嫌だったら辞めちゃえばいいじゃん精神で行くと気が楽です。私はできなかったのでアレですけど(n敗
「さてと。トドメだね」
カツン、カツンと靴が近づく音が聞こえるたび、私の体は震えてました。
明確な死。それが近づいてくる。
左手で首を掴まれ、宙吊りになる私。ダメージと酸欠で視界がグラグラしてよく分かりませんが、那由多は笑っているような気がします。
「やめやがれ!殺すぞテメー!」
「口では何とでも言えるからね。じっくり見ているといい、凶悪な能力を持つ魔族が殺されるところをね」
那由多の右手に魔力が集まっていくのを感じる。
───このまま死ぬ?何もできていないのに?
そう思ったら自然と尻尾が動き、奴の目に向かって伸びてました。
ぱしん、と魔力の壁に阻まれ情けない音を立てる尻尾。次の瞬間、那由多は首を絞める力を強めました。
「本当に魔族は悪あがきが好きだね。この街の魔族は皆そうだったよ……哀れな連中だ」
「カ、カハッ……」
「離せって言ってんだろーが!」
哀れな連中。その言葉が何故か耳に残りました。
この街は魔族になった私も受け入れてくれた暖かい街です。
突然ツノが生えてもいつも通り接してくれたクラスメイト、変わらない商店街の人たち。
魔法少女でありながら面倒を見てくれた我がライバル桃。柑橘類好きでおしゃれなミカンさん。
バクなのに二足歩行のマスター、そんなマスターが好きなリコさん、研究大好きな小倉さん、昔からのお友達の杏里ちゃん。
大好きなお母さん、頭の良くて頼りになる妹の良子、ダンボールなお父さん。街を守ってきて私の中にいる桜さん。
そして私をいつも鍛えて、一緒に遊んでくれた浦飯さん。
そんな街に暮らす人たちを、魔族を、哀れだと罵倒するこの目の前の女の言葉を私は許せませんでした。
「……あ、哀れなのはお前ですよ、バーカ」
そんな本心を口に出した瞬間、那由多は右手を振り上げました。
───シャミ子ォ!!!
そんな時、桃の声が聞こえてきました。洞窟の入り口の方から走ってきて、私を見て驚いてます。
───ああ、桃に一度も勝てなかったなぁ……と寂しく思いました。
☆☆☆
ほんの少し時は戻り。
桃たちはいずれも大怪我だった。
一番傷が浅いミカンでさえ肩を貫かれていた。リコは結構血だらけ。桃に至っては瀕死の状態であった。というよりギリギリ腹が繋がっているかな?レベルだった。
そんな怪我を治したのはイクである。以前も話したが魔法少女の肉体はエーテル体のため、魔力があれば修復は可能だ。極端な話、エーテル体が消滅してコアだけになっても魔力があれば肉体を復元できるのだ。
ミカンについてきたイクが魔導具で傷や魔力を回復させることで、全員回復し切ったのだ。
回復してもらったとは言え、当初敵側の人間だったイクをリコや桃は警戒していたが、那由多に利用されていたとミカンが説明したことで一時的に仲間になった。
そして4人揃って那由多のいる場所へ駆けつけることができた。
そんな4人が見た光景は、那由多の指で心臓を貫かれているシャミ子の姿だった。
心臓から血が吹き出しながら、ぐったりとするシャミ子。シャミ子の心臓を貫いた那由多の右手は、真っ赤に染まっていた。
動かなくなったシャミ子は駆けつけた桃、ミカン、リコ、イクのそばに無造作に投げ飛ばされた。仰向けに倒れているシャミ子は安らかな表情をしていた。
誰も音を立てなかった。奇妙な静寂が空間を埋め尽くした。
しばらくして、桃がフラフラとシャミ子の横に腰を下ろし、何度もシャミ子の肩を揺らした。
「う、嘘だよね、シャミ子……」
ゆさゆさと何度揺さぶっても目を閉じたままシャミ子は動かない。
「またイタズラでしょ、騙されないよ」
桃はしゃがみ込んで、自身の耳を心臓へと当てる。どんなに演技しても、心臓は動いているのだ。生きていれば。
「心臓の音を聞けば一発なんだから、甘いねシャミ子」
「桃……」
耳をシャミ子の心臓に当てて鼓動を確かめる桃に、何も言えないミカン。
しかし心音が全く聞こえてこない。
それがどんな意味か、ようやく理解した桃は段々と泣きそうな……それでいて怒りの表情へ歪む。
桃は立ち上がった。心がぐちゃぐちゃで、今どんな表情を自分がしているのか、自身でさえも分からなかった。
「……やはり、桜ちゃんは戻ってこないか」
ドクン、と桃の心臓が跳ねたような気がした。
かつて一族の呪いからシャミ子の命を繋ぐため千代田桜はシャミ子の内側で彼女の命を支えてきたのだ。
しかしこうしてシャミ子の命が失われても、桜は一向に姿を見せない。
そうなると答えは一つ。シャミ子と運命を共にしたのではないか、という結論に達するのだ。今2つの命を同時に失ったことになったのだ。
