まちカド☆白書   作:伝説の超浪人

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説明回にプラスしてちょっとバトル。どの程度原作を削ってバトルとか入れるのかを毎回迷う感じです。


7話「新たな魔法少女!私じゃ荷が重いので交代です!」

腕鬼と戦って怪我をしたまま家に帰ったら、お母さんも良子もびっくりしてました。さらに理由を話すと2人とも大騒ぎになりました。泣かれるわ病院だわでドタバタしまくり、結局落ち着いたのは夜になってからでした。

 

さらにその次の日が大変でした。なんと全身筋肉痛で全く動けないような状態になりました。

 

例えるのならば針のギプスを全身に纏っているレベルです。肩の怪我の治る速度が異常に早いのは、魔族なのだからでしょうか?

 

そんな状態なので回復するまで特に修行はなしになり、その日もゆっくり休めました。浦飯さんも過去にこの状態になったことがあるらしく、その時はゆっくり休んだから同じようにしようとのことです。

 

そのときの浦飯さんの場合は、少々半魔族がちょっかいをかけてきたそうですが、なんとかなったそうです。今の私だったら死にますね、それ。

 

そして週が明け、桃の風邪が治り桃が学校へ登校してきました。その日の放課後、今回の件を桃には伝えたところ、めちゃめちゃ怒られました。

 

 

「どうして私に連絡しないのかな!おばかなのかなシャミ子は!」

 

「ひ、ひいぃー!」

 

「まぁまぁ、あんときに倒さねーと魂が消化されるとこだったし、オメーも風邪ひいてたからしょうがねぇじゃねーか」

 

「浦飯さんが戦えば一瞬で終わる話でしょう!」

 

「シャミ子の奴がスイッチ押す前にオレを落とすからよー……オレのせいじゃねぇって」

 

「あんな攻撃受けてスイッチ入れるなんて無理ですよ!」

 

「言い訳しない!!」

 

「ひえぇ……!」

 

 

なんて感じで怒られまくり、その後桃に体の調子とか怪我の具合とか色々それはもう念入りにチェックされました。一応病院でも診てもらっているんですけどね。

 

一応桃からは怪我が完治するまで筋トレはお預けという判断になりました。そう言っても、後1-2日というところだそうです。

 

筋トレはしません。つまり、他はやります。妖力の攻防力移動などや、総量のアップなどを重点的にやる形になりました。

 

え、筋肉痛なのにやるのかって?2日休んだからやるんだそうです。この鬼どもが!

 

まぁ私としても、今回の件でもっと鍛えないとまずいということを感じています。たまたま霊丸が効いたから良かったものの、もし効かないレベルの相手で、今回みたいに浦飯さんと入れ替わることができない事態になったら、殺されるでしょう。

 

だからいつもより修行に熱が入りました。桃は病み上がりなので、今日は放課後の監督も浦飯さんが担当です。何故か良も隣にいます。

 

 

「今回の腕鬼にやったとき、オメーの攻撃が通らなかった理由はわかるか?」

 

「単純に攻撃力が足りなかったせいじゃないですか?」

 

「極論はそうだな。だが攻撃に使う妖力の集中がまだ弱いっつーことでもある」

 

「集中ですか?」

 

 

あの腕鬼に攻撃するときも、妖力を手に集中して殴っていた。それでも変身後の腕鬼には大してダメージはなかったんだけど……もっと妖力を高めて集める必要があるってことかな。

 

 

「まず右拳に妖力を集中させてみな」

 

「こうですね」

 

 

赤い光が右手に集中し、他の箇所より光る部分が大きくなりました。腕鬼を殴ったときはこんな状態でしたが、やっぱりまだ威力が足りないのでしょうか。

 

 

「お姉すごい!」

 

「ふふーん、そうでしょうそうでしょう!」

 

「調子に乗んなよー。そこから右拳以外の妖力を閉じろ」

 

 

