ぼっちのヒーローアカデミア   作:江波界司

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久々の更新だぜ!
はっきりいって読んでくれる人がいるのか超〜不安。
CV作者


やはり俺のやり方はまちがっている。

「で、これからどうすんだよ爆豪?」

 

 俺の個性の隠された能力が明らかになったとはいえ、事態は何も変わらない。

 切島の問いに、爆豪は目を合わせずに答えた。

 

「あのワープ野郎をブッ飛ばす」

 

 脳筋かよ。いや、その前にそんなことできんのか?

 いくら個性が戦闘向きとは言っても、あっちはオールマイトを殺そうとしてるような連中だ。それに対してこっちはヒーローの卵、ヒロたま。無理じゃん。

 だから賛成できない。

 

「そんな簡単にはいかんだろ」

「ハッ、ンなこと言われるまでもねェンだよ。無策で飛び込むバカはいねェだろ」

「策があるってことか?」

「さっき、ヤツは危ないって言ってやがった。もしあいつが常時ワープ人間ならそんな発想はそもそもしねェ」

 

 つまり、攻撃は通用するってことか。なら確かにこいつの、こいつらの個性は大きな武器になる。

 だが、だからと言ってそれが太刀打ちできる理由にはならない。

 それに俺たちに下された命令は離脱。自己防衛ではなく戦闘のために個性を使うべきなのか。

 

「ちょっと待て。俺らが個性を使うのは自衛のためだ。それに、攻撃が通じるイコール勝てるじゃないだろ」

「はァ?今避けるべきは全滅とオールマイトが死ぬことだろゥが。何より、逃げるにせよ倒すにせよ、最後の最後にはあのワープ野郎が邪魔になる」

 

 確かに……そう思ってしまった自分が情けない。

 爆豪の言うことは理解できる。だが、それと同時に考えてしまうのだ。

 ──その行為は、果たしてヒーロー足り得るのか、と。

 

「おっし、爆豪!オレも付き合うぜっ!オレ達のせいで13号先生が後手に回っちまったんだ……自分のケツは自分で拭く!」

「ンで、お前はどうすんだよ」

「…………」

 

 冷静になれ。今ここでつまらないことにこだわる必要はないだろ。

 そうやってまた言い訳すんのか。

 違えよ、優先順位の話だ。俺一人が退学になるのと、ここにいるヒーロー候補全員が消えるのはどっちが良いかってな。

 爆豪と切島、他の奴らも個性は使ってるはずだろ。

 俺を首謀者にすれば全て収まる。

 なら……。

 なら、すべき事は一つだ。

 

「爆豪、切島、お前らの武器はなんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―第三者視点―

 

「ぐぉぉぉ……」

 

 悲痛な声が辺りに木霊する。

 声の主は、黒い大柄の化け物の下敷きにされているイレイザーヘッド。

 個性を抹消する彼の個性は、しかしその化け物には効かなかった。

 人外の如きパワーによって潰された腕は無惨に腫れ上がり、砕けたアイマスクの下では酷使した瞳から血が流れる。

 それを水面から顔を出して盗み見る緑谷、蛙吹、峯田。ワープで飛ばされた水難ゾーンを抜けた彼らには、その光景をただ呆然することしかできなかった。

 そして、彼らとは離れた位置からイレイザーヘッドを眺める全身に手を付けた(・・・・・)男──死柄木弔(しがらきとむら)の下に、黒い靄が移動する。

 

「は?」

「申し訳ありません、死柄木弔。生徒を一人、外へ逃がしてしまいました」

「は──あああぁぁぁ!?……お前がワープゲートじゃなかったら殺してるぞ」

 

 それを気に、彼は投げやりな言動を繰り返す。もう無理だ、ゲームオーバーだと。

 

「もう、いいよ……終わりだし。終わりだから、せめて──オールマイトの教示くらいは、潰して帰──「──ねェやァァァァ!」……は?」

 

 突如、爆風と爆音が起こる。

 驚きに動きを止めた死柄木は、音の鳴った方角を見る。

 

「先生……よかった、死んではいねえみたいだ」

「勝手に殺してんじゃねェよ」

「……その怪我じゃまともに動けそうもないけどな」

 

 先程まで脳無(のうむ)がいた地点。イレイザーヘッドの傍には、三人のヒーローの卵がいた。

 

「……は?」

 

 死柄木弔は、ただ困惑する。

 

 

 

 

 ―比企谷視点―

 

 

 

 

 なんだよコレ。

 いや、本当になんだよこの状況……。

 来たら先生はやられてるし、なんか遠くに緑谷たちがいるし、ワープ野郎は階段の上だった。

 隠れて様子を見るにしても、状況が好転しないなら行動するしかない。そう結論を出した爆豪を止める方法はなかった。

 そこで仕方なく、不意打ちに最大火力を当てる策に出た。

 俺のステルスで爆豪を消しながら近付き、こいつの腕にある兵器を至近距離で浴びせる。

 爆豪のコスチュームの腕部には手榴弾のような武器があり、それは爆豪の汗を溜めて大火力を撃てる様にするものらしい。弱点としては、チャージに時間がかかること。一発分は、さっきの戦闘で温まっていた。

 曰く、奥の手として取っておきたかったらしいが、先生が勝てない相手に撃つなら先手油断不意打ちゼロ距離と最高に場の整ったここしかないと判断した。

 

 そんで結果として巨体のヴィランをぶっ飛ばすに至ったが、問題はこの先だ。

 

「……は?」

 

