まちカド☆白書   作:伝説の超浪人

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戦闘シーン盛り込み。黄泉戦のあの黄金色のパワーって一体何だったんでしょうね?


67話「浦飯さん、限界を超えてです!」

時は少し戻り、地上。

 

凄まじい打撃音が響き、2人が距離を空けて着地する。

 

着地した2人───那由多は傷一つなく立っており、対する幽助は上半身裸で傷だらけになっており消耗していた。大きく乱れた呼吸をする幽助と、若干乱れている程度の呼吸の那由多。差は歴然である。

 

「やはりスタミナの差が出たね。君は動けば動くほど消耗するが、ぼくは無限の魔力のおかげで疲れ知らずさ」

 

「……その余裕そうなツラには腹が立つぜ!さっきまで互角だったくせによォ」

 

現在の那由多は常時スタミナと魔力MAXがデフォルトでついてきている状態だ。そしてその魔力を使って常時傷を回復させている。

 

ゲームであれば集団で傷の回復が追いつかなくなるくらいボコボコにするのが最適解であるが、これは現実。実力が追いついていない者では那由多の前に立つことすら叶わない。

 

現状対抗できるのは幽助のみで、1人で対抗していれば今のような状況になってしまうのも当然であった。

 

「ご丁寧に傷を治して見せびらかしやがって!性格悪いやつだな……テメー友達いねーだろ!」

 

幽助は霊界探偵として戦い始めてから喧嘩友達がたくさんできたが、霊界探偵になる前はほぼ友達はいなかったことを棚に上げてビシリと指摘した。

 

「───ッ!?」

 

正直那由多は狼狽えた。昔、桃をとある施設から救出した際に桜の連絡先を教えてもらおうと携帯を出したが、思い切り断られてしまったことを思い出した。

 

しかしムキになって言い返すと負けた気がするので、とりあえず那由多は鼻で笑った。

 

「だがそんな相手に敗北は目の前だよ浦飯。まだ続けるかい?」

 

「たりめーだ!このままじゃ───!?」

 

その時幽助は地下から巨大な妖気を感じた。そして同時に遥か遠い場所で懐かしい妖気も感じていた。

 

「(こいつは───シャミ子だと!?それにもう一つは……いや、そんなことあるわけねぇ!)」

 

死んだはずのシャミ子の妖気がバカみたいに膨れ上がった。その大きさはかつて仙水の前で妖怪として生まれ変わった自分と同じくらいの妖気だ。

 

そして遠くで感じたもう一つの妖気の持ち主は既に死んでいるはずだし、この世界にいるはずもない男の妖気だった。

 

だが幽助の考えを否定するように、幽助の体に変化が現れた。

 

「なんだこの妖気は!? それになんだ浦飯、その変化は……?」

 

「こいつは……!?」

 

幽助の体に浮かび上がるのは魔族の証とも言える模様だった。かつて克服した魔族の証だが、また反応したと言うことは答えは一つしかない。

 

あの男は───雷禅は生きている!

 

「へ、へっへっへ……」

 

可笑しかった。死んだと思った奴が2人も蘇っていたのだから。どういう理屈かはわからないが、2人同時に妖気を感じたと言うことは偶然ではないはず。恐らく自分が復活した時のように、血の繋がりがあるのだろう。

 

「(だからか、初めてシャミ子を見た時から放っておけねぇのは)」

 

なんとなく初対面からシャミ子のことを気に入っていたのは、このせいだったのかと幽助は笑った。

 

血は繋がる。子をなして、人も魔族も歴史を作っていくのだ。

 

それを全部ゼロにしようとしている目の前の女は、やはり放っておくことはできない。

 

「もうちょい付き合えや那由多。きっと面白ぇもんが見れるからよ」

 

恐らくシャミ子が復活すれば、ご先祖の洗脳とかは解放できるだろう。ならば幽助にできるのは、このまま戦い続けることだ。

 

「そんなボロボロでよく言う……! 謎の妖気は君を倒した後じっくり調べてやる!」

 

幽助が挑発すると、那由多は飛び込んだ。拳が交錯するが、やはり手数は那由多の方が上回っていた。

 

「気づいてる?地下の方ですごい妖気が現れたのを」

 

「……うん。救援に行きたいけど……」

 

「それよりもこっちの方を見なきゃあかんやろ」

 

