まちカド☆白書   作:伝説の超浪人

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分かりやすいパワーアップって少年漫画の魅力ですよね。


59話「シャミ子VS那由多 2です!」

再度魔指弾潜り抜けるが、待っていたのは那由多の強烈な反撃。

 

私の蹴りは逸らされ、返ってくるのは指での突き。

 

「数え貫手!4、3、2───1!」

 

突き出した指が4本、3本と減っていき、それぞれ別の力を込めた一撃が襲ってきます。最終的に捻るような人差し指による1本突きがガードの上から突き刺さり、私は吹き飛びます。

 

「ぐわぁ!」

 

「シャミ子ちゃん!?」

 

「野郎、変な技ばっかり使いやがって!」

 

ゴロゴロと転がる私を見て、那由多はニヤつきながら上から見下ろします。

 

「これはちょっと変わった貫手でね、それぞれ違う力を込めた突きを繰り出して最終的には防御をブチ破る技なんだが……結構防御が固いじゃないか」

 

あまりにも上から目線で忌々しい限りですが、やられているのは事実。

 

せっかく魔指弾を潜り抜けても、接近戦の技量が思い切り負けているのでマトモな一撃が入りません。

 

どうしようと一度考え出すと、それで頭が一杯になるケースは皆さんあるでしょうか?

今の私がそうです。遠距離も近距離も封殺されている状況。

 

遠距離は霊丸がありますが、この距離じゃ撃っても避けられるでしょう。

近距離は先ほどから何度も返り討ちにされています。

 

浦飯さんと入れ替われば勝てそうですが、あの結界を破る間に殺されるでしょう。

 

まさしく八方塞がりの状況です。一体どうすればいいんでしょうか……。

 

「シャミ子ー!仙水の時のオレのやり方だー!」

 

浦飯さんがそう叫びます。仙水との戦いは細かく聞いてます。確かその時も遠距離技で苦しめられたって言ってましたっけ……。

 

「あ、そうか!」

 

そこで私は一つ思いつきました。ちょっとアレンジを加えますが、これなら行けそうです。

 

「ふふ、師弟で相談かい?もう少し待とうか?」

 

「それは必要ないです!今から私の反撃です!」

 

左の手のひらを右拳で叩くと、足を開いて右拳を引いて構えを取ります。そして妖気を右拳に集中させます。

 

「ほう」

 

那由多が魔指弾の構えを取るよりも速く、私は正拳突きのように右拳を繰り出します。

 

「くらえー!ショットガン!」

 

那由多の視界を覆い尽くすほどの散弾銃のような赤い妖気弾を右拳から放ちます。

ここで重要なのは那由多の手前の地面への攻撃を多くすること。もちろん那由多にも多く攻撃を加えます。

 

「ボクと似たような技だが、収束率が低いな!」

 

那由多は魔指弾を撃つ用だった拳への魔力をそのまま防御として用いて、直撃コースのショットガンを撃ち落とします。

 

那由多の言う通り、ショットガンの全てを攻撃目標に当てるのは結構難しい。

 

なので今回は何割かは外れ、那由多は自身へ当たるものは全て撃ち落としました。

 

そのためショットガンは全て壁や地面に当たったことになります。一見するとただの無駄撃ちですが、私の狙いはここです。

 

「土煙が……!?」

 

ショットガンによる土煙。これに紛れて撃ち終わりと同時に妖気を完全に絶って移動。

 

そしてショットガンにより破壊された地面からできた瓦礫を那由多の頭上へ放り投げる!

 

「上か!」

 

「下ですよ」

 

左アッパーと【尻尾】を同時に繰り出す。もちろん那由多の反応速度なら捌くのが間に合うはず。

 

読み通り、那由多は左腕で私の攻撃を捌こうとしました。

そして私の【尻尾】を捌こうとした那由多の左腕と攻撃した私の左腕を巻き込むようにグルグル巻きにします。

 

「尻尾だと!?」

 

捌かれて攻撃が当たらないのであれば、腕同士を繋いで捌けないような状況にすればいい!かつて浦飯さんが仙水と自分の腕をボロTシャツで繋げたのを、尻尾で代用です!

 

「最初からこれが狙いだったというのか!?」

 

「ようやく捕まえました……これで捌かれないでボコせるんですよぉー! くらえー!」

 

妖気を集中させた右拳の全力で鳩尾を殴る!

 

「グォ!?」

 

ようやくクリーンヒットした拳の衝撃で浮き上がった那由多の体と共に私も浮き上がり、地面へ叩きつける。この際、相手の足で反撃されないように馬乗りです。

 

ようやく巡ってきたチャンス。ここで決めなければ!

