まちカド☆白書   作:伝説の超浪人

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いくら強くても苦手な分野では無力という話。


42話「領域!ゲーム対決です!」

「闇のゲームだぁ?つーかテメーは誰に頼まれて俺らを狙ってきたんだよ?」

 

「ふふ、オレに勝ったら教えてあげるよ」

 

余裕を見せる遊賭と言われる青年は、私から見て無防備そのものでした。この領域さえ使われていないのであれば、腕にシルバー巻いている髪の毛が半端なく目立つだけの人でしょう。

 

「先手必勝ですー!オラァ!」

 

能力を完全に使われる前に、私は行動を起こしました。変身せず、不意打ちで懐へ飛び込み顔面へ右ストレートを繰り出します。

 

まさか浦飯さんが喋っている間に仕掛けてくるとは思わないでしょう。死なない程度にぶん殴ります!卑怯という言葉は聞こえません!

 

そう意気込んだ私の拳から衝撃が伝わりました。

 

彼の顔に当たったわけではありません。当たると思った瞬間、まるで透明なバリアみたいなものが出現したのです。

 

「い、痛いです〜!?」

 

思わず右拳を左手で抑えるくらい凄まじい痛さです。この痛さはまるで魔族として鍛える前にコンクリートの壁を殴った時くらいに絶望的な硬さです。

 

「ふふ、暴力はオレの領域(テリトリー)の中ではダメさ。そっと優しく触れる程度でならOKだ」

 

クスクス笑われながら彼の人差し指が私のおでこを優しく押しました。おのれ、何だその完璧な防御能力は!

 

しかも領域(テリトリー)からは脱出も不可能。つまり相手の条件に従ってしか行動できないと言う状態です。

 

「お馬鹿シャミ子め。つまりテメーの能力で出す条件で勝たないとダメってことか」

 

「その通り。入れ物の彼はオレの能力みたいな相手との経験があるみたいだね」

 

「まぁな」

 

ふっと軽く笑う浦飯さん。だが私は聞いています。浦飯さんはこう言った領域の能力者との対戦はほぼ勝ってないと!

 

木戸さんには影を踏まれ捕まって人質に。神谷drはボコボコにしてKO勝ち。

刃霧さんは飛影さんが来なかったらトラック爆発に巻き込まれアウト。天沼さんのゲームはCPU相手に勝利。

 

あれ、もしかして浦飯さんって直接殴れない相手だと神谷dr以外はほぼ負けてません?天沼さんだと本人とは戦ってないし。

 

いやいや、例えそうだとしても、この目の前の相手の能力がガチンコの戦闘系ならまだ希望が……

 

「オレの能力名は【闇絵札】。ペナルティありでのカード遊びさ」

 

───勝てないかもしれない。遊賭のセリフは私を絶望させるには十分な言葉でした。

 

 

 

 

そんな私の気持ちをよそに、遊賭は話を進めます。

 

「さて、オレは遊び……特にカードが好きでね、カード限定の能力なのさ。

能力は至って簡単。オレとカードで勝負すること。勝てば無事この領域(テリトリー)から脱出できるというわけだ」

 

「負けた場合はどうなるんですか?」

 

これだけ聞くと公平なルールのように聞こえますが、そもそも相手の能力という時点で相手が圧倒的に有利です。条件は出来るだけ聞いておきましょう。

 

「罰ゲームを受けてもらう。その人の心次第さ」

 

「心次第?」

 

「やればわかるさ。何か質問は?」

 

「カードなら何でもいいのかよ?」

 

「その通り。何でもいい。トランプでもUNOでもかるた、TCGでもいい」

 

要するにカードであれば何でもいいそうです。しかしカードは私苦手なんですよね……入院ばっかりでお友達もほとんどいなかったから1人遊びが多かったし、最近はTVゲームばっかりですから、ほぼ経験なしです。

 

しかし相手の能力は今目の前の本人が言った通りとは限りません。もし初めに浦飯さんにやってもらって、罠に嵌って負けてしまったら私しかいなくなります。そうなったら勝ち目ゼロ!無謀極まりないです!

 

なら相手の能力を探るためにも、私が初めに戦うしかありません!

 

「よし、ならば私がまず相手だ!」

 

私はそう決意して先にやることを宣言しました。あとは任せましたよ浦飯さん!

