まちカド☆白書   作:伝説の超浪人

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桃って色々重いイメージ。原作の最新話も桃もシャミ子も過去が重い重い。
そんな訳で今回は自分なりの桃のイメージも入ってます。注意。


22話「桃の心の内……と変な奴らです!」

『お母さん、あれ買ってー?』

 

『はいはい、また今度ね?』

 

 

窓の外で行われている親子のやりとりを、私は横目で見つめていた。

 

名は桃。名付け親は施設の人間。

 

私は生まれてから一度も両親を見たことがない。何故なら私は孤児だったから。

 

他の人は家族と言うものを当たり前に持っていた。その当たり前は、私にはない。

 

 

『今日から君のお姉さんになる千代田桜です!』

 

 

そんなある日。突然私にそう名乗った人が現れた。魔法少女だという。そのままその人に引き取られ、家族となった。

 

何故私を引き取ったのか?そう尋ねるとその人は悩んで答えた。

 

 

『君には魔法少女の才能を感じたからさ』

 

 

良く笑う人だった。いつでも何でもコロコロと表情が変わり、すぐ行動に移す人でもあった。

 

孤児で外の世界を知らない私を色んなところへ連れ出してくれた。

 

 

『お姉ちゃん、どこ?』

 

 

そんな生活も長くは続かない。10年前、姉は突然姿を消した。

 

何も残さず消えた姉。手掛かりはない。

 

当時の私が持っているものと言えば、姉から教えてもらった魔法少女としての力だけだった。

 

私は魔法少女として活動し、姉を探した。

 

私が欲しいのは名誉でもお金でもない。もっと当たり前のものが欲しかっただけ。

 

 

『殺せ!殺せ!』

 

『俺の手柄にしてやらぁー!』

 

 

しかし来るのは余計なものばかり。魔法少女として活動して名が売れると、そんな輩ばかりが寄ってきた。

 

魔族から狙われ、時には魔法少女同士の殺し合いも何度もあった。エーテル体でなければ死んでいることも何度もある。

 

だが探しものは見つからない。

 

いつの間にか世界を救った魔法少女として噂されるようになった。

 

平和になり、当たり前の日常を謳歌する人々。だが私にとっての当たり前な日々は未だない。

 

いつしか魔法少女に変身することはなくなっていた。もう疲れたのだ。

 

 

「またあの夢か……」

 

 

暑い夏の日。布団と寝間着を汗で濡らした千代田桃は目を覚ました。幾度となく見た夢に、気持ち悪さを覚えながら。

 

ここ最近昔の夢を見ることが多くなっていた。見る日は大体嫌なことがあった日か、戦いがあった日であった。

 

明らかにストレスからきているものであることは分かっていた。しかし見てしまうものは見てしまう。止め方が分からなかった。

 

起床後シャワーを浴びた桃は流し台の蛇口をひねって水を飲むと、トレーニング用の服へ着替えた。こうしてモヤモヤしているときはトレーニングをすることで、頭の中から嫌なものを追い出すことが出来るからだ。

 

まだ太陽が昇るかどうかという時間帯。桃は駆けた。

 

何度もダッシュを繰り返し、動きを加える。夢中になって走っていると、山奥の奥々多魔駅に着いていた。

 

誰もいない山奥で1人変身する。変身した桃は手元を見る。

 

武器は先日のお祭りから、杖でなく真っ黒な日本刀のままであった。

 

意図して武器を変えたものではない。恐らく、今の精神状態から引っ張り出されたのがこの武器なのだろう。

 

桃は左腰だめに構えた日本刀を目の前にあった岩に向かって右薙ぎに振った。

 

熟練した魔法少女が見ても一瞬ブレたようにしか見えない速度の斬撃。数瞬遅れて、切れた岩の上部分がずれ、地面に落ちた。

 

この日本刀が意味することは――――

 

 

「【闇堕ち】か……」

 

 

明らかに闇堕ちが始まっている。この黒い日本刀はあの血池真理のように、心が負の感情へ堕ちていることへの証明なのだろう。

 

