まちカド☆白書   作:伝説の超浪人

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中々原作から変えづらい場面。読心の敵は強敵が多いから好き。


36話「異空間で大事なお話です!」

「呪いのせいで普通の生活はまず無理と聞いていたけど……良い一撃だよ。予想より元気だねぇ」

 

口元から垂れる血を手で拭い、それを舐める偽小倉さん。大してダメージは受けてないように見えます。やはり小倉さんだと思って手加減したせいでしょう。

 

「……お父さんと知り合いなんですか?」

 

「まぁね。と言っても桜ちゃん繋がりで、私個人としては深い関係ではなかったけどねぇ」

 

彼女は私のお父さんを知っているような口振りでした。思わず顔を顰めます。本当に知っているのか、はたまた精神攻撃的な揺さぶりでしょうか?

 

そんな私の腰につけていた邪神像から、唾を吐き捨てる様な罵倒が飛び出ました。

 

「ケッ!こいつの親父さんのことで騙せるとか思ってんのかコラァ!いー加減にしねーとその乳もぐぞ!」

 

「こ、この人最悪です!」

 

浦飯さんのひどい罵声は思わず私も胸を隠してしまうほどでした。

 

そしてセクハラをされた人物は右手で眼鏡の中央を触り、殴られてズレていた位置を直します。

 

「……けっこう長生きしてるけど、こういう状況で本気のセクハラをしてくる相手はさすがに初めてだよぉ」

 

でしょうね。私も驚いてます。

 

「……で、あなたの正体は何なんですか?もし言わないのなら」

 

「ぶっ飛ばす、でしょ?」

 

気を取り直して喋りかけると、得意げな顔で私の言いたかったセリフを先に言われてしまい、目の前の人物は軽く笑いました。

 

目の前の人物は魔力を使ったので小倉さんではないことは判明しましたが、それと同時に殴って消滅しないことからこの空間にある偽物でもないということでもあります。

 

私の考えを読んだのか、彼女はそのまましゃべり続けました。

 

「キミたちが小倉と呼んでいる少女は私の最後の一頁。まぁ残りのほんの一部ってところ」

 

「なぬ?」

 

「私は智彗と時間と書物を司る魔族でグシオンの末裔……グシオンって呼んでね?」

 

何もない空間から本を出し、ひとりでにページがめくられていく本を持ちながらグシオンと名乗った人物は微笑みました。

 

その態度が気に入らないのか、浦飯さんが吐き捨てるように続きます。

 

「信用できねーな。まだ小倉の体を乗っ取ったって言われたほうが信じられるぜ」

 

「そうです!あなたの一部が小倉さんなら、小倉さん自身にも魔力が少しあるはずです!第一何でこんな空間にいるんですか!」

 

ビシリとグシオンを指さした私に対し、グシオンは本を持ったまま肩を竦めました。

 

「……話さないとシャミ子ちゃんはともかく、そこの彼に本気で殺されそうだねぇ」

 

こんな空間に誘い込んでおいて、私だけだったら話す気がないとは何事でしょうか。思わずムッとした私ですが、それ以上に怒りそうなのは浦飯さんです。

 

確かに詳しく話さずに事を進めようとしたら、浦飯さんからフルボッコにされていたでしょう。間違いなく浦飯さんはやります(断言)

 

「おう。オレは老若男女容赦しねーからな」

 

「じゃあ君の質問に答えるね。それでいい?」

 

「よし。なんでテメーはこんなとこにいるんだよ?」

 

「何故か気づいたらここにいた、としか言えない。ただひどく消耗しているのは確かだね」

 

「あぁ?分かんねーだぁ?今のテメーからは全然魔力を感じねぇが…。

じゃあテメーをそこまで追い詰めたやつの名前は?顔はどんなやつだ?」

 

そのことをグシオンに尋ねると、彼女は首を横に振りました。

 

「言えない。言いたくないのではなく、言えない」

 

「「ふざけてんのかー!!」」

 

思わず浦飯さんと叫んでしまいました。この状況で何故言わないんですか!はっ、まさか本当は敵の一味!?

 

「敵ではないよ。この街の味方ではある」

 

「ふざけてんのかテメーは!いいからさっさと言いやがれ!でねーと霊丸ぶっ放すぞ!」

 

「浦飯さんの霊丸をこんなところで撃ったら、どこかにいるはずの小倉さんまで粉々になりますからやめてください………」

 

前に邪神像の封印空間で見せてもらいましたが、あんな巨大な霊丸を撃ったらこの空間全部吹き飛びます。

 

でも浦飯さんは最悪それをやりそうな気がします。なんだかんだ小倉さん助けてから、でしょうけど。

 

「………この状態でこの空間にいた。それが答えなんだよねぇ」

 

「なんですと?」

 

一向に応える気がないのか、はぐらかすような言葉でグシオンは話し続けます。

 

もしや私たちをおちょくっているでしょうか?

