「さて、キサマは近づかせずにこのまま殺らせてもらう」
左肩を貫かれた私に対し、憑は一歩も私に近づかずボウガンを構えます。
「(痛い痛い痛い!!焼けるように肩が痛い!)」
左肩がまるで体の内側から燃えているように痛みます。余りの痛さに転がりたいところですが、そんなことをできる状況ではありません。それどころか、今のこの状態で奴への対抗手段を思いつかなくてはならないのです。
私は霊丸である程度距離を離して戦えるといっても、基本的には素手の接近戦がメインです。
あちらの方が肉体のスピードも速く、ボウガンの攻撃も見えないほど速い。
痛みで左腕を碌に動かせない今の状態でボウガンの攻撃を掻い潜って接近戦に持ち込むには距離が遠すぎます。
もしボウガンの攻撃の一発一発が弱ければ、浦飯さんが昔言っていたように「我慢して突撃あるのみ!」という戦法もいけますが、ボウガンの攻撃はこちらの防御を一撃で突き抜けてくる強力な一発!そのまま突撃すれば自殺と変わりません。
「(どうする、どうする!?何かいい手は……!)」
左肩のあまりの痛さに考えがまとまらず、打開策を思いつくことが出来ません。霊丸は残り3発。この距離から撃つこともできますが、まともに当たるとは思いません。避けられて終わりでしょう。
頭を抱えたい状況ですが、そんなことをした瞬間撃たれそうな状況です。
「こうなったら……!」
私は熱くて痛い左肩の傷口を抑えていた右手を離して、右手の人差し指に霊丸の準備をします。こうなったら避けられても、その隙を突いて突撃!それしかない!
「ふん。破れかぶれの霊丸か。大方こちらが避けるか受け止めた隙を突いての接近戦だろう、甘いな」
「ぬぐぐ……!」
やばいです、完璧に読まれてます!
くそぅ!こういう大ピンチの時に、何か運よくパワーアップしたりなんてしないのでしょうか?浦飯さんはそういうの結構あったとか言っていたのに~!
そこまで考えて、ふとあることを思い出しました。
「あー!?」
そう、呪霊錠です。私はそのことをすっっっかり忘れてました!
今の私の両手両足には呪霊錠がつけられており、通常より魔力を抑えつけられている状態でした!
それを今解放すれば、今よりずっとパワーアップできるはずです!何で今まで私ってば忘れてたんでしょう、私のおバカ!
その驚きに対し、憑は心底馬鹿にしたような表情を浮かべてました。
「ふん。絶望的な状況で頭がおかしくなったか?どちらにせよキサマは終わりだ」
言い終わると同時に、魔力が集中し発射準備を完了させているボウガン。その威力と速度は先ほど身をもって体験しています。
「(まずい!呪霊錠を外すために一瞬時間が必要!このままじゃそんな暇もないです!)」
合言葉を言えば呪霊錠を外すことも可能ですが、その工程は合言葉を言って妖力が解放されるというワンクッションの時間が必要となってきます。
ボウガンの速度から考えると、今この場でやることは自殺行為!しかし外さないことも自殺行為!つまり八方ふさがりです!
「(んん?……つまり時間さえ作れればいいのでは?)」
混乱していた頭の片隅で、ふと戦闘行動中に解放させなくてもいいのでは?と思いました。
相手は今圧倒的有利の立場だからこそ、余裕がある。そこを突くしかない!
イチかバチかではありますが、私は賭けに出ました。私はなるべく不敵な笑みを作ります。
「やっぱり手加減したままじゃ無理だったみたいですね」
「……何?」
すぐにも矢を撃ちそうだった憑は訝し気にこちらを見ます。ほんのわずかですが、ボウガンが先ほどより下がりました。よっし!釣れたぞぉー!
いつ攻撃されても横っ飛びで避けられるようにしつつ、私はまず左手のリストバンドに手をかけました。人を騙すなんてほとんどしてこなかったし、戦闘中で自分の命がかかっているのもあってかなりドキドキしてます。
意味ありげに呟いたおかげで、リストバンドを外している最中も憑は訝しげに見るだけで攻撃はしてきません。よしよし!上手くいってます!
おそらく接近されなければ問題ないとあちらは考えているのでしょう。だから距離が離れているこの状況で攻撃ではない行動をとる私を不気味に思っているに違いありません。
だからこそ攻撃できないのでしょう。もしこの行為が矢へのカウンターであれば、迂闊に攻撃できないからです。
手にかけたリストバンドは何故か変身前から着けているのに変身後もそのまま着いているというちょっと不思議なリストバンドです。
桃曰く、戦闘フォームの衣装は本人のイメージに強く引っ張られるからリストバンドがそのままなのは、修行の印象が強いためだろうということです。
左手首のリストバンドを外すと、黄色く光ってました。まさしく呪霊錠の光です。
その間もボウガンを構えたまま、憑は黙って見てました。どうやら戦闘とは全く違う行為に攻撃していいか迷っているようです!