あの女も黒と赤がメインの色の戦闘フォームだった。いずれ心が闇に飲まれれば、桃自身の戦闘フォームも黒に染まるだろう。

 

そこまで考えて、桃は数度頭を横に振ることで頭の中をリセットした。考えれば考えるほど、落ち込んでしまうだろう。考えないのが一番いいはずだ。

 

桃はそう切り替えて、日本刀で周辺の木や岩を切っていった。幸いこの辺りは姉である千代田桜の私有地である。つまりいくら切り裂いたとしても問題なかった。

 

しばらく切り続けて疲労感を感じたので、岩に腰掛ける。ふと空を見ると、既に夕焼けに染まり始めていた。

 

随分長くトレーニングしたな、と考えているとお腹が鳴った。水分補給はしていたが何も朝から食べていないので、時間を把握すると途端にお腹が空いてきたのだ。

 

今日のシャミ子の晩御飯は何だろうと考えつつ、全力でばんだ荘に戻ることにした。桃は基本自分で食事は作らない。引っ越してからと言うもの、シャミ子に作ってもらうのが大半であった。

 

家に帰ると、料理している音と幽助とシャミ子の声が聞こえた。2人は台所にいるのだろう。何となく気になり幽助とシャミ子の会話に聞き耳を立ててみた。

 

 

「しかし便利だな親父さんの残してくれた杖は。油が完璧に張っているフライパンに変わっちまうとは……」

 

「ですよね!突然のキャンプにも対応できます!」

 

 

桃は思わずズッコケそうになった。ダーツでとったシャミ子の父が残した魔法の杖は、シャミ子の意思で棒状であればあらゆるものに変化するアイテムだった。

 

かなりすごいアイテムのはずなのだが、当人の使い方が庶民的すぎる。桃には逆に思いつかないものであった。

 

 

「……ところでよ、鍵とかに変化はできねーのか?」

 

「万引きとか空き巣には絶対使わせませんよ!犯罪はダメです!」

 

 

その発想がすぐ浮かんでくる時点で、シャミ子は大分幽助に毒されていることに本人は気づいていないようだった。

 

 

「バッカ、オレなら普通の家なら3秒で開けれるぜ。オメーの場合だったら先公の机の中を開けて、テストの答えをちょっと拝借したりだな……」

 

「その発想はなかった!」

 

 

今時先生の机の中にテストの答えが入っているのだろうか?最近はパソコンの中にありそうな気もするが、ちょっと知りたいかもと思った桃だった。

 

何も聞いてないかのように帰宅した桃は、いつもの通りシャミ子に晩御飯を作ってもらい、食後休んでいるとシャミ子が何やら勉強をしていた。

 

何をしているのか尋ねると、夏休みの宿題を律義にやっているらしい。

 

桃はまるでやっていないと話すと、シャミ子はそれは人としてダメだと訴えてきた。

 

何と魔族らしくない子なのだろうか。魔法の杖の使い方といい、明らかに種族を間違えている気がする。

 

一方隣で封印されている魔族は宿題どころか学校そのものをサボる常習犯であった。これが魔族としてあるべき姿だろう。

 

 

「勉強なんかしないでも生きていけらぁ」

 

「でもやっぱり学生ですから勉強しないと……」

 

 

浦飯の発言に対してシャミ子はダメ出しした。

 

そんな2人を見て「2人を足して割るとちょうどいいんじゃない?」と桃は提案してみた。

 

すると魔族同士で「ダメ人間になっちゃいます!」だの「アホになって弱くなっちまうぜ!」だのと言い争いを始めた。どうやら勉強しようとしまいと思考レベルは大して変わりはないようだ。

 

 

「桃はちゃんと宿題しますもんね!?」

 

幽助が勉強を否定してくるからか、シャミ子はこちらに意見を振ってきた。

 

生憎だが元々今日はモヤモヤしっぱなしだったのだ。ストレスが溜まる宿題なんぞする気は桃にはさらさらなかった。

 

 

「大丈夫。宿題はおいおい進行するから」

 