 

「いわば今の私は残りカスで、小倉しおんには頭脳以外は引き継げなかったんだよねぇ。ここまでしか話せないよ」

 

「いい加減にしてください!そんな態度ならさすがの私も怒りますよ!」

 

むきーっと怒っている私をよそに、先ほどから浦飯さんは静かになりました。あまりに相手が話さないから、呆れているんでしょうか?

 

「浦飯さんもなんか言ってやってください!」

 

「……んじゃ言うがな。マジで【言えない】んだな。魔力がほとんど残ってねーテメーをそこまで消耗させた相手をよぉ」

 

「うん。【言えない】し、【覚えてない】」

 

「えぇー?自分を追い詰めた相手を覚えてないって……そんな馬鹿な……」

 

ナハハ、と私は笑いますが、他2人は全く笑いませんでした。

 

明らかにおかしい空気だと、さすがの私でも分かりました。

 

もしかして言えないし、覚えてないのは単に忘れた、ってことではなく───

 

「グシオンを襲ったやつは記憶を消すか、自分の名前を言わせないようにする強制力を持った能力者ってわけか」

 

浦飯さんがそう話すと、グシオンは拍手で返答しました。そ、そんな能力者が相手なんですかー!?

 

両頬を両手で抑えている私に対し、グシオンは頷きました。まさにその通りと言わんばかりです。

 

「良く分かったねぇ……あぁ、昔そういう能力に近い敵と戦ったことがあるみたいだねぇ」

 

「オレはやってねーけど、能力者が禁止した言葉をそいつの空間内で言うと魂取る奴はいたからな」

 

くそチートすぎる……ミステリーなんかの脱出不可能な部屋とかでやったら無敵の能力じゃないですか。

 

「それは記憶奪うよりヤバい能力だよぉ。

私が思い出せない以上、恐らくそう言った能力だろうというアタリしかつけられないけどね。だからここに避難する前後の状況も話せないね」

 

「……まぁひとまずそういう能力者がいるってことだけは分かったからヨシとするか」

 

「めっちゃヤバいじゃないですか……あれ、でもそしたら何で私たちを呼んだんですか?話せないなら意味ないじゃないですか」

 

そう。街を狙う犯人を教えてくれるというのであれば、ここに私たちを呼びよせる意味はあるでしょう。

 

でも何もできない、教えられないのであれば別の目的があるはずです。

 

「今の話を伝えたかったのがまず一つ」

 

グシオンはばんだ荘の屋根の端を指さす。

 

「あそこの屋根の瓦の下に秘密の収納スペースがあってね。そこに小倉しおんはいるよ。もちろん生きているから安心してほしい」

 

ひとまず小倉さんは生きているらしく、少し安心しました。しかしグシオンは一体何が目的なのでしょうか。

 

「他に実は見せたいものとやってほしいことがあってね。その後でなら疑問に答えるし、小倉しおんを解放するよ。ついてきて」

 

私の心の内を読んだのか、グシオンはそのまま私たちに背を向けて歩き出しました。余りに無防備な背中に、一瞬呆気を取られました。何を考えてるのかさっぱり分かりません。

 

「どうします浦飯さん?ついて行きます?」

 

「どーもこーもアイツは戦う気はあんまりねーみてーだな。仕方ねェ、ついていくか。でも油断すんじゃねーぞ」

 

どうやら浦飯さんも無防備な相手の様子を訝しんでました。直接戦いを仕掛けてこないで煙に巻くような行動をとってくる相手は本当に苦手です。やりづらいです。

 

「分かりました」

 

グシオンはばんだ荘の階段を上り、奥へと進みます。

 

そして止まった部屋は───ミカンさんの部屋の前でした。

 

「ここの部屋は元々私の部屋でね。ほら、壁にお札が張ってあっておしゃれだったでしょ?」

 

「あなたの部屋だったんですか!?欠片もおしゃれじゃないですよ!?ミカンさん震えまくってたんですから!」

 

「全然効果なかったやつだったな」

 

あれがおしゃれだったらばんだ荘は全体が廃墟ですから、それはもうオシャレスポットとして人気間違いなしになってしまいます。言ってて何か悲しくなってきました……。

 

浦飯さんも効果がないと認定したお札について言うと、グシオンは私たちから顔を背けました。

 

「……これを見て」

 

私の疑問に答える前に、グシオンは窓のカーテンを開きます。

 

