そんで比企谷の個性の全貌が明らかになるぞ!
CVプレゼントマイク
やはり俺の個性はまちがっている。
我らが担任の相澤先生に続き、どデカいドームへと俺たちは足を踏み入れる。
「比企谷、大丈夫か?」
大通りかとツッコミたくなる通路で俺に声をかけたのは、切島だった。
「おう。……いや、何が?」
「さっき、結構キツめに言われてたろ?」
「あぁ……」
さっき、というのはバスでのことか。恐らくあのヤンキーとの会話に関して、こいつなりに気を遣っているのだろう。
安心しろ、こういうのは慣れてる。もう慣れすぎて世間話として応えるまである。なにそれ悲しい。
「別に、なんともねぇよ」
「おお、そか。あいつ、
「おう、気にしてねぇよ」
「あァ?なんでオレが許してもらわなきゃならねんだッ!?」
なんか向こうでBOOM!とか音がした気がするが、気のせいだな。
「あれでも入試一位なんだよ」
「マジかよ。うちのクラス大丈夫か」
言いようのない顔で言う切島。うん、本当に大丈夫か?あいつクラスで二番目くらいにヴィランくさいぞ。
ちなみに一位は俺。おっとクラス一位を超えてしまったぜ!良くない意味で。
そんなこんなで階段の前まで行くと、宇宙服姿の恐らく先生が待っていた。
その人は13号というヒーロー名で、個性は『ブラックホール』。簡単な自己紹介でそう言っていた。ちなみにこの施設はUSJというらしい。どうでもいいけど、いいのそれ?
今日はオールマイトが諸事情で来れないらしく、相澤先生と二人で授業を請け負うという。
13号先生が災害救助に関するあれこれを説明し終えた辺りで、異変が起きた。
USJの中央広間に、突如として黒い靄が発生したのだ。
壁のように広がった靄からは、誰とも知らぬ者たちが次から次へと出てくる。
「な、なんだあれ……?」
「入試ん時みたく、もう始まってるパターンか?」
「お前ら下がってろ!あれはヴィランだ!」
クラスメイトが不安を口にする中、相澤先生が怒鳴る。
ヴィラン、だと?
ここは雄英の施設で、ヒーローの巣窟と言ってもいい。そんな場所に、なぜヴィランがいる。
「は……?オールマイトが、いない?……ったくさ、予定変更までされてイラついてるってのに、いないとか、なんだよそれ……」
遠くてよく聞こえなかったが、リーダーらしい全身に大量の
「子供達を殺せば、来るのかな……?」
なぜなんて言ってる場合じゃない。こいつらの狙いは、少なくとも穏便なものじゃないはずだ。
警報機は鳴らず、通信機器も使用不能。俺のスマホも電波が遮断されている。
混乱が大きいこの場面で、相澤先生がアイマスクを装着した。
「13号、生徒を頼む」
相手は大軍、それを一人でやる気か……?
そう思ったのは俺だけでなく、緑谷も抗議している。が、すぐに相澤先生、もといイレイザーヘッドは飛び出した。
そこからは圧巻だった。
一対多数の中で、イレイザーは敵の個性を消すことで連携を崩し、苦手であるはずの異形型にすら近接戦闘で立ち向かっていた。
強え。個性を消せない相手にも引かない近接戦闘術。それは、俺にも欲しいスキルだ……。
なんて、考えてる場合じゃない。
先生の指示通り、俺たちは逃げ道を目指して走り出す。
──が、その前にあの黒い靄が立ちはだかった。
「初めまして。私達はヴィラン連合。オールマイトを始末したく、ここにお邪魔させて頂きました」
驚愕の目的を告げる靄に13号先生だけでなく、生徒全員が臨戦態勢をとる。
「本来であればオールマイトがここにいるはずですが、何か事情があるのでしょうか?」
そんな問に応えるわけがない。
ひとまず、俺は身を守る為に息を吸う。
そして止めようとしたのとほぼ同時。
「「うらァァァッ!」」
吠える二人──切島と爆豪が飛び出した。
爆破と剛拳が霧へと突き刺さる。
「ンなもん知るか」
「先に俺らにやられるとは考えなかったのか!?」
「──危ない危ない」
しかし靄にダメージはないらしく、平然と続ける。
「私達の目的は、貴方達を散り散りにしてなぶり殺すこと!」
最中、黒い靄が奴の中央に収束していく。
まずい。何が起こるか分からんが、まず間違いなく攻撃が来る。
そうなると、切島はともかく個性が爆発系の爆豪に防御の手段はない。
どうする?奴の攻撃から守る手段は……。
答えを出すより先に、俺は走り出していた。
息は止めている。あの靄からは察知されていないはず。
俺の個性じゃ盾にもならない。
なら、爆豪の位置をずらす。予備動作すらない移動なら、相手の照準も合わなくなるはずだ。
「──お前ッ!?」
俺は手榴弾らしき装備をしていない爆豪の左腕を掴むと、力の限り後ろに引いた。
集まっていた霧は周囲に広がり、クラスメイト全員を包むまでになっている。
まさか、範囲攻撃か……?だとしたら躱すとか関係ねぇじゃねぇか。
後悔は先に立たず、俺は何かに吸い寄せられるように視界を失った。
「はぁ……はぁ……」
目を開けたそこは、廃墟のようだった。ということは、あいつの個性はワープゲートみたいなものか。
「いい加減、離せッ!」
舌打ちとともに爆豪が俺の手を払った。どうやらこいつと一緒に飛ばされたらしい。ワープは座標移動なのか?