良に言われて、ちょーっと嬉しくなっていると、浦飯さんが釘を刺してきました。別にいいじゃないですか、ちょっと調子乗っても。しかし妖力を閉じるですか……あの腕鬼を尾行したときの感じですね。

 

 

「閉じる閉じる……わっ!?」

 

「あ、なくなっちゃった……」

 

 

微妙に発している腕回りなどの妖力を消そうとした途端、弾けるように右拳に集中していた妖力がなくなってしまいました。かなり集中してやっていたはずなのに、失敗してしまいました。

 

 

「な、なんで途中まで上手くいってたのに……?」

 

「何でか考えて、もう1回やってみな」

 

「よ、よしもう1回!」

 

「お姉、頑張って!」

 

 

しかしその後2、3回やっても弾け飛びました。なんでうまくいかないんでしょう……?

 

集める→留めるまでは上手くいくんですが……。ああ、そういうことか。

 

 

「そうか、これって同時に3つのことを行うから難易度が高いんですね……!」

 

 

右拳に妖力を集める。次に集まった妖力が外に出ようとするのを留める。その時点で腕や他の部分にはまだ妖力が微妙に残っているから、それを閉じることによって、右拳により集中する形になるという仕組みですね。

 

「そうだな、集める・留める・閉じるの3つを同時に行う必要がある。だから今のオメーには難しいってわけだ」

 

「空気入れた後、風船の根元を抑える感じですか?」

 

 

やだ……良の説明のほうがイメージすっごく分かりやすい。確かにさっきまでの失敗は留める力が弱いのと、根元を抑える力……つまり絶つ力ができていないから、弾け飛んだんだ。

 

 

「そうそう、良子の説明通りな感じ。しかも空気と風船の膜……つまり留める力も妖力だ。つまり妖力を込めて留める力が高まり他を絞れば、威力が上がるってこった」

 

「それじゃあ、基本的なコントロールができれば、それは武器になるってことですね?」

 

「そういうこった。そして妖力自体が高まれば威力も上がるし、体そのものが強くなれば、もっと威力が出る。ただ注意することがある」

 

「注意ですか?」

 

「そうだ。さっきの1点に集中させるやり方だが、その間他の部分が無防備になる。つまり妖力の攻防移動が遅くなれば、生身で相手の攻撃を受けることになる。そうなったら、分かるな?」

 

 

それを聞いて、私はぞっとしました。それは妖力なしで腕鬼の攻撃を受けていたら……ということになります。今回の戦いは全身の妖力を高めて覆っていたから、あのダメージで済んだのです。生身で受けていたらと考えると、結果は死でしょう。

 

 

「つまり通常は0か100じゃなくて、腕鬼とやったみたいに単なる攻防力移動でいい。効かねー相手に今回のコントロールが必要になってくるってことだ。まぁ通常でも高めた妖力を纏って維持できれば、それだけ有利になるぜ」

 

「めっちゃ基礎頑張ります!」

 

「よーし、じゃあ今から全身の妖力フルパワーで高めて、そのまま維持な。良子、タイマーで計ってやれ」

 

「はーい」

 

 

いやいや、やるとは言いましたが、さっき妖力使ったのに、また使うんですか?しかもフルパワー維持って、全然長くなんてできませんよ?

 

 

「えぇ!?あれ無茶苦茶疲れるんですよ!?」

 

「やれ」

 

「はーい……」

 

 

何かせっかく決心したんですが、さっそく心が折れそうです……。結局この日は妖力が空になるまで、フルパワー維持を延々繰り返してました。持続が伸びた時間ですか?20秒ですが何か?

