ぼっちのヒーローアカデミア   作:江波界司

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と、いうわけで日常回だぜ!
CVプレゼントマイク


やはり俺の日常はまちがっている。

 訓練を終え、俺たちは講評を頂くことになった。

 結論から言えば、可もなく不可もなくな話だった。

 

「──と、まぁ二回目なわけで、比企谷少年の個性の使い方がアレなのは周知の事実だとして。惜しかった!いや~、お互い良い動きしてたよ有精卵たち!」

 

 前言撤回、酷評じゃんこれ。

 オールマイトの俺に対する遠慮もだいぶ薄れたものだと思いながら、クラスメイトの感想を聞く。

 

「ねぇ、ヒッキー。ビルの中で最後ステルスヒッキー使う前、切島となんか話してたよね?」

 

 ステルスヒッキーとかいう聞き慣れない単語は華麗にスルーするとして。

 

「いや、まぁ、あれだ。ちょっと揺さぶりをな」

「揺さぶり?」

「あ、そうだ比企谷!お前なんで戦わねぇんだよ」

 

 エイリアンピンクに答えるより先に、切島が食ってかかってきた。めんどくさ。

 

「勝てねぇんだし、戦うわけねぇだろ」

「そんなのヒーローじゃねぇし、漢じゃねぇだろ!」

「知るかよ。そもそもこの訓練は戦うことが目的じゃねぇんだし」

「そ、そりゃそうだけど……」

 

 どうやらこいつ、漢らしくあることにこだわりがあるらしい。そういうヒーローに憧れでもあるんだろう。

 気持ちは分からなくない。ちゃんとしたヒーローを目指すなら目標の一人や二人いるのは当然だ。

 今回はその、こだわりを利用したわけだが。

 

「切島、お前あの時戦うことが前提だったよな?」

「お、おう」

「だから逃げの一手が有効だった。戦おうとしてるからこそ、姿の見えない相手には警戒するだろ」

「な、なるほど」

 

 内心を読まれたのか、思いのほかあっさり切島が頷いた。

 まぁそういうことだ。切島は俺の攻撃を警戒した。だからこそ、俺の脱走に反応が遅れた。

 

「うんうん、それで?」

「は?いや、それでってなんだよ」

「それで比企谷は切島をどう揺さぶったの?」

「あーそういう」

 

 そういや揺さぶった云々に関することは話してなかったな。おのれ切島。

 

「単に緑谷の方が危ないぞって言っただけだ。通信機を奪ってから」

 

 この訓練はペアとの情報交換が重要だ。特に二手に分かれている時はな。

 俺は先に切島の情報収集の手段を奪った。この時点で切島はペアの安否を確認する術を失っている。

 確認ができず、戦闘に意識を向けているからこそ、切島は俺の揺さぶりに乗ってしまった。戦いにこだわってしまったからこそのミスってとこか。

 

「じゃあ、比企谷が入り口のとこから消えてやったのって……」

「俺の背後を取るついでに通信機を取ったわけじゃなかったってことか……」

「やることがえげつないわね、比企谷ちゃん」

 

 ピンクと切島が各自納得している中、毒ガエルが毒突きしてきやがった。お前も発言がえぐいと思うんだが。

 

「まあ、要するに!今回はチームワークが決め手だったってことだな!もちろん、緑谷少年と切島少年が悪かったってことはない。双方、互いの個性の強みを活かしながら立ち回っていたわけで!」

 

 オールマイトが強引に閉め、俺の補修は終了した。

 チームワークか。なんとも皮肉な結果だ。

 今回、俺と蛙吹のチームワークは良くなかった。そもそもの作戦、俺の奇襲はチームプレイというより、スタンドプレイを同時展開するものだったのだ。

 それがたまたま、緑谷も同じ方向性の作戦を取っただけ。それもお互いに失敗している。

 さっきの反省会の中で、蛙吹が俺のルートを確保するために動いたと聞いた。

 だとしたら、今回の敗因は俺だ。読みを外し、作戦は失敗し、スタンドプレーに走り、カバーまでしてもらってなお、このあり様。

 俺は弱い。こんな基本的なことすら忘れていた。

 全く、ひどい。ひどく、醜く、浅ましい。

 これで、こんな成りで、俺は一体何を守れるというのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「比企谷君!」

