まちカド☆白書   作:伝説の超浪人

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幽助のまともな戦闘シーンって久しぶり。
昔って版権同士のクロス小説ってありましたけど、今じゃあんまり見ませんね。何でだろう?


62話「復活の浦飯幽助!」

イクの魔導具でシャミ子家と空間を繋げることができ、小倉はシャミ子家にやって来ていた。

 

一体どうなっているのかと問い詰められ、仕方なく事情を話す小倉。事情を知った清子、良子、マスター、ウガルルはシャミ子父であるダンボールも持ってきて洞窟内へやってきた。

 

当初ダンボールだけ持って来る予定だったが、事情を知ってどうしても一緒に行くと聞かなかったのだ。

 

「優子、優子ぉ……!」

 

「お姉、やだよぉ〜……!」

 

そしてシャミ子の死体を目の当たりにした4人は悲しみに暮れた。シャミ子母の清子と妹の良子は大泣きをし、他は沈痛な表情を浮かべていた。

 

 

「……しかし優子くんを倒したのがあのバカみたいに巨大な魔力の持ち主とはね。近くに来るとより強大さがわかる。正直僕では戦いの助けになれない……」

 

「オレもムリ……」

 

マスターとウガルルは地上から感じる那由多の魔力の強大さをキャッチして震え上がっていた。しかし幽助はそっちに関してはハナから期待してなかった。ウガルルは遠く及ばないし、マスターは一般人以下だからだ。それよりも幽助は伝えたいことがあった。

 

「あのヤローをぶっ飛ばすのはオレの役目だぜ。それよりオメーらはオレが行った後シャミ子の親父さんが復活するために力を貸してくれ」

 

「うむ、できる限りのことはしよう」

 

イクは4人を連れてきた後、小倉を連れて自分の研究室へと戻っていた。他に使える道具があるか、小倉の知識も借りて探しているのだ。

 

しばらくの間、清子と良子の啜り泣く声と光っている邪神像だけが洞窟内で目立っていた。

 

「……杏里は寝たままだな」

 

「……那由多が命令したのであれば、那由多をどうにかしないと完全な催眠解除は難しいかも」

 

「そうなのか、イク?」

 

見た目手ぶらなイクと小倉が戻ってきて、幽助の疑問に答えた。

 

「そうだねぇ。だから今は寝ていてくれた方が都合がいいかも」

 

「仕方ねーか。ところでオメーら、手ぶらじゃねーか」

 

「【蔵王】に片っ端から物を入れているから大丈夫」

 

Vサインを出すイクに、そうかと返す幽助。これで自分が考えることはもうないと、幽助は思っていた。

 

正直洗脳の解除方法なんて今までやったことがないし、解除方法を探すより術者をぶっ飛ばして解決……というのがいつものパターンだった。

 

はっきり言って細かい解決方法なんてものは蔵馬が考える場合がほとんどだったし、自分には向いてない。

 

何よりシャミ子を殺されてしまった今、那由多をぶっ飛ばすことしか幽助の頭の中にはなかった。

 

その時である。一層、邪神像が輝いたのは。

 

「───来たぜ!」

 

まるで光の爆発であった。幽助以外のメンバーは全員目が眩んでしまう。正直危険な光量であった。

 

割れた邪神像。粉々になったビニールプール。

 

───そして1人の男が立っていた。

 

リーゼント風のオールバックな黒髪で、力強い目つき。身長はあまり大きくなく、170cmを若干超えている程度だろうか?服装は上下ともに胴着姿である。

 

一見すれば気合いの入った青年であるが……その身から発する凄まじい妖気は、間違いなく人外の者であることを皆に認識させていた。

 

「う、浦飯さんなの……?」

 

「おうよ。オレが浦飯幽助だ。オメーらにこの姿を見せんのは初めてだったな」

 

良子の問いに腕を回しながら答える幽助。久しぶりの外で体の具合を確かめていた。肩を回したり軽くジャンプするが、問題ないようだ。

 

「な、何という妖気だ……これが浦飯くんの実力なのか……!」

 

マスターは自身が魔族であるからこそ、幽助の出鱈目な妖気を理解できた。まさに次元が違う、というのが肌で理解できる。

 

