まちカド☆白書   作:伝説の超浪人

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あんまり進まない話。状況報告と相手の能力の考察ってオレは好きですが、皆さんはどうでしょうか?


46話「那由多、襲来です!」

襲撃された翌日。私たちがいるここはスイーツガーデンというスイーツ食べ放題のお店。

普段の作戦会議は我が家があるばんだ壮でやるのですが、今回は人の目がある場所でやることにしました。

 

人の目があれば敵は能力戦など早々仕掛けて来ないだろう、という判断からです。

 

私は昨日の遊賭の戦いを、ミカンさんは病院での戦いを説明しました。まさか同じ日に2ヶ所同時に、しかもほぼ同じ時間で戦っているのは予想外でした。

 

「ミカンとウガルルは問題なしだけど、シャミ子と浦飯さんの2人がかりで負けるとは……」

 

今回何も襲撃されなかった桃は桃のケーキを食べながら言いました。何で桃だけ何もなかったんでしょうか?不公平です!

 

「しょうがないじゃないですか! 相手はゲームが上手い人でゲーム以外は使えなくする能力だったから、こっちは妖気が使えない状態だったんですよ?勝てっこないですよ」

 

「ケッ、格ゲーだったら負けなかったぜ」

 

能力戦にも関わらず、まさか仕掛けて来るのは純粋なゲーム。しかもトランプなのは流石に想定外です。

 

浦飯さんのいう通り、TVゲーム、私ならレトロゲーの勝負だったら十分勝ち目はあったと思います。

 

大体私はあまり学校行ってなかったし他の人とトランプをした記憶があまりないので、そういう意味でも今回は不利な条件でした。

 

遊賭の能力は最近杏里ちゃんからいくつか借りて読んでいるチートな主人公でも、結構負ける人たちは多いんじゃないでしょうかってくらい能力潰しの領域でした。

 

アレは能力者に対して能力を使わせない……カウンターの能力なのでしょう。初っ端からそんな相手が来るのを予測して勝てというのは、かなり酷ではないのでしょうか?

 

「でも負けは負けでしょ。小倉が来なかったら死んでたよ、2人とも」

 

「「ぐぬぬ!」」

 

桃は私たちの言い分をバッサリと切り捨てました。確かに相手が親切に能力を教えてくれるなんて、まずあり得ないでしょうし、わからん殺しして来るのは普通でしょう。

 

とはいえ、桃だってあの相手には勝てるか分かりません。それなのに一方的に切り捨てられたのは悔しいです!

 

「ケッ、桃だってあいつと戦ったら絶対負けんぜ!オメー不器用だからよー!」

 

あ、浦飯さんてば素直に言ってしまった。

 

桃も「あん?」とか言って、左手で持っている水の入ったグラスにヒビが入ってますし、かなり効いているようです。

 

「よし、浦飯さん、もっと言え!」

 

「シャミ子も煽らないの。でもそんな能力者がいるんじゃ、個別に行動すると危険ね。相手の能力が事前にわからないのは厄介だわ。

こっちは格闘戦ができたから何とかなったけど」

 

皿いっぱいに取ってきたスイーツに対し、躊躇なく柑橘系の汁の雨を降らせていたミカンさんは手を止めず言いました。

 

ミカンさんの相手は、お医者さんだったそうで毒みたいなので患者を弱らせて、自身はナイフのような素手で切り裂いてきて自分も治せるとんでも能力者だったそうです。

 

ちなみに浦飯さんも昔同じような能力者と戦ったそうで、殺しかけたらしいです。というか浦飯さん相手によく生きてましたねその人。

 

「しかし変。私も尾行されてたし、2組ともその日のうちに、同じ時間帯で戦ったんでしょ?偶然にしては出来すぎる。」

 

さらっと桃は何でもないかのように尾行されていたことを告げました。何で早く言わないんですか!

 

「おい、尾行されてたのかよ?」

 

「遠くから見られているような感じでしたね。場所を掴ませないほどでしたから、結構な手練れでした。罠かもしれないから敢えて放っておきましたが」

 

「Oh……」

 

「そんな腕利きもいて、私たちが戦ったのは魔法少女でも魔族でもない、能力使わない限りは普通の人間っていうのが厄介よね。事前に察知できないわ」

 

ミカンさん曰く、ある程度有名な魔法少女であれば能力は有名だったり噂があるので、ある程度予想がつくから対処しやすいそうです。

 

しかし今回の私の相手だった遊賭は領域の能力以外は完全に普通の人間であり(ヘアースタイルは特徴的すぎますが)こちらに接近されても全然警戒できませんでした。

 

小倉さんが彼を色々尋問などしたところ、県外の高校生だったそうで、能力以外は他の人間と大差ないそうです。

 