「これは……」

 

そこに広がっているのは何もない世界。ここの異空間とはまた違う、物悲しい地面だけが広がっている景色でした。

 

見渡す限り灰の様な地面だけが続き、何一つ物がない世界。一体何をすればこんな世界になるのか、見当がつきませんでした。

 

「ここも間違いの1つ。『桃ちゃんが世界を掬うのを失敗した風景』簡単に言えば、その結果で灰の平原になった街角だよ」

 

「ほ、滅びているんですか、これ?」

 

「もしもの世界の一部さ。見せたかったのはこれなのさ。桃ちゃんに内緒でね」

 

「意味が分からねーな。もしもって言ったって、結局は回避したことだろ?何で桃に見せちゃいけねーんだよ」

 

確かに浦飯さんの言うことももっともです。桃が世界を救ったのが今の状態なんですから、わざわざ失敗した世界なんて見せても意味がないと思います。

 

「私は色んな情報から様々な状況を推測できる能力が高い……まぁ簡単に言うとたまに未来を予測できるレベルなの」

 

スーパーコンピューターみたいな感じでしょうか。それで超頭が良いんですね。

 

「もし何らかの偶然が重なって桃ちゃんがこの光景を見てしまった場合桃ちゃんが凹む……そうすると巡り巡って小倉しおんの生存率が下がる。それが理由」

 

「納得だな」

 

「納得しちゃうんですか浦飯さん!?確かに小倉さんの生存率が下がるのは良くないですけれども!」

 

迷いのない浦飯さんの肯定に、私は思わず声を張り上げてしまいました。

 

「桃の奴はちょっとのことですぐ落ち込むし、結構メンドクセーからよー。あり得る話だべ?」

 

「うぬぬぬ、反論できない……」

 

桃ってばクールに見えて結構気にするタイプですからね。落ち込んでしまって、色んな事に影響が出る可能性があります。

 

でもそれで何で小倉さんに対しピンポイントで死亡率をアップさせるのでしょうか?

 

「その疑問にも後で答えるよ。さぁ、この光景を消してほしい」

 

「分かりました」

 

窓を妖気を籠めて軽く殴ると、窓の景色は元通りになってました。これでこの間違いは消滅できたようです。

 

「んじゃこっちの質問に答えろや。ワザワザ小倉をエサにオレたちを誘い込んだわけをよぉ」

 

元通りになった景色をじっと見ているグシオンに浦飯さんが問うと、グシオンは一つ息を吐いて、こちらに向き直りました。

 

「……この街は狙われている。でもそいつが誰なのか思い出せない」

 

「それはグシオンを襲った能力者ですね」

 

「そうなんだよぉ。今の街には桃ちゃんしかいないと思っていた。だから彼女のメンタルを維持しつつ、街の防御を向上させる必要があったんだよ。

だからこの空間に誘い込んだ小倉しおんをエサにして、桃ちゃんにさっきの光景を見せないようにしつつ、誰か適当な子をメッセンジャーとすれば今回は完璧だった……んだけど」

 

「適当!?私適当な子のポジションだったんですか!?ふんがー!」

 

私の扱いが雑過ぎじゃありませんか!?まるで桃の付属品の様な扱いです!

 

口から炎を出すような勢いで怒っていると、浦飯さんからうるせぇ!と言われました。グスン、せめて浦飯さんは味方でいてほしいです。

 

「回りくどいぜ。桃に全部話して『頑張れや!』じゃダメなのかよ」

 

「さっきも言ったけどメンタル的に桃ちゃんは受け止められるか微妙だから……」

 

「んなこと言ったってよー、どっちにしろやんなきゃいけねーことだろーが。

第一今この時にその能力者が攻めてきてたら残った連中でやんなきゃいけねーんだぜ?

早いか遅いか、そんだけだろーが」

 

「……ふふ」

 

「なんだよ?」

 

「いや、キミは単純でいいなぁと思ってね。いや、シャミ子ちゃんもか」

 

「「なにー!?」」

 

私たちは一緒くたに単純と言われ激怒しました!このグシオンは小倉さんより性格悪いです絶対!