「おいおいとは!?」

 

「なんかおいおい……」

 

「私の目を見て話してください!」

 

 

桃は適当に誤魔化そうとしたが、やたらとシャミ子は追及した。本当に何故魔族なのか。不思議なくらい真面目というか、普通に生きようとしている。

 

桃にはそれが少し眩しく感じた。

 

とはいえ宿題をやりたくないのも事実。適当に言いくるめて忘れさせる作戦に出たが、あと一歩のところで失敗した。

 

桃はあまり口が上手いほうではないが、それでも騙されかけるシャミ子は本当に危ういと思う……詐欺的な意味で。幽助が良いカモになるというのも納得するレベルだ。

 

 

「宿題が出たらこれを差し上げます!動物園のチケット!トラの赤ちゃんと触れ合えるVIPチケットです」

 

 

瞬間、桃に電撃が走る――――

 

 

「やろう、今すぐに」

 

「急にヤル気に!?さてはキサマ猫科が弱点だな!?」

 

「お前ら両方チョロイなー」

 

 

師匠にまんまとノせられた男が色々言っているが、桃は宿題に神経を注いだ。トラの赤ちゃんと触れ合える機会を逃すわけには行かない……!これは対価……!宿題への正当な対価なのだ……!

 

そこで桃はペンが止まった。そういえば高校どころか、こうして友人とどこかに出かけるなんてしばらく記憶にない。

 

誰かと一緒に、楽しいことをするという感覚が抜けていた。

 

 

「あとさ、シャミ子。動物園の日に、シャミ子が本気で作ったお弁当を食べてみたい。外で」

 

 

だから桃は希望を口にした。外でピクニック。魔法少女での活動を除けば、しばらく記憶にない物だから。

 

 

「……!食べきれないくらい作ってやるから覚悟しておけ!」

 

「張り切り過ぎて失敗しそーだけどな」

 

「何をー!?」

 

 

どこかコミカルな、平和なやり取りに桃は頬を緩ませた。いつの間にか、闇堕ちのことを考えている自分はいなかった。

 

 

 

 

数日後。宿題を終わらせて、皆で動物園で待ち合わせをしていた。

 

先に着いたのはミカンと桃。桃はいつもの私服ではミカンに「ダサい!」と指摘され、ミカンの服を借りることにした。

 

 

「やっほー♡」

 

「……なんでいるんですか?」

 

 

気合いを入れてオシャレをしてきて、さあ出かけようというとき。シャミ子の後ろからマスターとリコが顔を出してきた。

 

一見人が良さそうな笑みを浮かべたリコは自分たちも参加したいなどと言い始めた。

 

シャミ子が美味しい弁当をリコに習いに行って、そこから話が漏れたそうだ。

 

元々桃はリコという魔族が好きではない。腹の中身は恐らく真っ黒だろうからだ。

 

桃は言外に御帰宅するよう話すが、リコはそれに気づいている上であの手この手で参加しようとしてきた。

 

 

「ウチらも獣やろ?一緒にいれば癒されると思うんや」

 

 

――別にあなた方をもふりたくはない。桃はそう思っていた。

 

楽しみにしていた動物園。普通に皆で遊ぶということさえできないのかと、黒い感情が心の底から少しずつ沸き上がってくるのを、桃は感じていた。

 

マスターの腰痛が出たので帰らせようとするが、ミカンとシャミ子がフォローするということでお流れになり、結局一緒に行くことになった。

 

動物を見て癒されるも、何となく心のモヤモヤが晴れない桃。

 

しばらくしてシャミ子だけが桃に近づいてきた。そのシャミ子曰く、自分たち以外の他の人たちは帰ったと伝えてきた。

 

――そう桃に信じ込ませたいらしい。

 

 

「だから2人で一緒にお弁当食べましょう?」

 

「……化けるならもっとうまくやってほしい。ここ最近、シャミ子は浦飯さんなしで出歩かない」

 

 

