まちカド☆白書   作:伝説の超浪人

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都市部って喧嘩できる場所少ない気がする。


47話「滅茶苦茶舐められてます!」

那由多誰何。かつてこの街の魔族を喰って自らの願いの糧にしようとした魔法少女。

桃の機転で間一髪防ぐことができて魔力を削られたはずですが、目の前の彼女はかつて以上のパワーを感じます。

そしてその横には黒い少年が1人。眼帯をしていて、黒いコートのようなものを着ています。

 

「数年ぶりだね桃ちゃん。元気にしてたかな?」

 

右手を軽く振ってくる様子はまるで友人に会ったかのように気楽なものに見えます。しかし今までの経緯を知っていれば気味が悪いとしか思えませんでした。

 

「あなたにそんな挨拶されるほど仲がいいとは思ってませんが?」

 

「つれないなぁ。同じ平和を願う魔法少女同士、仲良くしていた方がいいと思うけど?」

 

過去にあれだけのことをしておいて、あっけらかんと言うこの態度。桃は忌々しいとばかりに顔を顰めました。

 

「昨日能力者を差し向けたのはあなたですか?」

 

「そうだよ」

 

ズバッと聞いた桃に対し、何も隠さず那由多はYESと答えました。隠す気ないんでしょうか?

 

「前にあった時より時間も経っているし、どんなものかと思ったけど……」

 

ふぅとため息をつく那由多。なんだあの心底バカにしたようなため息を見て私は殴ってやりたい気持ちがアップしました。

 

「拍子抜けだよ。桃ちゃんは監視だけにしておいたけど。

こちらが送った能力者にツノの魔族は完敗してるし、そっちの魔法少女は割とギリギリ。あんまりいい腕とは言えないね」

 

「なんですとー!?トランプ勝負じゃなくて素手のタイマンならいけてました!」

 

「格ゲーなら完封だったぜ!」

 

「病院の人を人質に取るようなやつ相手だったんですけど!?」

 

3人とも一斉に那由多に叫びますが、那由多はこっちをチラリと見た後、無視してすぐ桃に視線を戻しました。

 

「まぁ桃ちゃんや魔族が生きていることを確認するためでもあったしね」

 

「……またこの街の魔族を襲いにきたんですか?今度はこのシャミ子を」

 

ちらりと桃は私を見て、視線を那由多に戻します。その質問に対し那由多は人差し指を顎につけて少し悩んでいる様子でした。

 

「それも目的の1つだね。けど本当にやりたいことは違うんだ」

 

「ぜひ教えてほしいですね。言わなければ力づくですが」

 

「力づく」と発した時点で桃の体を覆う魔力は十分に漲ってました。もう完全に戦闘態勢です。

にも関わらず、那由多の体を覆う魔力にはまるで変化がありません。

決して那由多が弱いからと言うわけではありません。むしろ以前よりさらに実力の底が見えないと言う印象を受けます。

 

「もう一度言うよ桃ちゃん。今からでも私の仲間にならない?世界平和のためにさ」

 

「……はっきり言いましょう───世界平和なんて興味ありません」

 

「貴様……!?」

 

完全な桃の拒絶に対し、那由多の横にいた少年は一歩踏み出そうとしました。その様子から那由多の考えは知っているようです。

 

「いいよ黒影」

 

「……失礼いたしました」

 

軽く声をかけられただけであっさりと黒影は引っ込みました。完全に部下のような位置にいるようです。

断られた那由多は少し嬉しそうな表情を浮かべ、ミカンさんに視線をずらします。

 

「そこの魔法少女の君はどうだい?ぼくのことは桃ちゃんから聞いているだろう?」

 

「お断りよ。ようやく普通の子みたいに楽しく学校に行けるようになったのに、何で人類を物理的に1つにすることに協力しなきゃいけないのよ」

 

「残念」

 

肩をすくめて少し落ち込む様子の那由多。しかしこの人は会話の内容は吹っ飛んでますが、魔法少女には普通に接しますね。

那由多は視線を私にずらすと、先ほどとは打って変わって冷たい目をしてました。魔族差別だ!

 

「そこのツノの魔族は夢……いや、人の無意識の領域に干渉してくるような凶悪な能力を持っているんだよ?つまり簡単に大勢を洗脳できる奴なんだ。

そんなやつを放っておくなんて危険極まりない」

 

やはりあの時桃の過去を見た時に私のことを認識していたようで、随分言い方は酷いですが、私の能力は把握されているようです。

1000年以上の魔法少女としてのキャリアは伊達じゃないようです。

 

「そんな魔族なんていても害悪になるだけだよ。それなら私に食べられて私の魔力になった方が、皆の平和の礎になれる。いいことだらけだと思うけど?」

 

「勝手に人を危険物扱いするな!」

 

私の能力を洗脳やり放題マシーンみたいに言うなんて大変失礼です!確かにミカンさんや桃の心のお掃除はしましたが、洗脳なんてしてないです!

