まちカド☆白書   作:伝説の超浪人

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まちカドまぞく2期おめでとうございます!アニメ2期はどこまでやるんでしょうか?
区切りがいいのは3巻ですが、楽しみです!


24話「玉手箱が開く時です!」

羽衣で拘束されてしまった桃。どんなに魔力と筋力を駆使しても抜け出せない状態は、まさに絶体絶命という状況であった。

 

そしてそれを作り出した闇乙姫は、美しい笑顔を見せた。事情を知らない人間が見れば見惚れるであろう笑みも、桃にとっては只々醜悪であった。

 

 

「オーホッホッホ、良いザマよのぅ。さて、仕上げとゆくか」

 

 

そう言って、闇乙姫は後ろの帯から何かの箱を取り出した。一見するとただの真っ黒な箱にしか見えないが、闇乙姫は箱を愛おしく撫でる。

 

 

「それは……!?」

 

「フフ、このまま拘束したまま首を落とすなり、羽衣をもう少し伸ばして口と鼻を塞いで殺すこともできるが……妾はそのようなことはしない」

 

 

闇乙姫は人差し指で黒い箱を2度叩く。

 

 

「これは闇アイテム【闇玉手箱】といってな。

浦島太郎の話は知っておるだろう?玉手箱を開けた浦島太郎は年を喰って爺となったが、これは違う。心の闇を膨れ上がらせるのだ……」

 

「……!」

 

 

桃はギョッとした。それが本当であるならば、【闇玉手箱】は魔法少女にとって強制的な闇堕ちをさせるアイテムになりうるものである。

 

何故桃が闇堕ちをここまで恐れているか。簡単に言えば、魔力のコントロールができなくなるからと考えているからだ。

 

光の一族である魔法少女は、基本的に正義だったり、正の感情(優しさ、慈愛)をメインとして戦うものである。

 

それが闇に堕ちる……つまり負の感情(嫉妬・猜疑・強欲・憎しみ)をメインとして戦うようになってしまうと光の一族としての存在(肉体)と感情……心が乖離してしまう状態になる。

 

言うなれば車(肉体)を、今までと全く違うエンジン(心)で動かそうとするようなものだ。

 

そうなれば車が動かなくなるか、動いたとしても上手く制御できず事故を起こすのは明白である。

 

そして魔力切れを起こせば、待っているのは肉体の消滅……コアのみとなる。そうなれば自力での復活はほぼ不可能である。

 

そしてもし今この場でコアのみになった場合、目の前にいるのがこの闇乙姫となる。生存は絶望的だろう。

 

その未来を予想して、桃は背筋が凍った。

 

桃の様子を見て、闇乙姫は増々笑みを深めた。

 

 

「オーホッホッホ!良い反応だ。闇玉手箱の説明を受けた魔法少女は皆似たような反応をする―――それがなんとも心地よい」

 

「……随分と悪趣味。そんなものを見て何が楽しい?」

 

「では逆に聞くが、お主にはないのか?高みから物を語る輩が、自分の足元で懺悔を乞いながら這いつくばったり、情けない姿を晒すのを見て快感を覚えたりはせぬのか?」

 

「………」

 

 

桃は答えなかった。ただ、静かに闇乙姫を睨みつけるだけである。その反応さえ、闇乙姫にとっては心地よかった。

 

 

「実に良い反応をするのぅ……さて、お喋りはここまでとしよう」

 

 

闇乙姫は【闇玉手箱】の蓋を開ける。瞬く間に凄まじい量の白い煙が桃へ一直線に襲い掛かる。

どうやら指向性もある程度操れるらしく、不必要に周りに煙が巻き散らかれることはないようだ。

 

そして桃は煙に包まれた。最後の抵抗ということで息を止めるが、ただの煙ではないから、何の意味もない。

 

そして、桃は今までの記憶が一斉に蘇った。

 

――暗い場所でヒトリボッチ

 

――私を一人にした姉さん

 

――魔族、魔法少女との殺し合い

 

戦いと暗い感情だけの記憶が脳裏に浮かんで膨らんでいく。

 

そして、黒い光が辺りを照らした。

 

 

「完成だな」

 

 