今の状態でもウガルル、小倉などは腰を抜かしていた。逆によくわかっていないのは清子と良子だ。魔族の方が敏感に妖気をキャッチできるのだ。

 

もしも幽助が少しでも悪意を持ってさらに妖気を解放した場合、この場にいる皆は妖気で溶かされてしまうだろう……それほどの力を感じていた。

 

「ヤベェな、桃たちはもう限界だな。よし、行ってくんぜ!」

 

地上の桃たち3人の魔力がかなり小さくなっており、対して那由多の魔力は衰えがない。もういつトドメを刺されてもおかしくないだろう。

 

「浦飯さん、皆さんを……この街を、お願いします」

 

清子は深く頭を下げた。自身の娘が死んだ悲しみを抱えながらも、夫が守ろうとした街のことも心配していた。

 

幽助はそれを感じ取った。シャミ子のためにも、絶対に勝たなくてはいけない勝負だった。

 

「───まかせとけ!!」

 

幽助はサムズアップをし、それから地上へ向かって飛んだ。

 

 

☆☆☆

 

 

少し時は遡る。

 

洞窟の上、地上ではまだ戦いが続いていた。

 

「縮め!」

 

がっしりと那由多の腕に張り付いたリコの妖気を縮ませ、那由多をこちらに引き寄せようとした。

 

しかし微動だにしない。まるで綱引きで幼稚園生が大人と対決しているかのように、こちらに引き寄せることができない。

 

「ふッ」

 

「うおぉ!?」

 

代わりにリコが那由多に引っ張られ、体が宙を舞う。

 

「こなくそ!」

 

ならばこの反動を利用してこのまま攻める、とばかりにリコは葉を強化し那由多へ向かって加速する。

 

狙うは首。葉を横薙ぎにして、那由多に仕掛けるリコ。しかしリコの攻撃範囲に届く前に、那由多は何もないところへ右アッパーを繰り出した。

 

「降魔烈風拳!」

 

右アッパーより発生した荒れ狂う魔力の渦巻きが、リコの体をもみくちゃにし巻き上げて傷つける。

 

「うわあぁー!」

 

「リコ!?ちぃっ!」

 

空高く舞い上がったリコは叫ぶのを聞いた桃とミカン。桃は舌打ちをして、那由多の後方へ高速移動する。

 

「こんちくしょう!」

 

ミカンは桃のやりたいことを察して、那由多の出鱈目さに悪態を吐きながら矢を連射する。

 

「無駄だよ」

 

しかし那由多が左腕を横に薙ぎ払うと、爆風が生まれ矢が叩き落とされた。まるで台風の日に飛ばした紙飛行機並みに頼りない矢だ。

 

「インチキよ!」

 

「ハッ!」

 

薙ぎ払った瞬間、桃が素手で後方から飛び込んでいく。刀は折れて使い物にならず、魔桃剣も通用しない今となっては別の攻撃をするしかない。

 

連続の拳を掌で全て受け止められた桃は、左拳を受け止められた体勢のまま腕を折りたたむように肘鉄を繰り出す。

 

しかし那由多は肘も受け止めた後投げ飛ばした。投げ飛ばされた桃は着地した直後に跳躍し、空中で連続蹴りを繰り出す。

 

しかしこれも那由多は掌で受け止める。

 

そして今度は足首を掴まれ、桃はまた投げ飛ばされ距離を取る。そして顔を上げるが、すでに那由多の姿はない。

 

「こっちだよ」

 

桃の頬に強烈な拳を繰り出し、桃はそのまま激しく吹き飛ぶ。

 

桃、とミカンが叫ぼうとした時には、那由多はミカンの懐へ潜り込んでいた。

 

「ぐぁ……!」

 

「いい加減、ボウガンが鬱陶しいんだよね」

 

鳩尾に一発拳を叩き込んだ那由多は、ボウガンを持つミカンの右腕に視線を移す。ミカンは咄嗟にダメージを無視して蹴りを繰り出すが、あっさり那由多に捌かれ地面へ叩きつけられた。

 

そしてそのまま那由多は右足を上げて、ミカンの右腕を踏みつけた。

 

「ああぁぁあー!!」

 

あまりの衝撃で地面が陥没し、ミカンが絶叫を上げる。それに眉ひとつも動かさず、那由多は今度は左腕を見る。

 

