ぼっちのヒーローアカデミア   作:江波界司

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遅くなって本当にごめんなさい。
話を考えて、色々詰め込んでたら遅い上に長くなりました。
こんなご時世なので、少しでも娯楽をお届けできたらと思います。


理解者

 悪の秘密結社アジトと聞けば、まぁ地下とか廃工場とか魔王城とかを想像するんだが、俺が案内されたそこは、知る人ぞ知るような隠れ家的BARのようだった。

 

「…………誰だよそれ」

「死柄木弔、彼が比企谷八幡──いえ、ONEです」

「は?誰だよそれ」

 

 何ゆえ質問が同じなんだよ。

 カウンター席の一角に座るロングTシャツの男。黒霧が呼んだので間違いなく、こいつが死柄木弔だ。まぁ、手とか頭に付けてる時点で気付いてたけど。

 死柄木は、つまらなそうに頬杖をつきながらこちらを見ている。

 

「ONEというのは彼のヴィラン名ですよ。今日、ここに来ると言ったでしょう?」

「……あぁ、ああ、お前ねぇ?先生が言ってた、面白い奴っての」

 

 あの腹黒悪魔、どんな紹介しやがったんだよ。ギャグセンスとかないよ。

 死柄木は何を思い出したように手を打つと、立ち上がって両手を広げる。

 

「待ってたぜ、えっと、ONE?まぁ、なんでもいいや。よく来てくれた〜」

 

 アメリカンな挨拶でもするかのように近付く死柄木。

 そのままハグができそうな距離まで来ると、彼はさっきまで広げていた右手を強く握った。

 

「いって……」

「死柄木弔!」

 

 そして力の限りそれを振り抜いた。結果、俺は左の頬をぶん殴られた。

 勢いを殺せず、壁までよろけて背中を打つ。

 その様子を見て叫んだのは黒霧だ。

 

「何を……」

「そりゃ、ケジメだよケジメ。ほら、俺、こいつにぶん殴られてるし。二回も。だからこれでチャラにすんだよ」

 

 チャラって、襲って来たのお前らだからな?正当防衛、成立するだろ普通に。

 わざとらしい大きなアクションで訴える死柄木は、こっちに顔を近付ける。

 

「二回やられて、一回返してチャラなんだしさ。これって温情だよなぁ」

「……そうだな。お互い、後遺症もないし」

「だよなぁ、話が分かる奴でよかったよ」

 

 上機嫌になったのか、死柄木はさっきまでいた椅子に足を組んで座る。

 人殴って、なんか主張して、機嫌よくしてルンルンとかなんだこいつ……。

 頭おかしいのか、それとも単にガキなのか。

 まぁ平気で人殺すやつと仲直り(?)するのにこれだけなら上々だろう。

 ちらりと盗み見ると、黒霧はほっと胸を撫でおろしていた。今のはこいつも想定外か。

 

「じゃあ、黒霧。あれ、呼んで来い」

「はい、死柄木弔」

 

 あれってなんだよ。というか誰だよ。

 返事をした黒霧は、例の如くワープでどこかへいなくなる。

 

 BARに残されたのは俺達二人だけ。

 いやいや何この状況?犯罪者予備軍どころかもろ犯罪者と二人きりって……。

 身構える俺に、死柄木はため息交じりに言った。

 

「でさ、お前。結局、何しに来たんだよ?」

 

 ごもっともすぎるが、実際のところ俺が答えられることはない。

 どうにか首の皮一枚繋がっているのが現状だし、これから何かモーションを起こすにしてもプランは限りなくゼロだ。

 割と真面目に聞いてるんだろうけど、俺は抽象的な答えしか持ってねぇぞ。

 

「何っつーか、俺は呼ばれた側なんだが」

「呼ばれたからこっち側になるヒーローなんているかよ……」

 

 

 あーそういうことか。先生に説明されて何を疑ってるのかと思ったわ。

 こいつは俺が雄英生ってこと知ってるもんな。

 雄英生といえば将来を望まれるヒーロー候補だ。

 そんなやつがいきなり次の日、わたしヴィラン道、始めますだもんな。そりゃ怪しいし、正気疑うわ。

 

「別に、呼ばれてヴィランになったわけじゃねぇよ。もともと、そっちに向いてただけだ」

「向いてた?なんだそれ、ヒーロー高校に入った奴のセリフかよ〜」

 

 手を叩いて笑う死柄木。

 そんな面白いこと言ったか?俺の人生計画的には笑い事じゃないんだけど。

 

「じゃあなに、お前、俺の下につくってことでいいわけ?」

 