フッフッフ……!浦飯さんも
「戦っているとき、変わったことをやると結構ハッタリになんぜ!」
とか言ってましたからね!効いてますよ浦飯さん!ありがとうございます!
続いて右手首のリストバンドも外します。そうすると両手首と両足首からも光る枷ができました。こうしてみると囚人みたいでやっぱり絵面が良くないですね……。
「その光る枷……キサマまさか、今までハンデをつけたままでオレに勝つつもりだったのか」
「その通りです。けどやっぱり無理でしたけどね」
鼻で笑うと、憑は凄まじくこちらを睨みつけます。こちらが手加減していたことがよほど気に食わないのでしょう。
言えない、今の今までつけていたことを忘れていたなんて……!ここはハッタリで通すんです!
だから私は鼻で笑いながら言い放ちました。
「だから今から本気で戦ってあげますよ」
「……なら本気を出してみろ。その上で殺してやる」
やったー!上手くいきましたー!これで解除できます!
いつの間にかボウガンを下ろし、ギリリ、と歯ぎしりをする憑。私は両手を広げて、合言葉を叫びます。この瞬間を待っていたんだ!
「開《アンテ》!!」
合言葉を言った瞬間、パンッという音が弾け、両手足首を覆っていた呪霊錠の光が消えました。
そして以前解放したときとは比べものにならないほどの力が体の内側から溢れます。
何という体の軽さ……!今までの状態とは桁違いに体が自由です!それほどまでに肉体を今までよりはるかに強化してくれたのです。
解放が成功してよかった~!もしこの間に攻撃されていたらアウトで串刺し魔族でしたよ。挑発が成功してよかった……生きた心地がしなかったですよ!
向こうはこちらの増幅した妖力を感じてか、表情を面白くなさそうに歪めてました。
「……確かに大幅にパワーアップしたようだな」
「その通り!大幅パワーアップです!そう、今の私は超シャミ子です!」
体が軽いって素晴らしい!これでフルパワーで戦えます!
その態度が気に入らなかったのか、魔力を今まで以上に集中させた左手のボウガンを一瞬のうちに構え、私の眉間へ狙いを定めてきました。
「───死」
言葉と矢を放とうとした刹那、私は憑の目の前まで真っ直ぐ飛び込みました。そして放とうとしているボウガンを持っている左手を私の右手で逸らさせました。
「───ね!?」
私の動きを逸らされるまで反応できていなかった憑。そのまま驚きの表情を浮かべている憑の胴体へ5発の拳を叩き込みます。全て左ストレート。小細工なしの全力です。
「はおっ……!」
拳を受けた憑はボウガンを地面へ放り出し、膝をついてもだえ苦しんでいました。
「ぐェほオォ!」
そして攻撃した私も超痛かった!なぜなら左肩を撃たれ貫通しているのに、左で殴ってしまったからです。
「ぐあっち!」
思わず痛くて涙がちょっぴり出そうになるくらい目元に水気が出ますが、右手で左肩を抑えます。
「ぐぎぎ~!なんのォ~、痛くないですよ~!!」
やせ我慢!敵の前で弱みは見せたくありません!……やばい、超痛い!
お互い痛みで悶えてましたが、私はすぐ大丈夫(なふり)になり構えをとります。対する憑はまだ苦しんでいました。
やはり相当効いているみたいです。呪霊錠のパワーアップは半端じゃない……!ここまでスピードもパワーも変わるとはびっくりです!
今の状態ならこれから特殊な能力が憑にない限り勝てそうです。このまま一気に決めたいところです。
「はァー、はァー、はァー……」
吐き終わった憑が濡れている口元を拭い、お腹を押さえながらゆっくりと立ち上がります。
「……確かにやるようになった。だがいいのか?」
「……何がです?」
「わかってないな……キサマが攻撃しているのはオレじゃあない。キサマの仲間、陽夏木ミカンなんだ」
「……んん?」
突然何か語り始めました。いや、今の相手はあなたでしょうに。
どうにも降参するとか、そういう感じではなさそうです。逆にどこか皮肉を混じらせて笑ってます。
「キサマがいくらこの体を傷つけようと、肉体は陽夏木ミカンそのもの。中のオレはノーダメージだ!」
「ミカンさんはこれくらいの攻撃で参るほどヤワじゃないですよ」
ミカンさんだったら、たった5発入れられたくらいでそんなことは言い出さないでしょう。ミカンさんを見くびるんじゃない!
