まちカド☆白書   作:伝説の超浪人

27 / 70
眷属にする方法って原作ではご先祖に丸投げだったよな……という今回の話。


27話「潜入!ミカンさんの呪いを解け!です」

体育祭もあと少しという時期になってきました。大体の人たちは楽しみだねーなんて緩い感じで体育祭を待ちわびているのですが、そうでない人たちもいて。

 

「これはまずいわ!」

 

「こいつぁまずいな!」

 

体育祭委員会のミカンさんと杏里ちゃんの2人が頭を抱えて焦ってました。どうやら体育祭委員会で何かあったようです。

 

「どうしたんですか2人とも?」

 

「体育祭がもうすぐなのに全然準備が終わってないのよ」

 

「なんでウチの体育祭は夏休み終わってすぐなんだろ~!」

 

「確かにそうですよね~。この時期は暑いから熱中症対策でやらないのが普通なんですが」

 

お母さんとか少し下の世代はこの時期だったらしいのですが、熱中症やそれに対してのクレームなどのため、夏休み前後は避けるのが現在の主流です。

 

でもウチの学校はそういうところでもゆるゆるらしく、昔ながらの開催時期だそうです。

 

「夏休みは人が集まんなかったから全然進まないし、高校生の夏休みは忙しいよね!!」

 

「分かります!」

 

杏里ちゃんの理由ももっともです。今年の夏休みは今までにないくらい忙しかったですからね、やっぱり高校生ともなると違います。

 

「私も昨日の夜に封印空間で浦飯さんに挑みましたが半殺しにされまして……夢の中だから現実の体にダメージがないからいいものの、そうじゃなければ今日学校来れませんでしたよ~」

 

「座った椅子から一歩も動かないようにして、返り討ちにしたんだけどよ」

 

「え、それと一緒にされても困る……てかやりすぎぃ!」

 

一緒にすんなと杏里ちゃんから激しいツッコミを受けてしまいました。やっぱり杏里ちゃんの言う通りやりすぎだと思うのです。

 

「大丈夫大丈夫。オレも親父に挑んで最後以外半殺しにされてたからフツーだって、フツー」

 

「魔族ってスパルタとか言うレベルじゃない……!てかそのお父さん、浦飯さんを半殺しできるの!?強すぎじゃない!?」

 

ミカンさんが驚愕し、杏里ちゃんがお手上げのポーズを取りました。半殺しがデフォルトなんてどうかしてるんですよねぇ……そんな親子は殺伐すぎる。

 

遠い目をしていると、桃がこちらにやってきて2人の作業に加わりました。2人が桃に協力を願い出て、渋々ながら桃も体育祭の手伝いに参加しているそうです。

 

待てよ、これでは私1人だけ仲間外れではなかろうか?

 

否!これは決して寂しいという感情ではない!不安定な状態の桃を監視する必要があるので、仕方なく参加するだけです!

 

「皆さん、特に理由はないですが私も手伝います!魔族が夜まで付き合ってくれるわ!」

 

「こいつ、寂しいからって素直に言えよ」

 

「あーあー!浦飯さんの言っていることは事実無根です!」

 

せっかく理由を上手く隠して参加しようとしたのに浦飯さんがあっさりバラしてくれました。そんな私を皆優しい目で見てきます。やめて!

 

「寂しいんなら思い切り参加してねー!」

 

「ちーがーいーまーす!」

 

杏里ちゃんが優しい笑顔のまま私の肩に手を置いて親指を立てました。お願い、皆の前でバラさないでください!

 

かなり恥ずかしくて浦飯さんをダンベル代わりに使って視界をグチャグチャに酔わせようとしましたが、全く堪えてませんでした。

 

その後、放課後に体育館に集合し、他の体育祭委員会の人たちを合流しました。

 

聞くところによると、1年の担当の中で終わってないのは小道具や大道具・競技のシミュレーションなどでした。いや、ほぼ進んでませんねこれ。

 

「桃はリレーのタスキ作り、ミカンさんは二人三脚とか競技のシミュレーションか……」

 

「オメーは背も小せぇし、手先も不器用だからやることなさそーだな。よし帰るべ!」

 

「あ、悪魔の誘惑です……!」

 

しきりに帰ろうと誘ってくる悪魔が邪神像から聞こえてきますが、私は耐えました。

 

誘惑してくる本人は私が帰ろうとしないことにブーブー文句言ってます。この人は本当に学校行事に参加しない人ですね……!

