まちカド☆白書   作:伝説の超浪人

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仕事の関係で職場の移動があったので更新が遅れてしまいました。このご時世に移動ってどうなのとは少し思います。
このお話で一部の人間の身体能力がおかしいレベルですがスルーしてください!


32話「クラス対抗!ドッチボールです!」

「高校生になって球技大会がドッチボールかよ~」

 

開口一番、浦飯さんが文句言ってました。

 

そうなんです、今日は浦飯さんの言う通り、クラス対抗のドッチボールなんです!

 

いわゆる球技大会で、クラスごとにトーナメント方式で戦うのです。へへ、楽しみでワクワクしてきました!

 

そんな様子の私に対し、浦飯さんは少しだるそうな表情を見せ、さっきのようなことを言いました。

 

本当にこの人は学校行事にワクワクとかしない人ですね……。

 

「いいじゃないですかドッチボール。私小学生の頃入院ばっかりしててほとんどできませんでしたから、楽しみです!」

 

「シャミ子ってちょいちょい闇が深いよねー」

 

杏里ちゃんがさらりと言ってきます。

 

一族にかけられた呪いのせいで昔は体が弱かったので、学校行事どころか学校へ満足に通学できなかったからしょうがないです。魔族になったし、バリバリ鍛えているおかげで今は元気ハツラツですよ!

 

「私はシャミ子の意見に賛成ね。今日は魔法少女も参加OKって先生も言ってたから気合入るわ~!」

 

ミカンさんは入念にストレッチをしながらそう答えました。

 

ミカンさんや桃も魔法少女になってから、こういった運動を競う行事には出れなかったり得点に入らなかったりしたので実質クラスの一員として参加する機会がほとんどなかったらしいです。

 

ですが今回はミカンさん、そして桃も参加です。だから2人とも入念にストレッチしていて、気合いが入りまくってます。

 

しかししかしです。今回はクラス対抗戦。ミカンさんは私のクラスということで魔族と魔法少女のペア。対する桃は魔法少女1人のクラス。つまり2対1!

 

そう、数的有利なこの状況であれば!桃に勝てるということです!

 

「がんばりましょう皆さん!そして桃に私の強さを見せてやります!ふははははー!」

 

「こいつ、妙に気合いが入っていたのはそのせいだったか」

 

「ミカンもいるからウチのクラスは有利だしね……」

 

右拳を振り上げて宣言すると、訝し気に浦飯さんと杏里ちゃんが見てきます。

 

ガチの戦闘じゃないですし、命の危険はないでしょう。こーゆー和やかな大会はとても心に優しいです。

 

皆が見ている前で私が桃より強いということを証明できるのです!見てろよ桃め!

 

───そんな風に思ってた時期もありました

 

『すごーい!またA組の千代田さんが受け止めたー!』

 

『千代田のボールで5人まとめて吹っ飛んだぞー!』

 

私の眼前には桃の相手チームの選手数名が桃の投げたボールによってギャグマンガのように吹き飛んでいく姿が繰り広げられてました!なぁにこれぇ

 

「一応怪我人が出ないよう手加減してるみたいね……」

 

「あんなに派手に吹っ飛んでるのに!?」

 

確かによく見るとアウトになった選手はすぐ立ち上がってました。もし桃が変身後の魔力ありのフルパワーで投げていたら普通の人だったらスプラッタ映像となるのは間違いないです。

 

今の桃は変身せず、また目に見えるほど魔力を身に纏ってない状態です。

 

あの状態で投げているなら間違いなく手加減してますが、ちょっと目の前の光景が凄くて理解したくありません。

 

「まさかアレは魔力なしの筋力だけでやってるんでしょうか……?」

 

「間違いねェな。とんだゴリラ女だぜ」

 

無駄に器用すぎる……最近闇堕ちで魔力のコントロールが上手くいかない~とか言っていた人と本当に同一人物でしょうか……?

 

私たちの視線に気づいたのか、桃はこちらをチラリと見てきました。

 

むむ、何やら口をパクパクさせてます。何かこっちに伝えたいことでもあるんでしょうか?

