でもがんばれゴエモンがやりたいの!!キラキラ道中とか!!(世代バレ)
「シャミ子はん、正直言うてええ?」
こそりと私の耳元で呟くリコさん。私は小声でいいですよと返しました。
「おそらくヤツは真ゲー魔王より強いはずや。そうじゃなければ選ばへん」
それは確かに。自信たっぷりの様子から見ても、まず間違いなく格上でしょう。
「もし負けたら残ったメンバーで脱出した方がええ。肌で実力が感じられんのはほんまに厄介やわ」
「ですね……殴り合いは無理ですしね。さっきから妖気が集まりません」
「ウチもや」
人差し指に妖気を集中させようとしても、全く集まりません。リコさんも同様で、ここでは戦闘行為は不可能ということでしょう。本当に実力がわからないというのは厄介です。
「さてさて、ミヤの出番だからねー。面白いゲームがいいなー」
【レース・マシン・レベルG】
「体を使うゲームが多いなー。ま、でも盛り上がるヤツだからOKっしょ!」
スロットの回った結果はレースでした。難易度はゲー魔王との戦いの場合、MAXレベルなので表記はGとなります。
浦飯さんから聞いた天沼さんの戦いの流れに似てるかと思いきや、ここでレースですか。確かここはクイズだったような気がしますが、クイズより勝率は高そうなので嬉しい誤算です。
「ボクが行こう」
「頑張ってください、マスター!」
メガネをクイッと持ち上げたマスターが前に出ます。私も苦手ではないですが、格ゲーとかの方が得意なので、自信満々なマスターにお願いします。
「マスター!頑張ってなー!」
「頑張ってー!」
声援を受けて、両者が出現した近未来的なマシンから1つを選びました。マスターはエネルギー重視。ミヤはスピードが高いが軽くて扱いにくい機体です。
「シャミ子、どういう感じのレースなのかな?」
桃が聞いてきたので説明します。
「1回勝負で、先にコースを3周した方が勝ちです。スピードアップする床などはありますが、アイテムがない純粋に近いレースゲームです。
ですが通常のレースゲームよりスピードがかなり速いので、速い機体だと非常にコントロールが難しいんですよ。
機体ごとエネルギーがあります。
エネルギーは他の機体や壁にぶつかる・ブーストなどで減っていき、無くなったらゲームオーバーです。
エネルギー回復はコース上に回復床があるので忘れずに通ることです」
F ZE⚪︎Oのさらに速くなったゲームみたいなモノです。gx的な。
「………つまりスピードアップやエネルギー回復とか特殊な床を通って、ミスなしで行くことが重要だと」
「その通りです。たまにショートカットなどもありますがいずれも成功するには難易度が高いので、自信がない場合は避けた方が無難ですね」
「マスターは安定を求めた機体やからなぁ。手堅くプレイするタイプや」
「みたいですね。対するミヤは高速の機体。博打っぽい機体なので、性格が出てるかも。
いずれにしても細かいテクニックはありますが、ぶつからないっていうのが大事ですね」
両者は本物みたいに出現したマシンに乗り込みます。しかしここで良がポツリと呟きました。
「そういえばマスターってアクセルに足が届くの……?」
ブホォ、と笑ったのは私含めて数名。マスターの短い足でアクセルまで届くのか?そこを失念してました。物理的な問題でした。
ミヤなんか大笑いしてます。
「流石に届くよ!ほら!」
マスターはそうは言いますが余裕のあるミヤの足と違い、マスターは明らかにピーンと伸ばした足を私たちに見せていました。しかもこっそり座席を前にずらしてました。
ダメかもしれない。皆の心が一つになった瞬間でした。
「言っとくけど、選手交代はもうできないからねー」
「足の長さが勝負の絶対条件でないと、教えてあげるよ!」
「……かなり重要だよ」
桃の淡々としたツッコミをマスターは無視し、レース開始の合図を待ちます。
爆音がすでにお互いの機体から発生しており、今か今かと待ち望みます。
「「GO!!」」
レース開始と共に、両者ともロケットスタートを決めました。