 

せっかくの高校初めての体育祭ですし、私も行事に参加できると嬉しいので浦飯さんの誘いに乗らず、作成が終わってない看板作りに向かいました。

 

「こっち手伝ってくれるんだシャミ子ちゃん。看板の仕上げだから、指定された場所に色を塗ってね!」

 

「あ、はい!わかりました……あ、私の名前はご存じなのですね?」

 

私は重し代わりに看板の隅にそっと邪神像を置き、筆を持ちました。

 

浦飯さんが「おいコラ」なんて言ってますが、腰に邪神像をつけたまま作業するのは無理なので我慢してもらいましょう。

 

「有名だよシャミ子ちゃんは。この前の体育も凄かったらしいし、今日も頼りにしてるよ?」

 

「お、お手柔らかにお願いします……」

 

ま、不味いです。特別絵を描くことは上手いわけではないのですが、何か先日見せた体育の時の能力でハードルが上がっている気がします。これは心してかからねば!

 

「へいへい、筆を持つ手が震えてんぜ?」

 

「ちょっと浦飯さん!本当のことを言わないでください!緊張してるんですよ!」

 

「2人とも仲が本当にいいよね~」

 

緊張で筆を持つ手が震えることを指摘され反論すると、他の子たちから微笑まし目で見られました。べ、別の意味で恥ずかしくなってきた……!

 

看板は『一年の絆』という文字が入った華の絵です。後は色塗りだけの段階ですが、ここまで来るのに相当時間がかかったようです。

 

しばらく集中して塗っていると桃や他の子たちも加わって、中々速いスピードで進行していきました。

 

その間ミカンさんは楽しそうに他の子たちと競技のシミュレーションをしてました。呪いで学校生活が上手く遅れるか心配されていたので、とても楽しそうな今のミカンさんは問題なさそうです。

 

むしろ他の子たちからかっこいいとかスタイル良いとかモテモテでした。私だってカッコイイと言われたい……!

 

さて作業も進み塗り終わって後は乾燥するのを待つだけの状態になりました。

 

一息ついて待っていると、ミカンさんが騎馬戦の一番上になり、少し移動したりしてました。

 

「あ、このペンキ借りていい?」

 

「いいよー」

 

「あ、後ろ……!」

 

「え?」

 

ちょうどペンキを借りに来た子が後ろから騎馬が近づいていることに気づかず、後ろに下がってしまい、騎馬の後ろの人と接触してしまいました。

 

「あ、ごめん!」

 

「きゃっ……!?」

 

崩れた騎馬からミカンさんが崩れ落ち、ゴンと頭が地面に落ちてしまいました。そのまま横たわってすぐ動きませんでした。これはまずいです!

 

「ミカンさん!大丈夫ですか!」

 

「ミカン大丈夫!?」

 

「ダメ!」

 

杏里ちゃんと一緒に駆け寄ろうとしましたが、桃が突然大声を出して皆を静止させました。

 

次の瞬間ミカンさんから禍々しい魔力があふれ出ます。これは呪いの魔力!しかも今までより濃度が濃い感じです!

 

「まって近寄らないで!ミカンは気絶したときが一番呪いが爆発する……!」

 

まさに桃の言う通りで、魔力そのものが溢れて破裂しそうな感じでした。このタイミングなら私一人だけなら範囲外まで退避できますが、他の子が間に合わない!