 

「『シャミ子はともかく、浦飯さんはあとで覚えてて』だそうよ」

 

「ミカンさん、聞こえたんですか!?」

 

かなり距離が離れているのに、ミカンさんがすぐ伝えてきました。ミカンさんはスナイパーですから、もしや聴覚もいいのかもしれません。

 

そう考えているとミカンさんは首を横に振りました。

 

「唇の動きを読んだだけよ。慣れれば簡単よ」

 

「か、カッコイイですー!」

 

まさかそんな裏の世界に生きるプロみたいな技能持ちとは……!一度は言ってみたいセリフです!

 

そう伝えるとミカンさんは恥ずかしそうに頬を指で掻いてました。

 

「そういやバーサンも似たようなことしてたな」

 

「いやー、日常でさりげなく面白い技能が出るから面白いわー」

 

全くです。普通に学校行事をしているだけなのに桃の投げるボールと言い、凄い技が出るのはやはり魔法少女クオリティと言ったところでしょう。

 

ここは魔族として負けられません!私は鼻息を荒くして気合いを入れました。

 

「でも私だってパワーアップしてます!魔法少女だけに目立たせませんよ!よぉし!必ず桃を倒してやるー!」

 

「よし!行けシャミ子!オレはこの状態じゃ手も足も出ねーから、桃をボコボコにしてやれ!」

 

「この人、シャミ子をぶつけてさっきのことを有耶無耶にするつもりだ……」

 

ちなみに今回のドッチボールのルールは以下の通りです。

 

・基本クラス全員で行い、内野が0人になったら負け。

 

・開始時の外野は3人。外野の人が敵の内野の人をアウトにしても復帰はなし。つまり初期の人も含め外野に言った場合は内野には二度と戻れない。

 

・当たり判定としては『クッション制』。

 

・投げたボールが敵選手AとBに当たり地面に落ちたら両方アウト。

 

・敵Aから味方Cに当たって落ちた場合はCのみアウト。ただしCがキャッチすればAのみアウトになる。

 

簡単に言うと全部避けるか捕れば問題ないということです。

 

ルールも一通り確認し、まずは我が組の1回戦です。お相手は小倉さんのいるC組です。

 

ちなみに浦飯さんは大会中は放送席にいます。一応授業扱いなので、邪神像など貴重品扱いになるので先生方に預けてます。

 

「私やっぱり運動は無理だよ~」

 

『C組小倉アウト!』

 

「ごめーん小倉ァ!」

 

杏里ちゃんが小倉さん目掛けて投げたボールは、小倉さんの足に当たってアウトになってました。杏里ちゃんてば小倉さんを真っ先に狙うとは……。

 

私も魔力なしでやりましたが、問題なくキャッチしたり投げれました。いやー、こうやってみんなと一緒にできるのっていいですね!しかもクラスの皆からちょっと頼りにされているみたいで嬉しいです。

 

「うーん、やっぱり運動じゃ無理だねぇ」

 

あははと軽く笑う小倉さんのC組に勝ちました。小倉さんはあんまりこういう勝負には頓着しないようで、楽しそうに笑ってました。

 

『また千代田さんが3人吹き飛ばしたぞー!』

 

『ダメだ!千代田がとまらねぇー!?』

 

桃が投げた後、空中でムーンサルト的なポーズを決めてました。もうやりたい放題ですね桃ってば。

 

我がクラスは順調に勝ち進み、決勝戦は我がクラスと桃の1-Aになりました。展開が早い!

 

それぞれのクラスが整列すると、私の目の前は桃でした。汗一つかいてない桃はいつもの表情でした。

 

「勝たせてもらいますよ桃!そして私の、私のクラスのパワーを思い知るがいい!」

 

ビシリと人差し指で桃を指さすと、桃は軽く笑いました。

 

「期待してる」

 

「ぬぬぅ……その余裕な表情を驚きに変えてやります!」

 

私が捨て台詞を吐くと、桃は軽く笑って離れていきました。おのれぇ、私の必殺ボールをぶつけてやります!