 

 校舎を出てすぐに、俺は緑谷に呼び止められた。振り向くと、飯田と麗日、蛙吹が並んでいる。仲いいっすね。

 追いついた四人は、チャリを引く俺に歩幅を合わせて歩き出した。

 俺のすぐ隣に一度った緑谷が言う。

 

「すごかったね。認識できなくなるって個性を完璧に使いこなしてる感じだった」

「いや、負けたけどな」

「それでもだよ」

「ああ、そうだ。切島君との戦い方も大いに学べた。肉体で勝てないから心理戦に持ち込む。なるほどだ」

「お、おう……」

 

 正直、べた褒めには慣れていない。ここの高校は褒めて伸ばす方針なんだろうか。

 そう思うと全部がお世辞に聞こえてくるな。ということは俺は立場の高い人間だと言える。はは、ねぇわ。

 

「それはそうと、比企谷ちゃん。大丈夫?」

「は、何が?」

「さっきから、お腹を気にしてるようだけど」

「……いや、ちょっと腹減ってな」

「そうか。なら、みんなでどこかに寄らないかっ?」

「あ、いいね、何か食べよーう」

 

 おう、テンション上がってるとこ悪いな麗日。

 

「いや、いい。家で飯作ってるだろうし」

「む、そうか。なら、早く帰らないとなっ」

 

 暑苦しい飯田。略して暑苦し飯田。一文字しか消えてないな。

 あと、蛙吹。こいつもエイリアンピンクとは違った意味でガンガン来るな。

 俺は歩幅を速め、並んでいた四人を抜かす。

 

「んじゃ」

「うん、ばいばい」

「じゃあーねー」

「うむ、また明日っ」

「また明日ね」

 

 適当に手を挙げて応え、俺は帰路に就いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カギの開いた扉を開け、家に入る。

 

「おっかえり~、お兄ちゃん」

「おう、ただいま~」

 

 帰って早々、最愛の小町が出迎えた。

 うっかりしたら妹ルートに入ってしまいそうなシチュエーションをどうにかスキップし、リビングのソファにどっかり座る。

 くそ、痛え。ついさっき切島にド突かれた腹を擦る。折れてはないんだろうけど、ヒビくらい入ってそうだなこれ。

 

「大丈夫?怪我したの?」

「ん、まぁそんなとこだな」

「ほいほ~い。んじゃま、小町におまかせ~」

 

 そう言って、小町は俺が擦っていた部分に手で触れる。

 手の平で、撫でることもなく触れ続けて数秒。先程まであったズキズキとした痛みが引いていく。

 小町の個性『痛覚希薄』。触れた対象の痛みを薄くする。まさに癒し系シスター小町ってことだ。

 

「あんま無理しないでね?小町の個性も万能じゃないんだからさ」

「分かってるよ」

 

 小町の個性は痛みを薄くするだけで、怪我を直すわけはない。なんなら、医学的に言えば痛覚のみを消すのは危ないまであるらしい。

 しかし、なんでこんな個性があの両親から生まれるのか。

 俺の個性は分かる。『文字を消す』父親と『遠くまで見える』母親だからな。視覚から、消す、みたいな変換だろう。

 小町の場合、視覚から痛覚に変換して、そこから消すって二段階ジャンプを遂げてる。赤い帽子と服着たオッサンかよ。

 

「でもさ、なんだかんだ雄英に入って、頑張ってヒーロー目指してる兄がいるって、結構自慢だよ。あ、今の小町的にポイント高い」

「……そりゃどうも。まぁ、俺がなるのはヒーローじゃなくて専業主夫だけどな」

「うへぇ、やっぱダメだわこの人」

 