 

どうすればいい!?悩んでいると、浦飯さんが声を張り上げます。

 

「妖気で自分の目の前に『壁』を作れ!オメーならできんだろ!」

 

「はい!」

 

それは何度か浦飯さんに教わっていた、悪意のある妖気などを防ぐバリアみたいな技を『壁』と言われる技術です。

 

最初に聞いた時、悪意のある妖気ってどんなものなのか不思議に思い聞いてみました。殺気などとは違うというのです。

 

『戸愚呂の奴が80%になったとき、観客の連中が硫酸をかけられたみてーに溶けていってな。放出する攻撃的な妖気だけで弱い妖怪や人間はやられちまうんだ』

 

『怖すぎです!』

 

『今のオメーなら『壁』なしでも耐えられるかもしれねェが……他のフツーの奴らが後ろにいるときに使えるぜ』

 

私はあの時の言葉を思い出し、皆の前に立ってミカンさんの呪いの魔力から皆を守る壁を作り出します。そして桃も同じことをしてました。

 

ミカンさんからあふれ出る魔力は爆発し、その爆風でペンキなどや色んなものを吹き飛ばしました。

 

「どわー!?」

 

「う、浦飯さーん!?」

 

――なお桃や私の『壁』の範囲外だった浦飯さんは爆風に吹き飛ばされ、ゴロゴロと体育館の中をかなりの距離にわたって転がることになりました。しかも黒のペンキがこぼれて思い切りかかったおかげで邪神像は真っ黒に染まってました。

 

ですが『壁』を作ったおかげで人的被害はゼロでした。は、初めてやりましたができてよかったです……

 

「ミカンさん、浦飯さん、大丈夫ですか!?」

 

「うぅ……」

 

「真っ黒になったぞー!」

 

「……浦飯さんは大丈夫そうですね」

 

桃の言う通り浦飯さんはピンピンした声を出していて、元気そうなので安心しました。

 

対するミカンさんは頭を振って起き上がり始めたので、ベットリと真っ黒なペンキで汚れた浦飯さんを回収し、皆でミカンさんの元へ駆け寄ります。あ、手にペンキがついちゃった。

 

「大丈夫!?頭打ったけど!?」

 

「大丈夫よ。でも看板が……」

 

ミカンさんが沈んでいる目で見つめる先には倒れたペンキで汚れていた看板でした。これでは塗り直しになるレベルでした。

 

しかし私も含めてそのことを言う子はおらず、皆でミカンさんを介抱してました。

 

「私の呪いのせいで……ごめんなさい」

 

「ミカンさん悪くないよ!私が後ろ見ないでペンキ持ったから!」

 

「私が不安定なミカンさんの持ち方をしたからー!」

 

「ていうか頭打ったけど大丈夫?」

 

落ち込むミカンさんを皆でフォローしました。ミカンさん一人のせいではありませんし、そのことは皆分かっているので本心からの言葉でしたが、ミカンさんの表情はどんどん沈んでいきました。

 

あえてミカンさんの表情を気にせず、杏里ちゃんはズイっとキンキンに冷えたジュースのペットボトルとタオルをミカンさんに差し出しました。

 

「とりあえず打った場所をこの凍ったペットボトルで冷やそうぜ!」

 

「……あはは……は……」

 

ミカンさんは文字通りの乾いた笑いをしながらペットボトルを受け取り、皆から少し離れて打った頭を冷やし始めました。

 

どうにも自分の責任と感じているようです。

 

「全く真っ黒になってひでー目に……モガモガ」

 

「ちょっと浦飯さん!追撃しないでくださいよ!」

 

文句を言おうとした浦飯さんの口元を抑え黙らせました。ええい、こんな時は空気読んでくださいよ!