 

心にそう誓うと、審判にはうちのクラスの担任の先生が居ました。

 

「それじゃ、ゲームスタート!」

 

そして開始される決勝戦。じゃんけんで開始ボールを得た私たちのクラスで、最初にボールを持ったのは杏里ちゃんでした。

 

「よぉし!あいさつ代わりにかましてやる!どりゃぁ!」

 

大きく振りかぶった杏里ちゃんは、助走の勢いもつけてボールを投げます。

 

「きゃあ!」

 

真っ直ぐ飛んだボールは桃から遠く離れた相手選手にぶつけられ、当たったボールは外野へ飛んでいきました。

 

「ナイスボールよ杏里!」

 

「へへ、任せといて!」

 

まず一人アウトです。外野からは狙わず、そのボールをもう一度杏里ちゃんに戻し、また杏里ちゃんが当てました。おお、良い感じのスタートですね。

 

3人ほど当てると、外野行きになった相手選手含め6人が隙間ないようフォーメーションを組んでました。

 

むむむ、何か嫌な予感がしますね。私の嫌な予感を感じていると、桃は膝に手を置いて息を吐きました。

 

「……よし、これでいいね」

 

「んん?ちよもも、今なんて言ったのかな?」

 

「これでそっちを倒す準備ができたってこと」

 

何度かボールを地面に弾ませていた杏里ちゃんは桃の言葉が聞こえたと同時に、弾ませるのをやめて右手でしっかりとボールを掴みました。

 

「面白いね!なら、これをくらえぃ!」

 

策など関係ないとばかりに放った杏里ちゃんのボールは、今日投げた中で一番のスピードでした。

 

ほぼ最後尾に近い位置にいる桃はそのボールに対し、左手を伸ばし───

 

「か、片手で……!」

 

杏里ちゃんのボールは片手で軽々と掴まれました。

 

いくら最後尾で遠かったとはいえ、杏里ちゃんのボールは勢いたっぷりでした。

 

しかしキャッチの瞬間に腕を引くこともしてないことから、完全に指の力だけで捉えているのが分かりました。さすがに魔力なしで握力計を壊す人は半端じゃないですね……!

 

桃は受け止めたボールを握りしめたまま、脱力した体勢を取りました。投げる体勢ではあるのですが、距離がとても遠いです。あれでは当てにいくというより、外野へパスをするような感じの雰囲気です。

 

「シッ!」

 

───しかしそれはただの勘違いでした。

 

軽々と放ったはずのボールは、今までの試合で投げた桃のどのボールより早かったのです。そしてそのボールは杏里ちゃんへ真っ直ぐ向かっていきました。

 

そしてシャミ子がそんなことを思っている最中、杏里も桃の投げたボールに対し様々なことを考えていた。

 

「(強………!速…… 避……)」

 

投げられたボールから伝わる情報。生まれてきてから一度もお目にかかったことがない凄まじいボールの威力とスピードの前に、杏里の思考が通常ではありえないほど高速に回転していた。

 

しかしだからこそ、スポーツを長年続けていた杏里にとって、より絶望的な情報をもたらしていた。

 

「(無理!受け止める 無事で!?出来る!?)」

 

一瞬にも満たない時間で、受け止めた時の結果をシミュレートする杏里。しかし結果は分かり切っていた。

 

「(否  死)」

 

辛うじて指がボールに向かって動き始めた。だが今からでは到底間に合うはずがない。否、間に合ったところで受け止められるわけがない。

 

そう、投げられた瞬間に回避を選択しなかった時点で杏里はアウトであった。

 

───シャミ子が居なければ、であるが

 

「ぬおおおー!シャミ子キャッチー!」

 

私は杏里ちゃんの前にギリギリで体を割り込ませてボールを受け止めました。4月から鍛えた筋肉を総動員してのキャッチです。

 

ボールのあまりの回転数に手の皮がむけそうになりますが、気合いで抑え込みます。

 

そしてようやく回転がなくなって、抑え込むことに成功しました。

 

「捕りましたよー!」

 

『すごーい、千代田さんのボールを止めたー!?』

 

『すげー!』

 

「あ、ありがとうシャミ子……」

 

「へへ、間に合って良かったです」

 

ボールを頭の上に掲げてアピールすると、見ていた皆さんから歓声が飛んできて、杏里ちゃんもお礼を言ってきました。間一髪です!

