「あー、何か疲れました……」
早朝の通学路で思わずぼやいてしましました、吉田優子改めシャドウミストレス優子です。
寝ている間中ずっと浦飯さんの喧嘩講義を無理やり教わされていたら、朝になってました。
眠気は感じないですが、精神的疲労がたまっている感じです。
「優子おはよー」
「杏里ちゃん、おはようです」
友人の杏里ちゃん。黒髪ショートの運動が得意な彼女は、昔から私に声をかけてくれる人で、クラスの中で一番仲がいい子です。
そんな杏里ちゃんですが、私の姿を見て立ち止まりました。
「……うぅん?」
杏里ちゃんは私の上から下までマジマジと眺め、一度目をこすり、もう一度私を見ました。
「……ごめん、なんか角生えてる?」
「やっぱりそう見えますよね!」
周りの人たちの反応があんまりにも変わらないので、自分だけしか生えているのが見えてないかと思いましたが、ある意味安心しました。
杏里ちゃんにその場で説明しようとしましたが
「クラスでまとめて話したほうが、手間が省けるんじゃない?」
ということで、クラスメイトにも事情を説明しました。
「そーなんだー」「生えるとき何か痛くなかったの?」
なんというか、事情を説明するとあっさりと対応したみんなの対応力が怖いです。
なんでしょうか。上手くいっているのに、逆にもやもやするというか、もどかしい感じです。
「でも魔法少女なんてどこにいるんでしょうか……昨日その人物は見かけたんですけど」
皆の質問に答えつつ、どうすればいいか相談しました。お母さんも浦飯さんもそういう探すことに関しては何も言ってませんでしたし。
「……そういえば、魔法少女ってA組に1人いるよね」
「あーいるよねー、強い子」
「えぇ!?いるんですか!?」
いるのも変ですが、皆に魔法少女と認識されているのもおかしいです!しかも皆受け入れているし!
「んじゃ見に行ってみよー!」
「あぁ、杏里ちゃん!待ってくださいー!」
私は引きずられるように杏里ちゃんに連れられて、A組に行くことになりました。
まだ心の準備ができてないのにー!
2話「これが私の必殺技、霊丸です!」
「あれが千代田桃さん。中学が一緒だったんだ」
杏里ちゃんが指さした方向に座っていたのは、肩まで伸ばした桃色の髪の少女が本を読んでいました。
ほあー!あの人は昨日私を助けてくれた桃色魔法少女ではないですか!
「え、知り合いなの?」
「昨日、色々助けていただきまして……」
「ほうほう。何でも6年前に世界救ったって言うし、人助けもいつもしてもおかしくないね」
「ワールドクラス!?」
なんということでしょう。生き血をもらわなければならない魔法少女は、世界を救った戦闘力を備えてました。
「そ……そんな、ワールドクラスなんて……私なんか地域クラスだって言うのに……」
「ほんとぉ?」
「た、多分……」
きっと凄まじいパワーを持つに違いありません。いや、でも誰にでも弱点はあるはずです!
「なんかこう、弱点みたいなものはないですか?」
「うーん、あんまり喋らない人だから……握力計はぶっ壊してたね」
「半端ないです!」
お相手は魔法少女ではなくゴリラですか?
だ、ダメだぁ……勝てっこない……。私の喧嘩のイロハを知って強くなりましたが、まだ早いです。
「一旦帰りましょう、一時退却です。そう、作戦を練る必要が……」
「千代田さーん、D組の闇の一族の吉田さんが用事だってー!」
「裏切者ー!」
何故呼び出すんですか!まだ何も考えてないのに!
そうこうしているうちに魔法少女が私の目の前に立っていました。
やはり昨日の桃色髪の魔法少女です。
目の前に来ると……で、でかい。私の頭一個分大きいくらいです。
「……あ、昨日の……小さい子」
「な、なにおう!?」
開口一番、魔法少女は失礼なことを言いました。
むがー!小さい子だと!?ちょっと人より成長が遅いだけです!
「ごめん、悪気があったわけじゃなくて……本当に小さかったから……」
「ゆ、許しません!!私はシャ、シャドウミストレス優子!ご先祖のため、我が家の呪われた封印を解くために、魔法少女と勝負しに来ました!」
そう、ここで浦飯さんから教わった目でおどす、声でおどす、顔でおどすです!
表情筋に力を籠めまくります。なんか、顔が熱くなってきました。
きっとあまりの怖さに腰を向かしているに違いありません!
そう思いちらっと桃色魔法少女の顔を見ると、怪訝そうな顔をしていました。
「……大丈夫?顔真っ赤だよ、体調悪い?」
「睨んでいるんですよコンチクショー!!」
この魔法少女、私を弄んできます!もう許せません!
