まちカド☆白書   作:伝説の超浪人

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ほとんど原作と展開的には変更がない話。でも戦闘後の一段落したときのキャラの掛け合いって好きだから書きたかったんです……!


30話「改めてウガルルさん召喚です!」

なんとか憑を撃破しました!一件落着!……と言いたいところですが、今度は違う問題が発生しました。

 

「本当に、ミカンが助かって良かっタ」

 

憑を倒したのはいいのですが、痛みで床にゴロゴロしていた私たちを見下ろしていたウガルルさんが笑いかけてきました。

 

それだけなら問題ないのですが、何とウガルルさんの体が溶け始めているではありませんか。何故に!?

 

「えぇ!?ウガルルさんってば何か凄い勢いで崩れてないですか!?」

 

「どういうことよウガルル!?……大声出すと体中が痛い~!」

 

崩れるウガルルさんに問いかける私たち。私がしこたま殴ったのと霊丸のダメージでミカンさんは全身痛そうに転がりまくってます。仕方なかったとは言え本当にごめんなさい。

 

ウガルルさんは自身が溶けているにも関わらず、どこかぼーっとした表情を浮かべてました。

 

「オレ、使い魔。でもアイツを止められなかっタ。アイツが言ってたみたいにミカンにたくさん迷惑かけタ。だからもう消えル」

 

「私もどこか遠くにいる感覚で聞いていたわ。でも、私を守ろうとしてやってくれたんなら……!」

 

憑のせいで呪いの魔力が発動していたことを、気絶していたと思われたウガルルさんも聞いており、体を支配されていたミカンさんも何となく知っていたようです。

 

でも!憑から守ろうとしていたウガルルさんが消滅する必要はないと思います!

 

だから私はゆっくり立ち上がりました。

 

「消えるなんてダメです!そんな結末は良くない!」

 

「……そうよ!あんたがあの野郎から守ってくれたんでしょ!?

確かに呪いは大変だったし辛かったけど、もう呪いが出なくなるなら消滅する必要はないわ!これからやり直せばいいじゃない!」

 

「……オレ、仕事できなかっタ。でもやり直スのか?」

 

下を向いているウガルルさんの肩にミカンさんはそっと手を載せました。その手つきはまるで小さな子を諭すような、大人な仕草でした。

 

「この街の人たちは受け入れてくれるわ。だからもう一度頑張りましょう?」

 

ミカンさんはウガルルさんに優しく微笑みます。な、何でしょう……その笑顔は同い年とは思えないほどの包容力を激しく感じます。これは一体……!

 

「……分かった。オレ、ミカンに従ウ」

 

「良い子ね、ウガルル」

 

ウガルルさんは少し考え、そしてゆっくり頷きました。

 

そのウガルルさんの優しく頭を撫でるミカンさん。その光景はミカンさんから底知れない母性らしきものをビンビン感じます。それが功を奏したのか、ウガルルさんの体が崩れるペースもだいぶ遅くなりました。どうやら説得に成功したようです。

 

「……でもこの体はいずれ溶けル。どうすればいい?」

 

「「……あ!?」」

 

しかし崩れるペースは落ちても、止まってはないのです。なので止める方法が必要となります。

 

でも私には全く使い魔に関しての知識はありませんので、この状況を打破する方法なんて知るわけがありません。こういう時は魔法少女として長年活動しているミカンさんに頼りましょう。

 

ちらりと横を見るとミカンさんの目が滅茶滅茶泳いでました。そういえば今びっくりしたような声を上げてましたし、ミカンさんも知らないようです。え、これ詰んでません?

 

「ミカンさんはご存知では……」

 

「ごめんなさい!全く知らないわ!」

 

「力強い否定です!」

 

こちらが言い終わる前に断言されてしまいました。でも知らないなら仕方ありません。外の皆に助けを求めましょう。

 

「とりあえず脱出しましょう。きっと誰かが知っているわ!」

 

「そ、そうですね!急ぎましょう!」

 

そういう訳で急いで現実世界へ起きることにしました。急がないとウガルルさんが消滅しますからね。

 

 

☆☆☆

 

 

夢の世界から2人同時に目が覚めて、上半身を起こしました。

 

「シャミ子、ミカン!無事に戻ってきたね」

 

「よぉ、2人ともお疲れさん」

 

声をかけてくれたのは、寝ている間ずっと横にいたのであろう桃と浦飯さんでした。何かこの2人を見ると心強いですね。

 

「あ、ただいま戻りました!……現実でも肩痛いー!」

 

「私は全身よ……!」

 

せっかく起き上がったのに2人して痛みに悶えました。夢の中の怪我でしたが、現実の肉体にもフィードバックするようです。さすがに肩に穴は開いてませんから、それは助かりますがしつこいかもしれないけど超痛い……!