リコは桃の提案をぶった斬った。確かに地下に現れた妖気は強大であるが、那由多を倒すことが最優先だ。

 

もしこの妖気の持ち主が那由多の仲間だったら小倉たちを倒してすぐこちらに加勢に来るだろう。だがそれがない時点で、大丈夫だろうと桃たちは判断した。それにこの妖気は邪悪な感じではないのだ。理屈ではなく、経験則であったが彼女たちはその勘を信じた。

 

非情ではあるが、幽助が負けたら全て終わりなのだ。こちらに戦力を集中させるのは当然だった。

 

そんな桃たちをよそに、しばらく攻防を繰り返し、那由多の右拳を頬で受け止めた幽助。

 

幽助は意識が飛びそうになりながら、しっかりと左手で那由多の右腕を掴む。那由多は引き離そうとするが、ビクともしない。

 

「くらいやがれ……!」

 

全身で高めた妖気は真っ赤に輝き、右拳を引いて力強く握る。これは霊光波動拳の初歩であり、幽助の得意技でもあった。

 

「霊光弾!!」

 

ショットガンと幽助は普段呼んでいるが、正式にはこの技名である。普段は散弾銃のように離れた相手に拳状の妖気を飛ばすが、密着した状態で放てば最も威力を発揮できる技だ。

 

「ぐおぉ!?」

 

幽助の中で威力の高い技であるが、那由多は左手を盾にして受け止めていた。しかし威力に押されて後方へ吹き飛んでいく。

 

そこを見逃す幽助ではない。

 

「(もう少しで霊光弾を弾ける!)」

 

僅かに思考が防御に対して比重を多く置いてしまった。その僅かな隙に、幽助は那由多に接近しており、彼女の近くで霊丸の構えを取っていた。

 

「早───」

 

「霊丸ー!」

 

息もつかせぬ超速攻。那由多に直撃した霊丸は大爆発を起こし、幽助は後方に吹き飛んだ。

 

爆発は巨大なキノコ雲を発生させ、余波で木々を揺らす。

 

「決まったの!?」

 

「だがこれでは浦飯さんまで爆発の影響を受けてしまっている……!」

 

遠くで見守っていたミカンは喜ぶが、桃は幽助の安否を心配する。だが横でリコが指差した。

 

「大丈夫や。幽助はんは無事や」

 

リコの指の先には、煙の向こうから後方へ飛んで避難した幽助が現れた。多少爆発の影響を受けているが、まだ戦闘可能の状態である。

 

「……よかった浦飯さん、無事だった」

 

桃たちは喜ぶ。しかしすぐミカンは顔を顰めた。スナイパーとしての能力が、いち早く状況を判断してしまったからだ。

 

「あっちは……何アレ!?」

 

煙の向こうから現れた那由多はまるでシャボン玉のような結界に身を包んでいた。霊丸が直撃したはずなのに、服すら破けていない。

 

「アレであの霊丸を防いだっていうのか……!」

 

桃は驚いて思わず叫んだ。とてつもない威力の霊丸だったはずなのに傷も負ってないという事実は、彼女ら3人に大きな衝撃を与えた。

 

「クソッタレがぁ……!」

 

幽助は怒りと驚きと共に、この光景は既視感があったのを思い出した。具体的には黄泉との初めての勝負の時だ。あの時は黄泉に霊丸を吸収されてしまった。

 

「【降魔反障壁】! ようやく浦飯の妖気の波長に合わせて無効化できる障壁を作り出すことができたよ。

素晴らしい防御性能だろう?」

 

那由多は自身の周りに展開した防御壁をそう評価した。敵の妖気の波長に合わせた防御壁展開することにより、妖気が防御壁に接触すると妖気が霧散し無効化するように設定してあるのだ。

 

魔力や妖気の波長というのは1人1人異なるもの。つまり指紋に近いのだ。

たまに美しい魔闘家鈴木のように波長を変えられる者もいるが、滅多にいない。故に波長に合わせて展開された防御壁を突破することは非常に難しい。

 

戦っている相手の波長を読み取って防御壁を構成する、なんて言うのは口にすれば容易いが実現するには非常に高度な魔力コントロールが必要だ。

 

つまりこの防御が完成したということは、ご先祖から流れ込んでくる魔力を完全に制御しているということに他ならない。

 

そして幽助もその事実を何となく理解していた。

 