私は浦飯さんに教わったことを思い返してました。そして教わった中でも魔族的にかっこいい技を繰り出すため、私は拳に力を込めました。
「いくぞ!必殺、内臓殺しー!おりゃ―――――!!!」
凄まじい打撃が桃色魔法少女のお腹に集中して繰り出されます。まさしく拳の弾幕です。
浦飯さんはこの技で桑原という人が1週間ご飯が食べられなくなったそうです。私のこの技で無理やりダイエットさせてやります!!
そして私に許しを乞うことになり、生き血を手に入れるのです!
絶え間ない攻撃に、桃色魔法少女は反撃を返せません。
あ、あれ……何か私の脇腹が痛くなってきた……。
「ぐ、ぐふぅ……」
「あ、優子が倒れた」
あまりの攻撃スピードで、私のほうが先に足をついてしまいました。だが、この攻撃なら桃色魔法少女もひとたまりもないはず……って
「な、何故あなたはこの攻撃を受けて平然としているのですかぁ……あ、気持ち悪い……」
「避ける必要性を感じなかったから……大丈夫?」
おまけに桃色魔法少女に背中をさすられてます。く、悔しい……。
「私の必殺技が、効かないなんて……」
「魔力も筋力もないから、あれじゃ私にダメージはないよ……」
「こ……これで勝ったと思うなよー!!」
これは退却ではない!未来への転進だから大丈夫なのだ!
私は自分にそう言い聞かせ、その場を去った。そう、もっと強くなる必要があるのだ。
「んで、オメーは泣いて逃げたってことか」
「な、泣いてません!あの時は目汁が出ただけです!」
その日の夜、夢の中で浦飯さんに報告するとバッサリ言われてしまいました。
「浦飯さんに言われた通りやりましたけど全然ダメでした!原因は浦飯さんにもあると思います!」
「へー、面白れぇこと言うじゃねぇか」
「あぁ、指鳴らして来ないでください!暴力反対!」
ダメです、この人すぐに暴力に訴えかけようとします。このままでは夢の中でもダメージを受けてしまいそうです。
そういえば、あの魔法少女は魔力を使う、と言ってました。
つまり私でも魔力を使えることができれば、大幅パワーアップするに違いありません。
「ま、魔力です!魔力を使って戦えれば、もう不覚を取ることはありません!教えてください!」
「魔力ねぇ……俺にはオメーからは妖力しか感じられねぇが、まぁどっちでもいいか。オメーは今全く使い方分かんねぇ状態か?」
「さっぱりです。魔力と妖力って何か違うんですか?」
「さっぱりか。まぁ俺んとこじゃオーラっつうか力のことを魔族は妖力、人間は霊力って呼んでただけだ。魔力っつーのは全然聞かなかったな」
単に呼び方の違いみたいです。まぁここは話を合わせて、妖力と呼んでおきましょう。それにこっちのほうが怪しげな響きで強そうですし。
「自分で言っといてアレですが、そんな不思議パワーが、私にあるのでしょうか?」
せいぜいアニメや漫画くらいでしか見たことがない力です。一体どうすれば使えるのか、見当がつきません。
それにあーゆーのは湧き上がる力とか言いますが、角が生えてから感じるのは頭の重みだけです。
「俺も最初コエンマに言われた時はそんな感じだったな。よっしゃ、これから妖力の使い方と、俺の十八番を教えてやるぜ」
「十八番ってことは必殺技ですか!?」
「おう!これで色んな奴を倒してきたもんよ」
つ、ついに必殺技です!ゲームみたいに遠距離技でしょうか!それとも近距離のえぐい技でしょうか?
初めての必殺技習得に心が躍ります。思わず尻尾もブンブンです。
「右手の人差し指に全身の力を集めるつもりで、気持ちを集中してみろ」
「……?」
私は言われた通り、右手の人差し指気持ちを集中してみました。集中です、集中……。
「!?何か、指が光って熱くなってきました!?」
指先が赤く輝き始めました。熱いのもどこか心地よさを感じます。これが、妖力……でしたっけ。
「それで狙いをつけて撃ってみろ。心で念じて、心で引き金を引くんだ。ま、拳銃のイメージだな」
「それで技名を言うんですね!この技の名前は!?」
そう聞くと浦飯さんはニッと笑いました。今までで一番さわやかな笑顔で、思わずドキッとしました。
「霊丸だ!覚えとけ!」
「分かりました!……心で念じて、心で引き金を引くイメージ……」
「的はあれだ」
浦飯さんが組んでいた手から、右手の親指だけで指し示したものは、商店街の看板でした。
「……何であんなものが……?」
「いや、どーやら像の目の前に置かれると、その物がこの空間に入ってくるみてーでな。だからここには看板とか、オメーん家の物や学校の物があるってわけよ」
周りを見渡すと、確かに学校のものとか……あれ?あそこにあるの、私のゲームですよね。
ま、まぁ良いです。私はたまさくら商店街のマスコットキャラ「たまさくらちゃん」の看板に狙いを付けました。
その綺麗な顔、吹っ飛ばしてやります!
