Angel Beats!-Atonement for you-   作:柑橘類さん

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今回は、仲間と交流会編という題名にしています。しかし、ここで大きな展開になります。果たしてそれは何でしょうか?(笑笑)
では、お楽しみください。


EPISODE3 Silly fellows

日向たちと出会い、戦線メンバーの紹介に行くのかと思えば、俺の腹から気持ちの良い音が鳴ったことで、昼飯を取ることになった。

 

「昼飯もゲームで決めるのか?」

「いえ、今回は、こちらからお選びください」

 

遊佐が見せてきたのは、きつねうどん、肉うどん、天ぷらそば、カツ丼、親子丼、牛丼だった。

 

「昼は丼物なんだな」

「はい。朝のことを考えるとを昼は軽めの方が良いかと」

「俺のことを心配してくれるのか?」

「..........はい」

「なんだその間は。どっちなんだ」

「正直、分かりません。何故こんなことを考えたのか......」

「なんだそりゃ。ま、いいか。じゃあ、これ」

 

そう言って俺は肉うどんの食券を貰った。

 

おばちゃんから肉うどんを貰うとその香ばしい匂いとかなりの量が入っている肉を見て思わず俺は「美味しそうだな」と呟いてしまった。すると、

 

「おぉ!佐野も分かるか!この肉うどんの素晴らしさを!」

 

と、どでかい声を俺の側で言った松下五段。

 

「何だ、耳元で大きな声を上げるな」

「あぁ、これはすまんな。つい嬉しくてな」

「で、何でそんな嬉しいんだ?」

「肉うどんは俺の身体の一部と言っても過言だ」

「は?それだけか??」

「あぁ、それだけだ」

「だが、ここの飯は基本的に美味いもんばかりだろ?」

「松下五段は、肉うどんに対する思入れがスゲーんだよ」

 

そう言ってきたのは日向だった。

 

「こいつ、目覚めた時に高松と仲を深めて、大山と3人でここの肉うどんを再現しようとしてたんだぜ?」

「へぇーそれは変わってるな」

「けど、それって青春みたいだな」

「あぁ、高松と大山には何度感謝を述べても足りないからな」

「そんなに思入れがあるのか.........」

 

俺は、生前に『思入れ』があったのだろうか?暫く考えていた俺を遊佐はじっと見ていた。

 

* * * * * * * * *

 

私は未だに何故彼のことを考えいるのか分からない。初めて会った時、ただならぬ深い闇を持っている感じがした。だが、同時に何も知らない無垢な少年にも感じた。彼は、屋上に行き、この世界を証明しようと飛び降りた。何の躊躇もなく。私はそれをただ見つめていた。やがて、彼の身体が一つに戻った時、他の人に頼んで彼を本部に運んだ。そして、ソファーで穏やかに眠っている彼を私はまた見つめた。その時、私の中の何かが反応した。私は彼の頭を少しだけ上げ、そのまま自分の膝を枕がわりにして優しく頭を撫でてあげた。その時、ゆりっぺさんが私に向かってこんなことを告げた。

 

「珍しいわね。貴方が男の人に触れるなんて」

 

私も何故か分からなかった。ただ、彼を見てるとこうしなければと身体が勝手に動いた。不思議、、、けど、どこが心地いい。初めての感覚ばかりだ。私はゆりっぺさんに

 

「私を、彼の側に置いてください」

 

と、提案した。彼は私にとって一体何なのか知りたい。そんな気持ちが芽生えていた。そして、彼の全ても知りたい。こんなに素直になるのはいつ以来だろう。あの私を水の底に沈めたことで二度と感情を露わにすることなどないと思っていた。しかし、彼との出会いによって私は変わり始めているのだろうか...........。

 

* * * * * * * * *

 

俺はひたすら自分の生前の記憶を探ってみたが、やはり思い当たらない。

 

「(まぁ、その内思い出すだろ)」

「ん?佐野?どこ見てんだ?」

 

俺が物思いに耽っていたのを日向と音無が尋ねてきた。

 

「あぁ、すまん。ちょっと考え事を」

「何考えてたんだ?教えてくれよ」

「まぁ、隠すことじゃないしいいか。俺の生前に『思入れ』があるか探してたんだ」

「思入れ?どういう事だ?」

「さっきの松下五段のように、何か熱中していた事とかそういうのって俺にあったのか考えていたんだ」

「なるほどねぇ〜。思入れ、か.......悪いな、過去のことを訊いちまって」

「いや、気にしないでくれ。まだ俺は殆ど思い出せていないからな」

「そっか、そう言ってくれると助かるぜ」

「あぁ」

 