───だが彼は撃ち破る方法も知っている。

 

「テメェ……!」

 

幽助は霊丸の構えを取り、右人差し指に赤い妖気を溜めた。それを見て那由多はほんの少し失望を覚える。

 

「無駄だよ。霊丸では破れない」

 

「うるせぇーっ!!」

 

幽助はそのまま赤い妖気での霊丸を撃った。今まで撃ってきた霊丸の大きさと違い、人間の顔くらいの大きさの霊丸を撃った。

 

1回だけではない。何度も指先に妖気を集め、何度も何度も妖気による霊丸を撃ち続けた。霊丸の凄まじい連射である。

 

「何度やっても無駄だよ!」

 

しかし那由多の防御壁は破れない。防御壁に阻まれ、何発もの霊丸は消えていく。

 

アレほど苦戦した浦飯がこうも単調で無駄な攻撃をすることに、那由多はため息をつきたい気分でいっぱいだった。

 

───そんな時であった。

 

「───何っ!?」

 

那由多の右頬が切れたのだ。切れた右頬から血が僅かに吹き出す。

 

すぐ魔力を使用して傷を治すが、精神的な動揺は治らなかった。

 

「(馬鹿な、なぜ防御壁が突破されたんだ!?)」

 

この防御壁は完璧だ。浦飯の【妖気】の波長に合わせて設定されているから、突破は不可能のはず。

 

だがその後も突破した僅かな霊丸が左腕、右肩に掠って血を吹き出させる。

 

まぐれではない。明らかに浦飯幽助は攻略法を知っている!それに気づいた那由多は、霊丸を集中して観察した。

 

そして赤く光る霊丸に青色の別の気が混ざっていることに気付いたのだ。

 

「なんだ、アレは……!?」

 

だが発見できても、那由多には分からなかった。魔力でも妖気でもない別の何か。それが何の力で、なぜそれを浦飯幽助が使えるのか不明だった。

 

「アレは……恐らく霊気だ!」

 

そして青い光の正体に気づいたのは付き合いが長い桃だった。他2人は聞いたことがない力に首を傾げる。

 

「霊気?」

 

「浦飯さんはかつて人間だった。人間だった頃は霊気という人間だけが使える力を使っていたって言っていた。

人間から魔族へ生まれ変わってから、基本妖気を使うようになったらしいけど、霊気も使ったことがあると聞いたことがある!」

 

黄泉との戦いで妖気と霊気の混合弾用いて、黄泉の反障壁を突破したことがある。それと同じことをやっているのだ。

 

「じゃあ浦飯さんだけにできる、霊気と妖気の混合弾ってことね!」

 

「なんてお人や……」

 

その事実を知らない那由多は混乱していた。そして混乱している間にも霊丸は防御壁を突破して那由多へ襲いかかる。

 

「ぬあ、ぐぅッ!?」

 

最初は僅かに掠るレベルだったが、今は仰け反るほどの威力を那由多に与えてくるのだ。

 

「うおぁぁぁー!」

 

幽助は叫びながら撃ち続ける。その体は雷禅の魔族の証がだんだんと消えていく。

 

「あの変な模様も消えていくわ!」

 

「霊丸から妖気が消えて、霊気だけになっていく……」

 

赤かった霊丸は青く光る霊丸へ変化していく。それを見ている那由多だが、霊丸の威力に体勢を崩され行動を起こせない。

 

「うおらぁー!!」

 

そして放たれる霊気のみで構成された極大の青い霊丸。

 

「う、うわぁー!?」

 

迫り来る霊丸の眩しさのあまり、那由多は反射的に顔を両手で庇うような防御体勢を取ってしまった。

 

そして大爆発。霊丸の反動で後ろに吹き飛んだ幽助も爆煙に巻き込まれ、巨大なキノコ雲を作り上げた。

 

「えらい威力やなぁ……」

 

少しすると爆煙の中から現れる幽助。その顔は好戦的な笑みを浮かべており、真っ直ぐ爆心地を見続ける。

 

そして燃え上がる炎の中から、那由多が現れた。

 

那由多は左肩から先が欠損しており、右目も見えておらずひどい火傷の状態だった。大怪我ですまない状態であったが、それでも幽助の全力の霊丸を浴びて生きていたのだ。

 

「随分ひでぇダメージだな、おい」

 

