まちカド☆白書   作:伝説の超浪人

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シャミ子が死んでいるので、タイトルの後ろに「です!」はなし。


61話「3対1!」

黒い魔力波が街の大きな桜の木のそばの地面を貫き天へと向かっていき、空の彼方へ消えていく。しばらくすると人が落ちてくるのが遠目から見えた。

 

遅れて地下から続いている穴から出てきたのは3人。そして3人の目の前に天から落ちて来て華麗に着地する那由多誰何。

 

「ここにも久しぶりに来たね。やはりここは眺めが良い」

 

「(……私のダークピーチハートシャワーでも服すら傷がない。あの魔力で全て防いだという訳か)」

 

3人から目線を外し街を見下ろす那由多。桃の技を受けた後のはずなのに、先ほども何も変わらない状態だった。

体を覆う魔力が壁となり桃の攻撃を完全にシャットダウンさせたのだ。

 

フルパワーの一撃だった桃は冷や汗をかいた。それと同時に、攻撃が通用しないことをわかりやすく示してくる那由多の底意地の悪さに舌打ちしたい気分でもあった。

 

「ならここをあんたの墓場にしてやるわ」

 

「そろそろ退場の時間や」

 

那由多の魔力量を肌で感じている3人からすれば、傷一つついていないことは別に不思議なことではなくすぐに理解できた。それ故に素早く3人は三角形になるように那由多を囲む。

 

「一つ言っておくが、負けを覚悟で挑んでくる君たちの覚悟をぼくは潔いと思わない。

───しかし故人を思う君たちの気持ちでこちらも誠意で答えてあげよう」

 

那由多の言う通り、魔力を感じる事ができる者が見れば桃たちに勝ち目がほとんどないのは明らかだ。

 

だがそれでも3人の目に怯えや諦観はない。それ以上に那由多を何としても倒すと言う気持ちが体の内から湧き上がってくるのだ。

 

那由多は体を覆う魔力を強める。強めた魔力は3人の肌を圧力となって叩く……まるで暴風雨のようだ。しかしそれで怯えるような者はこの場に存在しなかった。

 

「ほざけ!」

 

桃は刀を両手で握り、中段の構えを取る。黒影との戦いでヒビが入ったはずの黒い日本刀は、魔力が回復したことにより元通りの綺麗な刀へ復元していた。

 

桃はロケットのようにではなく、まるで滑るように那由多へ接近する。その動きは無駄がなく、素人では同じ構えのまま目の前にスライドしてきたかのように見えるだろう。

 

無駄なく、最短距離で真っ直ぐ喉へ突きを繰り出す。刀全体を魔力で強化するのではなく、切先三寸のみに魔力を集めていた。これであの馬鹿げた那由多の魔力の守りも突破できると考えてだ。

 

しかし那由多もそれは分かっている。突きに合わせて首を捻る……それだけで皮一枚すら切れず回避され、那由多の右手で中央部分の刃を握られてしまった。

 

咄嗟に刀を引くことで那由多の指を切り落とそうとするが、まるでビクともしない。

 

ここにきて切先に魔力を集中させてしまった事が仇になった。まるでビルの柱を子供が引き抜こうとするくらい、全く動かない。

 

「チィッ!」

 

右足でローキックを入れようとするが、それより先に那由多が刃を握り潰す。

 

刃を握り潰され体勢が崩された桃を援護するため、距離をとっていたミカンは矢を連射した。もちろん猛毒の矢である。

 

「(この距離なら全ての回避は不可能!迎撃すれば猛毒!防ぎようがないわ!)」

 

以前よりパワーアップしたミカンは毒が以前よりさらに強くなり、連射速度も上がっている。

 

その状態で那由多本人へ十数本も発射した。さらに今回は何もない空間にもコンマ数秒遅く連射することで那由多の逃げ道を塞いでいた。

 

迎撃のため那由多は矢の方向へ目線をずらし、桃はその隙に距離を取った。

 

那由多は両手を突き出し、空手でいう前羽の構えをとる。そして迫り来る矢に対し、腕を回すように受けた。

 