 

ミカンさんは休んでいましたが、他の皆で作業を再開し、看板などの修理にも取り掛かりました。

 

その甲斐あってか、今日ですべて終了というわけにはいきませんでしたが、何とか期日までには終わるような進行具合までに巻き返しました。

 

閉校の時間になったので、皆帰ることになりました。皆ミカンさんに声をかけてから帰りましたが、まだミカンさんは落ち込んだ表情で返事をしてました。

 

「私、先に行くわね」

 

同じばんだ荘に住んでいるにも関わらず、ミカンさんは私と桃を置いて先に行こうとします。

 

「ミカンさん、待って!」

 

声をかけると、背中を向けたままミカンさんは立ち止まりました。肩はいつもより沈んでいて、明らかに覇気がありません。

 

「ミカンさんは悪くないですよ。それに皆気にしてないですし、作業的にも十分間に合います。だからこれ以上落ち込むことなんて……」

 

「皆優しい良い人たちね」

 

ポツリと返して、こちらに振り向いたミカンさんは悲痛な表情を浮かべてました。

 

「でも私の子の呪いは優しい人ほど、私に近いほど傷つけてしまう。あのとき皆が怪我しなかったのは2人がいてくれたからよ」

 

「ミカン……」

 

「やっぱり、気を抜くとこうなっちゃうのね……」

 

乾いた笑みを浮かべるミカンさんは、諦めも感じました。その時私は強く思いました……こんな表情は嫌だなと。

 

「むしろあんなんで気絶するほうがどーなんだよ」

 

「うぐっ!」

 

そして情け容赦ない浦飯さんのツッコミでミカンさんが胸を抑えました。

 

まぁ確かに頭から落ちたとはいえ、騎馬戦程度の高さから落下しただけで気絶したときはミカンさんの実力的にあり得ないだろうと思って逆にびっくりしましたけど……。

 

それを自覚しているのか、ミカンさんは先ほどと打って変わってかなり焦ってました。

 

「あ、あれは咄嗟のことで仕方なかったのよ!」

 

「気ぃ抜きすぎだっつーの。そーいや今まで聞いてなかったが、どうしてそんなヘンテコな呪いが出るようになったんだ?」

 

「……話してなかったかしら?」

 

「ないです」

 

「ねーな」

 

「……ごめんミカン、浦飯さんとシャミ子には話してなかった」

 

「……それじゃ、話すわね」

 

桃は知っているようですが、私も浦飯さんも呪いの経緯や詳細は一切知りません。頷くと、ミカンさんは話してくれました。

 

何でもミカンさんが小さい頃、ミカンさんの家の工場の経営が傾いたそうな。

 

その状況を打破しつつ家族を守るため、ミカンさんのパパが見様見真似の作法と裏道の触媒で悪魔召喚の儀式をしたそうです。

 

しかし素人が行った儀式は失敗し、召喚された悪魔はミカンさんの心に憑りつき「一人っ子のミカンさんを困らせたものを無制限に破壊する呪い」となってしまったようです。

 

そして壊したもののエネルギーを吸いながら成長するようになって、呪いの効果が年々強くなっていくのを、魔力で抑え込んで人付き合いができるくらいにしたのが千代田桜さんだったそうな。

 

ちなみにこの街で霊丸とかを撃った工場跡地は元々ミカンさん家のもので、呪いを鎮静化するために戦った際工場が壊れたので千代田家で買い取ったそうです。……魔法少女の資金力パネェ!

 

「つまり、そのときの千代田桜の力でも今の状態に抑えるのが精一杯だったわけか」

 

「……他の魔法少女にも聞ければ良かったんだけど、魔法少女同士で争いあうのも珍しくなかったから、おいそれと弱点を晒すことはできなかったわ。しかも能力を他人に喋る子はいないしね」

 

前々から思ってましたが魔法少女同士で殺伐しすぎじゃないですかね?

 

しかし能力も知られてしまえば対策を取られますから、隠すことは間違いではないでしょう。ある意味では仕方ないかもしれません。

 

まぁそれが光の一族のやり方なのか、と言われてしまえば……少しもやっとしますけど。

 

それにしても先ほどの悪魔はミカンさんの心に憑りついていると言ってましたが、もしやこれは私の能力がいけるんじゃないでしょうか?