 しばらく腹痛を伴うほどの笑いに耐えていた死柄木は、ようやく深呼吸をして問うた。

 こいつは宇宙の帝王か何かなのか。

 一応、俺は現状敵連合の一員だ。もしこいつが上司だというのならまぁ、下につくってことになるよな。

 

「まぁ、一応連合に入るって感じだしな」

「ふ〜ん。……まぁ、面白いもん見れるってんなら、いいや。ようこそ敵連合へ〜」

 

 色々な言葉を飲み込んだ印象だった。

 その行動がやけに似合わなくて、気持ち悪い。

 イメージの話になってしまうが、こいつは純粋なのだと思っていた。

 純粋だから、嫌なことは嫌だし、言いたいことは言うし、やりたいことは何でもやる。そんな、ある種の幼児的思考をしていると思っていた。

 故に今の我慢ともとれる反応が、とても不気味に見えてしまう。

 気にし過ぎか。そも俺の参加がこいつの上司の命令なのかもしれんし、不満だけど仕方ないと考えてるんだろう多分。

 

「んで、これからどうすんだ?」

「どうって何が?」

「いや、何かすんじゃねぇのかよ」

「まぁ、そりゃするけど。ああ、説明は後。もう一人来るから」

 

 もう一人か。どんな大罪人が来るか俺わくわくすっぞ。

 しねぇな。むしろ来ないでほしいし、なんなら今すぐ帰りてぇ……。

 それからしばらく、俺と死柄木は無言の時間を過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました、死柄木弔、ONE」

 小一時間経って黒霧が帰り、その後ろに続くやつが一人。こいつが、死柄木の呼んだヴィランか。

 そいつは黒い服に赤いマフラーをし、鼻の低すぎる顔を布で目元から隠していた。その腰や背中にはかなりの数の刃物が装備されている。マジで何人も切ってきたような、殺人者といって差し支えないような奴だ。

 

「ようこそ、ヒーロー殺し~」

「は、ヒーロー殺し……?」

 

 マジかよ。本当に人切ってるし、なんなら人生終わらせてる経験あるじゃん。

 一度たりとも会うことはないと思っていたんだが、まさかこんな所で遭遇するとはな。

 だらりと両手を下げたヒーロー殺しは、こちらの様子をゆっくりと伺う。

 構図で言えばL字のカウンターの一辺、ヒーロー殺しの正面に死柄木が座っており、そのテーブルの向こうに黒霧がいる。

 俺は壁の方に移動させた椅子に座っており、三人からは一歩下がった位置取りだ。

 何やら剣呑な雰囲気に思えるが、これお互いに話し合いとかできんのか?つかそもそもヴィランってまともに交渉できるやつらってどれくらいいんだろ。

 

「それで、何の用だ?」

「お前さ、俺らにつかない?」

 

 俺の心配をよそに、商談が始まった。

 案外、実はこういう裏の奴同士の会話は上手くいくものなのかもしれないな。

 

「具体的に、貴様らは何をしようとしている」

「とりあえずは、気に入らないものは潰そうと思うよ。こいつらは、特に」

 

 そういって取り出したいくつかの写真。そこに写っているのは、ヒーローと一部の雄英生徒だった。

 こいつ、実は頭悪いんじゃないか?

 そのメンツ、この前お前が襲ってやり合った奴らだし。反撃受けて気に入らないとか何言ってんだよ。それこっちの政府だから。逆恨みの逆ギレとか、逆の逆で表じゃん。

 というか……。

 

「……そのリストの中に、そこの小僧が混じっているのは既に捕らえたということか?」

 

 ギロリした瞳は俺に向く。怖ぇ、爆豪とかの比じゃねぇわ。

 ヒーロー殺しの言う通り、死柄木の始末したいこいつだけは絶対許さないリストには比企谷八幡の顔があるのだ。

 ほんと、拳一発で済んだのが奇跡だなおい。いや、本当に済んだの?

 

「あ~、そいつはいい。んで、どうだよ?そっちも暴れたいんだろ?」

「悪い話じゃない、と?」

「そうそう、お互いに戦力が増えるのは歓迎じゃん」

 

 一貫して静かなヒーロー殺し。返事はなく、沈黙で奴は返す。

 だが、その赤い瞳に俺は答えを見た。

 

「しゃぁ!」

「ちっ……」

 

 突如として、ヒーロー殺しは死柄木に襲い掛かる。腰にある二本のナイフを引き抜くと、逆手に持った刃物を振りかざした。

 反応の遅れた黒霧と死柄木では対応ができない。

 その遅れを、一歩分先に動いた俺がカバーする。

 死柄木の肩を掴み、個性を発動。俺と死柄木の存在感をかき消した。

 悪いが、今こいつらに脱落されるわけにはいかねぇ。ここで共倒れしてくれたらまぁうれしくなくもないが、今後俺は動きづらくなる。

 プランこそないが、目的はあるんだよ。

 突然の出来事に、ヒーロー殺しは一度後退する。

 