普段のシャミ子は腰に邪神像をつけていて、つけてない日は滅多にない。八つ手戦で学んだことだ。しかもシャミ子とリコでは体捌きが違う、見る人が見れば簡単に見抜けるレベルだった。

 

 

「おや、すぐバレてしもたわ」

 

 

睨みつける桃の言葉を聞いた瞬間、シャミ子から元の姿へ戻したリコ。全く悪びれる様子もないリコに桃は苛立った。

 

 

「一体何がしたいんです、あなたは」

 

「いややわー、殺気が混じって動物が怯えとるよ?リラックス~」

 

 

桃の冷たい態度を目の前にしても、リコは笑顔を崩さなかった。それが増々、桃の勘に触った。

 

 

「……本当に殺すか?」

 

 

より一層強くなった殺気。辺り一帯の生物は身動きが取れなくなるような圧を受けてなお、リコは笑顔をより深ませた。今までとは違う、好戦的な笑顔だった。

 

 

「闇堕ちしかけている今の桃はんが?」

 

「――!」

 

 

桃の意外そうな表情に、リコは嗤った。今の桃の変化は注意深く見ていれば分かることである。今まで数多くの魔法少女を退けてきたリコにとっては簡単に見抜けるレベルであった。

 

 

「今はギリギリ光側やけど、ちょっとしたきっかけで堕ちますよ?それは自分でもわかっておるはずや」

 

「それをあなたが言いますか……!」

 

「先日のお詫びも含めてということですわ。ウチの葉っぱを食べれば、魔力が一時的に安定しますよって」

 

 

尻尾から取り出し、桃に見せたのはリコの魔力が感じられる大量の木の葉だった。これを食せということらしい。また揶揄われているのだろうか?桃にとっては煽ってるようにしか思えなかった。

 

 

「ふざけてるんですか?」

 

「ふざけとらんよ?ウチは真面目や」

 

 

――玩具は多いほうが面白いからなぁ

 

 

リコの脳裏にはこの街の多くの人間を模した人形が、箱の中に入っているイメージが浮かんだ。

 

その中でもお気に入りなのが、幽助を筆頭にシャミ子、桃、ミカンと並んでいる。マスターは別枠である。

 

リコが腹の中で何を考えているのかある程度わかったのか、桃は表情をより歪ませた。

 

そこへシャミ子たちが合流した。どうやらリコに撒かれていたことに気づき探していたらしい。

 

妙に緊張感漂う2人の態度にどういうことかとシャミ子がリコと桃に尋ねると、リコが粗方答えた。

 

 

「「桃の闇堕ち……!?」」

 

「え、そーなのか?」

 

 

シャミ子とミカンはハモッて答えた。この2人はリコの予想範囲内だったが、幽助のコメントでリコはずっこけそうになった。

 

嘘つきは嘘を見抜くのが上手い。長年嘘つきをやっていたリコには、幽助が嘘ではなく本気で言っているのが理解できたからだ。

 

 

「何で幽助はんも驚いているんや……ウチはてっきり知ってて見逃してるんやとばかり思うとったわ」

 

「つってもよー、闇堕ちと普通の状態の魔力の違いなんか分かんねーっつうの」

 

「……幽助はんは戦うときは頭はキレますが、それ以外はぼけーっとしとりますな~」

 

「バーさんみたいなセリフ言いやがって……!」

 

 

戦いの際のアイデアは幽助はかなりキレるタイプである。

 

しかしそうでない普段のときは頭が回っていないのが幽助だ。

 

いい例が暗黒武術会後、桑原の霊気がなくなったのではなく眠っていることに気づいてなかった件である。注意深く桑原の霊気を探れば感知できるレベルではあったが、普段注意して過ごしてないため全く分かってなかった。

 

その際幽助は幻海に

 

「戦っているとき以外はぼけーっとしとる」

 

と言われた過去がある。もし桑原が運良く次元刀に覚醒しなければ、御手洗に殺されていた可能性はかなりあったという出来事だ。

 

それを思い出して幽助は呟いたが、リコはバーさんと自分が言われたと勘違いしたのか、笑顔のまま米神に青筋が立っていた。

 