 

「かなりヤバかったみたいだね2人とも……」

 

「呪霊錠も外れてるみたいだし、かなり強ェ相手だったみてーだな。早速でワリーけど、何があったか教えてくれや」

 

流石に呪霊錠が外れていることを浦飯さんは一瞬で見抜いてきました。やはり観察眼が凄いですね。

 

「はい、実は……」

 

それから主に私が今までの経緯を説明し、ミカンさんが補足してくれました。憑の話になると2人ともしかめっ面になってましたが、倒した場面の話をすると嬉しそうにしてくれました。

 

「夢の中なんてオメーしか行けねーからな。一人で大変だっただろーけど、よくやったなーシャミ子!」

 

「マジで死ぬかと思いました!」

 

いやー、普段浦飯さんが褒めることなんてないから、何だか照れくさいですね。

 

「へへへ、オレの言った通り呪霊錠つけてよかったべー?そうじゃなきゃオメーらヤバかったろ。ナハハハ」

 

「いやー本当につけててよかったです。でも相手がミカンさんの遠距離攻撃使ってくるから呪霊錠を外すタイミングがほとんどなくてヤバかったです!超頑張りました!」

 

「アイツ、私の能力まで使ってたのね……あの盗人魔族!」

 

「まぁでも勝てたからよかったじゃねーか」

 

本当に呪霊錠つけてなかったら死んでましたからね。何かギリギリの戦いが多い気がするけど、生き残れて本当に嬉しい……!何度も死にそうになって背筋がぞくぞくしましたよ。

 

ミカンさんは勝手に能力を使われたことに怒り、浦飯さんは満足そうに笑ってました。

 

「本当に無事でよかったよ……夢の中に怪我が現実でも痛んでいるのは不思議だけど」

 

ふと桃がそんな疑問を口にしました。確かに夢の中のダメージがなんでそのまま現実に反映されるんでしょうか?

 

もし反映されるんだったら夢で美味しいもの食べたら現実でもお腹いっぱいになるべきではないのでしょうか……!

 

「詳しいことは分かんねーが、肉体・霊体・魂の分類があってな。霊体や魂の状態で消滅すると肉体が残っていても死ぬんだとよ。

だから今回夢の中に行ったのが霊体で、その霊体の状態で魔力とか特殊な攻撃でダメージを負ったから肉体で痛みが再現されたってとこじゃねーか?多分だけどよ」

 

「うーん、難しい話ですね」

 

ついてっきり夢の中だからダメージは現実世界に関係ないと思ってましたが、どうやらそんなことはないようです。

 

するとミカンさんが咳ばらいをしました。ああしまった、今は戦いの感想よりやることがありました。

 

「ごめん、色々言いたいことはあると思うけど、時間がないからウガルルを助けるためにどうすればいいか教えてほしいの。2人とも何かわかる?」

 

「……元々不完全な儀式で召喚したのが原因だから、正しい手順で召喚すれば、この世に安定して存在できるようになるはず。そのためには必要なものと手順をリストアップする必要がある」

 

「うーん、オレはそういうの全然分かんねーからなぁ……よし、小倉ァ!オメーは何か知ってっか?」

 

「おまかせあれー!」

 

全くそう言った知識がないと言った浦飯さんは突然天井に向かって叫びました。すると突然天井の一部が開き梯子が下りてきて、小倉さんが登場したではありませんか!

 

「えぇ!?なんで小倉さんが天井から出てくるんですか!?」

 

いやいや、何で人の部屋の天井にいるんですか。ミカンさんなんか驚きすぎて震えてますよ!

 

そんな驚いている様子を余所に、小倉さんは下ろした梯子からするすると下に降りてきました。

 

「いやーここは研究のしがいがあるから、ちゃんと許可もらって住んでるんだー。シャミ子ちゃんママも知ってるよ」

 

「お母さんてば一言も言ってない……!」

 

何と言うことでしょう。いつの間にか同級生が屋根裏暮らしをしていたとは。しかも今まで全く気付かないなんて。

 

まぁ最近確かに天井付近がごそごそしているのは気になってましたが、ばんだ荘は古いですからネズミとばかり思ってましたよ。

 

ちなみに皆に聞いたところ、ミカンさんは全く知らず、桃は何となく知っていたけどスルーしていたようで、浦飯さんは気配で分かっていたそうな。ちょっとは教えてくださいよ!