那由多の手が接触して逸らすのは矢尻部分ではなく、中央のシャフト部分である。猛毒は矢尻に塗られており、他の部分は安全だからだ。

 

「嘘!?」

 

言葉にすれば簡単だが、パワーアップ前のミカンでもマッハを超える矢の速度を、わずか数十mしか離れていない距離で見切って逸らす難易度の高さを考えればミカンの驚きも納得だ。

 

そのため那由多は猛毒を触る事なくミカンの攻撃をノーダメージでやり過ごした。

 

その脇からリコが突っ込んできた。

 

「ハァァアー!」

 

貫手、正拳突き、手刀、回し蹴り、前蹴り。リコはフェイントも混ぜ、自身が打てる最高速で急所への攻撃を仕掛けた。その速度はミカンの矢にも匹敵するだろう。

 

那由多はリコの攻撃を、先ほどのミカンの攻撃と同様に逸らし捌く。

 

捌かれることでリコの体勢が崩される。その隙間を縫うようにリコの鳩尾に那由多の膝が入った。

 

「かぁ……」

 

さらに頬を殴られ吹き飛ぶリコに見向きもせず、桃は駆けて飛び上がった。

 

先ほど折られたはずの黒い日本刀は桃色の魔力で刃を作り上げており、先ほどの攻撃より攻撃力は上がっていた。

 

桃は攻撃に転じた那由多の隙を突き、上段から振り下ろした。

 

「魔桃剣!」

 

かつて闇乙女の肉体を切り裂いた必殺剣を繰り出す桃。間違いなく当たる、そのタイミングで繰り出した技だった。

 

「なっ……!?」

 

袈裟斬りで振り下ろした一撃は、皮一枚も切ることできずに肩口で止まってしまった。

 

受け止めてもダメージがないのか、笑みを浮かべる那由多は回し蹴りを桃の腹に叩き込み、吹き飛ばした。

 

「ぐぁ……!」

 

桃が蹴飛ばされた瞬間に射撃するミカン。しかし矢は那由多をすり抜けた。

 

「残像!?」

 

残像と気づき咄嗟に後ろを振り向いた時には、ミカンの顔面に拳がめり込み、桃と同じ場所まで吹き飛ばされる。

 

3人とも一撃ずつくらっただけだ。それにも関わらず、ダメージは深刻でよろよろと立ち上がる。

 

「いつの間に後ろへ……!」

 

「と、とんでもない奴やなぁ……」

 

「(那由多め、思っていた以上に戦闘能力が上がっている……!)」

 

桃は3人であればもう少し戦えるかと思っていたが、那由多は肌で感じられる以上の強さを誇っていた。

 

「ふむ、反応はいいね。だが残念ながら、そのせいで楽には死ねないよ君たち」

 

一方で那由多も少々驚いていた。一撃で勝負が着くかと思っていたが、割とすぐに立ち上がってきた3人のタフさは少し計算外だった。

 

いや、タフさというのは少し正確ではない。3人とも攻撃を受ける瞬間、後ろやダメージを逃す方向へ自ら飛んで、なおかつ攻撃される箇所に魔力などを集めてダメージ緩和していた。

 

まさに戦士として戦闘経験豊富であり、魔力コントロールが卓越しているからこそのダメージ緩和の技術だろう。

 

しかしそれでもダメージが大きい。この状況が長く持たないであろうことも、皆分かっていた。

 

「さぁ、後何分持つかな?」

 

そして目の前の女は攻撃を緩める気は更々なく、絶望的な状況だった。

 

 

 

 

 

「よし、いいぞいいぞ!段々パワーが戻ってきやがったぜ!!」

 

一方、地下の洞窟で嬉しそうな声をあげる邪神像がいた。そう、中身は浦飯幽助である。

 

あれから魔力がたっぷり入った血がビニールプールに全部入れられ、プールは真っ赤な血で満たされていた。やはり闇の儀式にしか見えない。

 

「……これなら復活できるかも」

 

以前は桃曰く僅かな血だけで結構な魔力を奪われた、と語っている。だがそれでも幽助が邪神像から喋れるようになっただけで、封印の完全解除には程遠いものであった。

 

その後は魔法少女と戦ったことがあったが、血は奪えなかった。

 