 リーダー格であろう手まみれの男は、こちらに完全に気付いてしまった。オマケに、上にいたはずのワープ野郎もこちらに来ている。

 

「2対3だってのに、勝てる気がまるでしねぇぞ」

「てめェが離れて2対2だ。戦う気がねェんなら下がってろ」

「そういう訳にいかんだろ。ワープ野郎はお前が抑えるにしても、個性不明の相手とタイマン張るのはいくらなんでも無理がある」

 

 切島は爆豪を学年トップと言っていた。なら、戦闘力も間違いなくクラス一位だろう。こっちの心配は薄い。

 問題はあの細身の男、ヴィランの親玉だ。前提として、相手は格上だ。さらに情報不足な現状では、いくら防御力が高いといえど切島一人では分が悪い。

 

「俺の個性なら相手の攻撃を誘発できる。個性が割れりゃ、時間稼ぎくらいなら少しはできる」

「最初から勝つ気はねェのかよ」

「ワープ野郎がここにいるってことは、上にいるA組を抑える理由が無くなったってことだ。つまり、散り散りになったか逃げ切ったかのどっちかだろ」

「はッ、精々死ぬなや」

 

 爆豪が両手の平を後ろに向ける。そのタイミングで、俺は爆豪と切島の手首を掴んだ。

 そして、息を止める。

 

 俺のステルスは感知されない。もちろん奇襲など想定していなかったヴィランは動揺している。さらに、いきなり目の前から人が消えた。

 これで反応できる手練はそういない。

 爆豪に捕まっての爆破移動。普段より速度は落ちるが、見えなければ簡単に近付ける。

 

「うらぁ!」

「死ねェ!」

 

 俺が手を離すことで、爆豪と切島はワープ野郎の眼前に瞬間移動した様に見えるだろう。

 鉄拳と爆発が無防備な首元に入る。

 

「黒霧──!」

 

 飛ばされるワープ野郎を見ることなく、俺は一度息を吐く。二酸化炭素と酸素の交換を行いながら、目指すは親玉。

 あからさまな特攻に見せつけろ。無策で挑むように思わせろ。

 およそ隙だらけだと感じさせるように、攻撃手段など考えずに突き進む。

 

「んだよ……何だよお前らっ!」

 

 発狂と同時に、男の右手が俺に迫る。

 何が来る?知らん。とにかく、延長線上から消える。

 体を横に移動させながら、息を止めた。

 すかっと空気を掴む男は、はたと動きをストップする。

 相手はまだ俺の個性に気付いていない。あの動きがどういう攻撃の手段か分からないが、少なくとも切島のような個性ではない。

 今なら、当てられる。

 軸足を踏ん張り、腰を回し、右足をしなる様に振って、打ち出す。

 サバット式のトウキック。鉄製の爪先を、男の後頭部に叩き込んだ。

 その一撃を無防備に貰った男は、地面に倒れ込む。

 

「死柄木弔!」

 

 遠くから声がする。方角的に、あのワープ野郎だろう。

 一撃は入れたが、何をしてくるか分からない。ひとまず距離をとって、呼吸を整える。反射的に攻撃しちまったけど、ダメージを与えて損はないはずだ。

 視線を移せば、既に爆豪がワープ野郎に馬乗りになっている。先程攻撃した首付近を手で押さえている所を見ると、そこが弱点らしい。

 残るはこいつか。拘束するにしても、個性が分からないじゃ近付けねぇし、バカかよ俺。くそ、どうする。

 

「比企谷、大丈夫かー!」

「……ろせ……」

 

 こちらに走ってくる切島に応えようとする寸前、俺は誰かの声を耳にする。

 

「こ……ろせ……」

 

 幻聴の類じゃない。俺はハッキリと殺意のある単語を聞きとった。

 誰か、だと?愚問だ。

 ヴィランに決まっている。

 

「脳無……っ、殺せ……っ!」

 

 純粋な殺意が言葉として伝わり、何かが動く音がする。

 何かが、来る。

 野生の本能か、トラウマによる条件反射か。俺は咄嗟に個性を発動してしゃがみ込んだ。

 経験上、この動きが最も攻撃を躱せることは知っている。

 コンマ1秒の後に、頭上を物体が高速で過ぎ去った気配を感じた。

 振り向いて理解する。俺の背後には、さっき倒した巨体のヴィランがいた。

 なりふり構っていられない。

 しゃがんだまま、四足歩行でヴィランから離れる。

 すぐに攻撃は当たらないであろう距離まで下がると、俺はようやく酸素を取り入れることができた。

 

「うそだろ……」

「俺もそう信じたいが」

 

 並んだ切島は驚くことしかできない。わかる、俺もそうだ。

 爆豪の最大火力だぞ。A組でもトップクラスの一撃をゼロ距離で受けているはずなのだ。それでピンピンしてるとかマジでバケモンだろ。

 

「あんなの相手にしろってか……」

「しかも2対2っ」

「いや、あっちのはしばらくは動けねぇはずだ」

 

 いくら個性がありヴィランと言えど、同じ人間なのだ。当然、人体の弱点はそのままヴィランの弱点たり得る。

 後頭部。ボクシングでは殴ることを反則とされるほど、人にとって弱い部分だ。何せ脳が直接揺らされる。

 無防備な所に後ろから鉄板で叩いたようなもんだ。人外でもない限り、簡単に全回復とはいかないはずだ。

 問題は、目の前の人外だな……。

 

「これ、今度こそ死ぬだろ……」

 

 

 

 

 




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