 

「私もいきます!てりゃー!」

 

あんまり物を投げるという機会はないので、皆と同じ風に投げます。

 

投げたボールは真っ直ぐ桃に向かっていき───

 

「まだまだだね」

 

ナイスキャッチされました。しかも片手。超余裕の表情でした。

 

「何故!?私のナイスボールが!?」

 

「いや、別に速くないし……」

 

「おのれー!」

 

悔しがっている私を余所に、再度ボールをキャッチした桃は1回ボールを地面に弾ませて右手で受け止めました。また先ほどの様な凄まじいボールが来るんでしょうか。

 

「じゃあ外野の皆、いくよ」

 

すると今度は外野へパスしました。さすがに先ほどのボールほどではありませんが、それでも中々のスピードです。

 

受け止めたと思った外野もすぐこちらに投げず、隣の外野へ投げパスを繋げます。そしてそれを繰り返してきました。

 

「これは高速パス!軌道が読みづらい!」

 

「なんでA組はこんなに凄くなっているの!?」

 

そうなんです。桃1人でやっているわけでなく、他の人たちも混じっているのにこれほど高速パスが繋げられるとは……。

 

『千代田さんのワンマンチームとは言わせない!』

 

『そのために私たちは特訓したのだ!』

 

『これがその成果よ!』

 

私たちの疑問に対し、パス回しをしながら外野の人たちが答えてくれました。

 

まさか最初に杏里ちゃんが当てた人は、わざと外野に行った!?

 

今の相手の外野は合計6名。カバーできるよう皆がポジションにつき役割分担しているのです。これは相当な特訓を積んだのでしょう。

 

「(球技大会にここまで挑んでくるとは……!)」

 

A組ヤバいですね!と心の中で思っていると、カーブを描いて後方から杏里ちゃんへボールが迫ります。

 

「杏里ちゃん。後ろです!」

 

「え!?のわぁ!」

 

「あべし!」

 

一歩声をかけるのが遅かったため、杏里ちゃんと他の子も一緒にアウトになってしました。なんというA組の連係プレイ!

 

『ダブルでアウトだー!』

 

相手の外野の選手たちがハイタッチを決めてました。

 

私やミカンさんであれば外野の選手のボールをキャッチすること自体は問題ではありません。

 

しかし初期ではクラスほぼ全員が内野にいる以上、どうしてもコートの大きさと人が壁になって助けにいけない場所が存在してしまうのです。

 

だから相手は私たちより遠くの人間を狙ってきているのでしょう。むむむ、敵ながらいい作戦です。

 

「シャミ子……確かに外野のパスは速いけど、ちよももより大分落ちる。他の皆には頑張って外野のボールを取ってもらうしかないよ」

 

「分かりました。任せてください!」

 

「私もこのままじゃ負けられない……!」

 

そう言い残し、杏里ちゃんは外野へ行きました。仇は必ず取ってみせます!

 

「そうね。このまま桃ばっかり良い格好はさせたくないわ」

 

何度か地面に弾ませながら、ミカンさんが桃を見つめて言い放ちます。ミカンさんも今日は行事に参加できるということで気合い入りまくってますからね。ボールがミチミチと音を立ててます。

 

「なら、今度はこっちが仕掛ける番ね」

 

大きく振りかぶったミカンさんは、地を這うような投げ方をしました。

 

「そーれ!」

 

ちょっと意外でした。ミカンさんは変身後の攻撃スタイルは高速の矢を飛ばす物です。てっきりオーバースローで速さ勝負と思ってました。

 

そしてそれは桃も同じだったようで、一瞬訝し気に見てました。

 

ミカンさんのボールは桃でなく、別の選手に向かってます。スピードも速いと言えば速いですが、桃ほどではなく、普通の人も十分取れるものでした。

 

「OK!任せて!」

 

相手選手がしっかり受け止める準備をしてました。避ける気はないようです。

 

それを見て、ミカンさんは口角を上げて薄く笑いました。むむ、あのボールの回転……何か……!

