【パズル・スリーセブン・レベルG】
スロットが回った結果、こうなりました。よりによってこの時間がかかる上にクソ難しいゲームが来てしまうとは……!
ゲームをやったことがあるメンバーはこの結果に面倒臭そうに顔を顰め、理解してないメンバーはきょとんとしていました。
「……どうして皆さん嫌そうな顔をするの優子?」
お母さんが皆の様子がおかしいことに気づき、私に解説を求めてきました。
「テトリス……は知ってますよね?それと同じジャンルの落ちものゲームです。
簡単に言うと画面の上から1から7の数字が色んな組み合わせで落ちてくるんです。それで縦か横で合計7になればその部分が消えます。7のみ3つで消えます。
先に画面いっぱいに積み上がった方が負けとなります」
「あらあら、お母さんじゃ混乱するゲームだわ。難しいのねぇ」
「慣れてくればずっとやってられます。初見の時ゲー魔王と決着がつくまで2時間かかりましたし」
難しい上に集中力を使うので、纏まった時間がないとできないゲームっていうのが辛いです。
「優子、あなたいつそんなに長くゲームを……!」
「あはは、浦飯さんと夜中一緒にやってて。そんなことより誰が次行きますか?」
これ以上喋ると怒られそうなので、軽く笑って話を打ち切ります。
「ウチが行くわ」
リコさんが前に出ます。恐らくこのメンバーの中で1番ゲームが上手い人物です。彼女が勝てなければこちらとしては非常に厳しいでしょう。
「けど那由多のやつ、もう何か色々してるんでしょ?そんな時間がかかるゲームなんかしてたら、ゲームしている間に全部終わっちゃうわ」
「そうですね。でも焦ったらスリーセブンはクリアできません。集中力を乱した方が負けるゲームですから」
ミカンさんの指摘通り、この結果は相手の狙い通りでしょう。
経験と集中に左右されるゲームなので、余計なことを考えている方が負けます。逆に言えば相手の集中力を乱すことができれば早めに勝利を得ることができるのですが……
リコさんは前に出る瞬間、私に小声で「任せてぇな」と言ってました。何か秘策があるんでしょうか?
「さ、ゲームゲーム♪」
「随分嬉しそうやな」
スキップでもしそうなくらいご機嫌なミヤに対し、どこか冷めているリコさん。両者の態度は対称的でした。
「それはそうだよ。あの人の役に立っているし、ゲームできて楽しいし!」
「……ふふっ」
明るい声で返すミヤに対して目を瞑って笑うリコさん。それが癇に障ったのか、ミヤは一転して顔を顰めました。
「何その笑い。ムカつくんだけど」
「ま、始めよか」
「マジムカつく」
2人がプレイ台の前に立つと、スリーセブンが開始されました。どうやらスリーセブンに関しては普通のゲーセンと同じようにアーケードコントローラーで操作するようです。
ミヤのブロックを消すペースは早い。しかしリコさんも同じくらい早いです。
両者とも似たような腕前なのでしょう。少なくとも開始早々で決着はつきそうにない感じです。
「中々やるじゃん。魔族のくせにゲーム上手いとかウケる」
「ふふっ、面白いですわぁ」
「でもミヤが負かしてやんよ!」
にこやかに返すリコさんの言葉に気分を良くしたのか、ミヤは笑いました。
「ああ、ゲームのことちゃいます。ミヤはんの頭の中身のことです」
けれど皮肉たっぷりの言葉に、ミヤはすぐに怒りの表情に変わります。
「は!?何言ってんの!?」
「ふふっ……那由多に捨て駒として使われているのに、上から目線で語っているのが面白くて敵いませんわ」
リコさんの笑いは静かに響きます。若干ですが、ミヤのボタン操作の音が大きくなりました。しかし操作自体にズレはありません。いわゆる台パンですね。
「は?私はこの能力を買われたんだし!こそこそ隠れて生きている魔族なんかと一緒にしないでくれる?」
「嫌なことから逃げて、逃げて、逃げて。立ち向かうこともせぇへんで行き場所がなくなったあんさんよりマシやと思うけど?」
思い当たる節があったのか、ミヤは顔を顰めながらプレイを続行します。
「……那由多さんのそばにいれば安全だし!私の居場所なんだから!」
明らかにリコさんは精神攻撃を仕掛けてました。それを理解しているのか、マスターは良の耳を塞いでました。教育上めちゃ悪いですからね、マスターってばナイスです。
「……時間がないから精神攻撃と来たか。リコらしいと言えばらしいね」
桃は非難も称賛もせず、リコさんならやるだろうなという感じで呟きます。他の皆さんも頷きました。
「この中で一番ゲームが上手いのがリコくんだ。恐らくこのままゲームをしても勝てないと判断したんだろう。こちら側としては時間も余裕もないからね」
マスターの言う通り、もしリコさんが負けたら恐らく彼女よりゲームの実力が劣る私では勝ち目が薄いでしょう。
ワンチャン、格闘のジャンルになれば勝ち目はありますが、ピンポイントで当たる可能性は低いはず。
ここで勝負を決めれるのであれば、やらない手はないです。
「……そもそも那由多の仲間と悠長にゲームしている理由はこっちにはないからね。リコは正しいよ」
「それもそうね」
桃とミカンさんは知らない人が聞けばドライなことを言いますが、この場の誰も反論する人はいませんでした。目的は那由多を止めること。綺麗な勝ち方にこだわっている場合ではないのです。
リコさんが選んだ方法は卑怯で、今までの態度からして純粋にゲームを楽しみたいであろうミヤにとって一番嫌な相手のはずです。
リコさんの思惑通り、リコさんの言葉はどんどんミヤを追い詰めてました。
ミヤはイラついているのかボタンを押す音がどんどん大きくなり、プレイが雑になっていきブロックが徐々に増えていきます。対してリコさんはスタート時から変わらないペースでブロックを消し続けます。
「自分じゃ楽な生き方を選んでいるつもりみたいやけど、ミヤはんの体ん中、結構ボロボロやで?
