まちカド☆白書   作:伝説の超浪人

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時間かかりました。ハンターの王位継承戦、単行本で見てもよくわからん作者です。


44話「病院での領域です!」

時は少し戻ってシャミ子と幽助がまだ遊賭に遭遇していない頃、ミカンとウガルルもまた別の場所で探索をしていた。

 

2人は年の離れた姉妹……いや、ウガルルはミカンから生まれたのだから親子と言うべきか。

ともかく仲良く歩く姿はすれ違う主婦の方々からはとても微笑ましいものに映る。

 

ミカンも親のような感情があるのか、この間SNSに「ママになった!パパいねーけど!」の文と顔を隠したウガルルとのツーショットをノリで投稿してしまった。

 

事情を知っているシャミ子たちはイエーイと盛り上がったが、一連の事情を何も知らない両親は娘の投稿を見て悲鳴を上げた。

 

当たり前である。友人の魔法少女を手伝いに上京したはずの娘がいつの間にか子供を産んでいて、しかも相手の男に逃げられたらしい。

なんて情報は両親の脳みそを破壊するには充分すぎる威力があった。

 

両親と事情を知らない人からの通報で担任の先生にも伝わり、かなり大ごとになったが経緯を説明して納得してもらった。若者のネットへの意識の低さが露呈した出来事である。

もちろん鬼のように怒られたのは当然の結果だった。

 

そんなことはあったものの、両者の関係は非常に良好である。故に今回ペアで捜索していた。

 

「しかし街中に能力者がいるかもと言われても、魔力がなければ見分けつかないわよねー」

 

ミカンは横に歩いているウガルルを見る。ウガルルは見た目は人間に近いが、能力的には獣の感覚に近い。

 

それ故、匂いなど感覚器官で追跡することも考えたが……

 

「特徴的な匂いとかあればウガルルに探してもらえるんだけど……」

 

「そんなノ分らなイ……」

 

能力者は能力を発動させない限りは魔力がない普通の人間と区別できない。

 

恐らく普通の人間に混じって暮らしている那由多誰何の協力者を見つけることは余程のことがない限り不可能だろう。

 

そう、奴らが行動を起こしたりしない限りは発見できないのだ。

 

「魔法少女が来たら分かるから……普通の人として大きな施設に潜伏しているとかかしら?」

 

那由多誰何の仲間なら魔法少女だろうという先入観がある。そして魔法少女は大抵10代の美少女の容姿をしているケースが多い。

 

だがもし成人であり、他の人間と同様に働いていたのであれば。

 

仕事の転勤としてこの街に入り込んでいたとしても、何ら不思議ではない。

 

「でもそれを言っちゃうとキリがないしねぇ……」

 

一体どれだけの人間が転勤になったりするのだろうか?まだ社会人ではないミカンではイマイチ思い至らないことである。

 

「ミカン、アレ、大きな建物」

 

ミカンの呟きを聞いていたウガルルは、ちょうど視界に入った建物を指差す。それは確かに大きな建物で、転勤や移動があってもおかしくない施設である。

 

「病院ねぇ……」

 

ミカンの戦闘スタイルはボウガンによる狙撃。建物内では不利になりうるものである。

 

しかも今の時間帯は患者が大勢いる。

 

もしこんなところで能力を発動させれば目撃者が多すぎる。能力の判明は死につながる。よってこんなところで仕掛けるやつは余程イカれているか自信があるかの2択だ。

 

「(まぁ仕掛けてくるのであれば、こちらとしても手間が省けるしね)」

 

ミカンは伊達に長く魔法少女を続けているわけではない。

 

似たようなケースは以前にも何度かあったし、大勢の前で能力を使う奴は大抵自分の能力を見せびらかしたいのだ。そして自分の能力のメリットばかり囚われ、不都合なことがあると途端に取り乱す。よくある話だ。

 

ミカンは堂々と目の前の大きな総合病院に乗り込んで行った。

 

「ミカン、どうすル?上から探す?」

 

「面倒臭いわ。患者さんに聞きましょう」

 

「ナンデ?」

 

ウガルルからすれば、能力者を見つけ出したいのであって、病気で弱っている人から聞いても意味がないだろうと思っている。見るからに能力などは使え無さそうだからだ。

 

