まちカド☆白書   作:伝説の超浪人

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今回の話:魔力版の元気玉を使う計画


54話「囚われのご先祖です!」

シャミ子たちが那由多たちの場所に来る少し前に話は遡る。

 

那由多たちのいる空間は、明るくなっていた。それというのも、洞窟の地中から天井まで貫いている大きな木が光り輝いているからである。まるで室内のように明るい。

 

木から発せられる灯りは魔力のものだ。根が地中から魔力を吸い上げ、漏れ出す輝きがあたりを照らしている。

 

「綺麗な光だと思うでしょう、浦飯」

 

人間をちゃん付で呼ぶ那由多ではあるが、幽助には刺々しさを含ませながら声をかける。

 

「ケっ!趣味の悪いやつのセンスは理解できねーな!」

 

もちろん幽助はそれに対し、唾を吐くような態度だ。那由多のそばに仕えている黒影は睨むが、当の那由多はカラカラと笑う。

 

「それを言うならこの光景を理解できない君の方がセンスが悪い。やはり魔族はダメだね」

 

「んだとテメー!」

 

バカにしたように笑う那由多に噛み付かんばかりの幽助であるが、文字通り手も足も出ない。

 

なぜなら幽助が入っている邪神像は小さな結界に閉じ込められているからだ。

 

そして隣には別の結界に閉じ込められている小倉と、気絶している杏里の姿があった。

 

「美意識の問題だから、種族は関係ないんじゃ……」

 

思わず口に出してしまった小倉であるが、咄嗟に口を抑える。しかし那由多は意外にも感心したようだった。

 

「ふむ。そうなると浦飯のセンスだけが悪いと言うことかな?」

 

「小倉!テメーどっちの味方だ!」

 

「ヒィン!悪口じゃないよぉ」

 

「余計タチが悪いぞコラ!」

 

その様子を見て、那由多はまた笑った。那由多にとっては下手な漫才よりツボに入っているようだ。1000年以上生きてても、笑いの沸点は低いらしい。

 

「そんなことより!テメーは魔力を吸い上げて何する気だ!大体、あの木に埋まってる魔族はなんなんだ!」

 

木の中央付近に手足だけが埋まっている少女らしき魔族の姿があった。魔族は意識はないようで、項垂れている。

 

その魔族は金髪でツノが生えており、服装は露出が激しくシャミ子の危機管理フォームに酷似している。

顔立ちも似ており、違いがあるとすればスタイル……特に胸部あたりはシャミ子に遥かに劣っていた。

 

「彼女こそ私が最も嫌いな部類の魔族であり、計画に必要な魔族でもあるのさ。手に入れるのに中々苦労したんだよ?仲間の協力がなければ無理だったね」

 

「質問に答えろってんだよ!耳悪いのかババァ!」

 

「まぁボクの年齢は確かにババァだが……」

 

流石に予想外の呼ばれ方だったのか、那由多は肩をすくめた。一方で小倉は必死に笑いを堪えた。笑ったら殺されるからだ。

 

「那由多誰何ー!!」

 

質問に答えるつもりだった矢先、入り口方向から那由多を叫ぶ声が聞こえた。

ここでようやくシャミ子、桃、ミカン、リコが到着したのだ。

街で争ってから数時間。那由多の想定した時間通りの到着である。

 

「お揃いでようこそ」

 

那由多は友を迎えるように微笑んだ。

 

 

☆☆☆

 

 

私から見た那由多たちのいる空間はとても綺麗で、イルミネーションなんか目じゃないレベルでした。

 

普段だったら呆けてしまいそうな光景ですが、那由多と仲間の男の後ろにいる人たちを見て、那由多たちを睨みつけます。

 

「浦飯さんたち、無事だったんですね!?」

 

「ああ!だがすまねぇ、手も足も出せねぇ!」

 

桃がぼそっと「……見ればわかる」と呟きました。邪神像に手足を生やすシステムは結局キモいので却下したのがここに来て痛い状況です。

 

「小倉も無事みたいね!」

 

「ごめんなさい〜コンビニに買い物行ったら攫われちゃってぇ」

 