 

色々ツッコミたい部分はありますが、マジックペン(油性)を取り出した小倉さんは壁に正しい召喚の手順と必要な物を書き込んでいきました。

 

その書き込みの速度は速く、あっという間に壁が文字で覆われるほどでした。たまにわけのわからないことも書かれてます。グシオンって何なのでしょうか。

 

「ここ借家なのに……!」

 

別の意味でミカンさんが震え上がってました。そう!賃貸で壁に直接書き込むという所業!しかも油性!

 

別の意味で心配事が増えましたが、私とミカンさん以外誰も気にしてませんでした。スルー力高い!

 

小倉さん曰く必要なものは

・質の良い依り代 ・正確な魔法陣 ・魔力を含んだ上手い飯(お供え)

なんだそうです。やばい、こう書かれても材料がさっぱり分かんないです。

 

「浦飯さん、どーゆー材料が必要になるか分かります?」

 

「オレもさっぱり分かんねー」

 

「2人とも……」

 

浦飯さんも苦い表情を浮かべてました。

 

桃は少し困り顔でしたが、こういう難しい話の時って同じく分からない人が居ると何故か安心するんですよ!

 

そんな私たちの言葉を聞いて、小倉さんは1つずつ解説してくれました。

 

「簡単に説明すると、質の良い依り代を作るには『上質な霊脈の土』と『幻獣の尻尾の毛』が必要なの。

お供えの料理は『質の良い肉』を使った『上質な魔力を含んだ料理』が必要なんだ。でも全部揃えるには時間かかるし、今消滅寸前の使い魔を召喚するには時間足りないねー」

 

なるほど。確かに普通に考えると、中々揃いにくい物ばかりです。でも私には土以外はある場所が分かりました。他の皆も何か思い至ったようです。

 

「『上質な霊脈の土』以外はすぐ揃えられるな。魔力料理はリコのヤローに作ってもらって、尻尾の毛は喫茶店あすらのマスターの毛をぶんどればいいだろ」

 

その言葉に全員頷きました。何気にマスターの尻尾は抜かれることが確定してますが、誰も反対意見は出ませんでした。まぁ尻尾の毛ならすぐ生え変わるでしょう。

 

「そうですね。杏里の家は精肉店だし、肉もすぐに揃う……『上質な霊脈の土』はこの前私が滝に打たれたところの土がいいでしょう。あそこなら変身していけばすぐに戻って帰れます。早速行ってくる」

 

「お願いするわ桃」

 

コクリと頷いた桃は一瞬で変身し、ドアから出ていきました。うーん素早い。

 

今素早く動けるのは桃だけです。私とミカンさんは満身創痍です。小倉さんは身体能力は普通だと思うので除外して、浦飯さんは文字通り手も足も出ない状態です。なので、この場では一番桃が適任でしょう。

 

「凄いよシャミ子ちゃんたち!普通なら集めるのに一苦労するのに、こんなに早く揃いそうになるなんて!」

 

小倉さんがやたら興奮した様子で私の数㎝目の前で叫んでました。いや、小倉さんいなかったら物が分からなかったし、大体は小倉さんのおかげです。

 

「いや、小倉さんが教えてくれなかったら大変なことになってましたよ」

 

「小倉、本当にありがとう。私とウガルルのために……」

 

「ふふ、気にしなくていいよー。こっちもイイもの見れそうだし!それじゃ、急いで取り掛かろー!」

 

小倉さんの号令で痛む体を這いずって各々動き出しました。しかし何か忘れているような……。そう、大事なことを見落としているような感覚です。

 

まず質のいい肉を手に入れるため、ミカンさんが痛みでプルプルしている手で杏里ちゃんに電話をかけてました。

 

杏里ちゃんに現状を説明すると色々電話越しでも聞こえるほどツッコミまくってましたが、肉に関しては快く届けてくれるそうです。さすが杏里ちゃん、話が早いです。

 

電話を切ったミカンさんが、そういえば、とポツリと呟きました。

 

「喫茶店あすらって、ここしばらく休業してなかったかしら?」

 

「あ、確かに。何ででしょうか」

 

商店街からの買い物帰りに喫茶店の前を通ると、最近休業していたので妙だなーとは思ってました。風邪でも引いているんでしょうか。

 

そこで浦飯さんが何かを思い出したように声を上げました。やだ、すっごく嫌な予感……!