「おお、爆豪……と比企谷。無事か?」
そんで、俺の左隣にいたのは切島。他のクラスメイトの姿はなく、ここにいるのは俺たち三人だけのようだ。
と、なぜか俺は爆豪に胸ぐらを掴まれる。
「おいてめェ!何庇おうとしてんだァ?オレはお前に助けてなんて言ってねェぞ!」
「……いや、もしあの時攻撃されてたらお前、防御手段なかっただろ」
「あァ?あるわ!つーかてめェが邪魔しなけりゃ普通に避けてたわッ!」
さいで。
いやこの人怖い、マジで怖い。俺別に悪いことはしてなくないか?ヒーロー志望ならもうちょい気の利いたこと言ってくれよ。あと怖い。
「まぁまぁ、今揉めても意味ねーだろ?」
場を和ませようと切島が割って入る。
だが和んでいる場合じゃなさそうだ。
既に壊れているドアの無い入口から、何人もヴィランらしき人達が入ってくる。団体様のお着きだ。
「随分な歓迎ムードだなおい」
「はッ、の割には汚ェ面ばっかだな」
「比企谷、爆豪、んなこと言ってる場合かよ……」
「やっちまえ!!!」
誰が言ったのか、そんな声が響いた。
その数秒後、爆発音と打撃音が鳴ることで部屋は静まる。
「お前ら、戦闘向き過ぎるだろ……」
爆豪と切島が飛び出したヴィラン二人を瞬殺した。殺してないけど。
羨ましい限りだ。俺もこういう個性欲しかったよちくしょう。
一瞬怯みこそしたが、数はあちらの方が上だ。ヴィランの団体様は再び襲いかかって来る。
「おい転校生。自分の身くらい自分で守れや」
「分かった、もう助けねぇよ」
「そういうこったッ!」
走り出す爆豪に対し、俺は息を止めて姿を隠す。ぶっちゃけ戦闘とかやってられないんだよなぁ。
爆豪の後に続くように、切島も前に出た。二人は打ち合わせもなく背中合わせに戦っている。
なんつーか、かっけぇな。これこそヒーローの戦いって感じだ。ヴィランに全然勝ててるし。
だが、いくら二人が強くても敵は多い。持久戦になるのはまず俺が嫌だ。消え続けるとかできないし。
というわけで、微力ながら手伝わせてもらおう。助けるわけじゃない、あいつらが勝手に助かるだけだ。
近くのヴィランに、思い切りハイキックを食らわせる。
後頭部を強打したヴィランは、一瞬で気絶した。
「ふぅ……」
見えない相手からいきなり襲われたのだ。そりゃ倒れるだろ。
うん、やり口が完全にヴィランだなこれ。
「あ?なんだテメェ!?」
俺に気付いたヴィランが襲いかかって来る。やべぇ、敵多すぎ。迂闊に息吐けないんだけど。
どうにか息を止める。俺を見失ったヴィランは辺りを見回しながら立ち止まった。
動かない相手くらいなら、流石に当てられる。
見様見真似独学我流のハイキック。動画サイトで見ながら覚えたサバット式の蹴りを頭に打ち込んだ。
靴の爪先──ヒーローコスチュームとして微妙に改造された戦闘用シューズは、特別製で金属を仕込んでいる。俺の筋力が弱くてもダメージはバカにならないはずだ。
案の定ヴィランは倒れ、まさかの二人撃破である。どうやら俺の個性は乱戦に使えるらしい。
その後、爆発に巻き込まれないように逃げながら、ヴィラン五人程を死角から襲撃した。マジでヒーローらしくない戦法だが、見逃してくれ。
爆豪と切島が大凡の敵を倒してくれたおかげで、あっさりとこの場の全員を戦闘不能にできた。
「やるなー、比企谷」
「お前らの方がはるかにやってるけど」
「…………」
ヴィランの大軍は退けた。この先はどうするかだが、気になるのはやけに静かな爆豪だ。
「なんだよ」
「おい腐り目。お前の個性は何だ」
「何って、単に自分を認識されなくさせるもんだが。あと自分が持ってる物も」
やけに不機嫌そうな爆豪。
俺何かしたか?ご注文通りあいつの戦闘に割って入ったりとかはしてないんだが。ご注文はうさぎだったのかな?
