ぼっちのヒーローアカデミア   作:江波界司

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ご愛読ありがとうございます。
一日でお気に入りが120人増える異常事態を見ました。
理解が追い付きませんでした。
ので、取り敢えずガッツポーズしました。(語彙力消滅)



やはり俺の戦法はまちがっている。

 三回戦進出を果たしました。

 マジで?俺勝った?

 いや、皮肉とかじゃなくてシンプルに信じらんないんだけど。

 だって相手常闇だぞダークシャドウだぞ。A組で個性ランキングとかしたらトップ5に入るレベルのやつだぞ。

 常闇の中で俺の評価が低くて良かったわ。じゃなきゃ挑発に乗って来なかったろうし。

 勝ったんだしいいか。次の試合こそヤバい。マジやばい。パない。まじパない。

 少しでも回復を、ということで二本目のマッ缶を消費した。主に脳の回復。

 一休みした後、観戦席に戻る。

 

「お、来た来た。比企谷〜、こっち座れよ」

 

 テンション高めに隣の席を指すのは、A組のチャラ男、戸部枠、上鳴電気。で、戸部って誰?

 

「次の試合に集中したいんだけど」

「いいからいいから」

「何が?おい話聞け」

 

 遠回しに断ったのに聞かねえのこいつ。

 結局、引きずられながら席に座らせられた。

 

「いや〜凄かったな〜。芦戸も常闇も無傷で完封とかさ。これA組でもトップクラスだろ!」

「いや、無傷っつーか、ワンダメで即リタイアのスペックなんだけど」

「けど、無傷なのは事実じゃないかしら、比企谷ちゃん?」

 

 変に持ち上げられるのを避けようとしてるんだけど、おいこら毒ガエル。何してんのお前。

 無言で文句を伝えると、蛙吹はケロ?とか言いながら首を傾げた。

 やめろ。普通にイラッとくるしちょっとかわいいからそれ以上何も言えくなるしこの前のお友だち発言思い出して恥ずいからマジやめろ。

 上鳴の打ち上げた話題はそのまましばらくクラス内を巡る。

 そして二回戦第4試合の開始と共にその流行りは終了した。季節巡るの早すぎね。最近のJPOPかよ。

 カードは爆豪VS切島。さながら攻撃力対防御力、A組トップランクのほこ×たてである。

 試合は、序盤から切島の猛攻が続く。防御こそ最大の攻撃というかのごとく、爆豪に攻撃の隙を与えない。

 いや、爆豪も並外れた動体視力と反応速度、そしてそれに見合う運動能力でカウンターを決めるが、切島に爆破は効いていない。

 なるほど、ダメージが無いのなら問答無用でぶん殴れるわな。爆豪も紙一重で躱してるから互いに有効打はないけど。

 だが、この均衡はいずれ崩れる。

 爆豪と違い、切島の個性は長期戦に弱い。

 結局、先に根負けした切島が爆豪の猛攻に耐えきれず敗北に終わる。

 

「比企谷、お前あれに勝てるのか?」

 

 流石としか言えない実力を見せた爆豪。上鳴はそんな奴を指さしながら聞いてきた。

 知らんがな。

 単純な戦闘力は俺の負け。機動力も火力も反応速度も桁違いだ。

 なら、いかにアウトローな展開に持っていけるか。

 それが爆豪戦でのカギだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 準決勝、第1試合は飯田の機動力を奪った轟の勝利。

 続く第2試合は……。

 

『さあ!来たぜ来たぜ好カード〜!選手宣誓から狙うは一位のみ、爆豪勝己!VS、ここまで無傷の完封勝利、比企谷八幡!容赦のない二人がぶつかり合うぞ〜!!』

 

 観客が沸く。会場は歓声で揺れる。準決勝となると期待度は相当高いか。

 つっても、片や個性対決に絞め技を使う奴に、片や女子相手に爆破を撃ちまくる奴。双方ヴィラン感凄くね?