 

「……あー!そういえばこの前リコを半殺しにして入院させてたんだった!アイツ料理作れるようになったんかなー?」

 

「「「え!?」」」

 

何と言うことでしょう。ここにきてやらかした男が発見されました。まさか料理人がいない事態になろうとはー!これか!さっきまでの違和感の正体は!

 

しかも当の本人は「悪ィ悪ィ」なんて言ってますがあんまり反省してませんよ!

 

「何やってんですか浦飯さーん!」

 

「仕方ねーだろ!前から戦う約束してたしよー、動物園の件で桃がリコに切れてたから良い機会だっただけでー!こんなことになるなんて思わねーだろーが!」

 

「ぐぬぬ、確かに言われればそりゃそうですけど!」

 

確かに改めてウガルルさんを召喚するなんて事態は想定してなかったわけですし、こんなに必要な物がいるとは思ってなかったですからしょうがないと言えばしょうがないです。

 

でもすごくタイミングが悪いことには変わりないですよ!

 

「でもどーするの?料理人いなくちゃ完成しないわよ?」

 

「さすがにこれは想定外だよー」

 

「なーに、オレにまかせろや。テメーのケツはテメーで拭うぜ」

 

「ここ女子しかいないんですけど……」

 

浦飯さんは力強く言い張ると、ミカンさんは少し頬を赤く染めました。

 

なんという例えでしょうか。もう少し綺麗な例えをしてほしいものです。

 

そこで浦飯さんが欲しがったのは携帯でした。どうやら喫茶店あすらにかけてほしいようです。

 

私は携帯を持ってないので、ミカンさんが喫茶店あすらに電話を繋ぎ、スピーカーにして浦飯さんの目の前に携帯を置きました。出たのはマスターのようです。

 

『はい、こちら喫茶あすらです』

 

「おう、浦飯だ。なぁマスター、今大丈夫か?」

 

『浦飯君じゃないか。どうしたんだい?』

 

「実はな、ミカンの中の使い魔を復活させたくてよー。マスターとリコの力がいるんだわ。今すぐばんだ荘のミカンの部屋に2人で来てくれや」

 

『あー……すまないがリコ君は今日怪我が完治したばかりでね。まだあんまり動かないほうがいいと思うのだが、そちらが来ることはできないかい?』

 

「あ?リコがあんまり動けない?アイツがそんなヤワなタマかっつーの。

こっちもミカンとシャミ子が怪我して動けねーんだ。リコに言っとけ!今来ねーと今度戦ってやんねーからってよ!んじゃな!今すぐ来いよ!」

 

『え、ちょ』

 

そこで電話を小倉さんが切りました。そして浦飯さんはとても満足そうな笑みを浮かべてました。どんな電話してんですか!

 

「よし、これでなんとかなんべ!」

 

「脅迫じゃないですかー!小倉さんもなんであのタイミングで切るんですか!」

 

「いやー、話が長くなりそうだったから、つい」

 

「こんなお願いの仕方は初めて見たわ……!」

 

あまりにひどすぎる……!一方的に用件を押し付け電話を切る所業、まるでガキ大将の行動そのものです。本当にこれでいいのでしょうか……!

 

「おいおい、今大事なのはウガルル召喚だろ?なら皆来てもらったほうが話は早いだろ?」

 

「確かにそっちのほうが早いわね……」

 

確かに今動くのが非常に辛い私とミカンさんでは喫茶店まで行くのはほぼ無理ですし、小倉さん一人に行かせるのもあんまり良くないでしょう。そして私の体が傷ついているので浦飯さんに切り替わるのも難しい状態です。

 

なので実際のところ喫茶店のお二人にはこちらにきてもらう必要性があるということです。確かによく考えると、これが正解の様な気がします。

 

それから待っていると、杏里ちゃんがまずやってきました。そしてその数分後にリコさんとマスターがやってきました。

 

「やほー。肉いっちょお待ち!」

 

「やぁ皆さん、こんばんわ」

 

「何か幽助はんに脅されたんでやってきましたわ~」

 

