まちカド☆白書   作:伝説の超浪人

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シャミ子不在の話。幽助らしく書くのは結構難しいです。
リコともう1名ちょっと可哀そうな目にあってますが、ファンの方は許して!


25話「千代田桜の隠し泉です!私の出番ないですけど!」

早朝の工場跡地。桃が所有している工場跡地で、2つの人影が戦っていた。

 

一方はリコ。そしてもう一方は幽助(inシャミ子の肉体)である。

 

 

「シッ!」

 

 

リコは指で挟んだ木の葉を強化することで薄く鋭く切り裂く刃と化す。右手の指で挟んだ木の葉を宙に浮かんでいる幽助の首筋に向けて振るう。

 

屈んで躱した幽助は、リコの胸に張り手を繰り出し、そのまま吹き飛ばす。

 

 

「ぐっ!」

 

 

空中で1回転することで衝撃を殺し、リコは着地する。それと同時に幽助の右胸に対し魔力を伸ばす。

 

この魔力は放出系ではない。これは夏祭りの際シャミ子たちの浴衣を肌から離さないようにした粘着性のある魔力である。本来は敵や物を引き寄せるのに使う能力であるのだ。

 

くっつくときはガムのような、伸び縮みするのはゴムのような性質を持つこの能力。様々な応用が利く能力を、リコは重宝していた。

 

 

「(縮め!)」

 

 

魔力は幽助の右胸に付着し、縮むよう能力を発動する。しかし縮むより早く、幽助はリコに向かって突進した。

 

 

「!」

 

「オラァ!」

 

 

リコの能力への対処として、幽助は得意とする殴り合いを選んだ。リコは引き寄せてから攻撃する予定であったため、一手対応が遅れる。

 

リコは咄嗟に右ストレートを放つが、顔スレスレで避けられたと同時に腹に幽助の左拳を受けてしまい、そのまま数m吹き飛ばされ、衝撃によりくっつけていた魔力も千切れた。

 

 

「ばん!」

 

 

幽助はウインクしながら得意げに霊丸を撃つ真似をした。もし本当に撃たれていたら、間違いなく終わっていたことだろう。それを察して、倒れたままのリコは思い切りため息を吐いた。

 

 

「参りましたわ、お手上げや~」

 

 

リコは荒い息を整えながら、ゆっくりと立ち上がる。それに対し幽助の呼吸は全く乱れていない。明らかな完敗に、リコは軽く笑った。

 

 

「しかしウチの引き寄せる術をああいった形で攻略してくるとは思いつかんかったわ~。大抵皆はん逃げはるのに~」

 

「逃げたり避けたりするより、使わせる暇がないくらい接近戦やればいーと思ってよ。思った通りだったぜ」

 

 

リコの魔力は近・中距離で効果を発揮するものである。しかし幽助は能力を発動させる暇を与えないほどのスピードで攻め立てた。

 

素の殴り合いでは圧倒的に幽助が有利である。相手を翻弄するタイプのリコにとって性格的にも避けたりせず真っ向勝負を選ぶ幽助とは相性が悪いのだ。

 

 

「いやはや、夏休みの浴衣の時しか見せてへんのにこうも対応されるとは、恐れいったわ」

 

 

夏祭りの1回しか見せてない、それも浴衣を脱がせないよう能力を使用しただけでどんな能力か把握し対処してきた幽助に対してリコは終始笑顔であった。

 

幽助はゴチャゴチャ考えて戦うのが苦手なタイプで、基本テクニックタイプの相手は不得手である。しかしテクニックを駆使する相手に対し、スピードとパワーでごり押しするのは最適解でもある。それを幽助は長年の戦闘経験と直感で理解していた。

 

 

「いやーやっぱりフルパワーで戦うのは最高やなぁ。最近めっきり戦うことが少なくなってもうたから、疼いて疼いて困っとったところだったんや」

 

「だからオメーは戦う気のねー桃にちょっかい出してたのかよ。タチわりー奴だな」

 

「せや。あっちから手を出してくれたら大っぴらに戦えますからな。こちらから仕掛けると街にも居にくくなるし、マスターに悪い印象持たれてまうから、それは避けよう思うとったんです。

そしたら幽助はんが来てくれはったから嬉しくて嬉しくて♡」

 

 

この街は人と魔族の共存の街である。魔族が揉めないように作った街なので、魔族から仕掛けたことがバレるとこの街で暮らすことは難しくなるだろう。

 