「くらえ!霊丸!!」
人指し指から飛び出した赤い妖力の塊はまるで弾丸のように突き進み、たまさくらちゃんの頭を吹っ飛ばしました。そして霊丸はそのまま突き進み見えなくなりました。
自分で撃ったはずなのに、目の前の光景が信じられませんでした。
しかし体から力というか、何かが減っている感覚と放ったときの衝撃を未だに感じていました。
「こ、これが霊丸……!これが私の必殺技!」
「オメーの全身から出てる妖気を指先に集中して放つ霊丸だ。多分だが今のオメーのパンチの数倍の威力ってとこだろうな。まぁ俺の初めての時と威力はあんま変わんねぇ感じだな」
凄まじい威力です。これはもう今までの私じゃありません。
言うなればそう、超優子です!
「これなら勝てる!桃色魔法少女に勝てますよー!!」
「ついでに言っとくが、今のオメーの妖力じゃ1日1発が限度だからな。鍛えればもっと撃てるようになるけどよ。後ここは夢の中でも、妖力は消費するからな」
何か色々浦飯さんが言ってましたが、もう恐れるものは何もありません。その後妖力の使い方を教わって、目が覚めました。
待っていろ桃色魔法少女!この超優子が相手です!
登校し、お昼休みまで待ちました。お昼前ですと授業に影響が出てしまうかもしれませんですし、何よりごはん前で奴もお腹がすいてパワーダウンするかもしれません。これも戦略です。
「今日こそ終わりだ、桃色魔法少女!」
「それ長いから……桃でいいよ」
私は杏里ちゃんとA組にやってきて桃色魔法少女に指をさします。もちろん右手の人差し指です。
桃は余裕そうな顔をしています。しかし、その顔をしていられるのも今の内です。
こちらにはそう……必殺技があるのだから!
「そう言ってられるのも最後だ!私は霊丸という必殺技を会得したのだ!」
「おお!必殺技とは!見せてシャミ子!」
「誰がシャミ子だー!」
杏里ちゃん、変なあだ名付けないでください!
「……シャミ子、もう必殺技なんて身に着けたの?」
ほら、もう桃色魔法少女がマネしてきたじゃないですか。まったく、戦いの場がゆるくなっていくではないですか。
「シャミ子じゃなーい!!シャドウミストレス優子!」
「いーじゃん、長いし。こっちのほうがかわいいよ」
「杏里ちゃんはどっちの味方ですか!?」
気が散ります。まさか、これが心理作戦!?
危ない危ない、私はクールな魔族です。こんな作戦には乗りません。
「ならばその体で味わうがいい、桃よ!くらえ、霊丸!!」
私は妖力を集中して放ったはずでした。しかし何も起こりません。
「優子ー、何も起きないよ?」
「そ、そんなはずはありません!今朝はたまさくらちゃんの看板を吹き飛ばすほどの威力が出たんです!」
「………!」
妖力を右手の人差し指に集中しようとしますが、一向に集まりません。おかしい、浦飯さんの前では撃てたのに……。
「ちなみに、それは1日何回撃てるの?」
「桃……な、なんかすごい顔してません?」
何か凄まじく怒っているような顔つきです。まだ何もしてないはずですが……?
「気のせいだよ、早く言って」
「えっと、確か……」
決して桃の圧力に負けたわけではありません。原因を私は思い返してました。
何回でしたっけ。確か浦飯さんが言ってたのは……。
『今のオメーの妖力じゃ1日1発が限度だからな』
「1日1回……だったような?」
「んじゃ、今朝撃ったんじゃもう駄目じゃない?」
「あ」
確かにもう回数オーバーです。夢だからカウントされないと思ってました……!
確か浦飯さんが夢でも妖力を消費するって言っていたような……。
「………ドンマイ?」
桃の右手が私の左肩に乗りました。その目は、とても慈愛に満ちていました。
――それは、憐みの目でした。
「こ、これで勝ったと思うなよー!!」
私はその場を後にしました。何か目に水分がこみ上げるような気がします。
これは涙ではありません!修行の汗です!そう、魔法少女を倒すための、努力の汗です!
そうなんです!
頑張れシャミ子!今回は負けたが、妖力も頭も鍛えて立派な魔族になるのだ!(CV:ジョルジュ早乙女)
つづく
最後に霊丸を使えなかったところですが、原作でシャミ子は夢の中で色々変身したりしていたので、魔力を使っていると考えたからです。
必殺技ってやっぱり男の子のロマンですよね。