 

そんなこんなで日曜日。杏里ちゃんに頼まれていたバイトの日です。何でもバイトに欠員が出たそうで、商店街のマスコットである「たまさくらちゃん」の着ぐるみを着てビラ配りすることになりました。ちなみに邪神像は腰に装着してます。

 

ビラ配りしていると子供に囲まれ、いっぱい触られます。そのせいか頭が少しずれて、視界が遮られました。

 

 

「大丈夫?首がズレちゃってるから、手伝うわね」

 

「ありがとうございま……」

 

 

女の人の声が聞こえ、お礼を言いかけて、止まりました。なんと、すごく特徴的な格好をしたオレンジ髪の少女だったからです。変身後の桃みたいな格好ですね。

 

 

「……ありがとうございます」

 

 

なるべく声の動揺を抑えて、お礼を言います。デザインは違えど、やはり桃の格好に近いフリフリ衣装です。

 

 

「いーのよ、気にしないで?ところで、そのビラに地図があるなら1枚ちょうだい」

 

「は、はい……」

 

 

やばいです。これは新たな魔法少女出現でしょうか。いやいや、結論はまだ早い。

 

 

「あのー、その恰好はコスプレか何かで……?」

 

「違うわよ?私、魔法少女なの」

 

「おっふ」

 

 

さりげなく聞いてみると、彼女は魔法少女でどうやらここの公園を目指していたそうです。

 

何でもこの街の魔法少女が魔族と大変なバトルをした上にぼこぼこにされて、魔力を奪われ配下にさせられたらしく、助っ人で来たとのことです。

 

あながち間違ってないところがまずい……!浦飯さんが桃を倒しましたし、魔力を奪ったことも事実!否定できない状況です。

 

しかも彼女、相手の魔族の正体は知らないので、魔族を見つけ次第片っ端からしばくつもりだそうです。

 

まずい……見た感じ私より強そうです。このままじゃしばかれる……!

 

 

「た、大変ですね……」

 

「なんかあなた、おかしくない?」

 

「そ、そんなことないですよぉ↑~……?」

 

「いや、声が裏返ってるし」

 

 

何とか誤魔化そうと色々手振り身振りしましたが、余計に目線がきつくなるだけでした。

 

誤魔化しつつビラ配りを再開してもじっと見続けてきます。まずい、逃げられません……。

 

 

「あ、ビラ配り終わったので、これで失礼しますね?」

 

「私も着いていくわ」

 

「な、何故!?」

 

「いや、あなたさっきから焦ってるし変よ。ほら、あそこの路地裏で脱いで!」

 

「え、ちょっと!?」

 

 

強引に引っ張られ、路地裏に連れ込まれた私は脱ぐことを防いでました。でも相手も頭を掴んできます。負けてたまるかぁ!

 

 

「絶対脱ぎませんよ!絶対です!」

 

「……いいから、はよ脱げ!こんな路地裏でこんな会話してたら誤解されるでしょーが!!」

 

「ひゃあぁぁ!」

 

 

奮戦むなしく、あっさり脱がされました。もう駄目です……!

 

 

「つの……?」

 

 

相手が私の角を見て呆けてます。今だ、最終手段!!くらえ魔法少女!

 

私は腰に装着している邪神像を着ぐるみの中で手に取り、そして底のスイッチを入れます。

 

 

「チェーンジ、浦飯さん!スイッチオン!!」

 

 

相手は変身の光に反応し、数m飛びのきました。そこまで見て、私の意識は途切れました。あとは任せましたよ、浦飯さん……。

 

☆☆☆

 

「このパワーは……!」

 

 

新たに現れた魔法少女―陽夏木ミカン―は戦慄した。先ほどまでの魔族の少女とは桁違いのパワーを感じたからである。間違いなく、自分より上の実力者ということは肌で感じ取れた。

 

元々この街の魔法少女である千代田桃は魔法少女として優れた人物であり、よほどの相手でなければ真っ向勝負で負ける相手ではないのだ。だから先ほどまでの彼女を一目見たときは、倒した相手とは別人だろうと予想していた。

 

だがそれは違った。実際はこれほどの力を秘めていたのだ。これほどの相手とは正直予想してなかった。

 

正直、勝てる相手とは思えなかった。そして目の前の魔族が口を開く。

 

 

「なぁ……ひとついいか?」

 

「……何?」

 

 

ミカンはいつでも対処できるよう集中する。もちろんここで大きく戦うことではない。桃が来れば数的有利になる。それまでの時間稼ぎをするため、話に乗った。

 