「皆さん、夜分遅くにありがとうございます!」

 

「おー、結構早かったな」

 

あんな電話をかけた本人はあっけらかんとしてましたが、あんな電話で本当に来てくれるとは、何ていい人……魔族なんでしょうか。ちょっぴり感動していると、早速事情を皆さんに説明しました。

 

「つまりウチの魔力のこもった美味しいお肉料理と、マスターのケツ毛がぎょうさん必要いうわけやな」

 

「え!?ボクの尻毛が!?」

 

「そういうことだ。リコ、オメーの体はもう問題ねーのか?」

 

「いやー、怪我は完治しましたけどフルパワーまではもうちょいや。でもマスターのケツ毛をコンプリートする程度なら朝飯前や」

 

「リコ君、もっときれいな言葉を使いたまえ!」

 

「ええやん、抜かれることは変わらへんし~」

 

事情を説明すると、綺麗な笑顔を浮かべたリコさんが指に挟んだ木の葉に魔力を通してました。木の葉を覆っている魔力がまるで刃の様に鋭くなっており、リコさんの目線はマスターの尻毛に向けてられました。

 

「ま、まさかそれで尻毛を狩ろうというのではないだろうね!……って木の葉が体にまとわりついて動けない!」

 

いつの間にか木の葉がマスターの体に纏わりついて、身動きを封じてました。うーん早業です。しかもご丁寧にお尻付近は木の葉を空けてます。

 

やっぱりリコさんは能力の発動が早いですね。木の葉を操るというよりは、接着剤の様に物をくっつけるような能力なのでしょうか?

 

「バクの束縛プレイなんて初めて見たよ」

 

「杏里ちゃん言うたか?これはウチとマスターとの愛の絆や」

 

「おおー、アダルトチック」

 

杏里ちゃんとリコさんのボケは全く笑えず、むしろじりじりとマスターのお尻に近づくリコさんに恐怖を感じました。私でそれですから、マスター本人はもっとでしょう。ぶっちゃけマスターは半べそかいてました。

 

すみませんマスター、その毛は必要なので止められません。横を見るとミカンさんも首を横に振ってました。

 

「断じて愛の絆じゃないからね!?あ、やめて!その光っている木の葉をお尻に近づけないで!いやァー!?」

 

大量に毛が狩られる羽目になったマスターは寒くなったお尻に手を当てながらシクシク泣いてました。そしてケツ毛を狩り尽くしたリコさんは頬に手を当てて凄い蕩ける様な笑顔を浮かべてました。

 

割と危ない顔をしてましたが、必要なケツ毛は確保できました。

 

お尻のことは終わったので一旦置いておいて、早速杏里ちゃんが持ってきてくれたお肉をリコさんに料理してもらうことになりました。

 

私も料理は多少しますが、さすがに本職は手際が違います。てか早くて普通の人が見たら残像も捉えるのも難しい速度です。

 

そして料理が完成し、光り輝く肉が私たちの目の前に置かれます。余りにも光っており、眩しいほどです。

 

「これがウチの究極のから揚げや!普通の人間が食べたら昏倒するほどの魔力てんこ盛り!」

 

「めっちゃ光ってるー!」

 

「これ、逆に大丈夫なんでしょうか……?」

 

「魔力が籠っているのは分かるが、美味いのかそれ……?」

 

「何言うてますの幽助はん、コレはウチの自信作やから味は保証しますよって」

 

今までに見たことがないほどの光を放つから揚げが完成しました。普通の人が食べて昏倒するって、それもう毒みたいなものな気がします。

 

「いいねいいね!これで『上質な魔力を含んだ料理』と『幻獣の尻尾の毛』は揃ったね!あとは『上質な霊脈の土』と魔法陣だけだよ!」

 

しかし輝くから揚げを見て、いつになく小倉さんが興奮しまくってました。どうやらこれで問題ないようです。

 

そこへまた来客が来ました。何と体育祭メンバーの人たちです。

 

「やっほー、こんばんわ!」

 

「人手が必要なんだって?手伝うよ!」

 

「皆……!ありがとう!」

 

どうやら事情を聴いた杏里ちゃんが体育祭メンバーに連絡してくれたようで、皆夜遅いのに全員駆けつけてくれたのです。なんて良い人たちなんでしょうか!