 

「……まぁええでしょう。そんで飲みます?食べます?」

 

「……私は、シャミ子のお弁当が―――」

 

「いやいや、闇堕ちなんてしたら大変ですから、リコさんの葉っぱを食べましょうよ桃!」

 

「………!」

 

 

リコからのどちらも同じで意味のない2択を無視しようとした瞬間、シャミ子が突っ込んできて、桃は衝撃を受けた。

 

楽しみにしていたお弁当を優先したかったのに、突然の作成者からのNGを食らってしまい、桃は目線が地面に落ちた。

 

ミカンは「あちゃー」と言っているし、シャミ子は何で桃がそんな態度をとっているのか分からずオロオロしていた。

 

結局嫌々ながら葉っぱを食べようと葉っぱに手を伸ばした瞬間、ふとシャミ子が呟いた。

 

 

「そういえばトラの赤ちゃんのふれあいの時間っていつまででしたっけ……?」

 

「!」

 

 

桃はハッとなって思い出した。それがメインで来たのに、こんなクソどうでもいい葉っぱなんか食ってる場合じゃねぇ!とばかりに近くにあった手すりを飛び越えてトラの赤ちゃんの会場へ急いだ。

 

だが現実は無常だった。

 

 

「そ、そんな……」

 

「終わってますね……」

 

 

時間が決まっているなんてことを知らなかった桃は、イベント終了の看板の前に崩れ落ちた。

 

これではいったい何のために動物園まで来たのか、分からなくなった。

 

今日は全て空回りしていて、ロクなもんじゃなかった。

 

隣で狐が「ウチもモフモフやから撫でる?」なんて意味不明なことを言っていたが桃は無視した。狐じゃない、自分は猫科がいいのだ。

 

てか貴様が余計な時間を使わせたせいだ、と声を大にして言いたかったが、ミカンやシャミ子が心配そうにしているので、場を乱さないよう言葉は発しなかった。

 

 

「おいおい桃、ムカつくんならこの狐ぶっ飛ばせばいーじゃねーか。我慢することないぜ」

 

 

下を向いていた桃に対して、幽助がそんな一言をかけてきた。その言葉にシャミ子たちは難色を示したが、幽助は一蹴した。

 

 

「第一リコのヤローが回りくどいマネしねーでさっさと葉っぱを口に突っ込みゃ終わった話だろーが。しょぼくれてるくせに、何か知らねーが言いたいこと言わねーで自分の中に溜め込んでるみてーだから、喧嘩してスッキリしろって!な!」

 

「やだ、昭和の不良の解決方法だわ……」

 

「たりめーだ。なんせオレは皿屋敷市の超不良だったからな!」

 

 

桃はストレスを溜め込んでいることを見抜かれたことにドキッとした。そんなに分かりやすかっただろうか。今まで生活していた中で、学校の人間などには悟られたことはなかったというのに。

 

意外にも観察している幽助に驚いた桃だが、それでもここで争うのは躊躇ってしまった。せっかく皆で遊びに来たのに、ここで喧嘩なんてしてしまっては台無しになってしまう。

 

それだけは嫌だ……そう考えた桃は幽助の提案に対し、首を横に振ることで拒否した。

 

 

「……いえ、いいんです。今日はもう帰ります」

 

「桃……」

 

 

そう言って、今日は解散となった。マスターがリコの代わりにひたすら謝っていたが、何とも後味の悪さが残るものとなったのだった。

 

 

「桃は大丈夫なんでしょうか……」

 

 

帰宅してのんびりしていたシャミ子は、桃の部屋の方向を向きながら幽助に問いかけると、幽助はため息をついた。

 

 

「ぜってー近いうち爆発すんな。ったく、これだから真面目ちゃんは……どうすんべ」

 

 

おっ、と幽助が何か思いついたようだ。あ、絶対碌なことじゃない、とシャミ子は感じ取った。伊達に春から一緒に行動してないのだ。

 

 

