まちカド☆白書   作:伝説の超浪人

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友達が洗脳されるルートは色んな主人公が通っている道。


49話「杏里ちゃんの洗脳、卑劣なやり方!」

「いつからだ、答えろ那由多誰何!」

 

私が激しく叫ぶ様子を見て、那由多は横にいる杏里ちゃんの頬を撫でます。自分のものであるかのような行為に生理的な嫌悪感しか抱くことができません。

 

霊丸を撃とうと右人差し指に妖気を集中させますが、ミカンさんに止められました。

 

「撃ったら杏里も巻き込むわ」

 

「おのれぇ……!」

 

その声が聞こえているのか、那由多はニンマリと笑います。

 

「いきなり回答を言ったらつまらないだろう?当ててみてよ」

 

「テメェ、ふざけてんのか?マジでぶっ殺すぞ!!」

 

杏里ちゃんに持たれたままの邪神像から、浦飯さんも怒りを露わにしてます。

文字通り身動きできない浦飯さんの言葉に、那由多は鼻で笑うだけ。益々浦飯さんは怒りを強くしていきます。

 

桃は大分考えているようで、しばらくしてから口を開けました。

 

「……杏里がシャミ子と私を引き合わせたのは高校から。だから入学式前後?」

 

「ブー。不正解です。もっとよく考えて」

 

イチイチ腹の立つやつですね!杏里ちゃんと浦飯さんを奪還できないか、ほんの少しすり足で前に動きますが、那由多は魔力を強めて牽制してきます。

ミカンさんもボウガンを撃てる準備はしているみたいですが、那由多の仲間の男がいつでもカバーできるような位置取りをしています。ええい、忌々しい。

 

桃はしばらく考えて、とても顔を顰めた後那由多を睨みつけました。

 

「杏里が中学で私と出会う以前……あなたがこの街で魔族を喰べている時に洗脳した」

 

口に出すのも嫌がるほど、恐る恐る自身の考えを口にする桃の様子を見て、那由多は嬉しそうに拍手しました。

私はどう反応していいか、一瞬言葉に詰まりました。

 

「大正解だよ桃ちゃん!景品はないけど勘弁してね」

 

「そんな前から!?」

 

「ふざけやがって。趣味がわりーぜテメーはよォ」

 

「……でもそれじゃおかしい。お前の能力は喰べた魔族の存在を人々の記憶から消すもののはず。

杏里は魔族じゃないし、杏里の状態から見て意識がほとんどないように見える。明らかに違う能力だ」

 

桃のその言葉に、那由多はさらに拍手しました。こんなに嬉しくない拍手があったでしょうか?桃は不快そうに表情を歪めています。

 

「この洗脳に関しては確かに別物でね。これを使ったのさ」

 

那由多がポケットから取り出したのはペンライト。あんなもんで洗脳できたと?

 

「これはぼくの仲間の発明家が作ってくれた魔道具でね。

ぼくの魔力をペンライトに込めて、目に光を当てた後命令をする。

すると光と言葉が視神経を通って脳に到達し、記憶の奥底へぼくの命令が伝わるというわけさ。

そうすることで長い時間が経っても、ぼくの声かけで動くわけ。

まぁ魔力や妖力がある程度ある相手には抵抗されて効かないけどね。逆に何の能力もない脳の発達が成熟し切ってない子供にはよく効くんだ、これ」

 

くるくるとペン回しをしながら解説をする姿に、那由多以外の全員が表情を歪めます。コイツは人を人と見ていない、物扱いしているとしか思えません。

 

「テメーは心底クズだな。ガキの頃から関係ないやつを巻き込みやがって」

 

「確かに良心は痛むよ?だが最終的に全ての生物が一つになるんだ。多少の犠牲はやむを得ないよ」

 

「お前は!杏里ちゃんだけでなく、他の刺客の人たちもそれでやったんだな!」

 

そう言えば今まで戦ってきた人たちは、依頼したり指示してきた相手の顔をほぼ覚えてないといってました。能力がある人間でも、抵抗力がなくなるほど弱った後なら、この洗脳が効くのではないか?そう考え発言しました。

 

その言葉に皆が私に振り返ります。那由多は少し意外そうな表情を浮かべました。

 

「存外頭が回るじゃないか。そう、この街に向けた刺客は大体この洗脳をしてある。闇御伽3人衆は黒影だけどね」

 

予想は当たっており、素直に那由多は認めました。あのひどい御伽話の妖怪は黒影という那由多の隣にいた少年がやったということで、那由多に名前を呼ばれて少し頷いてました。

 

「……随分回りくどい真似をする。杏里を洗脳しているのであれば、街や姉さんの情報も簡単に引き出せただろう。

その上で杏里に連絡させていれば、わざわざお前自身が来る必要もなかったはず」

 

「杏里に私への連絡手段を教えていたら、そこから何らかの能力でぼくへ辿られるかもしれないだろう?