この時の俺は、早く自分の生前を知りたいという気持ちが昂っていた。焦らなくてもこの世界の時間は永遠に近いぐらい長い。しかし、生前の記憶を思い出すのは過酷だと皆が口を揃えて言う。だが、このまま自分が何故この世界に来たのか知らないのは気持ち悪い。楽しい、面白い、笑い合えるだけの人生なんて存在する筈がない。辛い、苦しい、逃げたいなどの経験があるようにプラスとマイナスの関係こそ『人生』は成り立っていると俺は思う。とりあえず、今の目標は自分を知ることだな。その後は.........何を目標にすればいいんだ?神を倒すこと?あれはゆりの目標ではなく、野望という言葉がしっくりくるか。正直、俺は神とかそんなことはどうでもいいと考えている。自分が何なのか知りたい。知ったことでどうなるんだ?.............まぁ、今は今だよな。次のことなんて後で決めればいいか。

 

「佐野さん、早くしてください」

「うぉ、何だ遊佐かって、俺だけか」

「はい、貴方だけです」

「わかった、先に行っててくれ」

「待ちます」

「あーそうかお前はそうだったな。日向、音無、悪いが先に行っててくれないか?」

「あぁ、いいぜ。じゃ、準備しておくからゆっくりグラウンドに来てくれ」

「了解」

「日向、俺も一緒に行っていいか?」

 

松下五段が一緒に行きたいと言ってきた。日向は特に断る理由もなかったためそのまま3人でグラウンドへ歩き出した。俺と遊佐は向かい合いながら黙々と食事をしていた。

 

「モグモグ」

「..............」

「ングング」

「......可愛い咀嚼音ですね」

「ング?........何だ急に」

「いえ、ただの感想です」

「お前、俺の前だと何でそんな積極的なんだ?」

「さて、何故でしょう?」

「質問を質問で返すな」

「本当に分かりませんので」

「何だその強引な理由は」

「いけませんか?私が思ったことを貴方に発言しただけですよ?」

「そう言われると返せなくなるな」

「では、そういうことにしましょう」

「〜〜〜??.....まぁ、いいだろう」

「はい」

 

何だかよく分からないが遊佐の言葉で収まってしまった。俺、男としてのプライドというのか分からないが、将来的に尻に敷かれるのが想像できた。何だかなぁ〜〜〜。

 

そして、食事を終え、食器を直したら遊佐と一緒にグラウンドに行った。そこでは既に何か始まっていた。

 

「っしゃ〜〜!!いくぞー!!」

「こーーーい!!!」

「何でこんなことになってんだ?」

「音無!周りのことなんか気にすんな!とにかく今は投げることに集中しろ!」

「藤林くん!頑張れー!」

「何!?肉うどん1ヶ月分もくれるのか!」

「はい。こちらの戦力になる代わりにこれを差し上げましょう。どうです?悪い取引ではないと思いますが」

「あさはかなり.....」

「私の筋肉では、ダメでしたか........」

「Ho-----!!! crazy baby shot!!!」

 

何がどうなっているのかサッパリであった。とりあえず、戦線メンバーの殆どが集まって野球をしていたのは分かった。隣にいる遊佐を見ると、いつもの無表情で驚いているのかさえ分からなかった。

 

「こんなことで表情が変わってしまうと、いざ敵に捕まったときに簡単に見破られてしまいますからね。それに、戦線ではよくあることなので慣れてます。」

「また読心術か。俺にも教えてくれよ」

「いやです。貴方に教えると報告するのが難しくなりそうですので」

「私的な理由かよ。まぁ、いいや」

 

とりあえず、日向を呼ぶと一旦試合が止まり、俺の前に来てくれた。

 

「お、来てくれたか。見ての通りだが、野球をしてる」

「知ってる」

「で、お前も参加する」

「だと思った」

「よし!決まりだな!お前、ショート行けるか?」

「重要なポジションだな。まぁ、行ける」

「じゃあ、頼んだぞ!」

「待て、遊佐はどうするんだ?」

「あぁ、遊佐は入らねーだろ?」

「はい。私は皆さんの試合を観察します」

「いいのかよ、そんなので」

「では、何か形でも参加することにしましょうか」

「具体的には?」

「佐野さん、こちらを左右どちらかの耳に付けてください」

 