 

「魔法陣書くなら、人手がいると思ってね」

 

ウインクした杏里ちゃんに私はしびれました。この根回しの良さ、カッコイイ……!

 

体育祭メンバーは小倉さんの指揮の元、魔法陣をばんだ荘の敷地に書くのに協力してもらいました。

 

小倉さんは魔法陣の正確な書き方も知っているようで、スムーズに作業が進みました。しかし疑問なのが、小倉さんはああいった知識をどうやって手に入れてるのでしょうか。

 

千代田桜さんの日記を桃から借りている、と小倉さんは言ってましたが、それだけでこれほどの作業の指揮を取れるものなのでしょうか?まるで学校の先生みたいに何度も教えてきたかのうに指示が正確なのです。

 

私が小倉さんを見ていると、リコさんが私の顔を覗いてきました。

 

「何やらあのメガネっ娘のことを疑問に思うてる……そんな表情や」

 

ずばりと私が思っていることを言い当てるリコさん。思わずドキッとしてしまい、ひゅぅ、とか変な声を出してしまい笑われました。リコさん曰く、顔に出過ぎだと。

 

「あー、別に疑っているとかではなくて……」

 

「確かに普通とは違う子や。恐らく真っ当な人間やない」

 

「でも、魔力も妖力も小倉さんからは感じませんよ?」

 

そう、今まで凄いなぁと思っても、小倉さんからは特別な力は感じなかった。だから単にすごく頭のいい人だとずっと思っていたのです。でもそれは腰につけていた邪神像の浦飯さんからも否定されました。

 

「別に魔力や妖力がなくても特殊な能力を身に着けてる可能性だってあんだろーが。まぁどっちにしろ関係ねー話だぜ」

 

「幽助はんは面白いこと言いますなぁ。あえて放って置くん?」

 

「言っちゃワリーが今までミカンを苦しめてた使い魔なんかのために協力してくれる奴だぜ?オレはアイツは信用できると思ってる」

 

「……それもそうやなぁ。随分なお人好しや、シャミ子はんも含めてな」

 

そう言うとリコさんは二コリと笑ってお尻を手で抑えているマスターの元へ戻っていきました。

 

そうですよね、こんな夜遅くにミカンさんのために協力してくれる皆さんはすごくいい人たちです。疑問に思うのは良くないですね。

 

考えを切り替えるためにふと空を見ると、屋根から屋根へと飛び移ってこちらに向かっている人影が見えました。

 

そしてそのまま人影はばんだ荘の敷地に着地しました。

 

「おかえりなさい、桃!」

 

着地した人物……桃は黒い魔法少女姿で辺りを見回し少し驚いてました。

 

「土取ってきた……あれ、もう魔法陣書いてる。それに体育祭の皆もいる」

 

そんなことを言いながら桃は黒いマントから大量の土を出しました。マントの構造上あり得ない光景に私は指さして驚きました。まさか魔法のアイテムですか!

 

「何でマントから土が!?」

 

「このマントはちょっとだけ色々物が入る。しかも入れたものの重量はマントに影響しない」

 

「めっちゃ便利じゃないですか!」

 

くそぅ、私の腰のマントは何の効果もないのに、何で桃は刀を出せたりマントに収納出来たりと高性能なんでしょうか。ちょっと!同じ変身なのに能力に差がありませんか!?

 

自分の露出魔族な格好との差に悔しがっている私を余所に、桃は持ってきた土を魔法陣の中央に置きました。桃の魔法少女姿に体育祭メンバーはかなり騒いでますが、桃は平然と対応してます。ま、まるで芸能人みたいな対応です。

 

おっと、見てばかりじゃダメです。手伝いに行かなくては。

 

魔法陣の中央に置かれた土を依り代にするため、私含め手の空いてる人でコネコネと人型に形作ります。

 

「できましたー!」

 

「すごい、本当に一晩で完成した」

 

全ての準備が完了し、全員で喜びの声を上げます。あとはこの依り代にウガルルさん本体を入れるだけです。

 

「それじゃ、シャミ子の家の杖を使って魔族の魔力で魔法陣を起動させれば完成です。シャミ子か浦飯さんお願いします」

 

桃は私と浦飯さんを交互に見ました。魔族の召喚なので、やはり魔族の力が必要なようです。

 

「どうすんだシャミ子。もし魔力切れならオレがやるぜ」

 

「大丈夫です。あと霊丸1発分は妖力残ってますから。それに、ここまで来たらやっぱり最後までやりたいです」

 

「オメーならそう言うと思ってたぜ」

 

私の答えを予想していたのか、浦飯さんはニヤリと笑いました。だってここまで戦って、あとは任せました……じゃちょっと無責任ですよね?