黒い光は、闇堕ちした光の証である。この光景は何度見ても美しいものだと、闇乙姫は満足げに頷いた。そしてここからがもっとも楽しい時間である。

 

闇乙姫が今まで見てきた闇堕ちした魔法少女は魔力コントロールができず、魔力が全開のままで存在し、数分後には魔力切れで消滅していた。

 

その数分間も自身が闇堕ちした事実に耐え切れず、項垂れ嘆き悲しみ、まともに反撃してこなかったのがほとんどであった。

 

稀に羽衣の拘束を力任せに解いて反撃してくる者もいたが、闇堕ちした直後は心がグチャグチャで大振りかつ適当な読みやすい攻撃ばかり。

 

しかも闇乙姫も【闇玉手箱】の影響を多少受けるので、闇の力が増大する。つまり通常時より闇乙姫もパワーアップするので、破れかぶれの攻撃に当たるわけもない。

 

落ち込み動けなくなるのも、必死に抗おうとするどちらの反応も、闇乙姫はお気に入りだった。

 

自身の汚い部分を受け入れられず、ひたすらに落ち込み、暴走する。

 

光の一族である魔法少女は人の【善性】を信じているようだが、その本人たちが自身の醜い部分を受け入れることが出来ないのだ。

 

「私は悪くない、闇乙姫が悪い」

 

その言葉を何度も何度も聞いた。自分の弱ささえ受け入れられない者が、超常的な存在として人を上から見下ろすように導こうとしているのは実に滑稽だ。

 

その【落差】が闇乙姫は大好きであった。

 

 

「随分衣装が変わったではないか……のぅ?」

 

 

煙が晴れて現れたのは、完全に闇堕ちしたであろう桃であった。その戦闘フォームはほぼ黒に覆われていた。

 

桃色なのは胸の部分を覆い古傷のある腹部が露出する上半身と、裾の破れたマントの内側のみ。

 

ニーソックスもスカートも髪飾りも黒であり、手枷までついていて、黒い日本刀という出で立ち。

 

明らかに今までと雰囲気が異なる姿は、闇側の人間であることを証明していた。

 

 

「気分はどうだ?」

 

 

こう聞くと今までの経験から、大抵の者は今の状態を認められず泣き叫ぶのだ。その言い分が一人一人違うのがまた楽しい。

 

 

「……最低の気分だよ」

 

「そうかそうか、それは何よりであるな!」

 

 

闇乙姫はわざとらしく拍手までし始める。感情を逆なでするには、少々オーバーなリアクションのほうが効果的であると理解しているからだ。

 

 

「……む?」

 

 

しかし様子がおかしいことに闇乙姫は気づく。闇堕ちしたにしては、桃の反応がやたらと薄いのだ。

 

ただショックが大きすぎて反応ができないのか?とも考えたが、それにしては先ほどの返答では声の震えがほとんどなかった。

 

闇乙姫は自身も【闇玉手箱】の影響でパワーアップした魔力で、自身の傍に展開させている羽衣を強化する。

 

 

「……面白くない反応だな。何か妾に言いたいことはあろう?」

 

「……大したことじゃない。お前を倒すには今の状態はとてもいいと思っているだけ」

 

 

羽衣で拘束された状態のまま日本刀を強く握りしめて桃は答えた。そこで闇乙姫の右眉がピクリと上がる。

 

 

「妾の気分一つで殺されるお主が大層なことを抜かすのぅ。つまらん心理作戦はよしたほうが身のためであるぞ?」

 

 

一応これまでも闇乙姫に縛り付けられた者たちが何とか逃れようとするため、わざと闇乙姫を自分たちのほうへ寄ってこさせようと様々な言い回しをする連中もいた。

 

しかしそれに釣られて、はいそうですかと近寄る間抜けはいない。今の距離でも闇乙姫は傍に展開している羽衣の一撃で首を落とすことはできるのだ。ワザワザ敵の間合いに入る必要性もないのである。

 

 

「今思いついた技だけど、試すにはお前程度でちょうどいいと思っただけ」

 

 

面白くない。

 