 

「あのミカンさん……」

 

「だから、これはどうにもできないの。長くなったわね、今日はお休みなさい」

 

「え、ミカンさん!?」

 

ささっとミカンさんはその場を後にしてしまい、私たちは置き去りになりました。え、まさか聞いてもらえないとは……。

 

伸ばした右手か悲しく空中に漂っていると、桃が右肩を叩いてきました。

 

「シャミ子も分かってるみたいだね」

 

「はい!解決方法は、私の能力にあります!」

 

桃も同じ考えに至ったのか、指を鳴らしました。色々ミカンさんには助けてもらってますから、今度はこっちの番です!

 

「よっしゃ、早速ミカンを捕獲すんぞ!」

 

「「おー!」」

 

浦飯さんも私の能力で解決出来そうなことを理解しているので、ミカンさん捕縛指令を出しました。この分じゃミカンさんは責任を感じて一旦実家に帰る!とか言いそうですからね。

 

「お邪魔しまーす!」

 

「ひゃっ!?」

 

ダイナミック訪問でミカンさんの部屋へ突入した私たちは、ミカンさんが荷造りをしているところを発見します。荷造りするの早くないですか!?

 

「な、何!?急にレディの部屋に入ってこないで!?」

 

私たちはミカンさんの言葉を無視してミカンさんに襲い掛かります。時間の猶予は与えません!

 

「ふんじばれー!」

 

「「おー!」」

 

「ちょっとぉ!?」

 

荷造り用のロープでミカンさんを確保し、ミカンさんを物理的に落ち着かせます。本当に帰ろうとしていて焦りましたよ!

 

納得がいかないのか、ミカンさんは声を張り上げます。

 

「どうしてこんなことするのよ!?」

 

「簡単です。今から私の能力でミカンさんの心の中に入って、悪魔と片をつけます!このシャドウミストレス優子に任せるがいい!」

 

「えぇー!?」

 

ミカンさんは非常に驚いてました。桜さんは呪いを鎮静化させたと言いますがあくまでそれは外側からできること。悪魔は心の中にいますから、本当に何とかするなら心の中に行くしかありません!

 

そして私は以前自分の心と言うか記憶の中に入ったことがあります。それを応用すれば今回も行けるでしょう。

 

「で、でも危険なんじゃ……!?」

 

「危険は百も承知です!でもミカンさんには助けてもらってますから、今度は私の番です!」

 

「やはりミカンの心の中か……いつ出発する?私も同行する」

 

「千代田院」

 

渋るミカンさんの肩に手を置いた桃が同行を申し出てくれました。非常に心強い援軍です。しかし一緒に行く方法はどうやるんでしょうか。この前は一人でしたし。

 

「さ、浦飯さん。私をシャミ子の眷属にしてください。そうすれば私もシャミ子と一緒に心の中に同行できます」

 

桃は浦飯さんに私の眷属にしてもらうようにお願いしました。どうやら眷属とやらになると、一緒についてくることができるようです。

 

むむ、これはもしや桃を私の配下にできるということではないでしょうか?何と言うことでしょう、意外なタイミングで桃を配下に置くことに成功できそうです。ワクワクしてきたぞ!

 

「……いや、知らねーぞ。眷属のやり方なんか」

 

――――全員固まりました。桃は当てが外れたせいで、少し倒れそうになってます。対する浦飯さんはキョトンとした表情を浮かべています。

 

「え、浦飯さんて魔族ですよね?眷属の一人や二人はいなかったんですか?」

 

「そんなもん作るより自分で戦ったほうが早いしな。つーか知り合いに眷属持ってるやつなんか知らねーし」

 

浦飯さんらしい答えである意味納得しました。浦飯さんの昔の話を聞いても、後半は眷属とか数で押す戦いじゃなくて、ガチンコか頭脳戦の2択ですからね。

 

むしろ浦飯さんが眷属持ってたり、作り方知っているほうが違和感バリバリです。

 

しかし桃はその答えに納得しないのか、浦飯さんに詰め寄ります。

 

「普通、魔族ならやり方知っているもんなんじゃないんですか!?」

 

「んなもん知るか!!」

 