しかも同居人の喫茶店アスラのマスターにも悪印象を持たれてしまうので、これを避けるためにリコはチクチク回りくどく桃に言い寄り、桃から戦いを仕掛けるよう誘導していたのだ。

 

自分のことしか考えてないリコに対し、幽助はため息を吐いた。幽助だって、普段むやみやたらに喧嘩を売りはしない。売るときは腹が立っているときだけである。

 

 

「桃の奴はクソ真面目だからオメーの言うこと間に受けやすいんだよ。それで昨日メンド―だったんだからな」

 

「戦う前に言うてた闇堕ちの件やろ?いやー次からは気をつけますわ」

 

 

戦う前に先日の襲撃と闇堕ちした桃の件を幽助は話していた。

 

闇堕ちの一因でもあるリコに余り反省の色が見られないが、こんな相手のやることや言うことを真に受ける桃にも問題はあるな、と幽助は感じていた。

 

 

「桃の奴もオレやオメーみたいに戦ってストレス発散できるタイプなら話は早いんだがなー。めんどくせーぜ、ったく」

 

 

メンタルケアなんてオレじゃなくて蔵馬のほうが適任だよなー、なんてことを幽助は考えていた。

 

今の封印されている状態だって幽助にはさっぱりであるし、結界なんかについても専門外だ。猫の手ならぬ狐の手も借りたい状況である。

 

ただし今目の前でニコニコ笑っている狐は素直に協力するタイプではなさそうだ。

 

これからどーすんべー、と思いつつ幽助はポケットを漁ってタバコを探したが、そういえばシャミ子の体だから何も持ってきてないことに気づいた。仕方ないので話をそのまま続ける。

 

 

「まぁ光の一族の誘いに乗るような真面目な子たちやからな。幽助はんみたいに可愛いシャミ子はんの体でタバコ吸おうとするとか、悪いことでストレス発散はできんのよ」

 

「何言ってんだ、オメーも人のこと言えねーっつの」

 

「ハハハ」

 

 

幽助はネコ目の様にリコを睨みつけるが、リコは全く気にせず笑い飛ばした。リコと桃を足して割ればちょうどよくなりそうなものだが、中々上手くいかないものだ。

 

 

「さて幽助はん、もういっちょお願いできます?」

 

「お、まだヤル気か?」

 

「もちろんや、こんな機会は滅多にあらへんもん。それに呪霊錠とかいうハンデをしたままでウチに勝って余裕を見せつける顔に一発入れてやりますわ」

 

「へへへ、面白れぇ……かかってきやがれ!」

 

 

幽助が言い終わると同時に、リコはフルパワーで飛び掛かる。

 

そして凄まじい打撃音が響いた。

 

 

☆☆☆

 

 

「すみません浦飯さん、付き合ってもらって」

 

「おう、今度何か奢ってくれや」

 

 

リコとの戦いが終わった後、幽助は桃と一緒に奥々多魔駅を降りた山に来ていた。

 

ここの山奥にある千代田桜の私有地のさらに奥には、千代田桜の隠し泉という魔法少女を回復させる強い魔力が含まれた泉があるそうな。

 

そのことを発見したのが小倉である。

 

小倉は千代田桜の日記からその情報を発見し、今回の件で強制的に闇堕ちさせられた桃は魔力を消費していたため、その回復にやってきた。

 

ちなみにミカンはシャミ子たちの学校への転校のための面接があるので今回は街に残っている。

 

「……高校生にタカらないでくださいよ……」

 

「へへへ」

 

 

満面の笑みを浮かべる幽助に対し、桃は苦笑いをこぼした。現在幽助は普段邪神像なので収入0。魔法少女の桃のほうがお金持ちなのだ。

 

 

「しかしここに来る前に野暮用を済ますとか言ってましたが、何をしていたんですか?」

 

「昨日言った通り、リコと戦ってたんだよ。オレもしばらく戦ってなかったから体が訛ってたし、ちょうどよくてな」

 

 

首を鳴らす幽助の言葉に、桃は少し驚いた。昨日闇堕ちした際に言ってくれた言葉だが、自身を落ち着かせるために言ってくれたものとばかり思っていた。

 

まさか本当に宣言通り戦いに行くとは、少し予想外だった。

 

 

「昨日のアレ、本気だったんですか……。それで、リコはどうなりました?」

 