自分の思った反応を見せない桃に対し、闇乙姫ははっきり苛立ちを感じた。だから殺すことにした。首も落ちれば、気分もすっきりするからだ。

 

 

「それがお主の最期の言葉だ!情けない姿で逝くがよい!!」

 

 

自身の傍に展開した羽衣を強化し、右脇の羽衣を最速で一直線に桃の首へ伸ばした。

 

羽衣は瞬きするよりも速く桃の顎の下を通り、首へ触れる――――

 

 

「え?」

 

 

闇乙姫が感じたのは体の熱さであった。

 

闇乙姫の体は右脇腹から斜め上に切り裂かれ、体勢を整えようと動かそうとした左腕は肘から切断されていた。

 

 

「魔桃剣(まとうけん)!」

 

 

切り裂かれた体が崩れ落ちる中、最後に闇乙姫が見たのは少し禍々しく歪んでいる桃色の魔力に覆われている黒い日本刀を振り抜いた千代田桃の姿であった。

 

 

「は、速すぎる……」

 

 

桃の首に羽衣が触れるか触れないか、その直前で羽衣の拘束を切り裂いて攻撃を躱し、闇乙姫が視認できないスピードで潜り込む。

 

そして【闇玉手箱】で強化された闇乙姫の肉体を切り裂けるほどの鋭さを一瞬にして作り出した。

 

なんという経験とセンス!

 

自身の読み違いに後悔したまま闇乙姫は絶命した。

 

闇乙姫の息の根が完全に止まったことを確認し、桃は大きくため息をついた。

 

 

「危なかった……」

 

 

桃にとって正直先ほどまで敗北がほぼ決まっていた状況であった。もし【闇玉手箱】を開かず、そのまま殺しにこられていたらアウトだった。

 

たまたま今回は相手が嗜虐趣味で、闇堕ちに桃が耐えきれたから良かったものの、非常に綱渡りな状況であった。

 

闇堕ちした状態でありながら自暴自棄にならなかった理由としては、今の状態のほうが精神と肉体のピースがきっちり当てはまっている感覚だからだ。

 

今まで光の一族であろうと心のブレーキをかけていたからこそ、逆に精神的にブレていたのだろうと桃は自己分析した。

 

つまり逆に堕ち切ってしまえば、失うものは無くなるのだ。

 

今回の状況は中途半端に止まろうとして崖から落ちようとしていた桃の背中を【闇玉手箱】が思い切り後押しし、崖を見事飛び越えたような状態だったのだ。

 

堕ち切って状態が安定したことで、魔力も増すこととなったのだ。そして拘束を切り裂き、魔力を纏わせた高速の剣で闇乙姫を切り裂くことが出来たのである。

 

つまり中途半端な状態が一番危険、ということであった。

 

 

「「桃~!」」

 

 

さて、どうしようかと目線を上げようとしたとき、後ろから馴染のある声が聞こえてきた。この声はシャミ子とミカンであろう。

 

予想通りの人物たちは桃の目の前に来て、息を整えた。

 

 

「……どうしたの皆」

 

「おー、どうやら倒したみてーだな」

 

「どうしたのじゃないわよ!あんたが襲われているってボコボコにした魔族から聞いて助けにきたんじゃない!……って何か変わってるー!?」

 

「桃が心配で急いできたんですよ……ってほわぁー!!桃!何ですかその素敵な衣装は!!?」

 

 

明らかに今までと違う装いにちょっと遅れて気づいたミカンとシャミ子は大いに驚いた。

 

ちょっと反応が遅くない?と桃が思っていると、幽助も上から下までじっくり見た後、頷く。

 

 

「中々攻めた衣装じゃねーか。特にへそ辺りが……」

 

「確かに!エロさがにじみ出てます!」

 

「どこ見てるのかな!?」

 

 

変な場所しか見てないし感想を言ってこない魔族2名の視線から、桃は手でへそを隠して背を向けた。

 

今まで桃色フリフリ衣装だったはずなのに、今じゃお腹丸出しのダークネス的な衣装なのである。そんな恰好しているほうが悪いから、仕方ないのだと魔族2名は主張する。

 

 

「私たちは悪くありません!とりあえずお腹触ってもいいですか!?」

 

