皆さんは行かれたのでしょうか?シャミ子の水着エッッッッッ!!
真理さんとの戦いが終わり、怪我が完全に治るまで数日かかりました。
あの戦いの後、桃は真理さんの血を回収しようと現場を捜索してましたが、真理さんが炎で血を焼き尽くしてしまったため回収できませんでした。
桃は真理さんの血をこっそり使って、邪神像の封印を一部解放してくれようとしたようです。
こちらのためにやってくれているのは嬉しいのですが、真理さんの実力は落としてほしくなかったので、少しほっとしたところもありました。
やはり真理さんとはもう一度決着をつける必要があると感じているからです。それを桃に話すと、渋々認めてくれました。
ただこのままでは勝てないのは明白でした。
ということで桃とミカンさんが「これからの対策会議をしよう」と提案してきました。
メンバーはうちの家族と浦飯さんにミカンさんと桃で、我が家のリビングで行うこととなりました。
「いやぁ、真理さんは強敵でしたね」
「ミカンが来なかったら普通に負けだったけどな」
「うぐっ」
相変わらず浦飯さんは慰めるということをせず、ストレートに言う人です。
タイマンどころか2対1で負けてました。しかも桃が言うには、真理さんは魔法少女の中でトップクラスの強さ……というわけではないそうです。
魔法少女って強すぎません?層が厚すぎる……。
「……ミカンが来てくれなかったら負けていた。各々実力アップをすべきだけど……」
「桃に関しては失った魔力を戻せばいいけど、シャミ子に関しては短期間にかなりの力をつけてるわ。これ以上に早くパワーアップさせる方法なんてあるのかしら?
何かいい方法はないの?浦飯さん」
我が家の封印を一部解いたせいで大量の魔力を失った桃は以前より回復しているとはいえ、まだまだ元通りではないです。
ならば私がその分強くなればカバーできるのですが、現状で結構修業は一杯一杯です。これ以上きつくすると死ぬ!比喩なしで死にます!
そんな私の思いは伝わってなく、ミカンさんが浦飯さんに尋ねると、浦飯さんはウーンと唸りました。
どうかヤバイ修行は出てこないように……!
「……何かあったような気がしたんだが、何だったっけかな~」
まだ恐ろしい修行法があるかのような浦飯さんの言葉に、私は震えていました。しかし思い出せないようです。これならやらなくて済むかもしれません。
「ねぇ浦飯さん。トレーニング装置とか、ギプスとかないの?良は友達に貸してもらった漫画でそういうのあるって、見たことあるんだけど」
悩んでいる浦飯さんに対して、良がそんなことを言い始めました。
確かに漫画だとそういうのが強敵と戦う前に都合よく出てくるパターンを見かけますが、ここは現実ですしね。そう都合よくはいかないでしょう。
でも良ってば、今はそのフォローは要らないんです……!
「でも都合よくパワーアップ装置があるわけないわよね~」
「あー!思い出した!あれがあったわ!!」
「あるんかい!?」
ミカンさんの激しいツッコミが入りました。
パワーアップ装置的なものをついに思い出してしまったようです。都合良すぎィ!桃も「えぇ……」って顔をしてます。
「何でそんな大事なものをすっかり忘れてるんですか……」
「悪りー悪りー。オレもソレをやってたのが戸愚呂と戦うときの2日しかやってなかったからよー、すっかり忘れてたぜ」
浦飯さんはハハハと軽く笑い飛ばしてました。マジで強敵と戦う前にしかつけないパワーアップ装置をつけている人がこんな身近にいたとは……。
しかし2日だけとはもったいない。戸愚呂戦の後は何故やめてしまったのでしょうか?ちょっと疑問です。
「2日しかつけないで効果あったんですか?」
「おう。かなりパワーアップできるぜ。まぁ戸愚呂の場合はそれだけじゃ無理だったが……」
「大丈夫かな、それ……」
お母さんが聞くと、何やら不穏な返事がきました。
戸愚呂って人はやたら強くて辛い戦いだったとは聞いてますが、効果は大丈夫って言ってほしいんです。
「ちなみにどういうものなんですか?」
「霊光波動拳の修の行 呪霊錠ってんだ。簡単に言うと霊力……シャミ子たち風に言うと魔力向上ギプスってとこだな」
「……さっそくつけてみましょう」
「ちょっと待て桃!私の意思をまず確認したらどうだ!?」
「大丈夫。危なかったら外せばいいんだし。何事も挑戦だよ」
キラキラした目で私の両肩に手を置いてきました。何で桃は修行になると目を輝かせるんですか……?
しかも逃げられないように力強く捕まえてきます。ええい、こんなところで馬鹿力を発揮しおって!