「そう言う浦飯も大分妖気が減っているじゃないか。決めきれなかったのは痛かっただろう?」

 

通常であれば戦闘不能の大怪我だ。余裕を見せる那由多に対し、幽助は地面へ唾を吐く。

 

「ペッ、アホ言え。重症なのはどう考えてもテメー……なんだとぉ!?」

 

幽助の目の前で、那由多の体が再生していく。それは右目や欠損したはずの左腕もまるで巻き戻すかのように再生しており、火傷も同様に回復していく。

 

今までも軽い怪我を幽助の前で治していたが、欠損までも瞬く間に治せるのは幽助にとって予想外だった。

 

魔法少女の肉体は魔力が元となっているエーテル体である。つまり魔力切れを起こさない限り回復可能であり、そして無限の魔力を手にした那由多は無限に回復できる。

 

倒すには一撃で木っ端微塵にしなければいけないのだ。

 

幽助は全力でやった。しかしここまでしか破壊できなかったのだ。

 

「腕まで生えてくるとか、出鱈目な再生力だぜ……」

 

戸愚呂兄じゃあるまいし、と幽助は忌々しく呟く。

 

左手を握ったり開いたりして確かめる那由多。機能は完全に回復したようだ。

 

「さて、そちらの妖気と……青色の気は随分減ってしまったようだね」

 

その通りである。随分妖気と霊気を使ってしまったため、かなり開きができてしまった。だから那由多が幽助の懐に飛び込み、那由多版霊光弾を放つ。

 

幽助の技を真似た那由多の一撃を幽助は避けることができず、腕を盾にして防ぐのが精一杯だった。

 

「ガァ!?」

 

地面を水平に吹き飛ぶ幽助。土壁に激突した幽助を見て、このままでは幽助が殺されることを察知した桃たち3人は飛び込む準備をした。

 

「さて、名残惜しいがトドメといこうか!」

 

しかしその3人が立ち向かうことを躊躇させるような莫大な魔力を身に纏う那由多。4人まとめて消し炭にするくらいの威力を秘めていることは、全員が肌で感じていた。

 

右手を上に掲げた那由多は、幽助の霊丸以上の大きさの金色の魔力弾を生成する。そして躊躇なく幽助に向けて右手を振り下ろした。

 

「魔光烈弾!」

 

巨大な金色の魔力弾が高速で幽助に迫る。

 

後方から射撃をしたところでこの攻撃は防げない。そう判断した桃たちが幽助の前に立とうとして、幽助はその行為を遮るように馬鹿でかい声を出した。

 

「来るんじゃねー!」

 

もし庇ったりすれば確実に桃たちは死ぬだろう。そんなのは幽助にとって後味が悪いし、何よりせっかく復活したアイツに申し訳が立たねぇと思っての発言だった。

 

その大声で咄嗟に動きを止めた桃たち3人。その桃たち3人が見たのは、幽助が魔光烈弾に向けて右手の人差し指を構えていたところだった。

 

「霊丸ー!」

 

「無駄だよ!一発程度では止まらん!」

 

幽助は赤い霊丸を放つも、那由多は笑った。魔光烈弾は幽助の霊丸の威力を超えるよう計算して撃った攻撃だ。正面衝突しても押し切れる自信が那由多にはあった。

 

「連射!」

 

「何だとぉ!?」

 

しかし二発続けてならばどうなるのだろうか?一発目は確かにぶつかり合っても押し負けそうだった。

 

しかし即座に二発目を撃ったことで、一発目が二発目の霊丸に押されて魔光烈弾を突き抜けたのだ。

 

「突き抜けた!」

 

「でもどっちの威力も死んでないわ!?」

 

どちらの技も相手に直撃し、爆発した。そして煙の向こうではなく、那由多と幽助は少しズレた場所にお互いボロボロになって立っていた。

 

「恐れ入ったよ……まさか連射で来るとは……!しかし浦飯、君の妖力はもうほぼゼロに近いんじゃないか?」

 

「……まだだぜ」

 

「何?」

 

アレだけ威力の高い放出系の技を何度も撃ったのだ。もうあまり残っていないだろうと思っている那由多の一言を切って落とす幽助。

 

「オレは負けねぇー!うおぉぉー!」

 

今度は赤くも青くもない、黄金色の気が幽助から湧き上がった。

 