その結論に行き着いた那由多は少し悲しみの表情を見せ、桃に話しかける。
「でも寂しがることはないよ桃ちゃん。全ては一つとなる、お前たちも皆にすぐ会える」
大きな木がますます発光している。魔力を十全に集めた証拠だとでも言うように、辺りを眩しく照らしていた。
「……お前だけは……お前だけは絶対に殺してやる!!!」
桃は涙を流しながら憎しみの目で那由多を睨みつけると同時に、魔力が一気に膨れ上がった。ここに来て桃は全盛期、いやそれ以上の力を身につけた。
「……イク、君はどうする?」
那由多は彼女たちの中によく見知った少女……イクを見て尋ねる。自分に従順だった少女がここまで彼女らとやってきた時点で那由多は何となく理由を察していたが、あえて尋ねた。
「……一つ答えて欲しい……イクの能力のためにイクの両親を殺したの?」
「その通りだよ。半妖であるイクの能力を消すには惜しくてね。その代わり両親は糧にさせてもらった」
ノータイムでの返答であった。優れた科学者を確保したかった那由多だが、その思想ゆえに賛同者はほぼいない。
加えて説得などする気もない那由多は、自身がコントロールしやすい当時幼子であったイクを自分のモノにすべく両親を殺害した。
魔族の母親は喰った。父親は人間なので残しても良かったが、下手に残してイクに支障が出てしまうのを避けるために殺害した。どこまでも自分勝手な理由だ。
自身の行為に多少落ち込んだ那由多だが、これも平和のためと割り切った。
「……もう、一緒に行きたくない。行きたくもない」
イクの完全なる拒絶に、那由多は小さくため息をついた。
「お前たちがいくら敵に回ろうとももう遅い。今のこの状態でぼくの計画はほぼ完了している。
もう止めることはできない。つまりは無駄なのさ、たとえイクの頭脳を当てにしてもね」
「……関係ない。お前を殺す。絶対にだ」
せっかくアドバイスをしたつもりの那由多の言葉を、桃は切って捨てた。その反応は予想できていたが、実際やられるとため息をついてしまう。
「……この場所じゃ君たちの相手は狭いね。場所を移そう」
そう言って那由多は天井に親指を向ける。地上で戦おうという提案だ。
「どこへだって言ってやる……!」
桃がそう言った時、シャミ子の顔を見つめて涙を流していたミカンと能面のように表情が読めないリコにも変化があった。
「あんたの首をシャミ子と桜さんの元に持っていかなきゃ、気が済まないわよ!」
「地獄を見せたりますわ……」
2人も桃と同様に魔力や妖力がグンと上昇し、桃に匹敵していた。先ほど戦っていたシャミ子を優に超える力を3人は会得したのだ。
リコに至っては見た目も変化して、白い髪の毛が急激に腰の辺りまで伸びたのだ。ますます魔族としての格が上がったのだ。
「へぇ……(怒りがきっかけで3人とも強さを増したようだね)」
那由多は長く生きている分、目の前のような事例を何度か見たことがある。いずれも激しい感情の末に発現することが多かった。
だがそれでも自分の勝利を確信していた。何故ならそのような相手に勝ってきたからこそ今の那由多がいるのだから。
「ダークピーチハートシャワー!」
桃の右手から放出される漆黒の魔力波。不意をついた一撃は防御の姿勢も見せない那由多を完璧に捉え、那由多ごと地上へ向かって伸びていった。
「このまま一気に地上まで運んでやる!」
「中々の乗り心地だね」
余裕の表情を見せる那由多の体ごと天井を削り取りながら地上へ向かう魔力波。そして吹き飛ばされた痕にできた穴に向かって桃、ミカン、リコは跳躍した。
天井から瓦礫が降ってくる空間には、イク、幽助、小倉、杏里、そしてシャミ子の遺体が取り残された。
しばらくしてイクが何かドライバーのような物を取り出し、幽助たちが囚われている小さな結界をいじり出した。
「おい、イクとか言ったな。オメーがさっき念話で言ってたことはマジなんだろうな?」
「……うん。この結界を壊して、浦飯幽助を復活させる」
シャミ子が死んでから幽助はずっと黙っていた。その理由は、イクが幽助に対しこの場所に現れる少し前から念話をし続けていたからだ。
シャミ子のみで那由多に勝つことは難しいだろうと思っていた桃たちは、イクの発明した【デンデン念話くん】というワイヤレスイヤホンそっくりな念話ができる魔導具をイクが装着して幽助に連絡を試みていた。
幽助が出ればこの戦いを終わらせられると考えたからだ。しかし急激にパワーアップした那由多の魔力を感じた一行は急いでやって来て、今の状況になったわけだ。
そしてシャミ子が殺されるのを見た者たちはイク以外は頭に血が昇っており、那由多を倒すことだけに集中していた。
余りにもキレている3人を見て、イクは逆に冷静になっていた。元々イクはシャミ子を見るのはこれが初めてなので、怒り狂えと言っても関係がほぼないので無理があるのだ。