くそっ!確かに封印を解くためには仕方ないとはいえ、何で少年漫画みたいなデタラメな修行方法ばかりしなくてはならないのか!もっとこう……穏便な修行を所望します!
「皆さん、魔族がピンチですよ!ヘルプミー!」
桃のキラキラした目が眩しく、私は桃から目線を逸らしてミカンさんやお母さんたちに助けを求めました。
そして返ってきたのはいい笑顔でのサムズアップだけでした。ガッデム!魔族の味方はいないのか!
「じゃあつけるために体借りるぞー」
味方が誰もいないことに嘆いていると、桃がすでに邪神像のスイッチを入れようと準備していました。いつも以上に行動が早いです。
しかし封印も解かなきゃいけないですし、今度は負けないようにするためには実力をつけなくてはならないのも事実。だったらやってやりますよ!
「くそー、どんとこいです!」
「お、その言葉忘れんなよ」
そんな感じで半ばやけくそで答えると、浦飯さんは不穏な言葉を言い残し、桃がスイッチを入れたことで私の意識は途切れました。
しかしすぐに意識が戻りました。あら、いつもと違って早いですね。
そんな風に思っていた私の意識が戻った瞬間、凄まじい重さが両手首を襲いました。
「おべぇ!?」
唐突に重さが襲ってきたため反応が遅れ、何とか広げた掌で地面に手をつくことによって転ぶのを避けることが出来ました。ちょうど屈伸体操で足を延ばした感じのポーズです。
「な、何ですかこれはー!!?」
よく見ると両手首だけでなく、両足首にも黄色い光の枷みたいなものがくっついてました。こ、これが呪霊錠ってやつですか……!?
「これかなり重いんですけど~……!?」
「それが呪霊錠だ。結構重いだろ?オレも最初は面食らったぜ」
邪神像に戻っていた浦飯さんの言う通り呪霊錠はすさまじく重く、両手を胸元へ持ち上げようとしますが、かなり力を籠めないとビクともしないくらい重いです。
「そんなに重いの、それ……?」
「気合い入れないと駄目なくらい重いです……!ぐぬぬ……ふん!」
桃の問いに答えながら、気合いを入れて両手首をくっつけたまま元の立っている姿勢になるよう持ち上げました。
「どっこいしょ!」
「女の子が言うセリフじゃないわね……」
「重くてきついんですからしょうがないんです!」
ミカンさんに言い返しながら、何とか普通に立つことはできました。しかし両手足をくっつけた状態から広げることが出来ません。光の割に硬いし重すぎです!
「ぬぅぅ!こ、これは鉛でできたバネみたいです!」
「そんなに重いのね……わたしたちには光っているようにしか見えないけど」
「そうですねぇ、軽そうに見えますが……」
「お姉、頑張って!」
各々勝手なことを言って、唯一優しい言葉をかけてくれるのは良だけです。良の期待に応えるよう気合いを入れて手を広げようとしますが、ビクともしません。何でや!
「オレも筋肉だけでやろうとしたらビクともしなくてババァに馬鹿にされたかんな~。筋力じゃ無理だから、全身の魔力をフルに使ってみろ」
「わかりました。はあぁ……!!」
魔力を高めて身に纏うようにし、魔力で全身を覆います。変身はしてませんが、変身しない状態では全力の状態になりました。
フルパワーの状態から手首同士を離そうとすると、先ほどはビクともしなかった呪霊錠が段々伸びていきました。
同じ要領で足を広げると、同様に伸びて肩幅くらいで立つことに成功しました。手もそれくらい広げて立ちます。
そしてようやく完全にいつもの姿勢になることが出来ました。てゆーか普通に立つだけでもう手一杯なんですけど!?
「やりました!まともに立てました……ってバカですか!?こんなフルパワーの状態でいつもいろっていうんですか!?」
少しでも今のフルパワー状態から妖力を減らそうとすると、あっという間に両手足首がくっついた状態に戻ろうとするぐらい呪霊錠は強制力が強いです。
フルパワー状態なんて長時間持ちませんから、すぐ妖力切れになります。
そのことを浦飯さんに言うと、浦飯さんの目つきが厳しくなりました。
「死にたくなけりゃあな」
ビクリと、私は浦飯さんの言葉に震えてしまいました。
「まずそれをつけたままでも大の字になって寝れるくらいに慣れろ。そうすれば今のフルパワーが二分の力で出せるようになる」
「に、二分ってことは……20%ってことだから……強さが5倍になるってことですか!?」
それはすごいことです!つけているだけで5倍にパワーアップなんていうのはチートですよチート!