しかも大人しく死ねという態度に、私は断固拒否しました。

 

「じゃあ全く人の心や考え方を弄ったことはないと言うのかな?

君が人のために良かれと思ってやったとしても、それは『君が良いと思う現状』に持っていくように人の心を誘導したとは考えられないかな?」

 

「それは……」

 

那由多の言葉に、私は言葉を詰まらせました。

 

確かに心の中の掃除したことで心の内を読んでしまい、洗脳じゃないにしろ考え方を変えてしまった部分はあるのではないか?

指摘されて今更ながらそんなことを考えてしまいました。

 

「そんな危険な魔族が野放しになっていては平和なんて夢のまた夢さ。ぼくの考えが実現すれば───」

 

「くだらねーことグダグダ言ってんじゃねーよ」

 

そんな私の考えを打ち切ったのは喧嘩腰の浦飯さんの声でした。

 

「このバカにそんな高度な誘導ができると思ってんのか?」

 

「ちょっと?」

 

庇ってくれて少しばかり感動したのに、即座に罵倒されて思わずツッコミました。おい、他の皆も頷くんじゃない!

 

「第一コイツの能力を悪用するんなら、金持ちの夢に入ってコイツの家の口座に大金を振り込ませたり、学校の先公の夢に入って成績を全部MAXにしたり色々できんぜ」イカサマシホウダイダゼ

 

「この人極悪です!?」

 

なんでそんなことをすぐ思いつくんでしょうか。浦飯さんに私の能力を使わせたら大変なことになるのは間違いありません。

おい桃、「その手があったか」と頷くんじゃない!

 

「いかにも低俗な魔族が考えそうなことばかりだね。だから危険だと言ってるんだけどね」

 

「けどよ、シャミ子はそんなことに能力は使ってねー。人を洗脳するとか、くだらねーことに能力を使わない奴だってのは皆知ってんぜ」

 

浦飯さんはハッキリと私のことを庇ってくれました。そして聞いていた皆も同調するように頷いてくれました。

魔族になってからずっとそばで見守ってくれている人がハッキリと言葉に出してくれるのはすごく嬉しくて、思わず邪神像を強く握りしめてしまいました。

 

「あ、ありがとうございます浦飯さん……」

 

「気にすんな。那由多、テメーはオレらが気に入らねぇし魔族をぶっ殺してぇ。オレらはテメーをぶっ飛ばしてぇ。ならやることは一つだろ」

 

「……ふふ、君は単純だな。だがそれもいいだろう」

 

その時、那由多の体を覆っていた魔力は力強さを増し、ハッキリと見えるくらいになりました。明らかに戦闘態勢です。

 

「ならまずはツノの魔族からだ。そのために今回は会いにきたんだからね」

 

「いいでしょう!私が相手になります!」

 

掌に拳を打ち合わせ一歩前に出ます。だがすぐ桃に尻尾を引っ張られました。

 

「イターッ!?何すんですか!」

 

「このおばかシャミ子!どうしてタイマンしようとするかな!?」

 

「勝負挑まれているのは私なんですよ!当然です!」

 

「皆で戦えば一発じゃないの」

 

「おいおい、タイマンの指名されたのはシャミ子だぜ?タイマンはな、邪魔されんのが1番腹立つんだ。大人しく見とけっての」

 

「浦飯さんなら絶対言うと思った……!」

 

やはり一斉にかかるといくら相手が悪い奴でもなんか引け目を感じちゃうというか、モヤモヤするんですよね。

 

そこへ浦飯さんが邪神像の表情を少し歪ませ、小声で話し始めました。

 

「……それによ、あいつの能力は喰うことで記憶を奪う。けど戦闘用の能力はまだわかんねー。シャミ子がまず戦って引き出せるかもしんねー」

 

「……シャミ子には危険すぎます」

 

「でも桃、私から見てもあいつはシャミ子のことを完全に見下して油断してるから、そこに付け入る隙はあるように見えるわよ?」

 

そこまで考えてませんでした。単純に過去のアレコレでムカついてたのと、馬鹿にされたのに腹が立ってぶっ飛ばしたい!と言う気持ちでいっぱいだったのですが、何やら良い方に解釈されてます。

 

「ミカンの言う通りだ。能力さえわかればこっちのもんだぜ。だろ、シャミ子」

 

「そ、そうです!私に任せてください!!」

 