 

「オラァ!」

 

妖気で赤く光る右拳を那由多の顔面へ振り下ろします。拳を顔面に受けた那由多の後頭部は地面へと激突し、地面が蜘蛛の巣状にひび割れます。

 

「オラオラオラオラオラー!」

 

あとはもうひたすら全力で顔面を殴り続けます。那由多の頬やこめかみ、顔のありとあらゆるところをひたすら殴ります。

 

「ゲッ、ガッ、グオぉ!」

 

「すごい!シャミ子ちゃんの拳がまるで弾幕みたいだよぉ!」

 

「休むなシャミ子、そのままぶっ殺せー!」

 

「オラオラ、もう一丁ぉ!」

 

小倉さんや浦飯さんの声援を背にし、私はさらに妖気を拳に込めようと振り上げた時……那由多のおさげでまとまっている髪がまるで鞭のように私の目に襲いかかったのです。

 

目と目の間に叩きつけられる那由多の髪。大したダメージじゃないはずなのに、涙が出そうになって攻撃が一瞬途切れます。

 

「シッ!」

 

そして私の鼻の下……人中を握った人差し指の第2関節で叩いてきました。一瞬呼吸が止まり、緩む尻尾。

 

即座に私も反撃し那由多の頬を殴りますが、那由多は構わず私の首元の布を掴んで投げ飛ばしました。

 

緩んだ尻尾のせいで腕が離れてしまい、離れた場所に着地した私。

距離が空いてしまった那由多を見ると、以前よりも顔面から多く血を流しており、ひどくこちらを睨みつけていました。

 

「やってくれたな……!」

 

那由多は言い終わると同時にまた魔指弾の構えを取ります。本来であれば迂回しながら接近するのが正解なのでしょうが、前とは違い今は私が押している状況。

 

なら攻め切る!

 

「うおりゃー!」

 

「こいつ、真っ直ぐ突っ込んで来るとは!」

 

私は魔指弾を弾きながら真っ直ぐ接近しました。

 

それでも弾けないものもあり、魔指弾が体に何発か当たり爆発します。痛みがビリビリと感じます。

 

しかし魔指弾は指弾よりダメージが高いですが、耐えきれないほどじゃありません。

 

「痛くないですー!一発一発はもう慣れました!」

 

拳で弾けなかった魔指弾は、体に当たる瞬間妖気を集中させれば大して痛くないのです。いや、痛いですけど気合いを入れて我慢です!

あまりの脳筋戦法に、那由多はひどく不快そうでした。

 

「単細胞が……!」

 

「オラァ!」

 

再び接近し、拳でのラッシュ。無論そのままでは捌かれてしまいますが、時折足元へ尻尾を伸ばして引っ掛けようと試みます。

 

「鬱陶しい……!」

 

流石に引っ掛かりはしませんが、注意は逸れるので簡単に反撃は喰らわないようになりました。

 

私の拳が鳩尾に入って、その次は那由多のアッパーが私の顎に決まる。

後ろに仰け反る私に、さらに攻撃を加えようとする那由多。

 

「てぇい!」

 

そこへ頭突きを浴びせました。身長の関係で那由多の鼻に直撃。

 

「オラァ!」

 

体勢が崩れたところに、渾身の右拳を奴の頬に入れて吹き飛んだと思った瞬間、私の顎に衝撃が走る。

 

那由多は吹き飛ばされた瞬間、私の顎へ蹴りを入れてきたのです。

 

お互いに吹き飛び、しかし復帰が早かったのは那由多。私が着地した頃には既に目の前に迫っており、拳を振り上げてました。

 

「くぉ!?」

 

咄嗟に宙へ飛んだ私の横に逸れた拳は地面へ突き刺さり、洞窟を揺らします。

 

拳の衝撃で地面には十数mの大きな穴ができ、土煙と瓦礫が舞い上がり、衝撃と共に私たちは宙に飛びました。

 

お互い飛び上がった周りは土煙と瓦礫でお互いの位置を視認しづらい状況が出来ており、またとない攻撃のチャンス。

 

私は極力妖力を抑えて空中に浮かんだ瓦礫を足場にして蹴ります。

 

そしてまた別の瓦礫、瓦礫といくつか移動し、奴の後方を取れるように逆さまになって落ちるような状態になりました。そして霊丸の構えを取ります。

 

「そこか!」

 

後ろを取れたといっても、やはり土煙が動いていれば場所も分かってしまいます。那由多が私を発見した瞬間、奴の魔指弾が発射されました。

 

読み通り、この状況下では魔指弾で攻撃してくるだろうと思ってました。

 

魔指弾の威力は強力です。しかし一発では大きなダメージにはならない。あくまで手数が必要な攻撃です。

 

だが今なら連射する前にこっちの全力の一発を叩き込める!