「こういう人たちって結構噂好きなのよ。特に女の人はね」

 

受付ではなく、待合室で待っている年配の女性など患者数名に、ミカンは話しかけて行った。

 

新しく来た先生の評判を知りたい、と。

 

すると話好きな人が多かったせいか、余計な情報もあったが割とすんなり情報は集まった。

 

「外科の神崎先生ねぇ……」

 

情報によると、先月から外科の神崎先生という女性の医師の評判がいいらしい。若くて美人、しかも話をきちんと聞いてくれて薬も出してくれるからだそうだ。手術も上手いらしい。

 

しかし能力者は患者かもしれないし、医師ではない医療従事者の可能性もある。だが正体が何であれ、こちらが行動を起こせば、敵は何らかのアクションを起こすであろう。

 

一応桃には病院にいることをメッセージで送った。既読はすぐにつき、無理しないよう返事が来る。

 

ちなみにグループの連絡だがシャミ子からは来なかった。ミカンは忙しいのだろうと判断しスマホをしまう。

しかしちょうどシャミ子は領域でカードゲームで勝負中だった。

 

さて、神崎先生のことを探しに行こうと腰を上げた瞬間、見覚えのある少女に声をかけられた。

 

「あれ?もしかしてミカンちゃんとウガルルちゃん?」

 

「あら、体育祭実行委員で一緒だった落合さんじゃない」

 

「あ、お前見たことアル」

 

体育祭実行委員で一緒だった、黒髪ポニーテールの落合という少女だった。

 

何でも転んで足を捻ってしまったそうで、整形外科に受診したそうだ。

 

「それは災難だったわね。ごめんなさい、私は治す力はなくて……」

 

「あ、大丈夫大丈夫!大した怪我じゃないから!今日は千代田さん一緒じゃないの?」

 

「あー、今は桃と別行動なのよ」

 

「そっか、桃さまは別行動なんだ……」

 

「……桃さま?」

 

どうやら桃のファンのようだが、何だかちと行き過ぎている気もする発言だ。だがミカンはそれ以上あえて触れないようにした。ファンというのはどこにスイッチがあるか分らないからだ。

 

まぁ目の前の少女が能力者であるとは考えづらい。もし能力者であるならば、体育祭実行委員の時にいつでも仕掛けるチャンスはあったのだから。

 

「桃なら別のところで人探しをしているわ」

 

「人探し?どんな人?」

 

「あー、まぁ変わった人かしら?」

 

正直に言うわけにはいかないので、ぼかして言うしかない。反応に困る発言だが、思ったより落合は食いついてきた。

 

「ミカンちゃん!私にできることがあったら言ってね!ミカンちゃんや桃さまの助けになるから!」

 

ドンと胸を張る少女は頼もしく見える。実際ウガルル復活の時も協力してもらったので、むしろこっちが何かお礼をしなくてはいけないのだが……。

 

「(桃のことになると何かこの子の場合、首を突っ込みすぎる形になっちゃうかも)」

 

調べ過ぎて本当の能力者に遭遇した場合、タダじゃ済まないだろう。命があれば御の字だ。

 

「あ、大丈夫よ。私たちだけで見つけないと───」

 

いけない敵だからと言い切る前に、突如としてぬるま湯に全身を突っ込まされた感覚に襲われた。

 

ミカンはこういった感覚に近いものは何度か遭遇したことがある。敵の範囲型の能力だったり、魔族が作った異界の能力だったりだ。

 

「ミカン、何か気持ち悪イゾ!」

 

「この感覚、誰かが能力を使ったのね!?落合さん、私から離れないようにして!」

 

つまり今この場所は特殊な場となっていた。ミカンやウガルルだけ攻撃するタイプならまだしも、この能力の範囲内全て攻撃するタイプの可能性もある。

 

ミカンはその可能性も見越して、落合を自分の側に寄せた。

 

一方落合としたらミカンの言動が意味不明であった。仲良く喋っていたら、突然バトル漫画でしか聞いたことのないようなセリフを吐いたのだ。

 

しかしふざけているにしては、表情が緊迫している。その様子を見て、落合は素早くミカンへ身を寄せた。

 

「の、能力?一体どうしたのミカンさ───あ、痛!?」

 

