

次回からまちカドの原作に戻ります!
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