 

「ダメ!避けて!」

 

「え?」

 

桃が私と同じ何かを感じ取ったのか、受け止めようとした選手に対し声を張り上げます。それに対し、反応が遅れた選手は普通にボールを受け止めようとして……。

 

「ボ、ボールが!暴れる!?」

 

キャッチしたかと思ったボールは手の中で勢いよく暴れてました。まるでそれは高速回転するコマそのもの!

 

「今回はスピードより回転を意識したのよ。ほら」

 

甲高い音を立てて、ボールは選手の腕から飛び去り、まるで生きているかのように他の選手に襲い掛かります。

 

クッション性のアウト方式がアダとなり、数人がミカンさんの一投でアウトになりました。

 

桃は助けに入ろうとしても、人の体が壁となってボールの元へ向かえない状況。数人に当たり弾かれたボールは、我がクラスの外野へ転がっていきました。

 

「凄いですミカンさん!一気に数人アウトですよ!」

 

「ふふーん!もっと褒めていいのよシャミ子!」

 

『ナイスだよミカンちゃん』

 

『イエー!ミカン、イエー!』

 

クラスはまるでマジックの様な攻撃に大盛り上がりです。審判も問題なく続行と言ってくれました。マジで変身さえしなければいいみたいです。

 

「さぁ!どんどん行くわよ!」

 

『イエー!』

 

ミカンさんが主体で攻めると、またしても数人アウトになるA組。しかしそのボールは今度はA組が持ち、反撃となります。

 

「そう簡単には負けない……!」

 

『そうだそうだー!』

 

桃も剛速球で攻めて、数人を吹き飛ばします。そして今度はこちらのボール、といった具合でターン制みたいな勝負になってきました。

 

桃を先に倒したいところですが、逆に相手選手が桃を庇うようにして戦うのです。そしてそれは我がクラスメイトたちも同じように私とミカンさんを庇ってくれました。

 

内野に魔法少女や魔族が残っていれば、偶然が起こらない限りアウトにするのは非常に困難でしょう。だから長く残していたほうが勝つ可能性が高いのです

 

魔法少女か魔族をどれだけ長い間内野に残せるか……それが勝負の分かれ目になることを皆理解していたのです。

 

人数的には一進一退の攻防が続き、ついに残りは私と桃とミカンさんだけになりました。

 

「ふ、2対1です。これで終わりですよ桃!」

 

「ふふ、覚悟しなさい桃!」

 

「うわぁ、うちのクラスの2人の方が悪役っぽい」

 

「「ぬぐっ」」

 

外野からの杏里ちゃんのツッコミに2人して呻いてしまいました。

 

「……よし。残る脅威はミカンだけだね」

 

「ステイ!まだこちらには魔族だっているんだぞー!」

 

「……でもシャミ子のボールは大したことないし……」

 

「ぐぬぬぬぬ!」

 

「ふふふ、甘いわね桃。こっちには秘策があるのよ!」

 

「なんですと?」

 

桃の口撃に反論できない私の横でボールを持っているミカンさんがそんなことを言いました。一体秘策とは何のことでしょうか?

 

「……ふふ。面白い」

 

不敵な笑みを浮かべた桃からは余裕を感じました。

 

この人数になるまで私とミカンさんも桃に1回ずつ投げてますが、まるで通じませんでした。そこから来る余裕でしょう。おのれぃ!