「それが、貴様の個性か」

「ちげぇよ。つかなんだよお前」

 

 俺から離れた死柄木は、不愉快そうに首を掻く。

 同感だ。こいつ、交渉も商談も飛ばして切りかかってきやがった。本当にあぶねぇ奴じゃねぇか。

 はぁと、深い息を吐くヒーロー殺し。奴は俺達を少しだけ眺めると、再び構える。

 

「俺がヒーローを襲うのは、この世界を正すため。貴様らのような、私利私欲のためだけに動く奴らは——もっとも嫌悪する人種だ!」

「黒霧!」

 

 二度目の襲撃。奇襲を受けた後の攻撃に、今度は全員が反応する。

 ヒーロー殺しの進行ルートに、ワープゲートを配置する黒霧。その移動先になるであろう壁の方へ、死柄木が手の平を伸ばす。

 そして俺は、また死柄木に個性を付与する。

 即席ながら最高戦力。これで不可視の破壊をヒーロー殺しにぶつけることができる。

 しかし、予想をはるかに超える動きを見せた奴に攻撃が当たることはなかった。

 突然現れたワープゲートを難なく飛び越えると、天井で方向転換し、黒霧を切りつける。

 そのままテーブルの上で体を捻り、ナイフを投擲。出口用に用意した壁近くのワープゲートの前に斬撃を放った。

 大まかなエイムだが、ナイフの先には死柄木の手がある。

 死柄木に当たれば俺の個性がばれる。そうなれば次こそ死にかねない。

 最悪な展開を避けるため、今度は力いっぱい掴んだ肩を引き、ナイフの延長上から死柄木の腕を離す。

 刃物は空を切って地面に突き刺さる。あぶねぇ、紙一重って表現現実で起きるんだな、ぱっと見掠ってたぞ。

 肺活量の限界が来た。息を吐き出して個性を解除する。追撃は、ない?

 

「随分と良い反応をする……」

「……そりゃどうも」

 

 目の合った鬼が俺に向けて言ったのだと分かった。

 反応ねぇ。そこそこ高スペックな自覚はあったけど、雄英入ってからはむしろ弱い部類だと思ってたわ。

 

「だが、それだけだな。速さも力もまるで足りない。所詮は、私欲に堕ちたマヤカシだ」

「さっきから、何の話してんだよお前ぇ……」

 

 またガリガリと首筋を掻く死柄木。

 その眼前で、ヒーロー殺しはナイフに付いた血を舐め取る。

 空いた右手に新たにナイフを装備し、奴は三度目の臨戦態勢に入った。

 通算二回、俺達……って定義したくないが、ともかく俺達は奴の攻撃を捌いている。無傷とはいかないが、かなりの戦闘力を有しているこいつ相手なら及第点だろう。

 その二度の邂逅を踏まえ、奴はどんな攻め方をするか。

 地の戦力では負けている。だから先読みで戦うしかない。

 そういや、さっきから奴は接近戦しか見せていないな。それが個性の発動条件なのか、あるいは個性の弱点を埋めるための戦法なのか。

 どちらにせよ、まともに個性を知らないのは不利だ。

 あと、こちらからは攻められないというのも問題だな。

 こっちにとってヒーロー殺しは貴重な戦力だ。そうなると危害を加えること自体がマイナス評価。

 知らないし、勝てないし、そもそも倒せない。何この無理ゲー。

 にしても攻めて来ねぇな。ヒーロー殺し、一体何考えてる?

 まぁ、来ないなら好都合だし、考えよう。

 この場合、勝利条件はなんだ。

 俺たち全員が無事で戦闘が終了すること。

 その為に必要な条件はなんだ。

 ヒーロー殺しの、戦意喪失。

 

「……ヒーロー殺し、あんた言ったよな。私欲のために力を使うやつは気に入らないとかなんとか」

「……それがどうした」

「それ、自分自身には言わねぇのかよ。あんただって世界を変えたいっていう私欲のために動いてんじゃねぇか」

「一緒にするな。俺はこの腐った世界を変えようとしているだけだ。真の英雄を守るためにな」

「それが私欲だっつってんだよ。あんた一人の理想と思想を押し付けて、勝手に絶望して、そのエゴを力で実現しようとしてるだけだろ」

「……貴様に、何が分かる」

 

 僅かに、ヒーロー殺しの表情が険しくなった。

 