「いや~~~思わず力が入っちまってな、しばらく動けねェと思うぞ?まぁリコのヤローも戦ってスッキリしたみたいだし、大丈夫だろ!」

 

 

実際のところ、リコは半殺しのレベルだった。しかしフルパワーで思う存分戦えたリコは終始楽しそうだったし、リコは「怪我が治ったらリベンジや」と宣言していた。

 

ちょうど遠い先祖にして父でもあった雷禅にボコボコにされていた頃の幽助と似たような感じであり、食らいついてくるヤツの相手をするのはなぜか楽しさを覚える。

 

オヤジの奴もこんな気持ちだったのかな~と今は亡き雷禅のことを幽助は思い出していた。

 

 

「じゃあしばらくはリコは大丈夫そうですね」

 

「まーな」

 

 

しかし幽助は忘れていた!喫茶店アスラの厨房担当はリコのみであり、マスターは厨房では役に立たないことを!

 

つまりリコがしばらく動けないということは喫茶店アスラはしばらく休業であるのだ。リコから事情を聴いたマスターは悲鳴を上げていることだろう。

 

そんなことは全く理解もしてないし考えてもいない2人は山道を進む。

 

 

「あ、何か看板がありますね」

 

「お、マジだ。何々~……」

 

 

山道にポツンとあった看板を読むと、どうやらここから先は私有地で大量の罠があるが進んで宝を取るがいい。身内しかどーせ来ないけど……と言ったことが書かれてあった。

 

 

「オメーの姉ちゃん変わってんな~」

 

「自分の姉ながら、意味不明です……」

 

 

しかし私有地の警告文とは言え、この書き方は恥ずかしかったのか、桃は少し頬を赤くした。

 

 

「罠か……オメーの姉ちゃんの性格からして、どんなもんがありそうか?」

 

「姉の性格上、魔力トラップや使い魔などで死なない程度に面白くボコられると思います」

 

「あー、そーゆータイプかぁ」

 

 

幽助はそれを聞いてリコを思い浮かべたが、ちょっと違うかもと考えた。

 

 

「(ぼたんの奴とリコを合体させると近いかもな)」

 

 

リコは若干悪質だが、霊界案内人のぼたんのからかうとこもある性格と合わさるとちょうど良くなるかもしれないと考えた。

 

 

「それじゃ行きま……うっ!!?」

 

 

ズボッと桃は勢いよく地面にめり込んだ。いや、よく見るとどシンプルな落とし穴である。しかもよく見ると穴の中に梯子とコールセンター付きだ。備えは万全である。

 

 

「ギャハハハ、思い切り嵌ってやがる!」

 

「魔力じゃないんかい!?」

 

 

桃は激高した。まさかただの落とし穴とは、予想外だった。そういえば姉の桜は人の裏をつくのが好きな人だったことを思い出した。

 

梯子を上って落とし穴から出てきた桃は米神に青筋が立っていた。

 

 

「これは姉からの挑戦状です。何としても宝を手に入れなくては……!」

 

「何かムキになってんな~オメー」

 

「さ、浦飯さん先頭でお願いします」

 

 

桃は幽助の言葉を無視してぐいぐい背中を押す。何としても、と言った割にはえらく消極的である。

 

 

「オイコラ、人を盾にしてんじゃねーっつの」

 

「違います、これは実力順で列を組んでいるだけで……んにゃ!!?」

 

 

今度は網が地面に出現し、桃を吊り上げた。罠にかかった桃は網で宙にぶら下がった。

 

 

「ケケケ、また嵌ってやがる!ちょろいな~オメー」

 

「後続のパターンもあるんかい!」

 

「姉ちゃんにオメーの動きが見切られてんじゃねーか。ダメダメなやつだぜ」

 

「もう帰りたい……」

 

 

2度罠にかかった桃は網の中で体育座りをして落ち込んでいた。この魔法少女、最近すぐ落ち込む癖がついている。そんな様子を見て幽助はまだ笑っていた。

 

すると草むらの中から、ぬりかべみたいな生物が出てきた。胸元にあるピンク色の石を垂れ下げている妙な生物だ。

 

 

「シンニュ、侵入者、オヒキトリ、オヒキトリ……」

 

「何だコイツ?」

 

「おそらく姉が配置した使い魔でしょう」

 