 

しかしその気持ちも分かります。こちらが投げても普通にキャッチされましたので、悔しいですが普通にやったのでは勝ち目がありません。

 

チラリとミカンさんを見ると、何か思いついたような表情でした。

 

「さて、構えなさいシャミ子」

 

「構える?」

 

コクリと頷いたミカンさんはボールを持った両手を少し伸ばし中腰で構えました。私の胸あたりの位置……つまり拳が当たりやすい位置で構えてくれました。

 

「私たちがただ投げるだけじゃ桃は倒せないわ。ならそれを上回る一撃を!」

 

そこでようやくミカンさんが何を狙っているのか気づきました。ボールは投げる必要はない!こっちから放ったボールを桃に当てればいいんです!

 

「そうか!私がボールを殴ればいいんですね!」

 

「その通り!さぁ、全力で殴りなさいシャミ子!」

 

「なるほど、そう来たか……」

 

投げて倒せないのであればボールを殴ってそれ以上の威力を出す!桃もそれを聞いてこの球技大会で一番強く魔力を出し、肉体を強化してました。

 

「はァ!」

 

私も全身の妖力を高めます。霊丸ではボールとミカンさんが一緒に吹き飛んでしまいますから、ボールのみ殴らなくてはいけない。

 

そんなときにピッタリの霊光波動拳の技があります。これを使うのは八つ手のとき以来ですね。

 

「シャミ子の全身の妖力が高まっている……霊丸じゃない!」

 

「呪霊錠しているのに大したパワーだわ……逃げてもいいのよ桃?」

 

「冗談」

 

ミカンさんの言葉に、桃はすぐ否定しました。桃も真っ向勝負を選んだようです。周りの皆さんもかじりつく様に見てくれてます。

 

「はあぁぁ……!」

 

私はミカンさんの前で左手で右手首を掴み、右拳を腰だめに構えます。この技は霊丸より疲労度が高いんですが、今こそ使うとき!

 

「くらえー!霊光弾!」

 

全身で高めた妖力をインパクトの瞬間、拳に集中させる一撃。離れた相手であればショットガンとして使えますが、本来物体に直接拳を当てて威力を発揮する技です。

 

呪霊錠ありで変身なしという今の状況で放てる最高の一撃です!

 

放たれたボールは今まで桃が投げてきたどのボールより遥かに威力が上と自負してます。

 

爆発したかのような音とともに飛んでいくボールに対して桃はどっしりと構え両腕を伸ばしてました。

 

「くあっ……!?」

 

衝撃。ボールを抱え込む捕球ではなく、腕の力で受け止めようとしてました。しかし桃はボールの威力に押されて引きづられるように後退していきます。

 

『いけー!』

 

クラスの皆さんがボールに向かって声援を叫びます。このまま決まってくださいよ~!

 

桃が後退させられた足から舞い上がる土煙で、少し視界が遮られます。しかし徐々に桃の後退が無くなっていき、音も静かになっていきました。

 

「決まったかしら……?」

 

「煙が晴れますね」

 

そして煙が晴れた向こう側にいた桃は、見事にボールをキャッチしたままでした。そして足はラインの一歩手前で止まってました。つまりセーフです。

 

『とめたー!』

 

『さすが千代田さんだー!』

 

「……中々冷や汗ものだったよ」

 

そう言いながら桃は脇にボールを抱え、手をプルプル振ってました。口では冷や汗ものとか言ってますが、偉く余裕そうに見えます。

 

「わ、私の渾身の一撃を止めるとは……」

 

「ヤバいわね……」

 

「なら次はこっちの番だね」

 

「!」

 

ついに桃がフルパワーで来るようです。その証拠に、今まで以上の魔力が桃の体から溢れています。

 

その魔力の流れは滑らかで美しく、洗練されているとまで感じるほどのものです。さすがに変身はしないようですが、それでも今までとは桁違いでしょう。

 

桃はその場で同じクラスの外野の選手に避難勧告にA組の外野は一斉に指示通り動きました。どうやら周りも魔力が見えなくても雰囲気が変わったことを察したようです。

 

もし今回の桃の攻撃を受け止めることが出来たとしても、こちらに桃をアウトにできる一撃がありません。ミカンさんの方を見ても首を横に振ってました。

 