普通に受け答えできているので、命に別状はないみたいです。気になるのは杏里ちゃんと、木に埋まっている魔族らしき方です。

 

「杏里ちゃんは無事なんでしょうか!?それとその魔族は誰だ!」

 

「佐田杏里は無事だよ、問題なしだ。そしてこの魔族は───お前の先祖だよ」

 

「何ぃ!?」

 

なんと私の先祖と言うではありませんか。しかし那由多の言うことなので鵜呑みにしてはいけません。

注意深く見ると、魔族は私の危機管理フォームに似た格好をしてます。ミカンさんもこちらをチラチラ見て「すっごい似てるわ」なんてぼそっと言ってます。

あの魔族を見ていると繋がりを感じるというか、他人の感じがしないのです。

 

「……なるほど、読めてきましたわ。邪神像に入ってたのは本来は彼女で、計画上彼女が必要だったいうことやろ?

そんで取り出した代わりに邪神像に入ってしまったのが幽助はんというわけやな」

 

「ご名答。話がスムーズで助かるよ」

 

「えぇ、ちょっと、どういうことよそれ!?」

 

「話が早すぎて混乱しそうです……!?」

 

リコさんが突然言った内容に、那由多と黒影と呼ばれた男以外は皆混乱してました。ああいや、小倉さんは納得しているような表情です。

 

「風の噂で聞いたことがありましてなぁ。古より【意識と無意識の狭間を司どる能力】を持つ魔族がいて、その魔族は時の権力者の下へ次々と渡り歩いた経緯があったらしいんですわ。

ただその能力が余りにも危険なので数千年前に封印されて、姿を消したっていう話のはずなんやけど」

 

「概ねその通り。しかしまさか彼女に子孫がいて、その子孫が邪神像の管理をしていたのを知った時は驚いたけどね」

 

「それがうちの家族……いや、お父さんということですか」

 

数千年前に封印された魔族なんて初めて聞きましたし、木に埋まっているご先祖がそんなやばい魔族のようにはあまり見えません。しかし那由多が欲しがるほどの能力を持っているのでしょう。

 

「そういうこと。何とかあの魔族を手に入れたいが、直接邪神像を手に入れようとしても街の結界と家のドアに貼られている結界のせいでぼくは邪神像のある家に近づくことすらできない。

だから【催眠ペンライト】という魔導具で空き巣の名人の人間に催眠をかけて邪神像を盗ませたのさ」

 

こいつ、他人に催眠かけすぎじゃないですか?しかしいつの間に盗みに入っていたんでしょうか。お母さんも全く気づいてなかったですよ。

 

「その後【餓鬼玉】という魔導具を使って邪神像の中身を抜き出して、邪神像を家に返したというわけさ」

 

「おい、【餓鬼玉】って腕鬼が持ってたのと同じやつか?つーかテメーらが作ったんか!」

 

「あー!あの魂吸い取っちゃう玉ですね!?」

 

以前倒した腕鬼が子供から魂を抜き取って喰べようとしていました。それと同じものだったら確かに魂だけ抜き取って邪神像の封印はそのままにできます。

 

「そうさ、最もお前たちが回収したのは試作品だがね」

 

「試作品だぁ〜?」

 

「そうだね。実はぼくの仲間の子が餓鬼玉の試作品を作ったのはいいんだが、珍しく外出したと思ったら外で餓鬼玉を無くしてしまったんだよ。

慌てて隣にいる黒影に探させたら、お前たちが持っていることが分かってね。回収したいが、お前たちに会ってしまうのは計画的にまだ早かった。

被害も出てなかったし、様子見していたのさ」

 

「大体あんたらのせいなのね……」

 

「本当です!私があの腕鬼を倒さなかったら、関係ない子供が魂を喰べられて大変だったんですよ!」

 

「そこは素直に謝罪するよ。こちらの不始末ですまなかった」

 

なんか素直に謝られて、ちょっとモヤモヤです。しかしこいつら、本当に余計なことしかしないですね。

 

「……ところであの家の扉の結界は、住民に害を及ぼすような者を迷わせたりするもの。人間だって例外じゃないはずだけど?