「例えば、お前が個性を発動した状態で誰かに触れたらどうなる?」
「どうって……そうだな、触れられていることにすら気付かないはずだ。相当強く握ったり殴ったりしたら痛みとかは伝わるだろうけど」
「ンで、お前さっき、あのクソ靄からオレを庇おうとした時、個性は使ってたのか?」
「おう……」
だから何だ。
そう問うより先に、爆豪は行った。
「もう一回個性を使え。あン時みたいに、オレを掴みながら」
「は?」
「いいからさっとしやがれぶッ殺すぞッ!」
語尾が怖ぇよ。なんでそれだけで殺されなきゃならんの?
渋々、俺は息を止めて、あの時みたく爆豪の左腕を掴む。
しばらく無音が続き、爆豪はずっと俺の目を見ていた。
…………は?
思わず息が漏れ、個性は解除される。
「はァ……やっぱりなッ」
何かを確信したように爆豪は呟いた。
俺らのやり取りを黙って聞いていた切島は、ここでようやく口を開く。
「爆豪、どういうことだよ?」
「おいお前、今俺とこの腐り目は見えてたか?」
「いや、見えなくなってたけど……」
「が、オレには見えてた」
「え?」
「つまりそういうことだ」
切島はまだ分かっていないらしい。
だが俺は、この事実を飲み込みつつあった。
さっき、個性を使っていにも関わらず爆豪は俺を見ていた。これはつまり、俺を認識できているということだ。
なぜ?爆豪には通じないということだろうか。
いや、それはない。さっきの戦いの中で、爆豪は消えている俺を認識できていなかった。
でなければ、いくら自分で守れと言っても、あそこまで俺を気にせず個性は使わないはず。多分、恐らく、そうじゃないかと思う、思いたい。
まして今爆豪は条件付けしてまで確認を取った。
ということは……。
「さっきの説明、お前の個性に他人は含まれてなかったなァ?」
「ああ、俺も初めて知ったよ」
「なぁ、だからどういうことだよ?」
爆豪勝己、雄英高校1年A組首席。個性や実力だけでなく頭もいいらしい。
こいつはたった二回の発動で、俺すら知らなかった俺の個性の性質を見抜きやがった。
「俺の個性は、触れた者もステルスにできる──」
「みてェだな」
「マジかよ……」
切島、俺も同じ気持ちだ。まさかこんな使い方があるとは思ってなかった。まぁ、試す相手がいなかったんだけどね。
「で、なんでわざわざ教えてくれたんだ?」
こいつは俺をよく思っていないはず。
俺の問いに、爆豪は顔も向けずに答える。
「はッ……自分の個性も使いこなせねェ雑魚はデクだけで足りてんだよ」
どうやら、こいつはツンデレらしい。
はい、更新遅くてすみません。
比企谷の個性の元ネタであるところの『神の共犯者』です。
あくまでも個性である『ステルス』の性質の一つとカウントします。
ネタバレしちゃってるんで早々に出すことにしました。
爆豪が比企谷に個性のことを話した理由は、ライバルになり得ると判断したからです。
弱いままの比企谷と比べても意味はない、と考えたため個性を自覚させたとお考え下さい。
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