「(どうする私?まともにやったんじゃあ勝ち目はありません。さっきより強い一撃が必要なんですが……)」

 

「いくよ」

 

「(もうちょっと考えをまとめさせてくれてもいいでしょうに!)くぅ!」

 

考える時間さえ与えるつもりはない桃は今まで以上に大きく振りかぶり、凄まじく強い踏み込みで地面を揺らしました。

 

「やばいよミカン、シャミ子!避けてー!」

 

これだけでもわかる力強さ!杏里ちゃんは私に逃げるように叫びますが、今の私は後退と言うネジは外してます!

 

そこで自分の中で外す、と言う言葉が妙に頭に残りました。今の私は受け止めることしか頭にありませんでした。ならその考えを『外す』のはどうでしょうか?

 

「(そうか!受け止めるんじゃなくて!発想を変える!考えを別のことに『外す』んです!)」

 

そこで思いついた一つの方法。私は先ほどと同様、全身の妖力を高め、左手で右手首を掴んで中腰に構えます。

 

「シッ!!」

 

迫りくるボールは、今までとは桁違いの一撃でした。そしてそのボールは真っ直ぐ私の胸辺りに迫ります。位置はドンピシャです!

 

「真っ直ぐ行って!ぶっ飛ばします!」

 

確かに凄まじい一撃です!しかし今までの特訓や実戦でこのレベルのスピード以上の攻撃は何度も目にしてます!

 

変身せずとも目は完璧にボールを捕らえ、体も思う通りついてきてくれました。

 

なので向かってくるボールを受け止めず、私は拳をもって迎え打ちます!

 

「霊光弾ー!」

 

ベストタイミングで繰り出した右拳は、寸分狂いなくボールを捕らえました。腕に走る衝撃はかなりの物。

 

だがそれ以上に私の霊光弾は強いのだー!

 

『う、打ち返したー!?』

 

真っ直ぐ打ち返したボールは、桃のボールの威力も上乗せして桃へ迫ります。これが今出来る最高の反撃です!

 

「うおぉぉー!」

 

投げた体勢からギリギリ戻した桃は、先ほどと違い抱えるようにキャッチしていました。受け止めてもなおボールの勢いは止まらず、先ほど以上に桃の体を後退させました。

 

またしても舞い上がる土煙。土煙が晴れると同じく、ようやく止まった桃の足の位置は───

 

『ライン超えてるー!』

 

「千代田選手アウト!触れた状態での捕球は反則でアウトです!試合終了ー!」

 

審判の先生の宣言により、歓声が沸き上がりました。この瞬間、私たちのクラスが勝利が決定し、優勝したのです!

 

「私たちの勝ちですー!」

 

「やったわーシャミ子ー!」

 

「最高だったよシャミ子ー!」

 

クラスの皆で輪になって盛り上がっていると、桃がこちらに歩いてきました。

 

「……いい勝負だったよ。今度は呪霊錠を外したうえでの変身ありのフルパワーでやりたいね」

 

軽く笑みを浮かべた桃は、右手を差し出してきました。私もそれに応じます。

 

「私もです!次も負けません!」

 

「……今度は勝つ」

 

お互い握手をすると、もう一度歓声が沸きました。

 

「じゃあ優勝したクラスは並んでー!写真撮りますよー!」

 

『ハイ、チーズ!』

 

そして最後にクラス全員で写真を撮りました。

 

☆☆☆

 

「それがこの写真なんだ。お姉、楽しそう」

 

家に帰って妹の良にそれを見せると、いろんな角度から写真を見てました。ふふ、お姉ちゃんのかっこいい成果の写真ですよ!

 

「ええ、最高でした!」

 

テレビの横に飾られた写真は、私の宝物の一つになりそうです。

 

つづく




ハンターハンターのドッチボール戦のパク……オマージュの話。

スポーツに関しては強化系が有利っぽい気がします。具現化系や操作系とかって競技によってはほぼ役に立たなそうなイメージ。
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