「クソ弱そうなやつだな~、こんなの置いて意味あんのかよ」

 

 

明らかに動きも鈍く、どう見ても壁になりそうもない。能力のない人間でも素手で勝てそうなレベルである。

 

 

「……恐らくですが、弱った私か、魔族に覚醒したシャミ子でも行けるように設定したのかも」

 

「オイオイ、さすがに今のシャミ子だったら変身なしのパンチ一発で消せるぞこんなやつ」

 

 

そう言いながら、幽助は迫ってきた使い魔の胸元にあったピンク色の石を右手で奪い取った。

 

桃にも辛うじて残像が見えたレベルのスピードであったので、使い魔は全く反応が出来ず崩れ落ちていった。

 

どうやら石がコアだったようで、体から離れると自壊するように設定してあったようだ。

 

自力で罠から脱出した桃は服に着いた埃を叩き落としながら幽助に近づく。

 

 

「……恐らくですが、覚醒したてで実力が低いであろうシャミ子を想定して作ったものだと考えられます。今のシャミ子はかなり戦ってきて実力をつけているから、今のシャミ子の状態は姉の想定外なのかも」

 

「そーかねー。オレんときも霊力に目覚めてからすぐ戦ってたから、シャミ子の戦うペースはそんな早いとは思えねーけどな」

 

「まぁ普通より少し早いとは思いますが……ね」

 

 

幽助はそう言いながら石をポンポンと手の中で遊んだ後、ジーパンのお尻のポケットに入れた。

 

霊力に目覚めて半年程度で戸愚呂を倒し、その後1ヶ月と少しで仙水と戦ってS級妖怪になった男のペースからすれば、シャミ子は割と緩いペースで戦っていると感じていた。

 

シャミ子が聞いたら一緒にするな!と憤慨するのであろうが、ここにいるのは幼少から戦い続けてきた桃と幽助のみ。桃は幽助の言葉に少し賛同しただけであった。

 

その後些細な罠があるが、桃は引っかかることはなかった。

 

 

「こーゆーコテコテな罠は朱雀んとこの迷宮城以来だな」

 

 

あっちはもうちょい悪質だが、と幽助は溢す。

 

 

「どんな罠だったんです?」

 

「裏切りの門の審判とかだったか?確か上から天井が下りてきて全員で全力で支えないとぺしゃんこになるような重さにしてきたりとか、白虎の部屋は地獄の窯みてーな獄硫酸の風呂だったな。桑原の奴そこで死にかけてよーハハハ」

 

「それは流石の姉でも設置しませんよ……」

 

 

身内しか来ないであろう私有地にそんな殺意MAXの罠は姉でもやらないと桃は首を横に振った。

 

さて、そんなことを話していると隠し泉に着いた。まぁ泉と言うより滝であったが、水があるのは間違いないので桃はそのまま滝に打たれ始めた。

 

 

「オイオイ、服着たまま入んのかよ。脱がねーのか?手伝うぜ」

 

「……ドサクサでセクハラしないでください!脱ぎませんよ!」

 

 

手をワキワキと動かしている幽助に桃は怒鳴った。怒られても態度を改めるどころか、滝に打たれて肌に服が張り付く桃の姿を見て幽助は頷いく。

 

 

「まぁこれはこれでアリだな……」

 

「今からでもシャミ子に代わってもらいましょうか……!」

 

「ジョークだよジョーク!せっかく入れ替わったのにまだ代わりたくねーや!」

 

「ならあっち向いててください」

 

「へーい」

 

 

素直に言うことを聞いて後ろを向いた幽助は、何やら古ぼけた祠があることを発見した。またそこからわずかな魔力も漏れていることに気づく。

 

 

「おい桃。この祠何か知ってっか?魔力を感じるが……」

 

「……すみません。私もここに来たのは初めてなので」

 

「だよな~……」

 

 

桃が否定すると、幽助は祠に手を伸ばそうとするが引っ込めた。興味本位で触るとろくでもないことになりそうだからである。

 

幽助の行動は正しかった。しかしそれは祠に第3者がいなければ、という話であるが。

 

 

【うるさいぞ……我の眠りを妨げる者は誰だ……】

 

「今の声は祠から……!」

 

 

咄嗟に幽助は祠から距離を取ろうとしたが、一瞬遅かった。

 

 

「浦飯さん!!」

 

 

幽助の魂は一瞬にしてシャミ子の肉体から離れ、見知らぬ空間へ飛ばされていた。

 