ここは乗っておきましょう。腰に手を当てて堂々とします。

それに本当に別の能力があるとして、全員で挑んで全員が能力に捕らわれたらそこで終わりです。

かなり怖いですが、誰かがやらないといけません。

 

それにいきなり浦飯さんが戦ってなんらかの能力で返り討ちに遭ってしまっては、こちらの勝ち目がほぼなくなります。

 

なら浦飯さん以外の誰かが言って、後で浦飯さんに援護してもらう方がいいでしょう。

 

「やばい時は頼みましたよ浦飯さん」

 

「基本タイマンは邪魔する気はねーが、まぁまかせとけ」

 

「……それじゃあ、私が、像を預かるよ」

 

どこか途切れ途切れに言葉を吐く杏里ちゃん。少し不思議に思いましたが、那由多がいるせいでこうなっているのだろうと思い、そのまま言われた通りに邪神像を杏里ちゃんに預けます。

 

「杏里ちゃん、邪神像を頼みますね」

 

「…………うん」

 

杏里ちゃんに邪神像を渡した後も杏里ちゃんは非常にぼーっとしている感じでした。目の焦点があってないというか、いつも明るい杏里ちゃんにしては何か変です。

 

「杏里ちゃん?大丈夫ですか?」

 

「え、あ、うん……大丈夫」

 

「……そうですか?じゃあ行ってきます」

 

ファイト、とかしっかり、という皆の声を背に受けながら私は数歩前に出て那由多と対峙します。

 

「ここじゃ迷惑ですし、場所を変えたいんですけど」

 

今は商店街の歩行者天国。人通りが少なくなり始めているとはいえ、まだまだ人目につく場所。ここで戦うと色々迷惑がかかると思っての提案です。

 

「そんなに迷惑がかかるほどの戦いになるとは思えないけど……」

 

「なんですと?」

 

「まぁ関係ない人間を傷つける訳には行かないからね、念の為場所を変えてあげよう」

 

「イチイチ言い方が腹立ちますね……!」

 

非常にカチンと来ました。私じゃ大した勝負にならないと面と向かって言われたのです。

なら思い知らせてやる!

 

少し歩いた場所にいい感じに人気がない広場があったので、そこにやってきました。ここなら通報されて中断などもなさそうです。

 

「よぉし!危機管理ー!!」

 

合言葉と共に私は変身します。変身したことで妖気も充実し、体から力が漲る感じです。

 

しかし那由多はそれを見て薄く笑うだけでした。

 

「さぁ、どこからでもどーぞ」

 

「その余裕、ぶっ飛ばしてやります!いくぞー!」

 

やや左側から攻めるように突っ込み、左手の妖気を他より強くする。

左から攻めると見せかけ、奴の拳が届かない一歩前の距離で右斜めにスライドするように移動。

 

そして素早く妖気を移動させた右拳を奴の顔面に振るいました。

捉えた!

 

「かはっ」

 

拳の当たった感覚はなく、振り抜いたと同時に感じるのは腹部への衝撃。

 

当たると確信したはず拳は、奴の左手の甲が私の拳を外側に逸らしたと同時に、残った右の掌底が私の腹部を直撃します。

 

「それ」

 

お腹への衝撃で一瞬止まった私は、逸らされた拳を軸に投げられました。

 

「なんの!」

 

だが何度も投げられた経験のある私は、先に右足を着地させ、バネのような反動で左足による真っ直ぐな蹴りを那由多の顔面へ繰り出します。

 

「おっと」

 

蹴りは軽く顔を逸らすことで避けられ、那由多は後方へ数歩下がります。

体勢をすぐ整えた私は、勢いをつけて右ストレートを奴のお腹に向けて繰り出しました。

 

「おりゃあ!」

 

当たる!

 

そう思った瞬間、私は後方へ吹き飛ばされてました。腹部から走る衝撃は体を後方へと吹き飛ばし、何度か地面を転がることでようやく止まりました。

 

「「「「シャミ子!!」」」」

 

「なんのぉ!」

 

追撃を警戒してすぐ立ち上がった私ですが、那由多は先ほどの位置から全く動いてませんでした。半身になり、右腕を突き出した形で止まっています。

 

「おぇ……ぐぬぬ、何ですか今の」

 

先ほどから殴られるというより、衝撃をそのまま返されているという感じがするのです。

 

「結構派手に飛んだね。パワーはあるようだ」

 

全く私のことを敵として見ていないかのような余裕の表情に、私は余計に腹が立ちました。絶対ヒィーって言わせてやります!

 

つづく




那由多はテクニカルキャラだろうなって原作見た時から思ってました。
原作だと槍みたいなものを使ってましたが、攻防の見栄えがいいので素手に変更しちゃいました!すみません!
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