だから杏里はあくまで桃ちゃんたちの繋ぎ役。情報としてはあまり期待してなかったのさ。

街がどう変わっていくか。きっと桃ちゃんはあのツノの魔族と近い将来出会うだろうと予測し、仲良くなっても問題ない第3者を入れること。それが必要だった」

 

「必要なこと、ですか?」

 

そんな前から洗脳することが必要なことだったんでしょうか?この場で浦飯さんと杏里ちゃんを人質にとるという戦法をするためならそんな前から仕込みをする必要性はないはず。

 

那由多は私を指差しました。

 

「ぼくのターゲットは桃ちゃんじゃない。お前だよツノの魔族。

桃ちゃんが小さい頃この街で抵抗した時、お前と男が見ていただろう」

 

「やっぱり見えていたんですね……」

 

「しつこい奴。よくもまぁ、あんなこと覚えてるもんだぜ」

 

那由多からはあの時の件で敵視されているかなーとは思ってましたが、那由多は私より桃に執着しているとばかり思ってました。

 

「ツノの魔族を見てピンときたよ。お前の親父と同じ一族の魔族だってね。お前たち一族の能力は強力だ。だから欲しかった。

以前はお前の父親をターゲットにしたが桜ちゃんと一緒に抵抗してきて失敗に終わった。しかも2人ともどこかに姿を暗ますし、足取りも追えない。全く散々だったよ」

 

「まさかうちの工場で桜さんたちが戦闘した相手ってあんたのこと!?」

 

「何だい。君の工場だったのかい?それは悪いことをしたね。いやー、魔族だけ殺すつもりだったのに、桜ちゃんがすごい剣幕で殺しに来るんだもん。

だからやりすぎちゃった」

 

これでかつて桜さんたちが工場で戦った相手がわかりました。

 

その戦いで桜さんが必殺技で那由多を撃退した痕が工場に残っている。

 

以前桜さんはお父さんを封印するしかなかったと言っていた。封印した理由がお父さんの能力を第3者に使われないようにするためであったら……!

 

「お父さんは───!」

 

だがここで私は口に出すのを思い止まりました。

 

那由多はあの口ぶりだと、お父さんが段ボールになって封印されていることを知りません。もしお父さんが生きていることがわかったら何をされるかわかったものじゃない。

 

「お前のお父さんは捕えられなかったよ。能力を使わせてから殺してやろうと思っていたけど、今となってはその能力はもういらないけどね」

 

どうやら私が那由多をお父さんの仇だと思っている、とあっちは解釈してくれたようです。喋るとボロが出そうだから、このまま黙っておきましょう。

 

「いらないですって?代役でも見つけたのかしら?」

 

「その通り。だがそうなると能力に覚醒したそこのツノの魔族に横槍を入れられる恐れがある。つまぼくは君を殺したいのさ」

 

「バカじゃねーか。成長する前のシャミ子を狙えば一瞬で殺せたぜ。わざわざ成長するのを待つ必要ねーだろ」

 

確かに浦飯さんの言う通り、今はある程度戦えますが魔族に覚醒する前に狙われれば一発アウトでした。何故ここまで待つ必要性があったのでしょう?

 

「バカは君だよ」

 

「なんだとコラ!」

 

「この街全体に結界が張られているし、さらに魔族の家には害することができる人物を弾くことができる結界が張られている。

桜ちゃんが作った結界は優秀でね……無理矢理破ろうとしたらかなり力を消耗する。そこから戦闘となると若干不安要素が入るのさ。

だからなんの力もない人間を橋渡しにすれば良いと考えたのさ」

 

「だから杏里ちゃんを!」

 

「せっかくだし桃ちゃんのお友達ができればいいなと思って同世代の彼女にしたんだよ?昔から桃ちゃんは全然友達作らなかったから困ってたんだ。

まぁ杏里がツノの魔族と桃ちゃんだけでなく色んな魔族とかと友達になったのは嬉しい誤算だったけどね」

 

本当に親切でやった、と言わんばかりの口調。浦飯さんなんか唾を吐くような音がしてました。

 

「吐き気がすんぜクソヤロー。周りくどい真似しやがって」

 

「だがその周りくどい手のおかげで杏里とツノの魔族は友人となり、桃ちゃんとも繋がれた。

残りの魔族も見つけ出してくれたようだし、ぼくとしては嬉しい限りだよ」

 

「人の心をなんだと思ってんのよあんたは!」

 

他人の精神を支配して思うように操っていることに何の罪悪感も持たない那由多に、ミカンさんは語尾を荒げます。

 

杏里ちゃんが今まで仲良くしてくれたのは洗脳されていたから?じゃあ私が困っているときに助けてくれたのも打算だった?