 俺はヒーローにならない。これはあの時、オールマイトのチャンスを貰う前から決まっていたことだ。

 ヒーローは誰かのために個性を使う。けれど、俺にそんな気はないのだ。

 俺はただ一人、たった一人のために力を使う。そのためにヒーロー免許が欲しくなった。ただ、それだけのこと。

 歪で汚く、ヒーローを名乗る権利もない。こんな俺がかの有名な雄英にいる、まして特別枠で入ったなど、知らん誰かに申し訳なくなってくる。

 ふっふふ~んと、鼻歌を歌いながら小町はキッチンに移動する。

 こんな話、小町には聞かせられない。

 一応、俺の編入は自分の意志で親に申し出たことにしている。まぁ全部が全部間違っているわけじゃないし。

 手料理を待つ間、ぼんやりと天井を眺める。

 俺の日常は少し変化した。なんてことない平凡な高校生が、個性的すぎる学園でヒーローになろうとしている。

 個性も思考も、ともすればヴィランのようだ。けれど、だからなんだ。

 オールマイトの言葉ではないが、自分の存在意義くらい自分で決める。決められる。

 俺は妹を、小町を守る。そのために生きて来たし、生きていく。

 この個性もきっと、そのために使えるはずだ。

 戦うためにではなく、守るために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日である。

 朝のホームルームが終わると、俺たちは移動の連絡を受けた。

 担任曰く、災害救助の訓練をするらしい。

 確かに、朝からオールマイトの活躍がRTAのごとく放送されていた。個性が広がった世界には人身も自然も有り余っている。災害は付き物ってことだ。

 

「コスチュームの装着は各自の判断に任せる。……と、誰か比企谷にある場所教えとけ」

 

 そんな去り際の一言があったので、俺は飯田から特殊ロッカーの場所を聞いた。

 ヒーローのコスチューム。編入の際にアンケート形式で聞かれたものだ。提出が他の連中よりはるかに遅かったと思うのだが、まぁ簡単に作れそうだしなこれ。

 運動着とそう変わらない動きやすさのそれに着替え、バスに乗る。

 にぎやかなクラスメイトに混じれず、俺はぼーっと窓の外を眺めていた。

 

「そういえば、比企谷ちゃん、コスチューム着てるのね」

 

 通路を挟んで向かいに座っている蛙吹が言った。

 それに同調し、周りの視線が集まる。やめて、見ないで!消えようかしらん。

 

「なんかー、地味だ」

「ほっとけ」

「いやさ、個性はともかく、コスチュームまで地味することなくない?」

 

 相変わらず、エイリアンピンクの食いつきがすごい。何この子、俺のこと好きなの?ないな、うん、ない。

 

「いや、個性が地味だからこそだろ」

「なるほど!目立たなくする個性だから、それを活かせるようにってことだね」

 

 ポン、と手を打ったのは緑谷。頭の回転が速いな。切島の時もそうだが、こいつの考えるって力はかなり武器になる気がする。

 

「ハッ、つまりは没個性ってことだろ。なァ転校生」

「……なにか」

 

 なんか絡まれた。ヤンキーとかこういうとこにもいるんだな。お前本当にヒーロー志望なの?俺が言えないけど。

 

「お前、どうやって転校してきやがった」

「どうって、そりゃ普通に……」

「ンな話、聞いたことねェンだよ」

 

 確かに、前例がない。

 ここでオールマイトの名前を出すのは良くないだろう。なんとなくではあるが、俺が特別措置なのは察している。そのことは学校側からすれば知られたくない話だろう。

 

「まぁ、あれだ。コネがあってな。裏口ってやつだ」

「……チッ。言う気がねェならしゃべんな」

 

 うわ、理不尽。

 まぁ追及されないのはありがたい。ここはお言葉に甘えて黙ろう。

 

「そろそろ着くぞ」

 

 イレイザーの一声で、バスの中は静まり返る。

 一年A組一同を乗せたバスは、謎の建造物に辿り着いた。

 

 

 

 

 




次回、USJ襲撃編。

小町の個性『痛覚希薄』
触れた対象の痛みのみを薄くするぞ。ただし怪我を治す訳ではなく、また痛みの大きさによって薄めるのに長時間かかる。あと個性を使うと小町自身が疲れてしまう。自分の体力と引き代えに仲間を癒す個性だ。

ヒッキーのコスチュームは総武高校の制服をイメージしてください。素材は特注なので運動着より動きやすくなっています。

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