「どうしたの!?何かあったの!?」

 

「大したことないんだけど、今何か手がチクッと……!」

 

突然落合の手に走る痛み。まるで軽く刺されたかのような痛みに、ふとその手を見ると───

 

「何よこの虫!?」

 

「み、ミカンさん!虫って何のこと!?」

 

まるで小さい注射器に羽が生えたかのような生物らしきものの頭が、落合の手の甲を刺していた。そしてその注射器のような頭から何か流し込んだかのようにみえた。

 

落合がまるで見えてないような言い方も気になるが、質問する前にミカンは行動する。

 

「この!」

 

即座にミカンは彼女の手の甲に止まっていた注射器のような虫を、裏拳ではたき落とした。

 

「さ、寒い、寒いよミカンさん……」

 

「す、すごい熱……!?」

 

ミカンは震え始めた落合のおでこを手で触ると、あり得ないほどの体温になっていた。いくら何でも虫から注入されてから効果が出るまでの時間が短すぎる。

 

「病原菌にしろウイルスにしろ、あんな虫見たことないし、何より突然現れた!もしかしたらこれが敵の能力!?」

 

「ミカン、周り見ロ!」

 

ウガルルが声を張り上げるので落合から目を外し周りを見渡すと、先ほどの虫が何匹も周りを飛んでいた。

 

「ウジャウジャいるわね、気持ち悪い!」

 

「どうかされましたか?」

 

蹲っている落合に気づいた女性の看護師が寄ってくる。その近寄り方はあまりに無防備であるため、ミカンはその様子から看護師は戦闘の素人だと言うのは判断できた。

 

だがそれよりも、看護師の周りが問題であった。

 

「看護師さん、肩!肩の周りに虫がいるわ!早く追い払って!」

 

ウジャウジャと先ほどの虫が看護師の肩に何匹も乗っており、頭の周りにも数匹集っていた。ただでさえ虫が得意じゃないミカンにとって気持ちの悪い光景である。

 

「何を言っているんです?何もありませんよ?」

 

「……見えてないの!?」

 

ミカンの言葉通り自身の両肩を見た看護師は、何も見えてないかのように不思議そうな顔をした。

 

「そうか!落合さんも看護師さんも見えてないということは、この虫は能力者による攻撃!」

 

能力者の能力は、基本普通の人間には見えない。それは魔力や妖力の見えなくする技法と同様である。故にこの虫は何者かによる能力であることが確定する。

 

そしてそんな虫から出た症状は、通常の病気よりも強力であろうことは予想がつく。つまり急いで能力者を見つけ出さなければ、虫に侵された人間の命が危険ということだ。

 

「落合さん、こんなことしたやつを今からぶっ飛ばしてくるから、ここで休んでて。看護師さん、その子具合が悪いのでよろしくお願いします!」

 

「急ぐゾ!」

 

「あ、病院内は走らないで!!」

 

ミカンとウガルルは虫を殺しつつ落合を看護師に任せ、病院内の捜索に打って出た。

 

患者や病院のスタッフに接触しないよう素早く廊下を移動する。しかし思っていた以上に病院は大きく、そして能力者の領域はこの病院を覆えるほど巨大であった。

 

「ミカン、どうやって見つければイイ?」

 

「イチイチ聞き込みなんて知っている暇はないわ。怪しいやつは全部死なない程度にぶん殴りなさい!手分けして探すわよ!」

 

「ワカッタ!」

 

何ともひどい作戦である。9割以上の人間は関係ないが、見つけ出すには非常に手っ取り早い方法である。

 

先ほどの落合の様子からして時間の勝負である。ミカンは上の階から、ウガルルは下の階から探すことにした。

 

「そうは言っても医師だけでも何人いるのよ……!?」

 

「君、廊下は───」

 

ミカンは注意しようとした壮年の男性医師の背後に周り、首筋に手刀を食らわせた。首を落とさないよう加減しながらであるが、一瞬で気絶させることに成功する。

 

「何か犯人捕まえる前に、私が危ない気がするわ」

 

せめて監視カメラに映らない位置で気絶させようと誓うミカンであった。

 

 

 