 

「よぉ……いくら女同士でもあの言い方で路地裏に引き込むのはやべーんじゃねぇか?」

 

「なっ、なぁ……!?」

 

 

意表を突かれた。というかこの空気で今それを言うのか。

 

ミカンはこの子の声が男みたいだな、とか雰囲気が全然違うとか頭の片隅で思った。

 

しかしそれ以上に自分でもあの言い方では誤解されると思いつつ発言したこともあり、自分への迂闊さと恥ずかしさで頭がいっぱいになった。ミカンは心拍数がガンガン上がるのを感じていた。

 

 

「しょ、しょうがないじゃない!さっきまで怪しかったし、違ったとしても熱中症かもしれないと思って心配したらあんな言い方になっちゃって……!」

 

「なんだ、そっち系じゃなかったか」

 

「そっち系って何よ!?私はノーマルよ!!」

 

 

ミカンは恥ずかしさでもう顔が真っ赤であった。ちなみにそっち系の意味は性的嗜好のことである。幽助としては仙水の隣にいた樹の話を桑原たちから聞いているので、そういうこともあるかな~ぐらいで尋ねただけである。

 

しかし律義に反応している時点で、この魔法少女は真面目ちゃんだなと幽助は感じていた。というか、隙だらけである。

 

ここで彼女は呪いが発動した。彼女自身が動揺し、心拍数が正常でなくなった際に「関わった人にささやかな困難が降り注ぐ呪い」が発動するのだ。

 

ここでいう関わった人というのは通常距離が近い人物、もしくはミカンとの関りが深い人物が該当する。

 

そして今回発動したのはシャミ子in幽助ではなく、別の人物である。

 

路地裏の曲がり角に潜んでいた人物の上に、小さな雨雲が生まれ雨が降った。もちろん対策などしていないので、その人物はびしょ濡れになった。

 

 

「そこにいるのは誰!?」

 

 

ミカンは曲がり角で発生した自分の呪いのおかげで底に潜んでいるのに気づくことができた。言われるがまま、被害にあった人物は彼女たちの元へ足を運んだ。

 

 

「ミカン……いったん落ち着こう。その人は敵じゃないから」

 

 

その人物は千代田桃であった。せっかくの私服が呪いによる雨で濡れている。カバンの中身は大切なのか、全く濡れていなかったが。

 

 

「よぉ、いつ出てくんのかと思ったぜ」

 

 

幽助は初めから桃が後ろから着いてきていることは知っていた。

 

具体的に言えばシャミ子がたまさくらちゃんの格好をしてる時から隠れるように見ていたときからだ。それを知っていたので、目の前のミカンという魔法少女をからかったのだ。

 

 

「桃!?え、てゆーか知り合いなの?」

 

「今から話すよ」

 

「ここで立ち話もなんだしよ、サ店でも言って話そーや。桃も濡れたままじゃ病み上がりだしよくねーだろ」

 

 

そう幽助が提案すると、2人の魔法少女はきょとんとした目で見つめている。幽助は眉をしかめた。

 

 

「……なんだよ?」

 

「……いえ、浦飯さんそんな気遣いできるんだなぁと。あんなに教育に悪いことすごく言うのに」

 

「ああ……何か想像つくわね……」

 

 

桃は幽助の発言が意外だったのでそう言った。ミカンはすっかり戦う雰囲気ではなくなり気が抜けたのもあって、そういった反応になった。

 

 

「オメーらぶっ飛ばすぞ?」

 

 

そんなことを言いながら喫茶店に足を運び、今までの事情をミカンに説明した。ミカンも先ほどの自分の呪いについても説明した。

 

桃はミカンには最低限も説明してなかったようだ。そんなでもこの街の助っ人としてやってきた彼女はとても人が良いのだろう。

 

情報を交換し、ミカンはため息をついて注文したミカンジュースを一口飲む。

 

 