「ダメに決まってるでしょ!?」

 

「おいおい、隠すのは良くねーぜ。堂々としろよ、ケケケ」

 

「……この格好はそんなにダメなんですか……!?」

 

「そんなことねーだろ。むしろ今までのピンク色の格好のほうがオメーに似合ってなかったっつーの」

 

「……!?」

 

 

幽助としては軽く言ったつもりであったが、桃には大変ショックな一言であった。

 

桃にとっては前の戦闘フォームは初めて魔法少女になった5歳とかそれくらいにデザインした格好をずっと引き継いでいたのだ。

 

高校生としたらこの格好はどうかなーと思ったことはあったけど、こうも正面切って言われるとダメージが大きかった。

 

幽助の一言を受けて、そんなことを考えて、桃は段々視線が下がっていくのを感じていた。

 

 

「浦飯さん、余計なこと言っちゃダメよ!」

 

「そーです!今の戦闘フォームは武器もバリ格好よくて、とてもいいんです!前の格好何か気にする必要ないですよ!」

 

「ぐむっ……!」

 

 

褒めているようで褒めてない一言に、桃はむせた。なんだろう、闘っているときよりダメージが大きくなっていると桃は感じていた。

 

 

「シャミ子、それ追い打ちだから」

 

「……そっか、やっぱり前の格好は似合ってなかったんだね……」

 

「ああ、違います!?言葉の綾ですー!悪気はないんですよ~!」

 

「こいつメンドクセーやつだな」

 

「一番余計なことを言った人が何言ってんですか!」

 

 

増々沈んでいく桃を囲んだ3人はギャーギャー騒いでいた。

 

ちょっとして落ち着くと、何故こんな格好になっているか、桃は闇乙姫との戦いと結果を語りだした。

 

そして今の状態を聞いて驚きの声を上げた。

 

 

「えぇー!?闇堕ちなんて大変じゃないですか!?」

 

「そうかぁ?別に闇堕ちしただけじゃねーか。

オレが人間から魔族になった時は霊力から妖力になっただけで、大して変わんなかったしよ。似たよーなもんだろ」

 

「それ言われると、全然大したことない気がしてきた……」

 

 

魔法少女の闇堕ちと聞くと、とてつもない一大事のように思われる。

 

しかし人間から魔族と言う存在そのものが変わった一例が目の前にいるので、別に姿が変わっただけの桃のことはあまり問題ないように思えてくるから不思議である。

 

しかし幽助は言ってない!自身の心臓は止まったままだということを。代わりに魔族の心臓といわれる核が動いていることを。

 

つまり健康診断をやったら割と不味くなる状況かもしれないが、中学卒業後から健康診断は全く受けてないため問題になっていないだけという事実を全く伝えてないのである。

 

 

「でも元の姿に戻れないし、魔力のコントロールができないからパワー全開の状態なんだ。

だからこのままだとすぐに魔力を使い果たしてコアの状態になる」

 

 

桃の周りの魔力が膨れ上がる。闇堕ち前より強力な魔力が常に周りに溢れている姿は、シャミ子に魔力を吸い取られて弱体化した魔法少女とは思えない力強さであった。

 

 

「確かにな~。オレも魔族になったばっかで仙水と戦った時は当たると思った霊丸を外しちまったし……感覚が追いついてない感じだろ?」

 

「はい。全然感覚が掴めないんです。どうすればいいですか?」

 

 

ある意味幽助も闇堕ちというか、魔に変化した先達である。それにも関わらず安定している幽助に何かヒントがあるのではと思い、桃は尋ねてみた。

 

 

「戦っているうちにだんだん慣れてくるぜ!いっちょ闘るか?」

 

「消滅しそうなんで結構です……まいった、何の参考にもならない……」

 

 

幽助の答えを聞いた桃はガックリと項垂れた。パワーを使ったら消滅するというのに、その上戦えという答えは鬼畜過ぎる。

 

 

「そうかァ~?オレんときはそれで上手くいったんだがな~」

 

「実戦で学べとかきつすぎますよ……」

 

 

しかしこの男は真面目にアドバイスしているつもりである。魔族大隔世後の仙水の戦いでは、闘いながらバカデカくなった妖気のコントロールに段々慣れていったのだ。

 

もっとも完全なコントロールをする前に横やりが入って終わってしまったが、今回の桃の参考になりそうもないのは確かである。

 

幽助の言動に慣れているシャミ子も、それはきついと思ってしまった。霊光波動拳はごり押し拳法の達人しかいないのだろうか?