「シャミ子、オメーの体を貸せ!あいつといっちょ喧嘩してスッキリさせてくらぁ!」

 

「それは浦飯さんがスッキリしたいだけでしょーが!やめてくださいー!」

 

「これがいいんだって!オレを信じろ!」

 

「余計落ち込んだらどうするんですかー!?」

 

 

どったんばったん2人は揉めて、清子に怒られるまで騒いだのだった。

 

 

☆☆☆

 

オフィス街にある高層ビルの一室。電気もつけてない部屋に初老の男性が椅子に腰かけていた。明かりは周りの高層ビルからの光だけである。

 

初老の男性は立派なスーツに身を包んでいるが、見事に腹が出ており、見た者に成金をイメージさせるような風貌の男だ。

 

男の目の前に突如足音もなく、3つの人影が現れる。

 

どう見てもその現象は人ではない。そしてその者たちの容姿も人ではなかった。

 

 

「闇乙姫」

 

「カチカチ山の火狸!」

 

「こぶとり邪爺!」

 

「「「我ら黒御伽3人衆見参!」」」

 

 

闇乙姫と名乗った女は、美しい黒髪を稚児髷(ちごまげ)にしており、淡い色の着物とフワフワと揺らめいている羽衣を備えているキツイ印象を与える美人。

 

カチカチ山の火狸は芝を背負っている爪が鋭い2本足で立っている狸。

 

こぶとり邪爺は右頬に大きなこぶがある草履を履き半纏を羽織っている老人だ。一見人のよさそうな老人に見える。

 

 

「よく来てくれた。この3人を始末し、そいつらの街を手に入れろ」

 

 

最初に部屋にいた男が依頼主なのだろう。男が3枚写真を放り投げると、3人衆はそれぞれ1枚ずつ手に取った。

 

写っていたのは赤に近い茶髪で角がある女魔族、桃色髪の女、リボン付き団子オレンジヘアーの女の3人である。

 

 

「こいつらは魔法少女と魔族でよろしいので?」

 

「そうだ。街の名はせいいき桜ケ丘」

 

 

街の名前を聞いた瞬間、3人は驚きの声を上げた。

 

 

「あの千代田桃とシャミ子の街か……!」

 

「そうなるとこっちは陽夏木ミカン……!」

 

 

元より千代田桃と陽夏木ミカンは名が通っている魔法少女だったが、ここ最近シャミ子も八つ手などを打ち破っているため、徐々に名が売れてきていたのだ。

 

しかし悲しいことに本人や仲間たちがシャミ子としか言わない弊害で、シャミ子としか認識されておらず、フルネームを覚えているものはほぼ皆無である。

 

 

「報酬は1人につき10億!」

 

 

シャミ子が聞いたら腰を抜かすお値段である。魔法少女2人は土地を買い取るなどお金持ちなのであまり驚かないであろうが、闇の住人の金の桁はいつもおかしいのが常である。

 

 

「そして奴らを倒せば……」

 

「我らも名が上がるというもの」

 

「この依頼は受けましょう。ここならばすぐ到着する距離です。吉報をお待ちください」

 

 

即決した3人は次の瞬間、闇へと姿を消した。

 

そして男は椅子に腰かけた。だが様子がおかしい。先ほどまで欲に塗れていた目が、まるで夢を見ているかのように虚ろな目をしていた。

 

虚ろな目をした男の肩に、闇の中から手が置かれた。およそ普通の人間の皮膚の色ではない。

 

徐々に闇から露わになったのはフードをかぶり顔が全く見えない男だった。その不気味さは、先ほどの3人とは比べ物にならない。威圧感も数段上であった。

 

 

「さて、戦力はどのようなものか……」

 

 

一人、フードの男はポツリと溢すのだった。

 

赤く光る大きな眼だけが、部屋を照らしていた。

 

つづく




桃が桜と別れたのは10年前と言ってます。
そして今は高校1年生なので当時の桃は5-6歳。魔法少女的な活動をしなければ生きれなかった、という想像の元で書いてます。
改めてまちカド本編もハードだと思いました。
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