「今度は一体何の気よ!?桃は聞いてる!?」

 

「これは分からない……けど……」

 

「凄いっちゅうのは分かりますなぁ」

 

この光景を見ている全員が、その黄金色の気に見惚れていた。

 

幽助自身、聖光気ではないこの黄金色の気が何なのか分かっていない。

 

だが何故か自身の気分と共に湧き上がってくるのだ。この果てしないパワーが……

 

「とことん凄い奴だよ君は……!」

 

対して那由多は使った分の魔力はもう戻りかけていた。おまけで怪我も回復している。無限の魔力の前に勝ち目は薄いだろう。

 

なのに笑っている幽助は、那由多にとっては奇妙に写っていた。だが同時に、彼らしいとも思った。

 

那由多も黄金色の魔力を吹き上がらせ、魔力をボクシンググローブのようにして両拳に集中させる。幽助も示し合わせたように、同じように力を集中させた。

 

「さぁ、打ち合いと行こうか!」

 

「来やがれ!」

 

本当に楽しそうに笑う幽助を見て、那由多は決心が鈍りそうだった。

 

───君といつまでも戦っていたい

 

けれど彼女は口に出さなかった。その分、幽助を殴る拳に思いを載せる。

 

お互い殴り続けた。防御を考えない、まるでチンピラのような戦い方。しかし、それが何より楽しかった。

 

「だがいつまでも続くわけじゃない……」

 

幽助は自己回復はある程度できるが、攻撃に使う妖気が多すぎて回復まで手が回らない。だが那由多は無限に供給される魔力で、常時傷を回復し続ける。

 

勝敗は明らかだった。

 

「ま、まだ負けてねぇぞ……!」

 

この状況で諦めていない幽助に、那由多は眩しく目を細める。そしてゆっくりと那由多は右の手のひらをゆっくり幽助に向けた。

 

「さて、これで……」

 

金色の魔力が那由多の右手に集中しようとして、桃たちは幽助の前へ飛ぶ。

だが一歩遅い。那由多はそのまま魔力弾を放とうとして……。

 

───力が抜けた。

 

「な、に?」

 

今まで圧倒的だったはずの魔力が急速に那由多の体から抜けていく。全ての魔力が抜けていくわけではない。今までご先祖から供給されていて那由多が制御していた膨大な世界中の魔力だけが抜けていくのだ。

 

「な、なんだこれは! まさかあの魔族の洗脳と術式を解いたというのか!?」

 

那由多はあり得ない事態に慌てていた。桃たちは急速に落ちていく那由多の魔力量に眉を顰めていた。

 

「(あり得ないはずだ。あの先祖の洗脳には那由多が集めた討伐カードを何枚も使ったんだよ!?

その洗脳を解けるのは、直接精神に入り込めるような能力者でない限り不可能のはず!

あの場にいた他の連中では絶対に不可能のはずだ!)」

 

該当する能力者であるシャミ子は倒したはず。だからあの場に残っているであろうイクたちはすぐに殺さず後回しにした。どうせ後で皆同じく一つになるのだから、すぐ死ぬのも後で死ぬのも大差ないとして見逃したのだ。

 

なのに何故……と那由多は必死に考えながら顔を幽助に向けた。

 

───笑っていた。

 

幽助は今にも吹き出しそうに笑っていたのだ。那由多は激昂した。

 

「浦飯!君は何か知っているな!?」

 

「ああ……知ってるぜ。もうすぐ来るしな」

 

幽助が自身の後方へ右手の親指を向けた。全員、幽助の指した方向を見て───目を見開いた。

 

「ちょっと待ったー!!」

 

段々影が大きくなり、那由多と幽助の間に入ってきた魔族は、その場の誰もが知っている者だった。

 

しかしあり得ない。死者は蘇らないのが常識だ。

 

「遅かったじゃねーか」

 

「すいません、色々やってました!」

 

その魔族は那由多がトドメを刺したはずの者だった。

 

「なぜ生きている───シャミ子!!」

 

那由多は叫ぶ。それに対して、シャミ子は拳を向けた。

 

「決まってます!決着をつけるためです!」

 

赤く輝く妖気が、本当のシャミ子であることを証明したのだった。

 

つづく




幽助、色々やったぜ。でも無限供給持ちにはキツかった。
でも長く戦っていたおかげでシャミ子が色々できたのでOK
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