「大体わかったわ。それじゃ桃の実力が戻るまではこの街で過ごすことになるわね。というか、人喰いまで出てきているなんて……さっきの子でよく勝てたわね」

 

 

正直まだ覚醒したてで、しかもミカンが見た限りでは温厚そうな魔族であった。だから戦いで勝ったことが意外だった。

 

魔族で着ぐるみのバイトをしていれば、温厚という印象にもなるだろう。少なくとも武闘派のやることではない。

 

 

「相手が弱かったからな。オメーらじゃ一撃だろうぜ」

 

 

事実腕鬼は人を食べている割には弱かった。それこそ、幽助が戦った剛鬼と同レベルであろう。

この2人の魔法少女からすれば敵ではない。とはいえ今のシャミ子にとっては強敵だったのは間違いない。

 

 

「でも人喰いが出てるのなら増々この街を助ける必要があるわ……浦飯さんとシャミ子の境遇には同情するけど、生き血を取られる気はないです。魔力を取られ過ぎれば、こちらも戦力が下がるし、最悪消滅する可能性があるし」

 

「ちょっとミカン、その話は……!」

 

 

幽助にとって、ミカンが最後に言った消滅の話は初めて聞くものだ。あえて隠していたのだろう、それを証拠に桃が慌てだした。

 

 

「おい初耳だぞ、その話」

 

「えっ、言ってなかったの!?ど、どうしよう……私やっちゃった……」

 

 

目に見えて落ち込むミカンの心に反応したのか、今度は幽助の上に雨雲が発生し雨を降らした。おかげで幽助は濡れる羽目になった。どうやらこの呪いは本人にコントロールできない類のものらしい。まぁだからこそ呪いというのだろうが。

 

 

「おい、人の上に雨降らすのやめろ」

 

「ご、ごめんなさい!」

 

「浦飯さん、この件は……」

 

「一応シャミ子には伝えておく。まぁ妖力も命を燃やして使えば死ぬし、大して変わんねーよ」

 

 

幽助はタオルで体を拭きながら昔の戦いを思い出していた。

 

幽助は朱雀戦で命を燃やして最後の散弾式霊丸ともいうべきショットガンを放ち、勝利をおさめたが、桑原が霊力を送りこまなければ心肺停止で死んでいたそうだ……と蔵馬から聞いていたことを思い出す。

 

そう考えると消滅という話は別段珍しいものではない。そうならないようにシャミ子を鍛えればいいのだ。

 

 

「なるべく上手くお願いします」

 

「わかった。もっと強ぇ連中が来るとしたら今のシャミ子じゃやべーし、桃もまだきついしな。頼むぜミカン」

 

「わかったわ」

 

「で、これからどうする?封印解くにしても、詳しいやつがいれば一番いいんだが」

 

「一番詳しいのは私の姉の桜でしょう。しかし今どこにいるのか……」

 

 

先代魔法少女である千代田桜は10年ほど前から行方不明であり、その足取りは桃がいくら調べても分からずじまいである。ミカンも桜が行方不明であったこと以外はほぼ何も情報を持っていなかった。幽助が知るわけがない。

 

 

「桜さんのことだから、どこかで生きている気はするけど……」

 

「仕方ねぇ。この街で桜って奴を知ってそうな奴に当たるしかねぇか」

 

「この10年消息を絶っていますので、それ以前から住んでいる魔族がいいかと思いますが……そういった魔族は光の一族と接触しないように結界を家の壁や扉に貼っているので接触できなくて」

 

 

争わず暮らせる街ということだが、外部の侵入者の可能性も考慮し、それぞれの魔族の家には結界が個別で貼られていた。これを解除するには魔族本人の許可が必要である。

 

つまり光の一族である魔法少女が打ち破るには力業しかないのだが、桃はそういった行動を起こさなかったため、今日まで情報を得られずじまいであった。

 

 

「なら俺の出番だな。何とかなんだろ!」

 

「やだ、竹を割ったような無策だわ……」

 

「でもとりあえず地道に探すしか、現状はできそうにないみたいですね」

 