「知らねぇよ。あんたが、その世界にも英雄にも敵対する、悪である自覚もないバカなら、俺は何も理解できねぇわ」

「貴様に理解されないからなんだ。それに、俺はとうに真っ当な道を外れる覚悟をしている。貴様に言われるまでもない」

「そうか、ならよかった。あんたと俺らは敵じゃない」

「言ったはずだ。貴様らが気に入らないのだと」

「で、死柄木も言ったろ。気に入らないものは潰したいってな」

「一緒にするなとも言ったはずだ」

 

 ギロりと赤い目を剥くヒーロー殺し。

 ……これでも怒らねぇか。激高して飛び掛かって来てもいいくらいの準備はしててんだがな。

 なら、恐らくこの仮説は合っている。

 ここまでの言動から気付いたことが一つある。それは、奴が自らの行動にこだわりを持っていること。

 逆説的に戦う理由はこだわり故だ、と思ってたんだがな。こりゃどうも当てが外れたらしい。

 なら、なぜ攻撃してくる?

 一緒にするな、気に入らない、もっとも嫌悪する人種。なるほど、確かに攻撃する理由としては納得できる。

 だがその言葉は、どう考えてもやつのこだわりと合致しない。

 やつは全ヒーロー、全世界を敵に回す覚悟をしている。そんなやつが、たかが1ヴィランと1同等に扱われただけで襲い掛かるか?

 その行動自体が、やつの理想のために何の益も見出さない、ただの無駄な時間だ。

 もし俺なら、すぐに会話を切り捨てて自分の目的に戻る。

 そうしなかったのは、何か他の目的があるため——。

 何よりさっきから、一瞬たりとも殺気を感じない。

 つまりこいつは、本気じゃない。

 

「俺達を、試したってことか」

「…………」

「は、何言ってんのお前」

「もし本気なら、最初の一手でナイフを投擲してただろ。個性不明の相手にならその方が効果的だ」

「た、確かに」

「おい待て。なんでそんな回りくどいことをする必要があった?下手したら返り討ちだぞ」

「そりゃ、自信があったんだろ。三対一でも勝てる自信が」

「っち、なめ過ぎだろ……」

 

 めっちゃ不機嫌だな死柄木。まぁここまで下に見られたらそうなるか。にしても怖い目するわこいつ。

 相手を試す。怒ったふりをしてまで本気を出さずに攻撃する理由なんざ、多分これくらいだ。

 仮に的外れだったとしても、こいつにはまだ交渉の余地があるはず。

 しばらく黙っていたヒーロー殺しが、ここでようやく口を開いた。

 

「いい目をするようになった。貴様の目は、覚悟のある者の目だ」

「そりゃ、どうも」

「貴様が言った通り、試させてもらった。貴様らがどれほど本気なのかを」

「意味分かんねぇ、本気に決まってるだろ。最初から、ずっと、冗談でお前なんか呼ぶか」

「死柄木、弔と言ったか。貴様も、どうやら確固たる己があるらしい。形は歪ながら、その芯は本物だろう」

 

 お眼鏡に適った、ってとこか。

 ヒーロー殺しは両手の刃物をしまうと、ゆっくりと歩いて床に刺さったナイフを回収する。

 あっぶねぇ……。もし奴が戦闘狂で、ギリギリの勝負を楽しみたい系の敵だったら詰んでた。

 小町の安全のためには、あの化物の機嫌を損ねられない。

 それはつまり、その直属の部下であろう死柄木、ひいては敵連合を守らなければならないということになる。

 まったく、俺はなんでこんなことしてんだよ。

 ナイフを鞘に納めると、ヒーロー殺しは振り向く。

 

「俺はステイン。紛いものを粛正し、英雄があるべき世界にするために生きている。貴様は、誰だ」

 

 ヒーロー殺し、ステインの目は俺を見ている。

 ごめん、前言撤回していい?世界を変えるとか、ヒーローを粛正とか話が壮大過ぎて理解不能だわ。

 死柄木弔の行動原理は、この世界を壊すこと。

 ステインの行動原理は、この世界を正すこと。

 では、比企谷八幡は?

 ……いや、その問いはおかしいな。

 

「俺は、ONEだ」

 

 ONEの行動原理は、小町を守ること。

 ただ、それだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ヒッキーが連合加入、ヒッキーがヴィラン化、ステインが登場して和解(?)。
本当に詰め込み過ぎた気がします笑

次回こそ早めに更新できるよう頑張ります。

感想や高評価頂けると本当にうれしいです。

2020/05/02
活動報告にも書かせて頂きましたが、今作品の第1、2話に少々修行を加えました。
かなり簡略化された文章だったので、ヒッキーの考え方について誤解されている方が多くいらっしゃると思います。
駄文で申し訳ないです。
読み直し必須という訳ではなく、もうすこし深くヒッキーの考え方が知りたいなという気持ちで読んで頂けたらと思います。
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