 

「ふふ、いいね。なら何がいい?やりたいゲームはそっちが決めていいよ?」

 

随分余裕の態度です。しかし相手が本当にカードゲームが得意であれば私など赤子の手を捻るようなものでしょう。

 

ならば運が絡むゲームでなら勝ち目が少しあるかもしれません。

 

「ならばブラックジャックでお願いします!これなら経験があります!」

 

そう、今使っているパソコンにミニゲーム的な感じで入っていたので、何度かやりました。これならルールは簡単です!

 

「いいよ。ならトランプを用意しよう」

 

そう言った瞬間、何もない場所に未開封のトランプが出現しました。むむ、これも奴の能力の一部ということでしょうか。

 

「未開封だから細工はしてないよ……まぁオレの能力だ、と言われてしまうとそれまでだが。じゃあオレが親でいいかい?」

 

「外に出てトランプを買いに行けませんし、いいでしょう」

 

ブラックジャックのルールは簡単に言うと最大21で、それ以上の数値はブタ扱いで自動で負け。つまり如何に21に近づけるかが勝負というゲームです。

 

joker抜きで2から10まではそのままの数字。絵札の11から13は10扱い。1は11と1のどちらかを選択できます。

 

まず1枚配られ、そしてもう1枚配られます。ヒットでもう一枚。スタンドでそのまま勝負となります。つまり最低2枚と言うことです。

 

「今回は特別ルールはなしでいいかい?」

 

「ええ、単純な勝負でいいです。そして3回勝負でいいですか?」

 

というより、特別ルールって何でしょうか?まぁ知ってる感を出しておけば何か騙せるかもしれませんし、このままいきましょう。

 

ぶっつけ本番だと怖いので3回勝負を願い出たら、軽く笑われました。

 

「いいよ。君が3回で1回でもオレに勝てれば、ゲーム終了でいい」

 

「むむむ」

 

完全に舐められてますが、1回勝てればいいということで随分私に有利になりました。ふふ、後で泣きっ面にしてやります!

 

相手が普通にカードをシャッフルし、私に渡してきたので私も同じようにシャッフルします。それではゲームスタートです!!

 

1回目。相手はキングと7。合計17 私は8と9。合計17。

 

ここで互角ですが勝とうとしてもう一枚引いたら、何と5で22。ブタで私の負け

 

「惜しいー!もう一度です!」

 

2回目。相手は6と5とクイーンで21。 私はキングと10で20。私の負け。

 

ヒィ、もう後がないですー!?

 

「弱すぎんだろ!もっと粘れや!」

 

「相手の引きが強いんですよ!イカサマしてるじゃないんですか!?」

 

「心外だな。ノースリーブだから上着は着てないし、リストバンドもつけてない。

カードのシャッフルもカードを痛めないように普通にしている。その後君が切っている。そして上から順番に配っているさ」

 

季節的には寒いのにノースリーブとはやばい人です。しかし服装が何でイカサマに関係あるんでしょうか?

 

「確かにオレの目から見ても普通に配っているぜ」

 

どうやらイカサマ的な配り方はしてないそうです。いや、どんなイカサマがあるのかはさっぱり知りませんが、浦飯さんが言うのであればやってないんでしょう。

 

「よぉし!ラストで勝ちます!来なさい!」

 

ラスト。相手はまず3。私は何と1です。

 

「(来ましたー!これで10になれば勝てる!)」

 

1なら21になる可能性大!思わずガッツポーズしたくなるような幸先の良さです。しかし魔族は慌てない。次が大事です。

 

2枚目。相手は10。合計13。  私は5、合計6か16です。  

 

「(ぬあー!?)ひ、ヒットです!」

 

スタンドには点数が低すぎる!なのでまだ余裕がありますから、私はヒットを選びました。やばい、めちゃドキドキしてきました……!

 

「ならオレもだ」

 

3枚目。相手は4で合計17。  私は6、合計12か22。

 

勝つためにはヒットするしかないです!やばい、つ、次で決まっちゃいます!

 

「オレはスタンドだ。君はどうする?」

 

「ヒットです!」

 

21までには残り9。つまり絵札と10以外で、なおかつ17を越えればいいのですから6−9の間が来れば私の勝ちです!

 

「(来い来い来いー!!)」

 

そして念じた結果のカードは───3。合計15。

 

引きが弱い!!