このレースゲームはパワーを貯めてスタートすると爆発したようにスタートできるロケットスタートがあるのですが、バッチリ成功です。
「お互いロケットスタートで差はなしやなぁ」
「コースはかなり難しいコースですね」
カーブが多く、コースの横幅が大きいかと思ったら急に狭くなりギャップが大きいコースです。
アップダウンも激しく、スピードダウンする砂利道も多い。下手にブーストを使うと突っかかったり壁に当たりやすいコースです。
なるほど、真ゲー魔王戦に恥じない難コースでしょう。
1台分ミヤが先頭を走り、アップダウンで一瞬コースが見えないほどになっても、お互いミスなし。最高速を維持してます。
「ふふっ、超楽しーっ!!」
このゲームは最高速度400km/hまでマシンを操作するので、普通だったら運転したことがない速度です。
しかもコースがあれだけアップダウンがキツイと普通の人間なら胃がシェイクされそうなものですが、ミヤは実に楽しそうです。
対してマスターは歯を食いしばって必死にやっているように見えます。
「ゲームだからあの速度も何ともなかったけど、リアルだとマスター大変そう……」
「むしろ運転できてるのがやばいわね……」
良の言う通り、魔族ですがマスターは身体的には優れてないので、実に辛そうです。
だがそれを言うのであれば、ミヤはそれ以上にキツイ筈です。にも関わらずそれを感じさせません。
「……どうもミヤって人、ちょっと普通じゃないね」
「それはそうでしょ。那由多なんかに手を貸してるくらいだし」
桃の呟いた言葉にミカンさんが反応しますが、桃は首を横に振りました。
「そうじゃなくて、あれだけのスピードをあんなコースで普通の人間が走れるわけがない。恐怖心が先に来るよ」
「でもゲームだからってことで楽しんでいるだけじゃないですか?」
桃はミヤの態度に何か秘密があるんじゃないかと疑っているようですが、単に現実世界でできないことを体験できているから楽しいってことかもしれません。
そう話すと良とミカンさんは納得したかのように頷いてました。この能力を体験した人にはわかる感覚のようです。
「そ、そんな単純な……」
ですがゲーマーではない桃には分からなかったのか、若干ゲンナリしてました。
「案外楽しんでる方が強い……なんてことはよくあることや。ほら、見てみぃ」
徐々にミヤが差を広げていきます。お互い大きなミスはありませんが、ミヤはギリギリの位置からドリフトを決めたりとアグレッシブな運転をしている一方、マスターは十分にセーフティを取って運転しているように見えます。
「ミヤって人はギリギリも楽しんでいるけど、マスターはミスを気にしてるから勝負に出れないってこと?」
良の質問に、リコさんは「賢い子やなぁ」と頭を撫でます。
このままの調子でいけばマスターの敗北になります。それをわかっているのか、マスターは残り1周を切ってからミヤと同じコースを取るようになりました。
「それだけじゃない!マスターは機体のパワーを活かしてブーストを多く使い始めた!」
2周すればコースの状態は把握できます。なのでどの位置に回復床があるか、それも加味してブーストを多用し始めたのです。
差が少しずつ縮まってきており、私たちは応援に熱が入ります。
だがミヤもマスターほどでないにしろ、明らかにブーストを多用し始めました。
お互いブーストをしている時の表情は苦しそうで、歯を食いしばってます。
エネルギー総量では勝るマスターは、徐々に差を詰めていきました。
そしてゴール間近。コースの横幅はわずか2台分になる直線に入る少し前に、マスターのマシンの前輪がミヤの後輪の右側に並びました。
「行ける!マスター!」
皆が騒いだ瞬間でした。
「甘いね!」
ミヤが僅かにマシンの後輪を、まるでお尻を振るかのようにマスターへ揺らしました。
「うおぉ!?」
その結果マシン同士が接触し、マスターのマシンが右に弾かれ、狭くなる道の【直前】の壁に激突してしまいました。
「マスター!!!」
壁に激突したマスターの機体は大きく出遅れ、体勢を立て直した頃にはもうすでにミヤはゴールを駆け抜けていきました。
───勝者 ミヤ !