だが今ビニールプールには幽助側のの妖怪のランクで言えばB級中位クラスの魔力の血が2人分ある。あの時の桃とは段違いの血液量と魔力量だ。

 

血をグングン吸い取り光り輝く邪神像は、封印解放が近いことを示しているようだった。

 

「う、うーん……あれ、今はどうなって……?」

 

ここにきて那由多の強烈な魔力で気絶していた小倉が目を覚ました。

 

彼女は周りを見て自分たちを覆っていた結界は解かれているわ、知らない誰かはいるわ、血だらけの邪神像はあるわで色々状況が変わっていることに気づく。

 

一方で杏里は未だ目覚めていなかった。

 

「あ、あれ?あなた誰……ってシャミ子ちゃん!?」

 

小倉にとって見知らぬ人物は気になったが、それよりもシャミ子が倒れたままなので近寄って体を揺さぶる。

 

「小倉、シャミ子は……」

 

「分かるよ、分かっちゃったよ……シャミ子ちゃぁん……」

 

小倉はその頭脳で持って、シャミ子が既に死んでいることを察してしまった。しかし分かりたくはなかった。彼女は人前で珍しく、生の感情を丸出しにして泣いていた。

 

しばらく小倉の啜り泣く声と、やたら光っている邪神像だけが場を支配していた。

 

「……あなた、魔族だよね?イクは那由多の計画を止めたい。協力できる?」

 

しかしいつまでも泣いていられる状況ではない。邪神像の封印が解ける前に那由多が3人を倒してここにきてしまったらもう誰にも那由多を止められない。だから各々やれることをやるしかないのだ。

 

小倉もそれは分かっていた。だから涙を拭いて、イクに目線を移す。

 

小倉はこの魔力が満ちる空間のおかげか、自身の元になったグシオン並みに今の状況の流れを大体察しているのだ。

 

「……はい、協力します。イクさん、でいいですか?」

 

「……うん。具体的な案はある?」

 

小倉は邪神像を見た後、ご先祖に目線を移した。

 

「はい。まず浦飯さんが封印から復活すれば那由多誰何を倒せるかもしれない。だけど那由多は倒される前に大元のあの大きな木で集めた魔力で何か仕掛けてくると思う」

 

「確かにな。計画を実行する前に死んだら意味ねーし、そこはあの木の魔力を使って抵抗してくるか」

 

「イクもそう思う。そのためにあの木に埋まっている魔族が魔力を制御しているからどうにかしたいけど、イクの発明品じゃ多分無理」

 

イクは色々ポケットから出すが、どれもご先祖には使えそうにないのか、首を横に振った。

そこへ幽助が不思議そうに声をかけた。

 

「そんなまどろっこしい真似しなくても、あの魔族ごと木を吹っ飛ばせばいいんじゃねーか?そりゃあの魔族には悪いけどよ、そんなこと言ってる場合でもねーし」

 

ご先祖の命を考えなければそれも一つの正解だろう。見知らぬ魔族1人助けるよりも計画を防ぐ方が優先されるのは当然である。ましてやシャミ子の先祖とはいえ、この場の誰も知り合いでも何でもないのだ。

 

だが幽助の意見はイクと小倉両名ともに首を横に振られてしまった。

 

「……これほどの魔力が集まっている制御装置があの魔族。あの魔族を殺すと、集めた膨大な魔力が爆発する」

 

イクは手を握って広げた。どうやらご先祖を殺すと一気に魔力が溢れ出てしまうらしい。

 

「爆発だぁ?どんくらいやべーんだ?」

 

「……この街が吹っ飛ぶだけなら御の字。下手すると日本がやばいかも」

 

「……マジか?」

 

幽助はイクにもう一度尋ねるが、イクは激しく何度も頷く。どうやら魔力が爆発すれば超巨大な災害レベルになってしまう恐れがあるらしい。小倉も青い顔をして何度も頷いていた。

 

どうやら幽助の得意な丸ごと吹っ飛ばす作戦はできないようだ。

 

「破壊するのはできないとすると……イクちゃん、あの魔族の那由多による洗脳をどうにかできない?」

 

「……以前那由多があの魔族を那由多の何枚もの討伐ポイントカードを使って強く深く洗脳したのをイクは見てた。

カードを消費した分、イクの作った催眠ペンライトよりずっと強力な能力。

それを解除するには、あの魔族の深層意識まで働きかける必要がある」

 

「今のあの魔族はとてつもない魔力を集めているんだよ?