そんな意味も込めて言い放つと、俯いたまま憑は低い声で暗く笑いました。
「下手なハッタリだな。まぁいいさ……キサマは知らんかもしれんが、この肉体はいわば精神体。この肉体を破壊すれば、陽夏木ミカンの精神は破壊され廃人同然となる!キサマにオレを倒すことなど───」
落としたはずのボウガンを一瞬で左手に出現させ、私の眉間へ矢の狙いをつける憑。
「───できんのだ!」
発射されたボウガンの矢を、私は右手でつかみ取りました。
「ば、馬鹿な……!?」
「こんなもん、もう効きませんよ!」
私は矢を握り潰します。その光景に目を見開いていた憑は、全身を魔力で覆い、後ろに飛びました。あ、逃げた!
「なら弾幕だ!」
バックステップで素早く後退した憑を私は追います。奴め、接近戦じゃ不利と見て遠距離のみで仕掛けてくる気です!今までよりさらに速くなってます。おのれ、まだ強くなるのか!
一瞬焦る私。しかし後退し始めたということは相手にとっても後がない状況でしょう。浦飯さん相手に下がってしまうことも多い私には分かります。
左手のボウガンから速度重視ではなく、面で制圧するように矢の雨を降らせてきました。でも今の私のスピードなら避けることは十分可能!
しかしこの弾幕自体は避けれますが、殴るための距離まで潜り込むのは非常に困難!しかも潜り込んだとしても奴のスピードからしてタコ殴りにはできないでしょう。
「なら……これです!」
右手の人差し指に妖力を集中させ、霊丸の準備を完了させます。そしてその状態のまま躱し続ける!
「馬鹿め!この弾幕を片手で突破するつもりか!舐めるな!」
私の左肩を貫通した一撃のときと同等、もしくはそれ以上速さの矢が迫ります。奴も本気と言うことでしょう。
しかし今の私はそれ以上に速くなっている!
弾幕と言っても全く隙がないわけではありません。しかもミカンさんボディでは私より背が高い。だからより低い体勢を取れば、より多く隙の「道」が見えます。
より低く!より低く!
私はだんだんと低い体勢で、弾幕を縫うように掻い潜ります。
「当たらん……!?」
だが正面から霊丸を撃っても、クリーンヒットするかどうかは分かりません。だから確実に当てるためには、相手の死角に入る!
決心した私は少し余力を残しつつ、矢を掻い潜って奴の正面へ出ました。もう一歩踏み込めば拳が届く、そんな位置です。
「はぁ!」
目の前で光るボウガンの矢。放たれる瞬間、私は最速で一歩を踏み出し、奴の真上へ跳躍しました。
「消え……!?」
私の左肩を貫いた矢のようにスピードの緩急をつけることで、認識を一瞬誤らせる。憑はあたかも、私が目の前で消えたように見えたみたいです。
潜り込んで霊丸を撃ってくると思い込んでいた憑の狙いを外し、宙返りすることで隙だらけの背中を見ることが出来ました。
私は頭が真下、足が真上にあるひっくり返った状態で、がら空きの背中に向かって右手の人差し指を向けます。
「霊丸!」
「しまっ……!?」
憑が振り返った瞬間、霊丸は奴の全身へ直撃しました。防御が間に合わなかった憑はまともに霊丸を受け遥か後方へ吹き飛んで行きます。
左手一本で着地した私は、そのまま吹き飛んで見えなくなっていく霊丸と憑を見続けました。
霊丸の光が見えなくなっても、私はいつ攻撃が来てもいいように構えます。しかし待っても攻撃が来ることはありませんでした。
「倒したんでしょうかね……?」
また立ち上がってこられたらパワー的にはいけますが、精神的には結構きついです。ぶっ飛ばしても立ち上がってくる相手ってかなりストレスです。
いつでも狙撃が来てもいいように全身を強化しつつ、霊丸が飛んでいった方向へ歩き出します。
「結構吹っ飛びましたね」
しばらく歩くと、ようやく何かが倒れているのが見当たりました。憑が仰向けで倒れていたのです。その姿はひどくボロボロで、魔法少女の衣装がほとんど役に立ってないほどでした。なまじミカンさんの体だから痛々しくもあり、なんかエロイです、はい。
「い、いけません!浦飯さんの変態的な感想が浮かんでしまいました……!」
あの人たまにセクハラかますから、なんか感染しちゃった感じです。
無理やり変な考えを脳内から蹴飛ばして、様子を見ます。すると呼吸はしているようですが、ピクリともしません。
どうやら死んではいないようですが戦闘不能まで追い込んだようです。しかし問題はここからです。
「……どうやってミカンさんの中にいる憑を倒せばいいんでしょうか?」
今の憑はミカンさんの体に寄生している状態です。私はボコボコにすればポンッと外に出てくるものだとばっかり思ってましたが、当てが外れました。