「えぇー!?それアリ!?」
「このタイプのレースはぶつけるのが普通だから、むしろナイスタイミングでぶつけたと思う。あのミヤって人、すごく上手」
「良子ちゃん、冷静ね……」
ミカンさんの言い分もちょっぴり分かりますが、このレースはマシンをぶつけるのは常套手段。むしろ今まで接触なしでやれていた2人のレベルが高かっただけで、良の言う通りルール上何の問題もありません。
「……完敗だ。強いね君は」
「まぁミヤには劣るけど楽しかったよ!またやろーねバクさん」
ミヤは明るい笑顔で席を離れていくマスターを見送りました。マスターはその様子に頭の後ろを掻きながらこちらと合流しました。
「マスター、体の方は何ともないん?」
「……シャミ子君たちから聞いていた通りの能力者の戦いなら、負けたらペナルティがあると思ってたけど、特にないようだね。それにミヤって子は全然気負いがない」
リコさんの質問に対し、少し拍子抜けだったとマスターは答えました。
確かに遊賭の戦いの際は負けた瞬間に魂的なペナルティがありましたが、ミヤは全くないようです。今のところはですが。
「……気負いがないって、あの那由多の仲間ですよ?奴がやろうとしているのは……」
「人間全部をなくしちゃおうって計画でしょー?私は賛成してるもん」
「何ですと!?」
那由多の目的は方法はよくわかりませんが、人類全てを1つにしようとしていることです。つまり自分という存在がなくなるということで、死ぬことと同じのはず。その計画を知っていて参加するなんてまともじゃありません。
心配させないために今まで事情をわざと話さなかったお母さんと良子と同様に、戸惑いと嫌悪感を抱くのが普通のはずです。にも関わらず、ミヤは今までと変わらない様子でした。
「あんた、知ってて協力してるっていうの!?家族とか友達とか、皆が死んじゃうのよ!?」
「むしろバッチこいっていうか。もう疲れたんだよねー」
爪を見ながら気怠そうに答えるミヤ。
「……何が?」
「人間関係ってやつ?親同士はしょっちゅう喧嘩してるし、大人は叱ってくるし、女友達も話し合わせないとすぐ陰口叩くしさー。そんで寄ってくる男はヤリモクだし?
もうどうでもいいっていうか」
「そんな……」
お母さんが反論しようとしますが、「説教とかいらねーし」とミヤは手でパタパタと拒否していました。
「風邪薬いっぱい飲んでハイになんのも、パパ活して推しに会いに行くのも飽きてどうしようかなーと思ってたら那由多さんが言ってくれたんだ、私に能力があるって。それで那由多さんが協力してくれないかって。
私ってすげーって思ってさ。普通の奴らとは全然違うわけじゃん?
しかもゲームして時間稼げば計画が上手くいくって言ったら気合いも入るじゃん?」
「時間稼ぎ!?やっぱりそうだったのか!」
通りでゲームが長引くし、こっちの方が勝っていても全く焦ってないわけです。初めから時間稼ぎなら、態度にも納得できる。
「人類抹殺の手伝いをするために、時間稼ぎをしている自覚があるんですか!?」
「もちろんあるよ?それに那由多さんは確かめたいこともあるって言ってたよー。それ以上はマジで知らないし。
時間稼げたら教えてあげるってさー。なんか頼られると気合い入るっていうか?」
事の重大さと、那由多の危険性がまるでわかってないような口ぶりで、それどころか少し嬉しそうです。
もしかして人から頼られたから嬉しくて協力してるって事でしょうか?いやいや、それだといくら何でも単純な人がいるわけがないですし……。
「……あなたは───」
「もうええやろ」
桃が何かしら言おうとした時、リコさんが前に出て遮りました。
「まぁ要するにウチらが勝てば良い話やろ?そのほうがわかりやすいんとちゃう?」
「ふふん、ミヤはそう簡単に負けないよ?」
確かに問答をしていても埒があきません。だったらさっさと倒して先に進まなければ!
つづく
ミヤのセリフは結構危ないもんが多い気がしますが、まぁ幽白も過激だしOKでしょの精神。
でも実際の犯罪行為はダメ絶対!