 

そう思うと良くない方、良くない方へ考え方が進んでいくような気がします。悪いのは洗脳していた那由多なのに。

 

「平和になるのであれば、過程なんてどうでもいいと思うんだよね。大事なのは結果だよ。

ぼく個人としてはツノの魔族に対して今まで暴力的じゃないやり方を進めていたんだ、褒めてほしいとまで思っているんだよ?」

 

「どこが暴力的じゃないってのよ、全く」

 

あまりに身勝手な言い分。

桃や私の家族、そして杏里ちゃん。周りの人たちの人生を滅茶苦茶にしておいて、今度は私を殺す?

 

「───ふざけるな!」

 

私に怒りに反応して、私の妖気が膨れ上がります。そんな私の耳に、小さな声が聞こえてきました。

 

「……ごめん」

 

桃の声が小さく聞こえてきました。下を向いていた桃は、覗き込むように私を見ます。

 

「桃?」

 

「……私が那由多の企みに気づければ、シャミ子が狙われることはなかったんだ。ごめん、シャミ子」

 

桃は那由多の洗脳を見抜けず私を巻き込んだことに責任を感じているようです。

全部悪いのは那由多なのに、何も悪くない桃が落ち込んでいる。

 

私は足音を響かせながら、桃に近づき、桃の正面に立ちます。

 

「ごめん、シャミ───」

 

ゴッ、とかなり重い音が響きました。私が桃に頭突きをした音です。桃は額から煙を上げて地面に倒れ込みました。

 

「ちょっとシャミ子!何やっているのよ!」

 

「ミカンさん、これは気合いを入れているだけです。全部悪いやつがいるのに、変に責任感じているアホ桃に!」

 

よろよろと立ち上がる桃は立ち上がると少し睨んできました。

 

「でも、私が元はと言えば巻き込んで」

 

「だからここであいつを倒せば全部終わりでしょう!難しく考えるな!」

 

桃はハッとしてこちらを見ます。確かに杏里ちゃんが洗脳されていて悲しかった。

でも洗脳した原因をぶっ飛ばせば全て解決なんです!

 

それにもう悲しいを通り越して、怒りが後から後から湧いてくるのです。もう抑えきれません!

 

「だから那由多誰何!勝負だ!」

 

「……フフっ」

 

那由多誰何に指差すと、目を瞑って笑ってました。小馬鹿にしているような笑いです。

 

「何がおかしい!?」

 

「いや、君は単純でいいなと思ってね」

 

それに、と那由多が左の方に視線を逸らす。するとパトカーのサイレンがだんだん近づいてくるのが聞こえてきます。

 

まさかさっきの戦いで誰かが通報したんでしょうか?

 

「警察が来ると邪魔になるから、場所を変えよう。だが場所は君たちが来るように」

 

「なんですと?」

 

『街の中心で待っている』

 

いつの間にか出した討伐カードを掲げて、那由多が宣言する。気づいたミカンさんが咄嗟にボウガンを撃ちましたが、すでに奴らは消えた後でした。杏里ちゃんと浦飯さんを連れたままで。

 

「くそ、連れてかれちゃいました!」

 

「まさか逃げの一手を打ってくるとは思わなかったわ!撃ち抜けなかった!」

 

私はイラついて地面を殴ります。数mのひび割れが起こりますが、この場においてはなんの意味もありません。

 

その間にもパトカーのサイレンは迫ってきてます。

 

「……とりあえずこの場を離れてばんだ壮に戻ろう。もしかするとシャミ子の家族が危ないかもしれない」

 

「ッ……そうですね、急ぎましょう」

 

ようやくいつもの顔つきになりつつある桃の提案に従い、私たちはばんだ壮に戻りました。

 

後手後手に回っている私たち。そして街の中心とは一体なんでしょうか?

 

そんなことをグルグル考えながら、私たちは走りました。

 

つづく

 




魔導具 【催眠ペンライト】
魔力を込めることで光が出るペンライト。光が目から入り込み脳に刺激がいく。
その光を浴びた者は催眠状態になるので、命令すると記憶の奥底へ刻み込まれる。

なお魔力や妖力持ちには基本効かないが、相手が消耗しきった状態やまだ魔力などのコントロールができてない状態であれば効果を発揮する。何の抵抗力もない人間なら確実。

那由多が杏里に行った命令は「桃ちゃんや魔族たちと友達になること。ボクのことは忘れて、名前を呼ばれたら従うこと」である。


今回の最適解は杏里たちが人質になった瞬間、速攻をかけて邪神像を取り返し幽助と入れ替わること。変に躊躇したから逃した感じ。

ただ那由多もそれを考慮したので、わざと今までの洗脳を時系列順で説明し、精神的動揺を図ったという感じ。

魔法少女で修羅場は潜っていようとも、日常の象徴だった杏里が実は……みたいな展開は10代の多感な時期なら動揺して当たり前。

この流れは原作でも来るんじゃないかと勝手に予想してます。
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