 

「キミたちにやってほしいことはいくつかある。まずシャミ子ちゃんの携帯に私の情報を送り込んでおいた。あとで小倉しおんに見せれば、彼女の能力がアップするはずだよ」

 

携帯を見ると『グシオンさんからデータを受信しました』と書いてあり、その後『グシオン(電子書籍版)』と書いてありました。

 

多々ツッコミどころはありますが、データは来ているので良しとしましょう。

 

「そして暗黒役所を復活させてこの街を守ってほしい。引き続きこの街からシャミ子ちゃんたちは出ないようにね」

 

「くそー、そいつの名前さえ分かればこっちから仕掛けられるのによ」

 

「敵の情報が全くないから、それはやめてほしいなぁ」

 

浦飯さんてば戦闘中は色々やりますけど、戦う前は剛速球のストレート並みに小細工なしですからね。結界の中に引きこもって防衛とか一番やりたがらない戦術でしょう。

 

どっちかというと私も攻めたいタイプです。

 

「そしてこの空間の余計なものを消してほしい。ここにはいらないものが溜まっているからね、パンクすると外の世界に影響があるからねぇ。

私が掃除できればいいんだけど───」

 

掲げたはずのグシオンの左手が既に薄くなってました。まさか透明化の能力!?

 

「違う違う、もう魔力がなくてね。消滅しちゃうんだ。まだ大事なことがあるから続けるね」

 

私は頷くと、グシオンは少し笑いました。

 

「浦飯君。君も大変な状況だと思うけど、この街のことを頼みたいんだ。きっと君はとてつもなく強いんでしょ?」

 

「そのとーり!まぁこの幽ちゃんに任せとけって!ナーハッハッハ!

……つっても、邪神像に封印されてるから、早く解放されてーんだがな」

 

それなんだけど、とグシオンは指を立てる。

 

「この街を守ってほしいから何か浦飯くんに特別な情報を……そうだ。その邪神像のことで、あくまで推測だけど……いいかな」

 

「お、何かヒントでもくれるんか」

 

「うん。その邪神像は元々はシャミ子ちゃんのご先祖が入っているはずなんだ。戦闘能力はないけど、その分かなり凶悪な能力で危険視され封印されたって聞いてるよ」

 

「凶悪な能力、ですか?」

 

「───人の心を操るらしいとしか。

だが今は浦飯君が代わりに邪神像に入っている以上、何者かが人為的にご先祖と浦飯君を入れ替えたとしか考えられないよねぇ」

 

私の能力は夢に入る能力ですが、ご先祖はそれと違うのでしょうか?

 

何やら雲行きが怪しくなってきました。悪意ある第3者がご先祖を抜き取ったというのは分かります。しかしそこからどうするのでしょうか?

 

「……シャミ子の先祖の魂を抜き取って、そこからさらに能力だけ奪っちまう能力者がいるかもしれねーってことか?もしくは逆に洗脳するとか」

 

「……あ!?」

 

浦飯さんが以前能力を人物まるごと飲み込む能力者がいると言ってました。もしご先祖誘拐犯にそういった能力者がいるとすれば………激やばです!

 

「そう。ご先祖が誘拐犯に協力しないとしても、能力を奪ったり洗脳したりすれば関係ないということになるね。だから厳しいと思うけど、街に引きこもりつつご先祖の行方を捜したほうがいいよ~。

恐らくそれが浦飯君の解放に繋がるだろうから」

 

「悪いな、時間ねーのに色々と」

 

「いいよいいよ、浦飯君がシャミ子ちゃんをここまで強くしてくれたんでしょ?

正直予想外だったよ。私が見た時のシャミ子ちゃんは呪いで大変だったから、まさかあんなにすごい動きができるほどパワーアップしているとは。

きっとシャミ子ちゃんの中の桜ちゃんも喜んでいるよぉ」

 

その言葉を聞いた瞬間、胸が少し痛みました。ほんの少しの痛みですが、どこか悲しいものを感じさせる痛みでした。

 

「んじゃ、後は頼んだよシャミ子ちゃん。しおんをよろしくねー……」

 

そう言い残し、グシオンは完全に消えました。魔力も何もなく、文字通り消滅したのです。

 

一体グシオンをここまで追いつめた敵の正体は何だったのでしょうか?

 

「なんか色々やること増えますねー……」

 

ポツリと呟いたその言葉に、浦飯さんは「……そうだな」と優しく言ってくれました。

 

つづく




説明回。グシオンとの戦闘させようかなと思いましたが、やりすぎになるので変更しました。

グシオンの覚えてない、の内容については最新刊を読んでからの妄想設定。

グシオンてば最新刊で肝心なこと何も言わないので、もしかしたら言えないのかも→海藤とかみたいな能力にかけられたのかな→最新刊のアイツは結構ヤバい能力だったなという結果に。

読心の能力持ちは基本強キャラなんですけどねー。幽白の読心と言えば室田さん。まぁ相手が悪いし、飲み込まれて可哀そうだったけど。

今もずっと戸愚呂兄と一緒なのでしょうか?

読心で好きなのはうしおととらのさとり。あれはヤバい。
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