無論幽助もキレていたが、そこはイクが淡々と復活までの手順を念話で説明していたので、幽助は少し頭が冷えた。それ故黙っていたのだ。
3人が那由多をこの場から引き離し、その隙にイクが幽助を復活させる。3人の凄まじい怒りが作戦通りに事が進んでいると那由多に悟られにくくなったのは皮肉だろう。
「あいつら、パワーアップしたがそれでも今の那由多の相手はキツイだろうな」
「……多分勝てない」
3人がパワーアップしても、今の那由多には勝てないだろう。それほど魔力量に開きがあった。全員それは感じ取っていたが、全員逃げる気はさらさらなかった
イクの発明品は数多くある。暇さえあれば魔導具を作っているので、那由多もその全てを把握してない。
那由多にとっては必要な時に必要な魔導具を使えればいいので、それ以外の時間はイクの好きにさせていたのだ。
だからその隙間時間で作った魔道具に関しては那由多は知らないものもいくつかある。
それでも木に囚われているご先祖を解放することはイクには不可能であると那由多が確信するには理由があり、那由多は3人との勝負に応じたのだ。
喋っているうちに、那由多に知られてない魔道具の一つである【結界穴あけドライバーくん】を使って結界を破壊できた。
まだ気絶している小倉たちの結界も破壊して自由になった幽助たちの横で、イクは中央に【蔵】と書かれた玉をポケットから取り出し、何度か指で叩いた。
「……【蔵玉】、ビニールプールと巨大輸血パックを出せー」
ポン、と蔵玉から現れたのはビニールプール(完成済み)と1m以上の大きな輸血パックだ。
「ミカンとリコが倒した那由多の仲間の連中の血を抜き取って持ってきたって言ってたが、そんな小さい玉に入っているなんてな」
「うん。イクが作った【蔵玉】は色んなものがいっぱい入る魔導具。
黒影とシオリの血は特殊な魔力持ちと魔法少女だから、封印を解くのに使えるはず」
黒影とシオリの遺体から大量の血液を抜き取って輸血パックに保管していた。これはリコの指示だった。
本来魔法少女はコアを破壊しない限り魔力があれば復活の可能性がある。
何かに使えると考えていたリコは、シオリと倒した後もコアを破壊しなかった(黒影は生身なのでコアなどはない)
イクたちが合流した時、幽助復活のため2人の遺体から血液をできるだけ回収していたのだ。
「いいのか?オメーの仲間じゃなかったのかよ?」
「……黒影からは目の敵にされてたし、シオリにはバカにされてたから」
イクは幽助から視線をずらした。どうも上手くいってなかったらしい。幽助も今は一刻も早く復活する必要性があるから、これ以上言う気はなかった。
「早速頼むぜイク!」
「……分かった。まず邪神像をビニールプールに入れて、そこへ2人の血液が混ざった輸血パックの中身を出すー」
カラフルなビニールプールの中央に置かれた邪神像に、大量の血液がかけられていく。
はっきり言って最悪な絵面であり、呪いの儀式にしか見えなかった。
グングン血を吸収し、ペかーと輝き始める邪神像。今までにない現象に、幽助は期待を抱いていた。
「おぉ!? 何か色々いい感じっぽいぜ!」
段々邪神像から幽助の妖気が漏れ始めてきた。今の時点でも凄まじい妖気にイクは冷や汗をかいているが、同時に頼もしさも感じていた。
「……復活までミカンたちが生きていればいいけど……」
絶望的な戦力差に光が見えてきた。
そして誰も気づいてなかった。シャミ子の死体から、未だに霊体が浮いてこないことに。
つづく
【蔵王】
烈火の炎で出てきた魔導具の一つ。イクが作った。
色々しまっておける魔導具で、他に効果はないが便利なため使用機会は多い。
嘴王などがよく出ていた気がする。
千代田桃
数年前に世界救った時 A級下位
↓
シャミ子との初対面(原作スタート) B級中位?
桜がいなくて、やる気なかったためダウン
↓
血液盗られた C級上位
↓
特訓で少し取り戻し+闇落ち B級中位
↓
シャミ子死亡でブチギレ A級中位
そのため現在は全盛期超え。
桃=ミカン=リコ A級中位の設定。
那由多フルパワー S級下位
【戦力表】 ※あくまで作者の考えです
S級最上位 雷禅(全盛期)
S級上位 黄泉、躯、現在の幽助、飛影(蔵馬?)、雷禅の喧嘩友達
S級中位 北神とか元No2の奴等
S級下位 仙水、那由多誰何
A級中位 千代田桃、陽夏木ミカン、リコ、桑原
B級上位 戸愚呂(弟)、シャミ子
異論はあると思いますが、こんな感じで書いてます。
飛影は仙水戦で飛影が黒龍波でバフかけてもボコボコだったので、黒龍波は1-2段階アップ程度だと思ってます。
桃たちはバフないので超きつい