それに魂だけ抜き出したのはわかったけど、あの魔族は肉体があるように見える」

 

「扉の結界は住民に害を及ぼす、でしょ?能力で邪神像の中身を取り出すだけなら、住民に害を与えているわけじゃないからセーフ判定だったんだよ。

もちろんぼくが直接行くとアウトになるから、回りくどい真似をしなくちゃならなかったのが腹立たしいがね。

ちなみに盗みに入ったのは平日昼間で、盗んで魂を抜き出して戻すのも含めて3分以内に終わったよ。えらいボロ家だったしね」

 

「確かにあのボロ家なんて、オレなら3秒で入れるぜ……。それじゃ結界に引っかからないわけだ」

 

「あんたら、人の家をボロ家呼ばわりするのやめてくれます?」

 

敵味方両方から我が家をボロカスに言ってくれますが、重要なのはそこじゃないので反論はあまりしません。いやまぁ、ご近所の誰かが気づいて欲しかったですが。

 

「あんな家に普通盗みに入るやつなんかいねーから、誰も警戒してなかったんだろーぜ」

 

「心を読まないでくださいよ。しかも気づかない理由が最悪です!」

 

確かに見るからにボロ屋だから盗みに入ると思う人がいないことは確かですが!

 

「あの魔族の肉体に関しては、魔導具作った仲間が色々な魔族の肉体を掛け合わせて作ってくれたよ。モデルはツノの魔族の父親だ」

 

「……いい趣味してるわ、あんたら」

 

ミカンさんがウェ、と言うような表情を浮かべています。色んな魔族の死体を持ち帰ってイジリ回したということでしょう。

魔導具を開発した人は凄いようですが、頭のネジもぶっ飛んでそうです。

 

「さてツノの魔族、君の先祖が危険視されるわけはわかったかな?」

 

ご先祖の私の能力と同じと仮定して、時の権力者が使うとなれば用途は良いことではないはず。しかも封印されるレベルと考えると……

 

「ご先祖は不特定多数の人の夢に入って、権力者の良いように洗脳した……とかですか?」

 

那由多は顔を手に当てて笑い始めました。

 

「見かけに反してきちんと理解しているじゃないか。

そう!あの魔族は権力者にとって非常に都合のいい道具なのさ。何せ防御できない夢という名の無意識下で思考を誘導し、支配できるのだからね」

 

「見かけに反しては余計だ!」

 

「私はこの能力で世界中の生物の魔力を無意識下で洗脳し集めさせているのさ。

例えて言うなら寝ている時の生物の魔力全部を1つの海として、それを巨大なポンプで吸い上げているような感じだね。

この木は街の中心を支える枯れない桜だったもの。霊脈の上にあるこの木は、魔力を集める場所としては最適だったんだよ」

 

「桜が枯れた理由はそれか……!?」

 

かつて咲いていた桜が枯れた原因は、どうやら魔力の集めすぎだったようです。

霊脈とは一体……と頭を捻っていると、ミカンさんがこっそり耳打ちで教えてくれました。

 

簡単に言うと霊脈とは世界の大地に繋がる魔力の血管みたいなものだそうです。

そのためその霊脈の上に立っている木には魔力が集めやすく、以前は桜が咲いていたそうです。

 

「しかし計画の実行……魔力を世界中から集めるには時間がかかる。だから私が集めた能力者たちを使って時間稼ぎをさせていたのさ。

ミヤはなかなか強かっただろう?」

 

「あの人はお前に頼られているって喜んでいたんですよ!使い捨てみたいにしておいて、偉そうに言うな!」

 

色んな人を巻き込んで攻撃してきて、返り討ちにし、その中でミヤは死んだ。それなのにコイツは肩をすくめるだけでした。

 

「あんた馬鹿じゃないの?完成するまで時間稼ぎすればよかったじゃない。

わざわざここで待っているなんて、自己顕示欲の塊じゃない?」

 

「お前たちがここを発見できずに計画が完了すればそれも良し。

……だが実のところ計画達成のために不確定要素があってね。できるなら排除したかった───ツノの魔族、お前のことだ」

 

刺客を送るのを途中で辞めてでも、ここに誘い出して那由多が確実に仕留めたい私。つまり那由多が恐れているのは……私の能力か。

 