しかしそれよりもトドメの方が先か?と那由多が考えたのは0.1秒もない。それを逃さないのは桃だった。

 

魔力だけで剣を作り、首を薙ぎ払う桃。通用しないことは分かっていても、ここで見逃せばミカンがやられる。

 

桃の魔力剣を防いだのは那由多の右手の人差し指の一本のみ。魔力を集中させた指を立てるだけで、魔力の剣を受け止めたのだ。

 

「ハアァァー!」

 

受け止められても動揺せず、そのままあらゆる方向から剣を振るう桃。那由多はそれを指一本で受け止め続けた。受け止める音はまるで金属音のようであった。

 

「その剣、自己流だね?基本はできているけど、ちょっと面白みがないな」

 

「ずあっ!」

 

答える気がない桃は脳天に対し唐竹割りで剣を振るうが、それも真横にした指で受け止められ、那由多が指に力を込めると魔力剣は粉々に破壊された。

 

剣を破壊された瞬間、足元にいたミカンが那由多の顎目掛けて蹴りを繰り出す。もちろんそれも那由多は避けてミカンを蹴飛ばすと同時に桃を殴り飛ばした。

 

受け身も取れず何度か地面をバウンドして止まる2人の体。そこへ悠々と歩いてくる那由多。

 

那由多が見渡すと、3人がまるで芋虫のようにピクピクしているのが見える。しかしまだ誰も死んでいない。実力の差から考えると驚異的であった。

 

「……本気のぼくがここまで楽しめるとは思ってなかったよ。桜ちゃんでさえ昔戦った時は本気を出すまでもなかった。

今の君たちは昔戦った時の桜ちゃんを超えているよ」

 

「お、お前を倒せなければ何も意味はない……!」

 

那由多からの本気の称賛も、はっきり言って嫌味でしかない。桃は忌々しそうに返した。

 

「上から見下してんじゃないわよこんちくしょー……」

 

「(すんまへんシャミ子はん……こいつ超強いわぁ……)」

 

それぞれの想いはあるが、正直もう体が動かなかった。那由多もそれを感じ取り、3人へ掌を向ける。

 

「今楽にしてあげるよ」

 

3人を粉々に吹き飛ばす威力を秘めた魔力弾を作るべく、掌に魔力を集中させる。放とうとした次の瞬間である。

 

───圧倒的な妖気が辺りを覆い尽くしたのだ。

 

「この妖気は……!」

 

地下からだ、と那由多が口にする前に、洞窟の穴から影が飛び出てきた。

 

軽く着地した男は首を慣らし、肩を回しながら那由多の方へ歩いてくる。

 

「よぉ、好き勝手やってくれたじゃねーか」

 

幽助は圧倒的な妖気を振り撒きながら、ボロボロの3人を見た後に那由多を睨みつける。

 

「ほぉ……その声、君は浦飯か」

 

那由多から見ればマヌケなデザインの邪神像の中に入っていたとは思えないほどの凄まじい妖気を持つ妖怪が目の前にいる。

 

外見だけ見ればヤンキーだが、その出鱈目な妖気に那由多は震えるのをやっとで堪えていた。

 

「おうよ。オレが浦飯幽助だ。散々好き勝手しやがって………ようやくテメーをぶっ殺せるぜ」

 

「……これまた凄まじい妖気じゃないか。どれだけ人を喰べたんだい?」

 

那由多を遥かに超える妖気。長く生きてきた那由多も、これほどの相手に巡り会うのは初めてであった。那由多の背中は冷や汗でびっしょりであった。

 

ここまで力をつけたのはまともじゃない方法なのだろう、と那由多はこれまでの経験からつい今のような言葉が口に出ていた。

 

「オレは修行してこうなったんだっての。テメーと一緒にすんじゃねーよ」

 

本業は定食屋の店長だしな、と付け加えた。

 

幽助は結婚してから妻の螢子の実家の雪村食堂を継いでいるので、いわば定食屋の店長なのである。食事は人間と全く同じである。

 

那由多はこんな強い魔族が定食屋……?と混乱していた。ちなみに魔界統一トーナメントに優勝してから邪神像に入ったので、定食屋兼魔界の王兼探偵という肩書が結構長い男である。