 

「霊丸!」

 

逆さになった状態から霊丸を発射します。

 

一発だけ発射されていた魔指弾を飲み込み、那由多の体を飲み込む大きさの霊丸がクリーンヒットしました。

 

「うおぉぉお!?」

 

私が地面に着地する頃には、既に那由多は霊丸と共に入り口や大きな木とは別方向の壁へ激突し、そのまま壁を壊しながら突き進んでいきました。

 

「おっしゃあ!クリーンヒットだぜ!」

 

霊丸が壁を突き進むことで洞窟が揺れます。

 

霊丸でできた穴は奥が見えないほど暗く、しばらくしてようやく揺れが治りました。

 

「はぁ、はぁ、はぁ………こ、これで倒せたんでしょうか……どう思いますか浦飯さん?」

 

疲れて座りたいのを我慢して、膝に手をつけている私が尋ねると、浦飯さんはうーんと悩んでいます。

 

「あの霊丸は魔指弾を一発弾いたせいで多少威力が下がったはず……だが完璧に捉えたし、防御も間に合わなかったはずだ」

 

「それじゃあ勝ったんですね!」

 

浦飯さんのコメントに喜ぶ小倉さん。しかし浦飯さんは唸ってました。

 

「だが奴の魔力はまだ感じるぜ」

 

「決められませんでしたか……」

 

私もうっすらですが奴の魔力を感じます。魔力が感じられるということはまだ生きているということ。長距離攻撃があるかもしれませんから、油断せず構えておきましょう。

 

「で、でもあんなにすごい霊丸だったんだよ?大して効いてないなんてあるわけないよぉ」

 

「……だといいがな」

 

小倉さんは信じられないようですが、正直私も決まっていて欲しかったし、できればすごいダメージだと嬉しいです。

 

しばらくすると足音が霊丸でできた穴から聞こえてきました。

 

できた穴の入り口に手が添えられ、ヌッと穴から出てきた那由多。

 

「効いたよ……やるじゃないかシャミ子」

 

服がボロボロになり、あちこち焼けた痕ができてました。結構ダメージを与えることはできたみたいですが、不気味さは余計強くなっていました。

 

そして何故か急に私のことを名前で呼んできました。今までお前とかツノの魔族だったのに。

 

「へん!随分ボロボロですね!降参するなら今のうちですよ!」

 

霊丸は効いている。しかし残り2発をどう決めるか、と言われるとまるで作戦プランがありません。今までだって当てるのに一苦労どころじゃなかったし、同じ手は通じない。

 

正直どうしたらいいんだろうという気持ちでいっぱいなのを誤魔化すために、つい口から強気な発言が出てきてしまいました。

 

「いや……本当に思った以上に強い。素直にそう思う」

 

「今更褒めたって遅いんですよ!」

 

何故だろう、足が震えそうになる。那由多の見た目に変化があったわけでもなく、魔力は最初より減っているはず。ダメージはあちらの方が上だ。

 

なのに何故か津波が来ると分かっていながら海辺に立つような怖さを体が感じていました。

 

「ふふふふふふ……あははははは!」

 

突然笑い始めた那由多。頭がおかしくなったのか?そう思い身構えていると、空気が震えました。

 

───そして那由多が洞窟内で爆発したように発光しました。

 

「うわー!?」

 

「「ぬわー!?」」

 

光と共に衝撃が私の体を打ち、吹き飛ばされるのをなんとか堪えました。浦飯さんと小倉さんも突然の発光に目が眩んだようです。

 

腕でガードしていた私は顔を上げて那由多の方を見ると驚きました。

 

「な、なんですかそれは……!?」

 

今までとは桁違いの魔力が那由多から溢れ出てました。何倍どころではない、それこそ比較すらできないほどのパワーアップでした。

 

その溢れ出る魔力が那由多の服を修復し、元通りにしていました。服だけでなく、焼けた痕も治っています。

 

「テメェ……今まで手ェ抜いて戦ってやがったな!」

 

浦飯さんは私が考えたくなかった事実を指摘し、那由多は笑いました。小倉さんはあまりの魔力の圧迫感に気絶しています。

 

「その通り、君と同じさシャミ子。ぼくも普段魔力を制限して生きているのさ……そうじゃないと窮屈でね」

 

溢れ出る魔力が洞窟内をキラキラと満たしており、私を圧迫してました。攻撃してきてないのに、私は圧迫感で膝をつきそうになるのをかろうじて堪えてました。

 