 

 

「でも実際どうすればいいんですか?ミカンさんは何か知ってます?」

 

「うーん……そういった話題ってあんまり聞いたことがなくて……」

 

 

うーんと皆で悩んでいると、カツンと足音が響く。全員、音がした方向へ視線を移すと黒い人影があった。

 

 

「皆さん、お困りのようだね~」

 

 

黒のローブに、鳥の骸骨の様な被り物をした女が立っていた。その姿を見たミカンとシャミ子は悲鳴を上げる。

 

 

「きゃあー!?」

 

「ほげぇぇぇー!鳥のバケモノー!?」

 

 

ミカンが恐怖したせいで呪いが発動し、幽助に雨が降った。

 

怖がったシャミ子は、右手の人差し指を向け指先を赤く光らせる。即座に霊丸を放つ準備を完了させていた。

 

 

「待って待って待って!?これコスプレだから!」

 

 

シャミ子が本気で撃とうとしたのが分かったのか、女は骸骨の様な被り物と頭にかかっていたローブを取り外す。

 

すると、皆が見知った顔が現れた。

 

 

「小倉さん!小倉さんじゃないですか!」

 

「変な格好して何やってんだオメー」

 

 

女の正体は、夏休みに入ってから会ってなかった小倉しおんであった。シャミ子に霊丸を撃たれると本気で思っていた小倉は、シャミ子が霊丸の構えを解くと本気で安堵した。

 

 

「いやー、危なかった。なにやら騒ぎになっているから来てみれば皆いるし、声をかけてみたんだ~。ところでさっきの会話は聞こえたけど、千代田さん闇堕ちしちゃったんだって?」

 

「え、いつから聞いてたの?まぁそうなんだけど……」

 

「細かいことは気にしないでね」

 

「おい、こいつ大丈夫なのか?」

 

「状況がアレなので、今はスルーしましょう」

 

 

タイミングよく現れすぎだろうと幽助は懸念したが、今は闇堕ちを治すほうが先決なのでシャミ子はスルーした。他2人もそれで行くらしい。

 

 

「千代田さんから借りた桜さんの日記とか、古来の伝承によると光の一族が負の感情に呑み込まれた時、ひとりでに闇堕ちしたという記述がたくさんあるんだよ。

今回は敵のアイテムで元々抱えていたストレスなんかが膨れ上がって爆発した状態になったってところかな」

 

 

小倉は前に色々とアイテムを作ったこともあり、桃は姉の桜の日記を小倉に渡していた。結界のことについて、何か発見できればと思ったからだ。

 

自分が受けた闇玉手箱の効果を、まるでストレス増幅器のように言われ、桃はちょっと納得いかないような表情を浮かべた。言葉にすると簡単だが結構危機的状況だったので、簡単に言われるとどうもモヤモヤと感じてしまった。

 

 

「……つまりどうすればいい?」

 

「負の感情で解消すればいいんだよ。つまり……ストレスになった原因を皆に聞いてもらう!これが解決方法だね」

 

「あ、じゃあ言いたくないっす」

 

「桃!?」

 

 

小倉の回答に被せるように桃は拒否した。よっぽど言いたくないらしい。

 

 

「おいコラ!テメーがストレス溜め込んだからこんなことになってんだろーが!サッサと言え!」

 

 

そこで黙ってないのがこの男である。この男の性格からしてまどろっこしいのは嫌いなのだから、桃が言いたくなくても口を割らせようとするのだ。シャミ子もそれに便乗する。

 

 

「そーです!桃に消滅してほしくないです!」

 

「で、でも……」

 

「私あなたに消滅してほしくないわ!だから言いなさい!」

 

 

最初は首を横に振って拒否していた桃だが、2人と邪神像に詰め寄られ、観念したのかポツリポツリと語りだした。

 

 