また私たちを襲った理由は、能力なしで純粋にゲームを楽しんでいたところ、ある女に負けてしまったそうな。

 

負けた代償として、私たちに能力ありで仕掛けるよう命令してきたそうです。

 

『どんな女かって……あれ、なんでだろう。思い出せないや……』

 

依頼主のことは見た目は若く美人な女だった。それ以外覚えてないそうで、何一つ特徴も分からないと。

 

そんなに都合よく忘れるものか、と思いましたが、結局手がかりなし。彼は今回も負けたので、依頼者がわかったらこっちに連絡すると言ってましたが……。

 

「まず無理でしょうね。また記憶を消されるか、二度と会わないか……」

 

「消されるか、だね。経歴も普通だし、能力に目覚めた一般人で襲わせる……やらせたやつはタチ悪い」

 

「そんで?医者の方はどうした?」

 

ミカンさんによると医者の方は日常を壊してやりたかったと言っているそうです。安全だと思っている人間が危険だと気づいた時の表情の崩れ方が好きなんだとか。滅茶苦茶歪んでます。

 

私たちのことは知っているそぶりでしたが、そこに関しては黙秘しているそうです。

 

口を割らせようにもすでに警察に勾留中で、監視下の元でしか面談できないので聞けることにも限界があるし、実力行使ができないそうです。

 

以上2名の襲撃でしたが、結果で言えば真犯人は不明ということになりました。

 

仕掛けられているのに、こっちは何も分からないなんて腹が立ちます……!!

 

「いやはや、シャミ子たちってばまた大変なんだねー」

 

ずっと黙ってケーキを食べていた杏里ちゃんは感心したように呟きました。

たまたま作戦会議前に会ったので一緒に来てもらいました。街中で最近変わった人がいなかったか、話を聞いてもらおうかと思ったからです。

 

「いやー、その話を聞くとシャミ子たちでも見分けがつかないんでしょ?私じゃ無理だよ」

 

「それじゃあ普段はここら辺で見かけない、変わった感じの人とかは?」

 

「うーん。店の手伝いをしてても、いつも通りだったし……」

 

杏里ちゃんから情報を聞き出そうとしても、街の様子は普段と変わりないそうです。これじゃ肝心の実行を指示しているやつの正体がわかりません。

 

「まぁまだ時間かかるだろうし、とりあえずデザート取ってレモンかけてくるわね」

 

立ち上がったミカンさんは、何個もレモンを用意しつつ、デザートを取りに行きました。

というかほぼ全てのデザートにレモン絞ってくるとは……柑橘系に対してアグレッシブすぎる……。

 

「私はもう少し果物を……」

 

「酒が入ってるやつねーか?」

 

桃が立ち上がった瞬間、浦飯さんは希望を出します。ですが桃はすぐ首を横に振りました。

ここには浦飯さんが満足するようなお酒はないのです。というかスイーツに入っているお酒の量なんてたかが知れてます。

 

「流石にないです」

 

「浦飯さん、もう少し我慢してください……」

 

「オレにはキツイ空間だぜ……」

 

どうやら浦飯さんにとっては女子高生に囲まれながらスイーツ食べ放題にくるというのは拷問のようなものらしいです。

直接戦闘では凄まじく強い浦飯さんですが、こんな感じで精神攻撃すると結構効くんだな、なんて思いました。

 

「おい、シャミ子!テメー今変なこと考えただろ!」

 

思わずドキリと心臓が跳ねるような感覚が私を襲いました。しまった、バレてる!

 

「えぇ!?考えてませんよ、本当ですよ!」

 

「テメーは顔に出やすいんだよバカめ!」

 

「ぐぬぬ……!?」

 

「本当に2人は仲が良いよねー」

 

杏里ちゃんがケラケラ笑いながらマカロンを食べ続けてました。襲撃された後だというのに、どこか緊張感に欠ける空気。

 

でも張り詰め続けるよりかは、今のこの空気のほうが私にとってはありがたいものでした。

 

少ししてスイーツを取ってきた桃とミカンさんも戻り、再度話を続けました。

 

みんなで気になったことが一つありました。

 

「何で私たちが移動した先にピンポイントで刺客がいたか、ってことだよね」

 

「それよ。3組バラバラで行動したのに、シャミ子と桃は尾けられていて、私はすぐに遭遇。相手にこちらの行動を離れていても追跡できる能力を持った奴がいるか……」

 

「もしくは誰かが情報を流しているか、だな」

 

───ギシリ、と空気が固くなる感覚がしました。桃とミカンさんから若干の怒気が感じ取れます。

 

「私たちの中に裏切り者がいるっていうの?浦飯さん?」

 