心当たりあるんとちゃう?」
その言葉にミヤは動揺したのか一瞬体が硬直しました。
「さっき言うてたことって要するに売春や薬漬けやろ?体がおかしくなって当然や。
しかもまともなもん食うておらんみたいやし、余計やな」
どうやらいかがわしいことをミヤはしていたようで、生活が荒れ放題。そのせいで体がおかしくなっていることを指摘すると、ブロックがどんどん積み上がっていきます。
開始時は互角だったのに、今や大分差が開き始めてきました。だがミヤも食らいついているのでまだ決定的ではありません。
「きちんと働いて飯を食って心も体も健康に過ごす。言うのは簡単やけど、結構難しいもんや」
「うるさい!妖怪に母親じみたこと言われる筋合いなんかない!」
ミヤは今までのような間延びした喋り方ではなく、普通の喋り方になってました。
「それとこの能力、那由多にあんまり使うなって言われてたんとちゃいます?」
その言葉に、プレイ中にも関わらず驚いてリコさんへ振り向くミヤ。
「………な、なんで知ってんの?」
「この能力、体験型の能力やろ?死を暗示するようなゲームはその結果も反映されるはずや。
だから那由多は理由をつけて、あんたに能力を使わせなかったはずや。
そうやなぁ……例えば消耗が激しいから、私の許可したゲーム以外はやるなとか」
「……………あ」
ミヤは思い当たる節があるようで、声を漏らしてました。
この【真!ゲームバトラー】はプレイヤーは諦めると「YOU DIED」と表示さる。
そしてクリアすると「ゲー魔王は死んだ……世界に平和が戻ったのだ」と表示されるのです。
彼女の能力ではそれも再現されるのでしょう。ミヤの顔がどんどん青ざめていきます。
「ちょっと待ちなさいよ!じゃあこっちは諦めたら死んで、真ゲー魔王は負けた時点で確実に死ぬってこと!?」
「………少なくとも能力がゲームの再現もするのであれば、その通りだね」
ミカンさんと桃の声が聞こえたのか、ミヤのブロックがめちゃくちゃに積み上がっていきます。明らかに動揺し、手元だけじゃなく体全体が震えてました。
「要するに、那由多に捨て駒にされたんや。計画のためになぁ」
「ち、違う!那由多さんはミヤのことはきっと生かしてくれるはず!」
「───ほんまにそう思うんか?」
ミヤの画面がどんどんブロックで埋まっていきます。対するリコさんは淡々とブロックを消していってます。ミヤの逆転は不可能でしょう。
「ね、ねぇ。ミヤ嫌だよ。なんでミヤばっかりこんな思いしなくちゃいけないの?どこ行っても辛くて、汚くて。那由多さんは私を必要としてくれて───」
「ウチには関係ない話や」
今までで1番低く、冷たい声でリコさんは返しました。
そして次の瞬間、ミヤの画面が積み重なって埋まりました。
【ゲームオーバー!! 真ゲー魔王の負け!! 真ゲー魔王の負け!!】
その瞬間明るい空間だったのが、暗い洞窟へと戻っていました。置かれたゲーム機と、横たわって息をしてないミヤ。決着はつきました。
長期戦に思えた戦いの、あっという間の決着。そしてミヤの死という結果に、誰も何も言えませんでした。
中でも横たわっているミヤの顔を見つめるリコさんの顔はゾッとするほど怖いもので、私も尻尾がビクッとしてしまいました。
そんなリコさんへマスターが近寄り、肩へ手を置きます。
「……嫌な役をやらせてしまったね。すまなかった、リコくん」
「…………自分でやったことや」
全員この決着には色々思うところもあります。正直、ただの女の子が騙されて利用された挙句がこの結果とは、後味悪いなんてレベルではありませんでした。
少し口を聞かない時間が過ぎ、桃が掌同士を叩いて皆の注目を集めました。
「……時間がない、先を急ごう」
そして相談し、ここから先は最初の突入メンバーのみで行くことにしました。
那由多の戦いは間違いなく大きな戦闘になるでしょうから、良やお母さん、マスターがいると危険です。護衛にウガルルさんをつけて4人はばんだ壮で待機してもらうことにしました。
その後は洞窟を歩いていても特別トラップもなく、段々那由多の魔力が近くなっているのがわかります。
「……リコがさっきだいぶキレてたから、危なかった」
「リコさんでしょ?怖かったわー」
「私もびっくりしました」
「聞こえとりますよ?」
ボソボソと私たちは会話していたのですが、耳が良かったリコさんにすぐバレました。
「もう少しや」
その言葉通り、光の向こうには大きな空間が広がっており、人影が見えました。
私たちはそれぞれ気合を入れ直したのでした。
つづく
まちカド魔族って、原作でも魔族がゲーマーが多くて魔法少女は趣味が少ないイメージ。
甘い言葉を吐いて、自分を必要としてくれる那由多にノコノコついて行ってしまったのがミヤの間違い。
ホストより那由多にハマってしまったのが運の尽き、という話。
後、自分の能力はきちんと把握しましょうということですね。