 そんな悪どい2人の試合でも、観客のボルテージは高い。

 拍手や歓声が響く中。

 

『試合、開始ぃ〜!』

 

 プレゼントマイクの声がより高らかに宣言する。

 

 開幕と同時、爆豪は両手の平で起こした爆発を推進力に進んでくる。

 接近戦は望むところ。俺の勝ち筋はそれしかねぇからな。

 だがしかし、残念ながら真っ向からやり合う気はない。

 

「ぼさっとしてねェで、死ねェや!」

 

 ジェット代わりに使っていた両手を、今度は俺に向ける爆豪。

 その二つの手からは、視界の全てを吹き飛ばす爆発が放たれる。

 俺は、何もせずに目を閉じた。

 

「──はァ……?」

『爆豪の速攻!比企谷は直撃か〜!?』

 

 何もしなければ、100%のダメージが入る。

 ステルスどころか防御姿勢もせず、爆豪の攻撃を無防備に浴びた。

 背中から地面に倒れ、大の字で横になる。

 痛えし、熱い。意識保ってる俺、実は強いんじゃね。いや、一点集中で食らってたらマジで気絶してたな。

 ステルスによる回避を想定して、爆豪は広範囲に爆発を散らしたんだろう。派手な爆発だったが、威力自体は見た目程高くなかった。

 追撃はない。俺は目閉じてるし、気絶したと思っているのか?

 爆豪はゆっくりと歩み寄る。

 

「……ンだよ、そりゃあ。てめェ、ふざけんじゃねェ!」

 

 爆豪は片手で胸ぐらを掴むと、一気に俺を持ち上げた。

 まぁ、そりゃキレるよな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──第三者視点──

 

 

 

 

 

 

 

 

 試合はあっという間に決着が着いた。

 ──そう、誰もが思っていた。

 

「……ンだよ、そりャ。てめェ、ふざけんじゃねェ!」

 

 激昂する爆豪と胸ぐらを掴まれた比企谷。

 二人だけのリングで異常は起こる。

 それは誰かが瞬きをした合間の、本当に一瞬のできごとだった。

 

「ぐァっ!」

 

 言い表せぬ悲鳴を上げたのは、爆豪。

 彼は突然の痛みを感じ、不自然に曲がった左腕を押さえる。

 そしてどうにか顔を上げた先には、ついさっきまで左手に掴んでいたはずの比企谷はどこにもいない。

 

「おいおいおい!一体何がどーなってんだ!?」

 

 観戦席では切島をはじめ、多くの者が困惑していた。

 つい数秒前に倒されたはずの選手は姿を消し、勝ったはずの選手が負傷しているのだから当然だ。

 

『マジかよ比企谷……腕へし折ったのか!?』

『よく見ろ。関節を外しただけだ』

 

 早とちりするプレゼントマイクを諭すイレイザーヘッド。

 その実況のさなか、イレイザーは感心する。

 比企谷のやっていることは勧めるべき行為ではないかもしれない。

 だが──。

 

『なるほどな。爆豪の攻守の起点は手。だから先にそれを潰しに行ったわけか。実に合理的だ』

『いやいや、感心するとこ?つか〜、やっぱ比企谷の攻撃エグくね?』

 

 この一週間、比企谷は何を思ってこんな技を覚えたのかは分からない。

 だが、これだけの手際だ。余程練習して体に教えこんだのだろう。

 その努力は認めてやりたい。

 教師としては素直に褒められないが、と相澤は思った。

 

 一方、意識外から攻撃を受けた爆豪は完全に比企谷を見失っていた。

 それを理解した上で、比企谷は不可視の蹴りを負傷した爆豪の左腕に打ち込む。

 

「がっ……」

『また比企谷の攻撃が入ったみてぇだな!けど見えねぇ!』

 

 爆豪は顔を歪める。

 既に、比企谷が死んだフリから左腕を潰すところまでが作戦だったことは理解していた。

 爆豪の思考力や身体能力ならば比企谷を引き剥がすことは不可能ではない。

 だが厄介なことに、左腕を失ったことで全ての行動が一拍以上遅れてしまう。

 近距離は爆豪にとっても個性を活かせる間合いにも関わらず、反撃も迎撃も封じられる局面だった。

 その後もステルス状態の比企谷から猛攻が続く。

 執拗な左からの攻め。それに対応しようとすれば右から攻撃が飛んでくる。

 得意のカウンターを合わせようにも、攻撃モーションや狙いが見えないのでは打ちようがない。

 

「あの爆豪が、一方的にやられてんのかよ……?」

 

 その有り得ない光景に上鳴が呟く。

 それは爆豪の実力を知るA組の総意だった。

 

「デクくん、さっき何がどうなったの?」

「多分かっちゃんを怒らせて、超至近距離でステルスを使えるようにしたんだ」

 

 緑谷は比企谷の戦法を分析しながら、先の常闇戦を思い出していた。

 常闇本人に聞いたが、比企谷に試合開始直前から心を乱され、試合が進むにつれてどんどんと判断力を削がれたという。

 