第一深層意識まで入る方法がないし、もし入れたとしても深層意識にたどり着く前にこちらの意識が飲み込まれちゃう……あ、それでシャミ子ちゃんを!?」

 

「……そういうことだと思う。似た能力者がいれば話は別だけど、今から見つけるのは……」

 

「だー!!テメーら、勝手に話を進めんじゃねー! オレにも分かりやすく説明しやがれ!!」

 

完全に置いてけぼりになった幽助が我慢できず大声で話を遮った。イクは不思議そうに首を傾げている。なんで理解してないのか分からない、といった具合だ。

 

幽助はピキっと怒りを覚えるが、小倉が慌てて簡潔に説明した。

 

「要するに魔族の意識を叩き起こして洗脳を解除したい。でも深く洗脳されているので、起こすには意識の奥まで入るしかない。

でも大量の魔力を集めているから、生半可な能力だと大量の魔力が邪魔して意識の奥まで行かない。まぁ洪水している川を遡上するようなもんだね。

シャミ子ちゃんの能力なら意識の奥までいけるけど……シャミ子ちゃんは……」

 

「ようやく分かったぜ。だからあの野郎は率先してシャミ子を殺したがってたのか、クソ!」

 

3人はシャミ子以外に解決できそうな能力者に心当たりはいなかった。このままではご先祖を止められないのか、と3人で悩んでいると幽助が呟いた。

 

「シャミ子の親父さんが段ボールから復活できりゃ解決すんだがなー……」

 

「あー、すっかり忘れてたよぉ!!」

 

シャミ子より能力の使い方が上手い魔族は生きているのだ。そう、シャミ子パパことヨシュアである。

 

しかし段ボールになっているので、普段はあまり意識されていないから、小倉はすっかり忘れていたのだ。

 

「……いるんだね、能力者が」

 

「いるけどよ、シャミ子家まで段ボール取りに行っている時間はないぜ?しかも親父さんは封印されたままだしよ」

 

「……封印も、移動方法もなんとかする」

 

ゴソゴソとポケットを漁り出したイクは、何やら扉の絵が描かれたペラペラの画用紙を取り出した。

 

「【移動画用紙くん】……これを壁に貼って行きたい家をイメージすると脳波を読み取ってくれて画用紙をめくると、何キロか先の家にすぐ移動できる……かも」

 

「かもってなんだよ!」

 

「外出しないからほぼ使ってなくて……もしかしたら座標がズレるかも」

 

座標がズレるということは家の中ではなく、建物の間だったり、石のなかにいる!なんて可能性もある。しかしそれよりも時間がないのだ。小倉は気にせずイクの手を握った。

 

「凄い発明品だよぉ!それしか手はないよ!シャミ子ちゃんの家族には私が説明する!」

 

発明品を褒められて嬉しそうにするイク。幽助も他に代案がないので、頷いた。

 

「それしかねぇか……頼むぜ2人とも!」

 

早速【移動画用紙くん】を壁に貼るイク。それを横目で見ながら幽助はかつてないほど焦れていた。

 

先ほどから3人の魔力などがだいぶ減っているのだ。3人と那由多が出て行ってからまだ十数分ほどしか経ってない。しかし状況はもうだいぶ不味いところまで来ているらしい。

 

「早く封印解けろってんだよー!あー、イライラする!それまでやられんじゃねーぞアイツら……!」

 

つづく




発明家キャラは話を動かすのに便利すぎる……。

全盛期超えをした桃たちですが相手が悪い。
しかも飛影みたいに黒龍波のバフなし、桑原みたいに次元刀の当たれば即死攻撃なし、蔵馬みたいに植物での回復なし。ないない尽くしで戦わないといけない辛さ。
そう思うと本編の3人って能力的にバランス取れてますね
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