「そーゆーこったな。そんじゃ今日は一旦解散だ。今度から頼むぜミカン!」

 

「はい、こちらもよろしくお願いします」

 

「じゃあ、また」

 

 

ミカンは今日桃の家に泊まるらしく、2人揃って帰っていった。

 

幽助はというと、もう少し街をぶらぶらするつもりであった。そもそも体に入るのが桃と戦った時以来なのだ、今日ぐらい遊び惚けても文句言われないだろう。バイトで軍資金も入ったこともあり、そのまま幽助は行動を映した。

 

解散してからしばらくして辺りが暗くなった時間、まだ幽助は外を歩いていた。

 

 

「いやー、儲けた儲けた。パチンコは入れなかったが、そこらへんのおっさん捕まえて競馬場へ入れたのがデカかったな。あのおっさんも喜んでたし、いいことしたぜ!」

 

 

パチンコはシャミ子の外見がどうひっくり返っても20歳以上には見えないので追い返されたが、しょぼくれたおっさんを言いくるめて競馬で一儲けしたのだ。馬券はおっさんに買わせた。もちろん持ち逃げされないよう少し脅したが。

 

そして大当たりである。毎日のようにこちらでも新聞読んでいた甲斐があったというものだ。おっさんは結構崖っぷちであったらしく、すごく喜んでいた。これも人助けである。財布の中身がシャミ子が見たことないレベルで厚みを増すこととなり、幽助もウキウキである。

 

街灯だけが照らす道で、幽助は男とすれ違った。そしてその男が吐いた息を嗅いで、幽助は立ち止まった。

 

 

「おい。そこのオメーちょっと待てや」

 

「……なんだい、お嬢ちゃん。お兄さんに何か用かい?」

 

 

背の高い青年である。普通の人間が見ればなんて事はなく、街中で見ても振り返ることはなく、すぐ忘れるような容姿であった。だがその瞳が、瞬きせず幽助を見つめていた。

 

 

「テメー、何人喰った?」

 

「お嬢ちゃん、いったい何を言っているんだい?そんな物騒な……」

 

「とぼけんじゃねーぜ。テメーの口から人間の匂いがプンプンすんだよ」

 

 

今まで人間を主食とする妖怪と同じ匂いが、男の口から洩れていた。男はため息をついて、右手で髪をかき上げる。

 

 

「……この街で2人だよ。カップルが美味しそうだったので、ついね。それで、私をどうするんだい?」

 

「別に。単に食事だろ?だが事情があるから、この街ではやるな。喰うなら他の街にしな」

 

 

幽助にとっては魔族が人間を喰うことも食事という認識だった。魔族大隔世をしてからは、食事に関しては考えが少し変わったのだ。

 

もちろんこの会話は邪神像のシャミ子には聞こえてない。というより、シャミ子の場合邪神像に入っていると、幽助と違い邪神像の外を見れないし聞き取れないことは本人から確認済みだ。

 

だから幽助はこういった物言いをした。もし聞かれれば、関係に亀裂が入るものであることは理解していたからだ。

 

故に幽助はこの目の前の魔族を見逃すことにした。特に戦う気はなかったからだ。

 

 

「お断りします。ここはいい狩場なんですよ」

 

 

しかし男は断った。魔力が男の体を覆っていく。明らかに臨戦態勢に入っていた。

 

 

「あ?」

 

「わかりませんか?ここは特殊な結界で覆われた場所ですが、それが先日から弱まったということは結界の元……つまり魔法少女の弱体化を意味するのです。ここの魔法少女は非常に有名ですが引退して大分時間が経っている……人間ではこの意味は大きい」

 

「つまり、何が言いてーんだよ」

 

「ここまで言っても分からないとは……つまり弱体化した魔法少女がいて、人と魔族が共存する街ということは警戒心が薄いこと意味する。だから非常に美味しい場所なんですよ、喰うにはね」

 

「………」

 