その素敵なフレーズに、思わず尻尾が回転しました。
「そうだ。そんくれーしねーと、次また真理と同等レベルのやつと戦ったら殺されるぜ」
それは少し考えてました。真理さんは最初から私を殺す気が全くなかったからああいう結果になったのだと。しかも最後以外は本気じゃありませんでしたし。
もし今度の相手が最初から全力で殺しに来るタイプでしたら、今の実力のままでしたらあの世行きでしょう。
「――――それに、次はアイツに勝ちてーだろ?」
ニヤリと浦飯さんは笑いました。
そうです。今回は真理さんとの戦いは2対1になってしまいましたが、本来は私から始めた喧嘩です。なら次戦うときは、1対1で勝てるようにならなくちゃいけないんです!
「はい!次は勝ちます!」
浦飯さんの質問に私は笑って返答すると、浦飯さんも満足そうな表情を浮かべました。
「……ところで浦飯さんは2日つけてたと言いましたが、2日で完成する修行なんですか?」
「え、そうなんじゃないんですか?」
桃がポツリとそんなことを尋ねていました。いやいや、こうして立っているだけでも辛いのに、そんな何日もつけっぱなしなんてできませんよ。
てっきり浦飯さんが2日しかやってなかったこともあり、私は2日という短い間で完了する修行だと思って装着したのです。
確かに封印は解きたいですし、真理さんにも勝ちたいです。でもこんなの長時間つけるのは修行ではない!ほぼ拷問である!魔族の人権を認めてください!
もちろん2日ですよね?と期待を込めて浦飯さんを見ると、少し首……ではなく邪神像が不思議そうに傾いてました。え、何その反応。
……ま、まさか。
「オレんときは戸愚呂と戦ってヤバかったから外しただけであって、別に期限なんてないぞ」
「いやぁー!?これからこの状態が続くんですかー!?」
「うるせー!」
その言葉を聞いた瞬間、私は叫んでしまいました。先の見えない耐久レースの始まりを嘆いていると、浦飯さんに本気で怒られました。鬼、悪魔!
「それを外す鍵となる言葉は『開《アンテ》』だ。だがギリギリまで使うなよ。長くつけていればいる程底力がつくからな」
「え……マジでつけっぱなしですか?」
「殺されそうになったら外していいぞ。オレの時もそうだった」
「バイオレンス!?」
解除条件があまりに厳しくてまた叫んでしまいました。浦飯さんと出会ってから目標やら基準が怖すぎます!
てゆーかヤバイ相手と戦っているときに呪霊錠つけっぱなしとか舐めプですか!?相手の人マジギレしますよ。
「……しかし常に魔力を消費するのであれば、私とミカンはつけられそうにない」
「何でですか?一緒につけましょう!」
「引き込む気満々ね、この子……」
桃が突然つけられないとかぬかしてきました。逃がさんぞ、いっしょに地獄に付き合ってもらうのだ……!
しかしトレーニング好きの桃でも、首を横に振りました。
「前も言ったかもしれないけど、魔法少女の肉体は生身じゃなくて、魔力で構成されたエーテル体なの。つまり魔力を使い切ったらコアになって消滅する可能性もあるから、この修行はできないってわけ」
理由をミカンさんが答えてくれましたが、思った以上に深刻な理由でした。そういえば前にもそう言ったことを言ってましたね。
「確かにこれはエネルギーガンガン使いますからね……やんないほうがいいです」
今も妖力を消耗し続けているので、妖力切れになるのはかなり早いでしょう。たしかに消滅のリスクがある桃たちには使えない修行法です。
「よし!今日は1日目だから、修行なしな!普通に過ごしていいぞ!」
「……今日はその状態に体を慣らそう」
「へへ、妖力切れになって倒れるのが目に見えるようです……」
浦飯さんからの提案に、桃も賛同してきて、私は悲しく頷きました。
悲しいですね。せっかくの休みなのに、倒れる未来しか脳裏に浮かびません。
桃と浦飯さん以外は私の様子を見て、悲しそうに目元を拭ってました。
くそ、やってやる!どんとこいです!
そして具体的にどうなったかと言うと、こんな感じの生活になりました。
それはもう大変でした。主に力加減的な意味で。
理由はフルパワーで全身を強化しているところに、物を持つという行為が限りなくヤバイからです。
例えば食事の時の箸
「あー、箸が折れました!?」
「持った瞬間真っ二つとは………」
「はい、お姉にはフォーク」
「うう、まるで箸をうまく使えない幼稚園児のようです……」
皿洗いを手伝うときも
「お皿が綺麗に割れてしまいましたー!」
「怪我はありませんか優子」
「肉体はへっちゃらですが、貧乏な我が家の数少ない皿が逝ってしまいました……」
「お皿ぐらいなら買えるぐらいにはなりましたから……」
ミカンさんと一緒にゲームをやろうとしますが……
「それ以上やるとボタンが引っ込むからやめとけ」
「確かにコントローラーがミシっていいました!今日はやめます!」
「シャミ子ってゲームの時は異様に反応が早いわよね」
「ところで桃は?」
「鬼気迫る感じでトレーニングしてるわ」
「えー、今日も修行ですか……あ」
「どうしたのよ?」
「妖力が切れちゃいます!……ぬお!」
妖力が切れた瞬間、バチンと手足がくっついた状態に戻りました。痛いー!少しも容赦ないですねコレ!