 

そして動揺しているのは那由多だけでない。幽助の真の妖気を浴びている3人も、これほどのパワーは感じたことがないのだ。

 

「う、浦飯さん……なの?」

 

「おう。遅くなって悪かったなオメーら」

 

ミカンは驚いていた。桃は以前幽助の姿を一度桃の過去を回想した時に見ているので知っていたが、ミカンやリコは本当の幽助の姿を見るのは初めてだった。

 

見た目は人間の気合いの入った青年だが、圧倒的な妖気のギャップが凄すぎるというのがミカンの感想だった。もし敵だったら一目散に逃げるレベルである。逃れればであるが。

 

「ふふふ……幽助はんの本当の妖気、ええなぁ……」

 

リコに関しては容姿よりも幽助の本当の妖気に当てられ、お茶の間に出せないような何かエロい表情を浮かべていた。ミカンはそれを横目で見て若干引いていた。

 

「……待ちくたびれましたよ、浦飯さん」

 

「随分ボロボロじゃねーか。あいつ、強かったろ」

 

「……悔しいですけどね」

 

自分でシャミ子の仇を討ちたかった、と言うのは桃の紛れもない本心だった。

 

しかしそれが難しいことも分かっていた。だからもうバトンタッチの時間だ。

 

「……後は頼みます」

 

「まかしとけ!」

 

横顔だけ桃に向けて、幽助はそう宣言した。それで一気に力が抜けたのか、桃は起こしていた上半身をそのまま仰向けに地面へ倒れた。体力の限界だったのである。

 

那由多は驚いていた。イクが敵に回ったとはいえ、あれほど強固に封印されていた邪神像の中身がこれほど早く復活するとは思っていなかったのだ。

 

命と時間を賭けた勝負の中で魔法少女にとってはある意味半殺しみたいな状態……コアを潰ずトドメを刺していなかったなんて普通は考えられない。

 

シオリと黒影の死体を残して血を丸ごと全部封印解除に使うなど、この切羽詰まった状況で思いつく方がどうかしている。少なくとも那由多はそう思う。

 

そして能力は強いが、戦闘能力という意味では虫と同レベルのご先祖の代わりに入った魔族がこれほど馬鹿げている妖気を持っているとは計算外だったのだ。

 

「テメーは許さねェ……覚悟しやがれ!」

 

気づいたら那由多は殴られていた。

 

「───ッ!!?」

 

那由多は何度も何度も地面をバウンドし転がっていった。そして街で一番高い桜の木の広場のギリギリまで吹っ飛んでおり、いつ殴られたのかさえ認識できなかった。

 

ただ頬が抉れるくらい、強烈な痛みだったことは良くわかった。

 

「あ、あぁ……!?」

 

咄嗟に立ちあがろうとしても、足が生まれたての子鹿よりも激しく震えている。まともに立つどころか、体が言うことを聞かないのだ。

 

そんな那由多の状態に構うことなく、幽助はすでに那由多の目の前に立っていた。

 

「立てコラァ!テメーはこんなもんじゃ済まさねーぞ!」

 

幽助は那由多の首を持ち上げて、鳩尾に拳を繰り出した。拳がめり込み、背中が突き抜けるのではないか、と言うレベルだった。

 

およそ人体から発生するとは思えない音を出し、那由多は遥か空へ消えていく。しばらくすると那由多は空から落ちてきて、受け身も取らず地面へ激突した。

 

「ガ、ガアァ……!」

 

那由多が落下した地面は、落下の衝撃で蜘蛛の巣状にヒビが入る。那由多は体裁も取り繕うことなく、血を吐き出していた。

 

これを見れば先ほどまで3人を涼しい顔で殺そうとしていた人物とはとても同一人物には見えないだろう。それほど幽助と那由多の実力差は圧倒的であった。

 

「やったの!?」

 

「……勝ったね」

 

「幽助はんの勝ちや」

 

ミカン、桃、リコの順でこの戦いの結末を口にした。しかし幽助を含めて誰も影になって見えていなかった。那由多が意味深に笑っていたのを。

 

つづく




幽助復活ッ!幽助復活ッ!幽助復活ッ!!の回でした。
セリフは間違いなくフラグ。フラグ回収は次回!
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