「それを証拠に先ほどのカップルはとてもよかったですよ……先に男の方を嬲って少しづつ見せつけるように喰うと、女の感情は良い具合で壊れましてね……その女の味はまた格別でした……やはり負の感情はいいスパイスになります」

 

 

男は恍惚としてその時の味を思い出していた。凄まじく、醜悪な表情であった。

 

 

「ああいった味はまた味わいたいものです。だから人間の味方をして、私の正体を知っている魔族は邪魔なんですよ」

 

 

魔力が高まり、青年の姿が変わる。魔力の渦が体を覆い、それが晴れると魔族としての姿を現した。

 

赤い顔に長い鼻。山伏の装束を身に纏い、一本歯の高下駄を履き、羽団扇を左手に、日本刀を右手に持つ姿へ変化した。その姿を、人は天狗という。

 

 

「喧嘩なら容赦しねーぞ」

 

「喧嘩?違いますよ……これは処理です」

 

 

天狗の魔力が先ほどより高まっていく。こちらで会った魔族の中では最高レベルだろう。というより、魔族自体にほとんど出会わないが。

 

この魔力の大きさは、現在の弱体した桃より若干下程度だろう。どうひっくり返っても、今のシャミ子に勝てる相手ではない。

 

 

「少しほっとしたぜ」

 

「……何ですと?」

 

「テメーみたいな下種なら、本気でやれるからな」

 

 

幽助は妖力を全力で解放した。桃と戦った時は怪我させないようコントロールする必要があり、全力が出せないフラストレーションが溜まっていた。

 

だがこの相手に手加減などいらない。故のフルパワーだった。

 

 

「バ、バカな……!?な、何なのだこのパワーは……!?」

 

 

天狗は己のミスを悟った。ここに来て初めて力量差を感じ取ったのだ。勝てる相手ではないと。

 

この時撤退か、命乞いか2択で迷い、しかし彼はプライドを取った。

 

自分より格上であろう。先ほど自分に実力を悟らせなかったのだから。

 

だが格上故に油断する者は魔族・魔法少女ともに腐るほど見てきた。それに対して生き残ったから今があるのだ。

 

一撃加えて空を飛んで撤退する。そう決めるまで一瞬である。しかしその一瞬の迷いが、彼の最後だった。

 

既に天狗の視界一杯に広がる幽助の拳が迫っていた。

 

 

はや――――――!?

 

 

気づいたときには既に遅く、顔面を中心に衝撃が全身に走った。

 

一体何発の拳が受けているかも感じ取ることができず、彼の思考は拳の衝撃でまとまることはできなくなっていた。

 

もはや攻撃が終わったことも感じることもできず、幽助に首を持たれ、そのまま空へ投げ飛ばされた。

 

幽助はそのまま投げ飛ばした天狗に向け、妖力を集中させた右の人差し指を向ける。

 

 

「霊丸!」

 

 

発射音とともに、山をも包むような巨大な霊丸が天狗に向かっていく。

 

天狗が最後に見た光景は、視界一杯に広がって迫る霊丸の赤い光だけであった。

 

そして霊丸はそのまま天狗の体を跡形もなく消し飛ばし、空の彼方へ消えていった。

 

住宅街に静寂が戻る。まるで幽助が一人しかいなかったかのように、天狗の痕跡は何も残ってなかった。

 

 

「……やっぱり、マジでシャミ子を魔法少女クラスに強くしねーと、封印解ける前に殺されそうだな」

 

 

続々とこの街に魔族が集まりつつあるのを、幽助は感じ取った。名を上げよう、おこぼれをもらおう……そういった輩はどこでも変わらないということだ。

 

 

「……さて、帰るか。あいつらにも今のことは伝えたほうがいいしな」

 

 

そう言って、幽助はその場から去った。間違いなく、戦いが激しくなっていくであろう予感を感じながら。

 

つづく




ハンターハンターの錬は10分伸ばすのに1ヶ月とあります。つまり10分=600秒で、1ヶ月30日と仮定すると1日20秒ほど伸びる計算です。つまりシャミ子は悪くないよ!
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