「……最近昔の夢をよく見るようになって、そこからあの真理のこともあったし、闇堕ちが怖くなって……。

動物園に行ったとき、本当はシャミ子とミカンと私だけで行きたくて……それでシャミ子のお弁当も食べて、トラの赤ちゃんも触れなくて……。

でも邪魔が入ってできなかったから……」

 

「よーするに、昔のトラウマと動物園で邪魔したリコがスゲェムカついたってことか」

 

「バッサリすぎる……」

 

 

この男には情緒と言うものはきっとないのだろうと、ミカンは首を横に振った。しかし話を要約するとそういうことである。

 

 

「だからあの時リコをぶっ飛ばせばいいって言ったのによー、よっしゃ!リコは明日オレがボコしておいてやるぜ!」

 

「なら動物園はまた今度皆で行きましょう!弁当は食べてなかったので、まだ家の冷蔵庫に保管してあります!」

 

「よし!早速行くわよ!」

 

 

オー!と3人が声を上げ、桃と小倉を引っ張っていく。2人は引きずられるように着いて行った。

 

 

「大丈夫~?」

 

「恥ずかしくてこの世から消えたい……」

 

 

3人のテンションについて行けず、心の内を赤裸々に語ってしまったことを桃は恥ずかしがっていた。

 

シャミ子家に到着した一行は素早くお弁当を出し、桃の前で広げる。

 

 

「シャミ子らしい、良いお弁当だと思う」

 

「なんだその評価は!黙って食べるがいい!」

 

「うん。いただきます……あ」

 

 

箸を持った瞬間、箸が真っ二つに砕ける。魔力が制御できていない今、箸のような繊細なものを持つことは今の桃には不可能だった。

 

 

「ごめん、箸が折れちゃった……」

 

「ああああもう!口をあけろ~!」

 

 

シャミ子は箸を持ち、弁当の中身を次々と桃の口へ放りこむ。さながら餌を与える親鳥と小鳥のようである。

 

 

「どんどん食べるがいい!」

 

「……美味しい」

 

 

綺麗に全て食べ終わると、体が光り、元のトレーニングウェア姿の桃に戻った。つまり闇堕ち状態は解除されたのである。

 

 

「元に戻った……」

 

「やったね~」

 

「皆ありがとう。迷惑かけてごめん」

 

 

ペコリとお辞儀をすると、皆安堵のため息を吐いた。中々コミカルな解決方法だが、実際消滅の危機だったのだ。【闇玉手箱】の効果はかなりのものである。

 

 

「ったく世話かけやがって。これからはストレス溜まる前に発散しろよな!」

 

「言い方キツ!でも大体その通りね、困ったことがあったら言いなさいよ、仲間でしょ?」

 

「宿敵の悩みも聞いてやるのが魔族としての務めです!存分に話すがいい!」

 

「……皆、本当にありがとう」

 

 

改めて桃は頭を下げた。こんな風に心配されたのはいつぶりであろうか。懐かしくもあり、嬉しかった。

 

 

「あ、多分しばらくは闇堕ちしやすい体質は戻らないから、今度からは感情は早めに整理したほうがいいね」

 

 

だがそれに待ったをかけたのが小倉の一言である。桃はその言葉に固まった。

 

 

「……えっ、当分この体質続くの?」

 

「頑張ってね!」

 

「……そ、そんな……」

 

 

桃はガックリと膝をついた。てっきり万事解決かと思いきや、継続と分かったときのショックは大きい。

 

 

「やっぱムシャクシャしたときは喧嘩で発散すんのが一番ってことだな!」

 

「本当にそれが正解な気がしてきました……」

 

 

難しいことを考えないほうが正解かもしれない。今日と言う1日は桃にそんな風に考えさせるのであった。

 

つづく




段々桃の思考を幽助の単純な思考回路が影響していく話。大抵闇堕ちキャラって真面目で悩みを抱え込むタイプな気がします。一種のうつ病かも。

なのでこの場合必要なのはメンタルケア、ストレス発散方法ですね。
悩みを打ち明けられる相手がいるといいですが、仙水は相談相手がサイコホモだったのでダメでした。相手は選びましょう!という今回のお話。
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