 

我が家の杖の先端を依り代に接触させ、私は妖力を流し込みます。

 

「ウガルルさん……かもーん!!」

 

魔法陣が輝き、その光は依り代を覆いました。キラキラと光る依り代の目がうっすらと開き始め、何度か瞬きしました。おお!これは上手く体に入れたみたいです!

 

「んが……オレ、外、体アル……」

 

「成功ですー!」

 

イエー!と皆で喜び叫びました。ウガルルさん本人の魔力のみ感じ取れますし、憑みたいな奴が流れ込んだような魔力も感じません。つまり作戦成功です!

 

「あ、あら……足が……」

 

喜んで安心した瞬間、私の足がガクガクと震え始めました。何か力が入らないですね……。

 

「妖力が切れたせいだな。もう今日はゆっくり休め」

 

「シャミ子、疲れたでしょう。捕まって」

 

音もなく横に立っていた桃は私に肩を貸してくれました。立っているだけで結構辛いので助かりますが、皆の前なので少し恥ずかしいです。

 

「あ、ありがとうございます桃。割と行き当たりばったりで、よく考えたら尻尾が震えてきます……」

 

勢いでミカンさんの中に潜入し、ギリギリで憑を倒して、知識は全くなかったけど皆のおかげでウガルルさんを復活できて、ミカンさんも呪いから解放される。結果だけ見れば文句なしですが、何一つ予想通りにならない出来事の連続でブルリと震えが来ました。

 

「そんなことないよ。今日のこの光景はシャミ子が作り上げたものなんだから、お礼を言う必要はないよ」

 

桃の言う通り目線を向けると、皆が笑顔を浮かべてました。誰一人落ち込んだ様子もない、綺麗な笑顔を(マスターの尻毛は除いて)

 

その憑と戦った時はこんな結果は予想してませんでしたが、最終的に全部上手くいくことが出来ました。

 

「──本当にお疲れ様、シャミ子」

 

桃の綺麗な笑顔を見て、ようやく上手くやれたのだと、実感できました。

 

 

☆☆☆

 

 

翌日。ウガルルさんはミカンさんと一緒に暮らすことになりました。

 

使い魔という存在でなくなったウガルルさんですが、知能的には小学生レベルなのでこのまま街の外に出ても危険と判断され、この街に残ることになりました。また憑みたいなやつに利用されるとも限りませんからね。

 

「よろしくナ、ボス!」

 

「私がボスですか?」

 

「ぶほォ!」

 

玄関を出ると、ウガルルさんは私を待ち構えてました。しかもボス呼ばわりです。浦飯さんがそれを聞いて吹き出してました。

 

「お前、オレより凄い強かった。ミカンも助けたお前はボス!」

 

「ブハハハ!シャミ子がボスって似合わねー!」

 

「ひどいですよ浦飯さん!シャラップ!」

 

ゲラゲラ浦飯さんが笑っていると、ウガルルさんは怒った表情で浦飯さんに目を向けました。あら、ウガルルさんからちょっと魔力が漏れてません?

 

「なんだ?ボスの腰にくっついてるコイツ、偉そう。ボス!オレがこんなやつぶっ飛ばしてやる!」

 

「ああん?面白れェ、売られた喧嘩は買うぜ!シャミ子、オレと代われ!」

 

「2人とも喧嘩しないでくださいよー!」

 

せっかく昨日丸く収まったのにまた揉め事は嫌ですー!

 

頑張れシャミ子!まずはボスとしてウガルルと浦飯を宥めることから始めるんだ!

 

つづく




夜中にアパートの敷地で騒いでいる女子高生に対し、近隣住民の反応はいかに。まぁこの街は緩いのでなぁなぁでしょう。もし現実だったら大変ですね(白目

原作だと悪っぽい魔法少女が登場しましたね。なんか凄いご高齢で食事も考え方も極端な人?みたいです。電子書籍派なのでまだ読めてませんが。

もしかしたら

「次に会うまで人を食うまいと勝手に決めた。会う約束さえしてなかったのにな」

とか言って大切な人の生まれ変わりに会うまで頑張っている雷禅系女子かもしれない。
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