「どうやって中にいるものを消滅させればいいんでしょうか……または中から外に追い出す方法?……あー!そんなの教わってないですよー!」
そう。今まで浦飯さんに教わった霊光波動拳は初歩的なことまで。まさか体の内部への攻撃方法など教わってないのです。
何かないか記憶をたどります。
「(そういえば、霊光波動拳の修の行の奥義がそんな感じのやつでしたが……話を聞いて少し見せてもらっただけですし……)」
霊光波動拳の修の行の奥義【光浄裁】とは、かつて浦飯さんたちが戦ったイチガキチームの選手たちが悪い博士に変な装置で操られたのを解放するために使われたと聞いてます。
具体的に言うと、自分自身の罪の裁きを心に問い肉体に科す荒技だそうです。心が汚れていれば肉体は滅び、逆に澄んでいれば肉体の悪い部分を浄化してくれると。
んで何日か前、浦飯さんが少し見せてくれましたが、とてもじゃないですが今の私には無理です。あんな長い呪文言った後、コントロールして相手の悪い部分だけ破壊するなんて器用な真似は無理です!
まさか見様見真似でぶっつけ本番でやってみる、なんてことはできません。もし失敗してミカンさんの体が破裂した、なんてことになったら取り返しがつきません。
解決方法が思い浮かばず、ウンウン唸っていると、足音が聞こえたので振り返ります。すると倒れていたはずのウガルルがこちらに近づいてました。
「オ、オマエ……アイツ倒したのカ?」
どうやら最初の時みたいにこちらを襲うつもりはなく、様子を見に来たようです。私は右手の親指を立てました
「はい!ボコボコにしてやりましたよ!」
「アイツ倒すなんテ、オマエすごイ。オレ、ミカンをアイツから守れなかっタ」
その表情は悲し気で、後悔の念が込められてました。上手く慰められればいいのですが、そういうのは得意ではありません。だから私は思ったままのことを言いました。
「でもウガルルさんが魔力になってアイツを抑えていたから、ミカンさんは乗っ取られないですんだんですよ?そうじゃなかったらアイツがミカンさんを乗っ取ってろくでもないことをしてたに違いないです」
「……オレ、ミカン守るための使い魔。ミカンをアイツから防ぐことが出来なかった」
憑の話ではウガルル……いやウガルルさんはずっと憑と魔力だけの存在になって憑を抑えていた。でもミカンさんが呪いで悲しい目にあってきたことを何となくわかっているんでしょうか。
ウガルルさんが憑に数歩近づくと、ほんの僅か、憑の頭がブレたような気がしました。
それと同時に感じた悪寒。私は叫びました。
「コイツ、まだ!?」
え、とウガルルさんが声を上げこちらを向こうとした瞬間。憑の口から銀色の物体が飛び出しました。
ミカンさんの口から私の口へ向け、体をまるで弧を描くようにスライムのような伸びを見せた銀色の物体。それを意味するところは、乗り移る体を変えるということ!
「(ウガルルさんじゃなくて、私狙い!?)」
近づいたウガルルさんにまた憑りつくものだと思っていた憑の行動に、私は一瞬動揺してしましました。
「キサマの体はもらったー!」
恐らくですがウガルルさんに乗り換えても、ミカンさんの体よりパワーは落ちるでしょう。それでは私には対抗できないであろうから、こちらを乗っ取ればいいと考えたのでしょう。最後の力を振り絞っているのか、今までで一番速いスピードでした。
すでに私の口の数㎝手前まで来ており、私が手で銀色の物体の先端を掴むには遅いタイミングでした。ウガルルさんは対応できておらず、呆然としてました。
「(間に合えー!?)」
せめて完全に入らせないよう、途中でもいいから掴もうと両手を伸ばしました。だがそれ見てを憑は高らかに笑います。
「オレの勝ちだー!」
だが次の瞬間、銀色の物体の動きが止まりました。
「な、何だとォ……!?」
あのタイミングで間に合うはずはない。私もそう思ってましたし、憑はより強く思っていたでしょう。声が震えていました。
そして憑を止めた人物は私でもウガルルさんでもありません。銀色の物体を魔力で強化した手でつかんでいる人物は、ただ一人。
「ミカンさん!?」
───そう、銀色の物体……憑が抜け出た肉体、つまりミカンさんが怒りの表情で銀色の物体を素手で掴んで、私に入るのを防いでました。
「人の体を好き勝手にした挙句に、口から口に移動するなんてサイテーねアンタ……!」
「ミカンさん!」
「ミカン!」
「な、何故だ!何故この空間で宿主が起きているのだ!?」
そうです、今まで全く起きなかったミカンさんがこんなナイスタイミングで起きているなんて、都合良すぎです!