 

「ここは……いつもの封印空間とは違うな」

 

 

幽助は自身の体を見ると、シャミ子の体ではなく本来の体に戻っていることに気づく。

 

どうやら精神体だけこの空間に呼び出されたようだ。体はもちろん、指先に妖気も集まることからテリトリーのように能力が使えなくなる空間ではないようだ。

 

周りを見渡すと、薄暗く狭い空間へ景色が変わっていることに気づく。そして闇の中から、何か引きづるような音をさせながら近づく物体があった。

 

 

「テメェ……オレをこんなとこに呼び出して何のようだ」

 

【ここは、我が体内。我は多魔川の遍く支流を司りし蛟なり】

 

 

現れたのは白く巨大な蛇である。重く響くような声は、普通であるならば恐怖を与えるものであった。しかし今回は相手が悪い。尊大な物言いに、幽助はだんだんと腹を立てていた。

 

 

「聞こえねーのか?こんなとこ呼び出して、何の用かって聞いてんだよ」

 

 

拳をバキバキと鳴らしながら近づく幽助に対し、蛟は態度を崩さない。見かけはともかく、蛟からすればあまり力を感じられない幽助に対し、恐怖を感じる必要性もないからだ。

 

一方の幽助は今現在妖気を霊能力者にも悟られないくらい低く抑えている。これは人間界で暮らすためには必須に近いレベルであるからだ。それが蛟になめられている原因でもあり、蛟は幽助の隠された実力を感知することができなかった。

 

相手の実力を分かるのも実力の内、ということである。

 

 

【山の静寧を乱すものは本来なら万死に値する しかし……】

 

「万死に値するのはテメーだ!!」

 

【え、ちょっ……】

 

 

蛟が全て言い切る前に幽助は妖力を上昇させ攻撃を仕掛けた。桁違いに上昇した妖力に全く反応できなかった蛟は一瞬のうちにズタボロになり、蛟はもはや消滅一歩手前の状態であった。

 

 

「さっさと元の空間に戻さねーとぶっ殺すぞ」

 

 

指先に妖力を集中させて、霊丸を撃つ準備を完成させる幽助。このままでは確実に消滅することを悟った蛟は、ひどく慌てた。

 

 

【も、戻す。戻すからこれ以上は死ぬ……】

 

 

次の瞬間、シャミ子の体に戻った幽助。どうやら無事に脱出できたようだ。

 

 

「よ、戻ったぜ」

 

「良かった……それで、犯人は?」

 

 

体を支えていた桃に、戻ったことと犯人は祠の中にいることを知らせた。

 

 

「(祠を)壊しますか?」

 

「いや、あいつは年季が入った妖怪っぽいからな。何か知ってるかもしんねー」

 

 

そう言うと幽助は祠の前にドカンと胡坐をかいて座った。

 

 

「やいコラテメー、この街とか知ってることがあったら全部ハッキリ説明しやがれ!説明次第じゃこの祠ごと山を吹っ飛ばすぞ!」

 

「(壊すって山の方か……)」

 

【は、話す。我はこの山全体に封印された姿なのだ。だからやめてくれ】

 

 

目の前の幽助ならば本当に山を吹き飛ばしかねないと悟ったのか、蛟は観念して協力することにした。

 

 

「まずオレはある日この邪神像に急に封印された。これにはこの体の先祖がいたらしいが、オレには関係ねー話だ。もしかしてさっきのテメーの能力みたいに魂だけ入れ替えたのか知りてぇ」

 

「そうか……!それならシャミ子の本来の先祖が抜け出た代わりに浦飯さんが入った可能性もあるのか」

 

 

元々清子の話では、邪神像にはシャミ子家のご先祖が封印されていたはずである。

 

にも関わらず縁もゆかりもない幽助が当然入ってきたのは、第3者が先ほどの蛟の様に魂だけ入れ替えた可能性が高いと幽助は踏んでいた。

 

 

【……はっきり言えばかなり難しいが可能と言えば可能だ。ただそれを行った者はこの街の結界を突き破って遠隔操作できるほどの能力者であることは間違いない】

 

「犯人は分かるか?もしくは先祖が行った先だ」

 

【どちらも分からぬ。ただ言えるのは、お主の体の魔族は夢魔だ。直接的な戦闘力は低いが、意識と無意識の挟間を操って集団を扇動したり、負の感情のエネルギーを集めたりするのを得意とする一族だ】