「別にオレらとは言ってねーよ。オレらに近いやつの可能性もあるっつーだけよ。学校のやつとかな」

 

硬い声で質問するミカンさんに、何でもないかのように答える浦飯さん。その答えを聞くと2人とも若干空気は柔らかくなりました。

 

「いきなりそんなこと言うなんて、ビックリしましたよ!縁起でもない……」

 

「わりーなシャミ子。けどよ、ずっと視線感じてたら長距離でも流石に分かるからな。そうでないとするとやっぱり誰かから情報ゲットしてんじゃねーのかって思うだろ?」

 

確かにずっと監視されていたら誰かしら気づくでしょうし、情報をどこかでゲットしていると考えた方が自然です。

学校の皆さんは良い人ばかりですが、全員知っている訳じゃないし確かに可能性はゼロではないです。

 

「でも、学校の皆さんのことは疑いたくないです……」

 

思ったことを素直に口にすると、浦飯さんは軽くため息をつきました。

 

「あくまで可能性の話だぜ?それにオレもオメーらの学校の連中が進んで情報流すとは思ってねーよ。あるとしたら……」

 

「───操られて情報流したことも覚えてない、とかですか?」

 

「それだな」

 

「相手がどんな能力持っているか分からないってこんなにストレスなんですね……ウガー!腹立ってきました!!」

 

ルールがない以上、どんな能力でこちらを追い詰めてくるか検討がつかないから、あらゆることを想定して考えないといけないのが今の状況です。

 

後手後手になってしまっていて、しかもこちらは解決方法が見つけられないとなるとストレスがガンガン溜まっていき、思わず吠えてしまいました。

 

「落ち着けシャミ子」

 

「しゃうん!?」

 

落ち着かせようとした桃が私の尻尾をグイッと引っ張ってきました。尻尾を急に触るんじゃありません!

 

「いきなり何するんですか!」

 

「焦りは禁物。まずは相手の人数と能力の把握だね。やっぱり無理矢理でも警察に連れてかれた医者の能力者を尋問するか……」

 

「勾留先に忍び込むの?かなりやばくない?」

 

「監視カメラの位置さえ事前に把握できれば何とかいける」

 

「監視カメラが切り替わる時間も計算に入れた方がいーぜ?前に霊界に侵入した時はそれで何とかなったしよ」

 

「こいつらマジやべー……」

 

あまりの無法者的な発言に杏里ちゃんはドン引きでした。国家権力の建物に対して侵入を行おうとしている同級生を見るのは私も初めてです。

 

しばらくそれから話し合って、リコさんの能力なら色々葉っぱなどで監視カメラとか誤魔化しが出来るんじゃない?ということで相談しに行くことにしました。

 

お店を出た私たちは、夕陽が眩しく照らしている商店街の歩行者天国を歩きます。いつもと変わらない商店街の様子は、まるで今の私たちとは関係ない世界のようでした。

 

「でもまどろっこしいですよね!もっとこう、ガーッと攻めてくるなら凄い楽なんですけど!!」

 

イチイチ頭を使って能力だの何だの考えるより、真正面から白黒つけた方がよっぽどスッキリします。というか今のところ凄いストレスにしかなってません。

 

浦飯さんも何度も「すげ〜わかる」と言ってくれてますし。やっぱり勝負はわかりやすい方が好きです!そう訴えると皆頷いてくれました。

 

「こちらのストレスとか精神的に攻撃している部分はあると思う。もし出張ってくるとしたら、相手の準備が完了した時だと思う」

 

「そうですかねぇ。ところで、相手の準備って?」

 

「それは───」

 

桃が言葉を口にする前に、杏里ちゃん以外の全員が強い視線を感じた後ろを一斉に振り向きます。

 

夕方の商店街がまだ人がチラホラいる。ですが視線を送った人物はすぐわかりました。

 

薄いピンクがかった白い髪はおさげにして、僅かに尖った耳の女性。リボンも帽子もスカートもシャツも上着も白い髪とは対照的な黒。

 

見間違いようがありません。あの特徴的な容姿、そしてこの気配は……!

 

「那由多誰何!」

 

「久しぶりだね、桃ちゃん」

 

まるで旧友に会ったかのような親しげな様子で、現れた那由多誰何。薄く、そしてどこか君悪く微笑む。

 

「そしてツノの魔族も、久しぶり」

 

会いたかったよ、と語る温度を感じさせない声は、私の体をブルリと振るわせました。

 

つづく

 




記憶奪うとか洗脳の能力の恐ろしさは味方を疑わないといけない、と言う疑心暗鬼に陥る部分がかなりいやらしいと思います。
だから味方キャラはその手の能力者が少ないんじゃないかと思います。
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