「ミカンさんも知らないんですか?」

 

「魔族の眷属にする方法なんて知らないわよ……」

 

何と言うことでしょう、いきなり計画が頓挫しました。桃は参戦不可能となってしまったようです。桃はそのままガックリと崩れ落ちました。

 

しかし何秒かして桃は喫茶店アスラに電話しました。あそこも2名ほど魔族だから知っているかもしれないという望みをかけて電話したのですが……

 

『すまない、ボクもリコ君も知らないんだ』

 

「なんて使えない……!」

 

『え、ちょっとひどくないかい!?』

 

よほど腹が立ったのか、桃は一言謝って電話を終わらしてしまいました。見事な八つ当たり、それでいいのか魔法少女!

 

「ごめんシャミ子。シャミ子1人でいかなきゃいけなくなってしまった……」

 

「大丈夫です!このシャドウミストレス優子1人で解決してみせますよ!」

 

「その足は武者震いかオイ」

 

不安で足がカタカタ震えているのを浦飯さんが突っ込んできますが無視です。単独行動は少し怖いんですよ!

 

ミカンさんはやめるように何度かこちらに提案してきましたが、その度に断るとついに折れました。

 

「……危険になったらすぐ戻ってきてね。これだけは約束して」

 

「まかせてください!」

 

ガッツポーズし、ミカンさんと私は布団を敷いて布団タイムに突入しました。お互い寝付けばすぐに心の中に潜入できますからね。

 

「……ごめんシャミ子、一緒に行けなくて」

 

「ヤバくなったら逃げろよ」

 

「シャミ子、無理しちゃダメよ。無事に戻ってきて」

 

「分かりました!行ってきます!」

 

これより、ミカンさんの呪い解除クエストに突入する!イクぞー!

 

☆☆☆

 

「うわぁ、視界悪いですねここ」

 

そんなこんなで無事ミカンさんの心の中に入った私は、黒い魔力が漂っている空間に出ました。部屋も全体的に薄暗く、黒い魔力も漂っていることからあまり先が良く見えません。

 

こう言ってはアレですが、実に魔族が好みそうな陰湿な空間です。これが呪いの影響によるものなのでしょうか?とてもじゃありませんが、明るいミカンさんの心の内とは思えませんでした。

 

「この黒い魔力は、呪いが出た時の魔力と同じものですね……」

 

鬱陶しく視界に入って纏わりついてくる黒い魔力は、ミカンさんが気絶したとき溢れ出たものと同じでした。ならばこれを生み出しているのが、ミカンさんの心の中に召喚された悪魔に違いないでしょう。

 

今回の目的は呪いの元を何とかすることなので、召喚された悪魔が居ればいいのですが、辺りを見回しても視界が悪くてどこにいるのか見当もつきません。

 

特定の魔力を目印にして向かえばいいのですが、全体的に黒い魔力が分散されていて邪魔になっているので、他の魔力を感じ取れません。仕方ないので勘を頼りに歩きます。

 

しばらく歩いていると、何かが浮いているのが見えます。大きさで言えば人くらいでしょうか?

 

「召喚された悪魔でしょうか……?確か名前はウガルルとか言ってましたっけ」

 

ミカンさんの話によると、ミカンさんパパが召喚した魔族の名前はウガルルと言うそうです。何でもモモのスマホで調べた結果、メソポタの怪物で門柱に姿を彫ると家を悪から守るとか。

 

浦飯さんが「つまり番犬みてーなもんか」なんて言ってました。凄まじく簡単に言ってましたが、役割としてはほぼほぼ正解のようです。

 

そんなことを思い出しながら近づいていくと、魔族ではなく宙に膝を抱えているミカンさんを発見しました。第一村人ならぬ第一生物発見です。

 

しかしミカンさんは眠っているのか、私が少し離れた位置で立っていても無反応でした。さらにミカンさんの周りには特濃の黒い魔力が漂ってます。明らかに踏み込んだら不味い系のタイプに違いないと尻尾レーダーにビンビン来てます!