 

「何かそう聞くとスゲーセコイ魔族だなオイ」

 

「いや、結構凶悪な能力ですから。しかしシャミ子は夢魔だったんだ……だからあんな格好を……」

 

 

桃が何やら別のことを考えているようだが、幽助は無視して話を進める。

 

 

「んじゃ何か?先祖とやらは利用されるために攫われたってことか?でもじゃあ何で代わりがオレなんだよ?」

 

【分からん。だがもしや犯人は夢魔の先祖を使い、闇の一族の始祖を復活させようとしているかもしれぬ。

闇の一族の始祖は人間たちの負の感情が強さの源であった。遠い遠い昔、負の力を持って世界を征服しようとしたのだ】

 

「何かどっかで聞いたような話だな……思い出した!耶雲(やくも)だ!」

 

 

幽助は膝を叩いた。武術会後に戦った冥界の王の耶雲も、似たような感じで復活して倒したことを思い出した。

 

かなり強かったが、その後すぐに仙水の戦いだったので、結構忘れていたことに幽助は笑った。

 

 

「耶雲?誰ですそれは?」

 

「昔闘った奴でな、そいつも人間たちの負の感情で復活したーとか似たような奴だったぜ」

 

【すまぬ、遠い昔のことなので名前までは伝わってないのだ。

だがその闇の一族の始祖は光の一族に敗れ、遠い世界に封印されたと聞く。だから第2の闇の一族の始祖を生まないためにも、光の一族は魔族を討つために決まり事を定めた。定めた光の一族の者たちは既に人の中に消えたがな……】

 

「それが魔族討伐ポイントができた理由か……」

 

 

確かに危険な芽を摘むには報酬が必要である。そのためのポイント制だったのだろう。しかし幽助にとってそんなことはどうでもよかった。

 

 

「結局大層な物言いの割には何も分からねーってことじゃねーか」

 

【す、済まぬ……】

 

「まぁまぁ。シャミ子の先祖が何者かに奪われたという可能性があるということは判明したので……」

 

「しゃーねーな。山を吹き飛ばすのは勘弁してやるぜ」

 

【た、助かった……】

 

 

何とか命を拾った蛟を放置して2人は下山した。

 

魔力もだいぶ回復した桃は、行きと異なりシャキシャキと歩いていた。すっかり辺りは夕暮れである。

 

 

「しかしシャミ子が夢魔だったとは……魔法少女の夢に入って献血するよう唆して、その血を奪って使えば封印が解けそうですね」

 

「なんつー悪用の仕方を考えんだオメーは」

 

 

あまりにもセコイ作戦に幽助はゲンナリした。確かに直接戦闘しない分、楽は楽だがバレたら多くの敵を作りそうな作戦である。

 

 

「考えてもみろよ、シャミ子が人を操ったりするような考えを思いつくと思うか?アイツ魔族のくせにやけに真面目だし、嫌がりそうだぜ」

 

「……確かに。宿題しないだけで怒ってくるような子ですからね」

 

 

実際桃の考え方のほうが魔族向きである。桃とシャミ子の考えを交換すれば種族的にはピッタリだ。

 

 

「第一よ、シャミ子の奴も戦って白黒つけたほーが性に合ってるタイプだぜ。てかそんなセコイのはオレが許さねェ」

 

「……フフフ」

 

「何が可笑しいんだよ」

 

 

笑う桃を幽助はジト目で睨みつける。増々桃は可笑しそうに笑った。

 

 

「いや、あなたも十分魔族らしくないなって」

 

「まぁ、魔族だなんだ言う前にオレはオレだからな。種族なんて関係ねーよ。やっぱり勝負は真っ向勝負だぜ!」

 

「自分らしく、か」

 

 

この人みたいな考えが広まれば、魔族と光の一族の争いもなくなるのかな……なんて桃は空を見ながら思った。

 

つづく




ちょっとオリ設定混ぜた今回のお話。
耶雲は映画「幽☆遊☆白書 冥界死闘篇 炎の絆」で登場。長らくDVD化されてなかったので見る機会は長らくなかったが、久しぶりににBDとdアニメストアで見れます。
本来ご先祖BBQ時に初登場する蛟ですが、苦戦する相手とも思えないので早めの登場。祠の位置はちょっと変えました。
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