一方ウガルルはまだ誰も殴っていなかった。というのも、出会う医師はいなかったり、看護師や他のスタッフも患者に対応中だったのだ。能力を使用しながら患者を診て……は難易度が高すぎるだろう。

 

なので目の前にいた手の空いている看護師に声をかける。同じ職場であれば変な奴がいればわかるはずだからだ。

 

「おい、何か怪しい医者いないカ!?」

 

「ど、どうしたの?君?」

 

「えっと、変な虫操っているやつがミカンの友達病気にシタ!早く見つけないと大変!」

 

看護師からすれば意味がわからない訴えである。しかし虫に刺されて病気になった、ということはアレルギー症状の可能性があると頭の片隅で思いつく。

 

そこへウガルルの大声に反応したのか、1人の女性医師が近寄ってきた。

 

「どうしたの?」

 

「あ、神崎先生。何かこの子のお友達が虫に刺されて具合が悪くなったそうで……」

 

「早く犯人見つけたい!変な医者わかるカ!?」

 

神崎と言われた女性医師は、メガネの縁を少し撫でて考えている様子だ。長い黒髪でスタイルも良く、街中で歩いていれば人目を惹く理知的な印象のある容姿をしている。

 

「とりあえずその子は処置室に運ぶ必要があるわね。ああ、あと他のスタッフにも変な人間がいたらすぐ通報するように伝えて」

 

「分かりました!」

 

看護師は素早く行動を始めた。部屋を出た看護師を除き、小さな部屋にはウガルルと

神崎先生しか今はいない。ウガルルは早く行動したくてソワソワしていた。

 

「お前も変な医者探すの手伝ってホシイ!」

 

「わかったわ。じゃあ早く出ましょうか」

 

「ウン!」

 

神崎の言葉に従い、クルリと扉の方を向いてドアノブに手を伸ばす。

 

───瞬間、殺気を感じた。

 

左手を薙ぎ払うように振おうとしたウガルルの行動は遅かった。神崎は右手を伸ばし、ウガルルの後頭部、頸椎、胸椎、腰椎を突いた。

 

神崎への攻撃が届く前に、ウガルルの体全体が痺れたように言うことを聞かなくなった。自由が効かなくなった体はそのまま前のめりに倒れる。

 

ウガルルは動かそうとしても、体はピクリとも動こうとしなかった。声を発することさえできなかった。

 

「手も足も声も出ないでしょう?神経を弄って随意筋をほぼ麻痺させたわ」

 

先ほどまでの理知的な印象からは一変し、得体の知れないほど不気味な女の顔を覗かせている。

 

随意筋は大雑把に言えば自分自身で動かせる筋肉のことである。その随意筋をほぼ麻痺されたウガルルは身動きひとつ取れず、ただ神崎の言葉を聞くことしかできない状態だった。

 

そんなウガルルのそばにしゃがんだ神崎は右手を振り下ろすと、ウガルルの左手首を切り裂いた。

 

手首を切断するほどではないが、深く切り裂かれた手首から溢れ出た血が白い床を汚していく。

 

「ふふ、白昼堂々、通り魔に襲われる少女。そしてそれを助ける優しい神崎先生。目を逸らすには良いシチュエーションね」

 

「(こいつ強い……まさか能力者!?)」

 

そこへ扉が開く。先ほどのウガルルが倒れた音を聞きつけたのか、医師数名と看護師が駆け寄ってくる。

 

「きゃあー!?」

 

「神崎先生、これは……!?」

 

「(騒ぎが大きくなるのは都合がいいわね……)今スタッフになりすました変な男がこの子を切り裂いて逃げていったわ!警察に連絡して、スタッフには注意を呼びかけて!」

 

「「はい!」」

 

「(こ、こいつ……!?)」

 

ウガルルにはわかった。犯人を男と仮定させて自分を疑いの目から逸らそうとしているのが。思い切り殴ってやりたいが、指一本動かせない状況は、非常に歯痒かった。

 

つづく




長くなったので前後半で分割。
もろ仙水の仲間の神谷先生ですが、結構あの先生好きなんですよ。
能力者なんだけど意外と接近性を好む感じが。セリフは妙にゲスいけど、最終的に整形して人生結構成功しているという、何だが現実でありそうな話になっている辺りが。
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