そう遊佐が渡してきたのはインカムだった。

 

「付けてどうするんだ?」

「私が何か指令を出しますので、それに応えてください」

「なんだそりゃ?俺が不利になるじゃねーか」

「ちゃんとそこは配慮します。もし、私の指令を全てクリア出来た暁には、私の生前の一部を語りましょう」

「なるほど。で?逆の場合は?」

「出来なければ、貴方の一週間のご飯を白米だけにします」

「それはやばいな。OK、そのゲーム乗った!」

 

こうして、俺の野球が始まった。と、思いきや、まずは選手紹介であった。日向チームは日向、音無、野田、椎名、松下五段、俺の幹部と何人かの戦線メンバーであった。

一方、もう一つのチーム名を見て、俺は疑問を抱いた。

 

「チームクライスト?なんだあの名前は??誰がリーダーなんだ?」

「あぁ、あいつだよ」

 

そう教えられた人物を見ると、音無と似たような髪色をした眼鏡をかけた小柄な男だった。

 

「あいつは誰なんだ?幹部の中にあんな奴、紹介されてなかったぞ?」

「あいつは竹山だよ」

「竹山?聞いたことないな」

「そういえばそうだな」

「竹山は何をしているんだ?」

「竹山はな.....」

「僕のことを呼びましたか?」

 

その時、当人がこっちに来て話してくれることになった。

 

「初めまして、佐野さん」

「あぁ、初めましてって、何で俺の名前を知ってるんだ?」

「僕は戦線一の天才ハッカーなので貴方の名前を知ることなど簡単ですよ」

「なるほど。この学校には全生徒の個人情報が記録されてるデータみたいのがあるんだな」

「なぜそれを知っているのですか!?」

「簡単だ。お前が天才ハッカーと名乗り、俺の名前を知ってる。ハッカーということは、パソコンを使って何か細工を施して情報を手に入れたんだと考えれる。んで、名前の所から名簿という推察が出来たってわけだ。ちょっと分かりにくかったか?」

「いえ、まさか僕以上に頭の良い人がいたことに驚きました。このグループ、かなりのアホしかいなくて困ってたのですよ」

「んだとお前!アホはアホなりに天使と戦ったりして頑張ってんだよ!!」

「では、一度でもその天使に勝てたことはありましたか?」

「それはだな..............無いな」

「ふっ」

「お前!笑ったな!いいぜ!今日の試合(野球試合)は本気で行くからな!覚悟してろ!!」

「望む所です!後で吠えずらかいても知りませんからね!」

「おぉ!やってやろーじゃねぇーか!」

 

何故か分からないが日向と竹山がものすごく燃えていた。最初は自己紹介みたいなことしてたのに何でこうなったんだ?

 

「考えても無駄ですよ。ここにいる皆さん、理解不能なので」

「お、遊佐か。いつからいたんだ?気づかなかった」

「私はずっと貴方の側にいましたよ?」

「マジか。全く何の気配も感じなかった.......」

「佐野さんでもそういう所があるのですね」

「??まるで俺は隙がない奴みたいな言い方だな」

「はい、その通りです。貴方は類稀なる力をお持ちだと私は思います。なので、あらゆることが出来るかと。しかし、貴方はどこかで何かを探しているようにも見えます」

「探している?何をだ?」

「それは私にも分かりません。ただ、それは、貴方にとって一番のものであると確信は持てます」

「その根拠は?」

「女の勘です」

 

この時、俺は初めて遊佐が少しだけ顔を柔らかく微笑んだように見えた。それは、外の眩しい太陽よりも輝いて、暖かさもあり、彼女の本当の姿を垣間見たように思えた。その結果、身体中の血が騒ぎ立てて心臓がバクバクと早くなっていた。

 

「(何だ?遊佐の顔を見ただけですごく緊張し出した。それに、だんだんと呼吸が乱れて意識が.....マズいな、どうにかし....な、、い.........)」

 

バタッ!‼︎

 

「!?!?おい佐野!」

「どうした!?」

「佐野が急に倒れたんだ!」

「何があったんだ!?」

「分からん!とりあえず運ぶぞ!手伝ってくれ!!」

「任せろ!」

 




最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
次回は佐野くんの過去にしようと思います。彼の過去を知って、何か分かっていただきますと幸いです。次回もお楽しみにください。
また、感想を書いていただくと嬉しすぎます。

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