「きゅ、窮屈?」

 

「私は魔族が嫌いだが、動物や植物なんかは好きでね。だがフルパワーのままだと自然に悪影響を与えてしまう。自然を大切にしたいんだよ、私は」

 

───目の前に那由多が現れました。

 

腹を殴られた、と認識した時には私は壁まで吹っ飛んでいました。

 

「シャミ子ー!?」

 

壁にぶつかり、地面へと落ちる私。

 

「ボェ、ガハッ」

 

胃から上がってきた血が口でいっぱいになり、そのまま口から溢れ出ました。あまりの痛みで蹲ることしかできません。

 

「それにこの状態だと戦わずに魔族が逃げていくだろう?そうなると計画に支障が出てくるんだ。

実力を抑えた方がアホな魔族がノコノコ近づいてきたり、勝手に侮ってきたり何かと都合がいいのさ」

 

「ガ、ガハッ」

 

「ふざけやがって!オレが相手をしてやるからさっさと出しやがれ!」

 

お腹が痛すぎて、会話があまり頭に入ってきません。それでも浦飯さんが何かに怒っていることだけは聞こえました。

 

「嫌だね」

 

「何だとォ……!?」

 

「もし君とシャミ子が入れ替わって、君が戦わずに逃げてどこかに潜伏したら探すのが面倒だろう?計画の邪魔はされたくないからね」

 

「テメェは……!」

 

「う、浦飯さんは逃げませんよ……」

 

フラフラとゆっくり立ち上がって那由多の言うことを否定すると、2人とも驚いたような表情をしてました。

 

「シャミ子、お前……!」

 

「ふふ……中々の信頼関係じゃないか。だからこそ、自分と弟子の命惜しさに逃げ出すと考えないのかい?」

 

「これは私の喧嘩です……あいにく喧嘩で逃げ出すような教えは受けてないんですよ!」

 

「喧嘩ねぇ……」

 

全力。もうそれしか私に残された手段はないでしょう。

 

さっきの一撃で分かりました。相手の実力からして、この狭い洞窟から逃げ切れるとは思えませんし、皆を置いて逃げるなんて私にはできない。そして相手の実力からもやらせてくれないでしょう。

 

全ての妖気を搾り出して、私は那由多に飛び込んで行きました。

 

「うあぁぁぁ!」

 

何度も何度も何度も全力で殴りつけます。だが那由多の体どころか魔力に拳が阻まれ、奴を1mmも動かすことができません。それどころか、殴っている方の拳が傷ついて血が出ています。

 

「よく頑張ったが……無駄だね」

 

左腕を振りかぶった瞬間、那由多の右拳が私の左腕を打ちつけ、嫌な音が出ました。

 

「うわぁ!!」

 

転がる私。左腕の殴られた部分が激しく内出血しており、折れたように感じました。

 

「く、くそぉ……!」

 

目の前だけど、私は右人差し指に妖気を集め、霊丸の準備をします。殴っても通用しないなら、もうこれしかない……!

 

「全力で撃ってきなよ。ラストチャンスだよ?」

 

そんな私に、なんて事ないように提案してくる那由多。

 

心底腹が立ち、感情のまま霊丸の構えを取りました。

 

「舐めんなぁ!!」

 

1mあるかないかという至近距離での霊丸。今度は魔指弾による威力減衰もない、正真正銘の直撃です。

 

霊丸による爆発で煙が舞い上がりました。

 

煙が段々と晴れていくと、那由多は全く変わらずに立っていました。

 

「……気は済んだかい?」

 

無傷……?!と思った次の瞬間、顔を殴られ壁に激突してました。

ズルズルと地面に崩れた私は、頭の中がグラグラして、吐いてしまいました。

 

気を失わずに意識を保とうとすることが、今の私にできることの全てでした。

 

つづく






那由多誰何
A級下位→S級下位にパワーアップ。本気ともいう。
具体的には仙水(聖光気)と互角。


何?シャミ子は1年も修行してないのにレベル上がりすぎだって?

幽助は半年で暗黒武術界優勝していて、戸愚呂と互角くらいだから妖怪で言えばB級上位クラス。
半年で修行したのは幻海ばーさんのところで乱童の後に半月、武術会前に2ヶ月なので修行時間は実質2ヶ月半ほど!あとは実戦ばっかり!

酎たちも半年ぐらいでC〜B級からS級妖怪まで上がっているから、シャミ子の成長速度はむしろ遅い方かも。

展開が早いと感じるかもしれませんが、戦闘シーンが難しくて盛れないんです……!
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