ニヤリと笑ったミカンさん。今までで一番のドヤ顔でした。
「どうやら今の私は外の桃か誰かが中途半端に起こしてくれたおかげで、意識が覚醒しているみたいね。だからあんたが外に出た瞬間に体の自由が戻ったわ!」
そういうとミカンさんは今まで以上に銀色の物体を持っている両手に魔力を集中させます。まるで握りつぶさんとしているかのようです。
「体の自由は効かなかったけど、今までの話は途中からだけど少し聞いていたわ。全部あんたのせいだってね……!このクソ野郎!」
「は、離せ!離せ宿主よ!」
「気安く呼ぶんじゃないわよ!誰が離すもんですか!シャミ子ォ!」
「は、はい!」
「霊丸の準備よ!うおりゃああぁぁー!!」
銀色の物体をミカンさんは持ったまま自身が回転し振り回し始めました。こ、これはジャイアントスイング!
およそミカンさんらしくない掛け声に、凄まじい気合いと怒りがこもってました。この10年、苦しめられた怒りでしょう、声と放出される魔力で辺りが震えてました。
私はミカンさんの言う通り、3発目の霊丸を右手の人差し指に込めます。今の奴は憑りついてない本体!仕留めるにはここしかない!
「飛んでいけー!」
「う、うわぁー!?」
ミカンさんの気合いとともに斜め上に投げ飛ばされる憑。それに対して、私は霊丸の照準を合わせます。それを見ている憑は叫びます。
「や、やめろー!?」
「これで最後です!霊がーん!」
全力で撃った霊丸は真っ直ぐ吹っ飛んでいる憑に向かっていきます。空中ではさすがに身動きが取れないのか、叫ぶだけでした。
「ち、ちくしょおォォォ………!」
何も憑りついてない憑は何も抵抗できず、まともに霊丸を受け、その場で塵も残さず消滅しました。この世に残ったのは、何もありませんでした。
「アイツの魔力、消えタ……!」
ウガルルさんの言う通り、辺りには奴の魔力は感じられません。最初みたいに、魔力だけで存在してもいないようです。
「確かにアイツの魔力がここから消えたわ。つまり……」
「ついに勝ちましたー!」
全員で勝鬨を上げました。今回かなりヤバかったですけど、呪霊錠とミカンさん様様です。もしどっちが欠けてもやられているところでした。
あ、安心したらどっと疲れと痛みが……うおぉぉ、肩が痛いぃ……!
「シャ、シャミ子!あなた大丈……あうあぅ……私も全身が痛い~!」
戦いが終わったために気が抜けて、痛みが蘇ってきました。痛すぎて左肩を抑えつつ顔を上に向けて歯を食いしばる私の様子を見て、ミカンさんはこちらに駆け寄ろうとした瞬間、ミカンさんも叫びました。
あ、そっか……ミカンさんの体は私がボコボコにしちゃったんだっけ……。
「だ、大丈夫ですかミカンさん……」
「し、死ぬほど痛いわ……!」
お互い痛くて地面に転がり始めました。ああ、戦いで火照った体にはこの地面はヒンヤリして気持ちいいです。
「皆、かなりヤバいナ……」
なんとも締まらない終わりでしたが、何とか勝ちましたよー!
頑張ったなシャミ子!辛くも憑を撃破できて偉いぞ!あとはウガルルをどうにかするだけだ!
つづく
正直、呪霊錠の解放はここでやるか迷いましたが、5巻の内容考えるとここでやらないとかなり戦闘が先になりそうなので一旦やりました。でもシャミ子の修行はもうちっとだけ続くんじゃ。
憑が最後にやった戦法はいわゆるグミ撃ち。そう、ベジータがよくやるアレですね。
シャミ子が左肩貫通されてますが、幽助って朱雀戦も仙水戦も普通に貫通しているのに動きまくってますよね。桑原も戸愚呂兄に貫通されてるのにその後立って観戦してるし。
主人公と周りのキャラって異常な防御能力と回復能力がデフォなんでしょうか?