(比企谷くんの強みは応用力と隠密性に長けた個性だと思ってたけど、違うんだ。比企谷の強さの一つは──)

 

 心理戦にある。

 人間観察に優れた比企谷は、相手の性格や心理状況に合わせて戦略を組み立てている。

 それ故に、ステルスという扱いの難しい個性を最大限に利用できる。

 

「待てよ緑谷。つーことは、比企谷は爆豪の攻撃をわざとノーガードで受けたってのか?」

「そうだと僕は思うよ、切島くん。多分だけど、比企谷くんはかっちゃんが最も嫌がることを理解してたんだ」

「最も、嫌がること?」

「手を抜かれることだよ」

 

 爆豪は勝ちに対して貪欲だ。それは今日の宣誓ならも推測できる。

 しかし爆豪が欲しているのは形だけの1位ではない。

 相手が全力を出し尽くし、それを超えて勝つ完膚なきまでの1位なのだ。

 故に、手を抜かれ、最初から戦う気すらない相手に抱くのは純粋な憤りしかない。

 

 当然だが、比企谷は何分もの間格闘しながらステルスを継続させることは出来ない。

 連続的な攻撃の後には必ず、呼吸をするためのインターバルがある。

 無論それに気付かない爆豪ではない。

 比企谷は巧みに爆豪が反撃しにくいタイミングと位置取りで呼吸を挟む。

 その行動と思考、そして徐々に短くなっていくステルス時間を逆算し──。

 

「らァ!」

『爆豪、ここで反撃の爆破!こいつは当たったのか!?』

 

 ここまで反撃をせずに溜めていた、ニトロ状の汗を一気に使用し爆豪は至近距離で大爆発を起こす。

 人一人を簡単に吹き飛ばすことの出来る火力によって、比企谷は強引に後ろに押し戻された。

 野生の勘か、爆豪の挙動に対する反射行動か。

 比企谷は両手を顔の前で交差させながら、どうにかノックアウトを回避した。

 比企谷と爆豪。互いに受けたダメージは大きい。

 大爆発を二回、初撃に至っては無防備でくらった比企谷。体操服はボロボロで、体の随所に小規模ながらも火傷がある。

 爆豪は関節を外された上、自由の利かない左腕に何度も打撃を受けた。左腕は腫れ上がり、外れた関節には炎症が見える。

 もとより火力で劣る比企谷にとって、これだけのダメージを受けるのは想定の範囲内。

 対して爆豪は、攻撃の要である手の片方を潰され、想定外の展開に身を置かなければならない。

 だが──。

 

(ここまでやって、ようやく戦力は五分五分ってとこだな)

 

 比企谷は内心悪態をつく。

 爆豪の個性に対して固め技を通じにくい。

 近接戦では今のように爆破でチャラにされる。

 ステルスで躱そうにも、範囲攻撃には対応策がない。

 自滅覚悟でようやく腕一本。なんとも天秤の傾いた交換である。

 比企谷にとって長期戦は負け筋でしかない。爆豪は汗をかけばかく程、個性の能力値が上がる。

 逆に比企谷はステルスできる時間が徐々に短くなっていく。既に息が上がっていて、ここまで攻勢に出れたことが幸運だった。

 

「緑谷、この試合どうなると思うよ?」

「分からない。僕も初めて見るんだ。ここまで、追い詰められてるかっちゃんは……」

 

 おそらくA組でもっとも爆豪のことを知っているであろう緑谷の言葉に、聞いた上鳴をはじめ全員が息を呑む。

 タイマン戦闘に向かないはずの個性で場を制した比企谷。

 高い戦闘センスを持ち、攻撃的ながらもクレバーな爆豪。

 リングの上で睨み合う両者の間には、ライバル意識どころか遠慮も容赦もありはしない。

 既に誰も、長年個性同士の戦いを見てきたプロヒーロー達ですら、この試合の先を読むことはできなくなっていた。

 

 

 ──第三者視点終了──

 




という訳で爆豪戦スタートです。
解説入れながらだと長くなるので二本に分けます。
ちなみに解説を入れておくと、常闇の中で比企谷の評価は高いです。
評価が高いからこそ誘導に乗ってしまったのであり、評価低くて云々は比企谷の個人の見解です。

改めまして、ご愛読ありがとうございます。
先日は日経ランキング上位に上がっていて、私自身が舞い上がりました。

これからも感想や高評価頂けると嬉しいです。
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