 

「ヒットです!」

 

「ふふ、はい」

 

そして来たのは───キングでした。合計25。

 

「うわー!ブタですー!?」

 

「バカタレー!?」

 

「残念、惜しかったね。じゃあ、罰ゲーム!!」

 

敗北した瞬間、私は咄嗟に邪神像を掴み、スイッチを入れました。これで浦飯さんに切り替わるはず!

 

奴の額に目のようなものが浮かび上がり、ドン☆という音と共に私の意識は闇へと落ちていきました。

 

 

☆☆☆

 

 

「テメェ、シャミ子に何しやがった!?」

 

幽助はシャミ子の体に切り替わった瞬間、遊賭の胸ぐらを掴もうとし、バリアに阻まれた。もし掴んでいれば遊賭の首の骨がへし折れるレベルの勢いだったからだ。

 

バリアに対しての信頼か、遊賭は余裕の笑みを浮かべたままだ。

 

「暴力は無理だって……今の君は、像から聞こえてきた男の声になったね?もしかしてさっきのスイッチが入れ替わりの合図かな?」

 

「質問に答えろっつーんだよ!ぶっ殺すぞ!」

 

「彼女は、今意識の奥で彼女のトラウマをもう一度経験してもらっているところさ。遊びにリスクは付き物だろ?」

 

「テメェ……!?」

 

現に遊賭の言う通り、現在シャミ子は魔族覚醒前、病院で生きるか死ぬか、身動きできずにベッドの上でしか生活できなかった幼少期を体験していた。

 

髪が抜け落ちてカツラを被り、呼吸器をつけて容体がいつ悪化するかもわからない、消毒液の匂いで充満した病室に逆戻りしていた。

 

かつて自分の記憶に潜り込んだ時も、この光景だった。それほどシャミ子にとってはキツく暗い記憶なのだ。

 

彼女はそういった生活を知っているから、どんなに修行がキツくとも、自分の体が思う通り動かせる喜びと感動を大事にしていた。

 

かつての古傷を罰ゲームとはいえもう一度経験させられている。トラウマを抉るような真似をしてくる遊賭に対し、幽助は冷静ではいられなかった。

 

昔から幽助は外道な行いに関してはストレートに怒りを露わにしてきた男だ。

 

これが殴り合いの戦闘であれば、かつてのdrイチガキへの怒りでパワーアップしたケースもあることから有利になるかもしれない。

 

しかし今のカードゲームでの勝負をしなければいけない状況で怒りを募らせるのは、遊賭の思う壺であった。

 

「じゃあ次のゲームは何がいいかい?好きなのを選んでもいいよ?」

 

「うるせェ!さっさと決めやがれ!テメーに勝って、シャミ子を助け出す!」

 

「ふふ、じゃあ次はポーカーにしようか」

 

「ならオレがカードを配ってやんぜ!そうすりゃーイカサマできねーだろ!オレも3回勝負だ!」

 

「お好きにどーぞ」

 

遊賭は肩をすくめて幽助の提案を飲んだ。

 

「あ、そうそう。もしイカサマした場合はその時点で罰ゲームが発動するから気をつけて。もちろんオレもそれは適用されるから」

 

「ケッ、今更抜かしやがって!イカサマなしでもテメェを倒す!」

 

実のところ、幽助はイカサマする気ではあった。

 

カードを傷めるぜ!と言うショット・ガン・シャッフルをやり、鍛えた動体視力でカードを見極める。

 

そしてセカンドディールと呼ばれるカードの配り方で、1番上から配るのではなく、相手には2番目のカードを配ることで、自分に有利なカードを引き寄せる気であった。

 

しかし遊賭の言う通り、イカサマした瞬間に罰ゲームとなるのであればそれは使えない。

 

遊賭の言葉が本当かどうかの区別は幽助にはつかない。もし嘘だったとしても、それを証明する方法が幽助にはないからだ。

 

なのでこのタイミングで遊賭が罰ゲームについて語ったことは、幽助の行動を制限すると言う意味では大きな効果を発揮していた。

 

まともにゲームをするしか選択肢はない。忌々しく思いながら幽助はカードをシャッフルした。

 

幽助がシャッフルして感じたことは、本当にこのトランプには何の力も感じないと言うことだ。

 

カードの一部を切ったりしてわかりやすくした、なんてこともない。魔力や不思議な別の力も感じない。

 