 

「ミカンさーん!起きてくださーい!」

 

なので遠くから本人を起こすことにしました。え、黒い魔力を吹き飛ばせばいいんじゃないかって?一人しかいないから迂闊な行動がとれないんですよ!

 

しかしミカンさんに反応はなく、代わりに周りの黒い魔力が襲ってきます。やっぱり駄目じゃないか(憤怒)

 

幸い黒い魔力は大して攻撃力もないようで、スピードも遅いので楽に避けれます。しかし反撃ができない状況でもありました。

 

「私の攻撃だとこーゆー霧状のものを一掃する技はないですし……霊丸なんかぶっ放したらミカンさんが大変なことになります」

 

もし霊丸を撃って黒い魔力に効いたとしても、ミカンさんにジャストミートしたら大丈夫なんでしょうか?

 

ミカンさんを信じてぶっ放すという方法もなくもないですが、それは最終手段にしましょう。

 

……浦飯さんなら「纏わりつくんじゃねー!」とか言って撃ちそうな気がしなくもないですが。

 

「何とかミカンさんと黒い魔力を切り離せればいいんですが……あ、そうだ」

 

そこで数日前、妹の良が我が家の杖の使い道について色々考えてくれたことを思い出しました。

 

我が家の杖は「棒状」のものに変形できる機能を持っており、実在しないような武器も作れるかもしれないそうです。実際使ったのは私とお父さんだけなので、未確定の情報ではありますが。

 

一応物干し竿やアイドルうちわ、如意棒(見かけだけ)、ブラックロッド(見かけだけ)に変形させることはできました。何故か如意棒などが伸びませんが!何故か!

 

とまぁ変形させても使えず、浦飯さんから「へっぽこ」と馬鹿にされムカ着火ファイヤーでした。

 

そんな姉の姿を見ても良は「お姉ならきっとできる!」といい、いくつか武器候補を考えてくれました。できた妹です。

 

「でも私武器使ったことなんですよねぇ……」

 

そう、今までの修行は全部素手のみ。武器なんか使ったことなんかないのです。そんな私に武器を使って戦うというのは難易度が高すぎますが……。

 

「見ていてください良!お姉ちゃんが使いこなして見せます!この杖を!」

 

振り上げた杖を、良が教えてくれた『混沌をかき混ぜて形作る神話の矛』に変形させます。

 

「天沼矛!です!!」

 

完成しました!見かけは良が書いてくれた絵で良く分からなかったので泡だて器にしましたけど、魔力を混ぜ混ぜするんですから、これでいいはずです!

 

色んな人からツッコミを受けそうな形でしたが、大事なのは結果ですよ、結果。ということでグルグル魔力を混ぜます。

 

混ぜ始めると途端に攻撃が止み、黒い魔力で覆われた周りの風景もクリアになりました。

 

集まった黒い魔力は1つの球体から人型へ変化していきます。魔力が完全に人型になる前に杖を元の状態に戻しておきます。恐らくここから戦闘になりそうですから。

 

そして現れた人型は私より小さな女の子でした。顔は人間ですが、体は獣のようでした。長い爪に尻尾。明らかに魔族でした。

 

「んん……?」

 

しかし何となく違和感を感じました。先ほどまでの黒い魔力を彼女から感じますが、別の魔力もこの子から感じるのです。まるで2つ魔力があるような、そんな感覚を。

 

その彼女は何故か苦しそうな表情を浮かべてました。まるで何かを我慢しているかのような、そんな表情です。

 

「初めまして!私、魔族のシャドウミストレス優子と言います。あなたはウガルルさんでよろしいですか?」

 

「ウ、ウウウウゥ……!」

 

「あ、あのー、大丈夫ですか……?」

 

まさか具現化したせいで体調が悪化してしまったのでしょうか?俯いてしまった表情を見ようと声をかけた瞬間、背筋がゾワっとしました。

 

「(殺気!?)」

 

振り下ろされた爪の攻撃を横に飛んで躱しました。

 