「思った以上にこの修行ヤバイわね……やんなくてよかったわ」
「うぅ、痛いです~動けないです~」
蓑虫みたいな状態になった私は、大人しく2人でドラマを見ることにしました。
浦飯さんは私の家で競馬中継見てます。
そして寝るとき。ウトウトした瞬間妖力のコントロールが外れ、一瞬で手足がくっついて戻りました。
それは勢いよく戻り、バチンと大きな音を立ててくっつきました。
「痛ー!こんなん寝れるかー!」
「うっせーなー、オレは大の字で寝れたぞ……」
「く、悔しい……!」
とまぁ、こんな感じで過ごすことになりました。
おかげで寝不足で、次の日の朝、桃の部屋でグータラすることにしました。桃とミカンさんも一緒です。
もぅマヂ無理。超解放したい。普通に生活できるってとても素晴らしいということを改めて認識できました。入退院繰り返していたころとはまた違う感情です。
「ところで、ここwifiのアンテナが微妙に悪くない?」
「そうかな?普通だと思うけど。機種による違いじゃないかな」
ミカンさんが携帯を弄っていると、そんなことを言い始めました。そういえばこの2人もですが、クラスの皆は携帯持っているんですよね。いいなぁ、私貧乏だったから持てなかったし。
「つーかwifiだの良く分かんねーな」
「あら、浦飯さんはそういうの問題なく使えそうな気がするけど」
「オレんとこにはwifiなんてなかったしな。メカはあんまり強くねー」
案外普通にそういったメカは使いこなしそうなイメージがありますが、どうやらそうではないそうです。皆メカとかパソコンの専門用語理解するの早いですよね。
「あーそれ分かりますよ浦飯さん。横文字並べられても困るというか……」
「だろー?パソコンなんか基本的な用語の解説がないから困ったもんだぜ」
「ですよねー。wifiの『アンテナ』なんて言われても何が何だか―――」
私がそう言った次の瞬間、呪霊錠がパンッという音と共に消え去り、抑えつけられていた妖力が解放されました。
「呪霊錠が!?」
「解除されてる!何で!?」
呪霊錠をつける前より妖力が上がってます。確かにパワーアップしてますが、それよりも何故呪霊錠が勝手に解除されてしまったんでしょうか!?
訳も分からずオロオロしていると、桃が何やら気づいたようでポンと手を打ちました。
「そうか!シャミ子はさっき『
「まるで揚げ足取りみたいな解除ね」
「そんなぁ~、まるで能力戦のやられ方の典型例じゃないですか~」
「こ、こいつアホだ……」
浦飯さんはアホと言いますが、何で言葉まで気を付けないといけないんですかー!喋るのにも気を使うとかストレスマッハですよ!
嘆き悲しんでいると、桃が優しく肩を支えてくれました。
慰めてくれるんですね、と期待を込めて桃の目を見ます。
「さ、呪霊錠つけ直そう。1日でつける前よりパワーは上がっているから、長期間となればもっといける」
しかしそんなことはありませんでした。桃は平常運転です。ミカンさんに救援を要求する視線を送りましたが、首を横に振りました。
「桃の鬼!悪魔ー!」
「わがまま言わない!さぁ浦飯さん、早くつけ直しましょう」
「お願いだから休ませてー!」
頑張れシャミ子!発する言葉にも気を付けつつ、呪霊錠つけてもまともに行動できるよう努力するんだ!
本当はお祭りの話とつなげる予定が、長くなったので分割です。
幽白を読み返すと、暗黒武術会の準決勝の2日後に決勝戦を行ってます。なので印象が強い呪霊錠ですが、実際は2日くらいしかつけてません。
その割に幽助はかなりパワーアップを遂げてますが、アレは幻海の『霊光玉』を継承し、幻海の霊力を上乗せした状態での話ですので、シャミ子のパワーアップはそこらへん加味して決めようと思います。
最後のアンテナの下りは皆大好き、海藤君の『禁忌』で桑原がやられたあたりをリスペクト。
あれが念の元ネタなんですかね。身体能力では劣っていてもやり方次第でどうにかなる能力ですね。