つまり本当に何でもない市販のカードと同じなのだ。

 

「(んじゃマジで普通に勝負してシャミ子は負けたってーのか……?)」

 

事実、遊賭とシャミ子との勝負は能力も何もない、普通の勝負だった。

 

だが遊賭は隠していたことがある。実は引き分けでも遊賭の能力は解除されるのだ。なので1回目の勝負で終わっていた可能性があった。

 

「(引き分け狙いじゃ面白くならないしね)」

 

しかし遊賭は罰ゲームありのスリリングなゲームを楽しみたいがために、その条件はあえて口にしてない。

 

もちろん3回勝負であれば、1回より引き分けも負ける確率も上がる。しかしシャミ子と幽助は【絶対に勝たなくてはいけない】という先入観に強く囚われてしまった。

 

負ければどう言う目に遭うかわからない罰ゲームが待っている……リスクありの勝負というのは、冷静な判断力を鈍らせる。

 

罰ゲームは心理的に揺さぶりをかけているのだ。

 

そして入れ替わった幽助という人物はまさに頭に血が昇っており、感情が露わになっていた。

 

「手札の交換の回数は?」

 

「男なら1回勝負だ!」

 

「ふ、いいだろう。ゲームスタート!」

 

これほどやりやすい相手もそういないだろう。故に決着は早かった。

 

1回目。遊賭はフルハウス、幽助はワンペア 遊賭の勝ち

 

「ふ、今日は引きがいいね」

 

「うるせェ!まだこれからだ!」

 

2回目。遊賭はフラッシュ、幽助はスリーカード 遊賭の勝ち

 

3回目。遊賭は2ペア、幽助は1ペア 遊賭の勝ち

 

ポロリと幽助の手札から見えたのは絵札ばかりであった。幽助は大きな役を狙いすぎたのが敗因だろう。事実最後は3枚交換したが、1枚交換であれば勝てる手札であった。

 

「ち、ちくしょう……!?負けちまった……!」

 

「最後は少し危ない勝負だったね。では罰ゲーム!」

 

遊賭の額が瞳の形のように光った瞬間、幽助は机に上半身が突っ伏すように気絶した。

 

「……この街の奴らは凄腕だと聞いていたが、全然大したことなかったな。まるで素人だ」

 

簡単に相手の条件を呑むし、精神的揺さぶりは効果抜群。遊賭にとってこれほど手応えのない相手も珍しいほどであった。

 

きっと戦闘……殴り合いでの強さだけなんだろうな、と少しがっかりしながら横たわるシャミ子をどうしようかと見つめる。

 

とりあえず依頼者に連絡しようか、とスマホに手を伸ばそうとして、気配を感じた。

 

遊賭の領域は出入りは基本的には能力者本人の許可が必要だ。しかしもしシャミ子たちを入れた時にたまたま領域の範囲内に誰かしら偶然いた場合は───

 

「ちょーっと困るんだよ〜、今その2人を連れてかれちゃったりするとねー」

 

少女は美しい黒髪を靡かせながら、間伸びした声で遊賭を静止させた。

 

「お仲間かな?名前、聞いてもいいかい?」

 

「ごめ〜ん、それは無理かなー?」

 

メガネの少女はそのまま突っ伏しているシャミ子の横に座り、正面から遊賭を見つめる。

 

「私が勝ったら、この2人は解放される?」

 

「もちろん。勝てれば、ね?」

 

「Good!じゃあ勝負だね!」

 

ゆるい言い方ではあるが、先ほどとは目の奥が爛々と輝いているように見えた。

 

まるで心を透かされている感覚が遊賭を襲い、彼は歓喜で口角を上げてしまっていた。

 

「君ならいい勝負になりそうだ……」

 

その言葉に対し、目の前の少女───小倉しおんは笑みを浮かべたままだった。

 

つづく




小倉さん参戦!主人公2人があっさり負けてますが、ゲーム対決じゃ勝てないタイプだよね?という安直な理由です。

幽助は格ゲーと麻雀とパチンコと競馬ならいけそうですが、ゲーム対決でまず見ないラインナップなのでまぁ勝てないだろうなと。

シャミ子?もっと無理でしょ、という理由で敗北。すいません、でも2人がゲーム対決で勝つのは違和感すごいんで……。許して
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