「やっぱり攻撃してきましたか!」

 

少し距離を取って反撃の用意をします、しかし予想に反してウガルルからの追撃はありませんでした。それどころかウガルルはその場で頭を両手で抑え、苦しんでいます。

 

「何で起こしタ……!こうなったら、もう抑えられなイ……!」

 

「抑えられない……?」

 

何やら様子がおかしいです。私を侵入者として始末するつもりなら、今も攻撃を続けるはずです。

 

にも拘わらず、ウガルルらしき魔族はその場で蹲ったままです。先ほどの一撃も、近寄る物を払いのけるようなものに近かったのでしょう。

 

「ウガアァー!!?」

 

魔力と絶叫が吹き荒れます。発生した風圧を思わずガードしてしまい、近寄れませんでした。

 

――――だから、ウガルルの口から出た銀色の液体金属のような物体に反応できませんでした。

 

「キモッ!!?」

 

そして銀色の物体は黒い魔力が晴れてからは地面に仰向けに横たわっていたミカンさんへ向かっていきました。

 

「しまったっ!」

 

咄嗟に霊丸で撃ち落とそうと考えましたが、位置の関係上ミカンさんも巻き込むことになってしまい、躊躇してしまいました。

 

その一瞬の躊躇の間に、銀色の物体がミカンさんの口へ飛び込み、体内へと侵入しました。

 

銀色の物体が抜けたウガルルらしき獣の魔族は気絶し地面に崩れ落ちました。その代わりに、ミカンさんの体がゆっくりと立ち上がります。

 

一見すると、いつものミカンさんでした。しかし漏れ出る魔力はミカンさんのものではありません。明らかに別物でした。

 

ミカンさんの表情は今までにないほど邪悪に歪んでいました。まるで別の誰かになってしまったかのような、ねっとりとした嫌な表情でした。

 

「まずはありがとう……と言ったところかな」

 

その声はミカンさんの声ではなく、全く違う男の声でした。声もどこかねっとりとして、不快感を感じるようなものでした。

 

そしてミカンさんの両眼の下から顎にかけて黒い線が浮き上がります。

 

明らかに異質。否応なしに、目の前の人物はミカンさんでなくなってくのを理解させられました。

 

「キサマは……誰だ!」

 

「オレか?オレは憑《ひょう》という……礼が言いたいのさ、キサマの馬鹿さ加減にな」

 

「何ィ?」

 

「はぁっ!!」

 

憑と名乗った魔族が気合いを入れると、今までの黒い魔力と同じ魔力ではありますが、今までとは数段上の魔力が吹き荒れます。危うく風圧で吹き飛ばされるほど、凄まじい圧力です。

 

今まで戦ってきた中でも、浦飯さんを除けばトップクラスの圧力でした。こ、こんな奴がミカンさんの中にいたなんて……!

 

驚愕する私の表情を見て、憑と名乗った魔族は増々嫌らしい笑みを深めます。

 

「貴様のおかげで、この体に乗り移れた礼をな」

 

「何だとぉ……!」

 

ウガルルからは黒い魔力を感じません。今まで呪いで発生した黒い魔力を、目の前の憑から感じ取りました。

 

「そうか……今までの呪いはキサマが……!」

 

その言葉に対し、憑は笑みを深めるだけでした。

 

頑張れシャミ子!ウガルルではなく現れた魔族を何とかするんだ!激しいバトルの予感がするぞ!

 

つづく




長いので夢に潜入する前にカットしようかと思いましたが、原作とほぼ変わらないので伸ばしました。
今回幽助よりご先祖のほうが眷属化・テレパシー通信などの細かい技術では上ということが証明されたのではないでしょうか。
むしろ幽助にそんなのが使えたほうが違和感バリバリ……!
乗り移ったりする敵キャラって気持ち悪いのが多い気がします。戸愚呂兄、蔵馬の義理の弟に乗り移った空、ドラゴンボールGTのベビーとか。
でもダイの大冒険のミストは好き。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。