「私がご先祖と同じ能力で邪魔すると思ったんですか?だから始末したいと?」

 

「そうだ。君が雑魚のままだったら刺客で十分仕留められると思ったんだ。まぁゲームの能力者相手じゃ負けそうだったが、しかし結果として君たちは仲間一丸となって次々と打ち破ってきた。

なら一気に片をつけようと思っただけさ」

 

刺客を倒し続けた私たちが予想外だったのか、全員倒してしまおうというわけですね。しかも外野が入らないよう、こんな地底に招待するなんて。

 

「ケッ!こんなとこに誘い出さなきゃ喧嘩もできねーのかテメーは!情けねーやつだぜ!」

 

やはり気に入らないのか、浦飯さんが思いっきりバカにするように煽ります。

 

「横槍を入れられるのは不本意でね。前の失敗を繰り返さないようにしているのさ」

 

「……前?」

 

前とは何でしょうか。そう聞こうとした、次の那由多の言葉に私は頭が沸騰した。

 

「お前の父親を消そうとした時も桜ちゃんに邪魔されたし、2人には逃げられるし、以前は散々だったからね。

───今回は万全を期して始末しようと思ったんだよ」

 

「貴様ぁ!!」

 

私が怒りで吠えた瞬間、いつの間にか那由多が討伐ポイントカードを右手に持っていました。そしてその直後私たちの足元が巨大な魔法陣に包まれました。

 

「しまっ───」

 

素早く発動したその魔法陣から離脱しようとするも、発動が余りに早く眩しい光に包まれました。

 

「………クッ。一体、どうなったんですか?」

 

眩しい光が収まって目を開けると元の場所のままでした。しかし周りには誰もいなくなってました。あの黒影という人もいなくなっており、笑顔を浮かべる那由多がさっきの位置のまま立ってました。

 

「お仲間は別の場所に移して、私の仲間が倒す手筈になっているのさ。

ぼくとしてはお前をなんとしてもこの手で始末したかったからね」

 

「貴様ぁ……!次から次へとムカつくやり方しやがって!私が気に入らないなら正面から喧嘩売ればいいだけでしょう!」

 

「可能性は残したくない、というのが本音。昔計画を邪魔してくれた嫌がらせも兼ねて、ってことだよ。ぼくって茶目っ気あると思わない?」

 

「この……!?」

 

飛び込もうとした私に待ったをかけたのは、意外にも浦飯さんでした。

 

「頭を沸騰させんなシャミ子!コイツはわざと煽って、オメーに実力を発揮させねーようにしてんだぞ!」

 

「うぐ……!?」

 

冷静になれ!と大声で呼びかける浦飯さんの言葉で、私はその場に留まることができました。

 

それを見て那由多は少し的が外れたような表情を浮かべます。

 

「怒りのまま突っ込んできてくれた方が、こちらとしても楽にしてあげたのに。仕方ないな」

 

ゆっくり構えをとる那由多。禍々しい魔力も充実しており、完全に戦闘態勢です。

 

私は大きく息を吸って、ゆっくり吐きました。

 

「……よし!」

 

タイマン。助けはなし。前の戦闘から考えるに不利はこちら側。

 

なら私の全てを使って戦ってやる!

 

妖気の充実した私を見て、那由多は薄く笑いました。

 

つづく




ジャンプ恒例のメンバーバラバラで個人戦。特に海賊で多いやつ。

ごちゃごちゃと書きましたが、要するにご先祖の能力で勝手に色んな生物や無機物から魔力版の元気を分けてくれーってやって、そのパワーで計画実行だ!
でも邪魔されると嫌だから邪魔するやつぶっ殺そうぜ!誘い出してタイマンじゃい!という話。

那由多によるご先祖の奪取チャート

空き巣洗脳→邪神像窃盗→魂抜き取り→邪神像戻す→予め肉体作って置いて魂IN→討伐カードいっぱい使ってご先祖洗脳→木に埋め込む

ちなみに空き巣はその後洗脳状態のまま警察に自首させました。全部自白させたようです。
もちろんシャミ子家以外の犯行のことですが。
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