Angel Beats!-Atonement for you- 作:柑橘類さん
その日は、雨が降っていた。その雨は濡れた地面を踏む音をかき消してしまうほど勢いが強かった。普通なら傘を差して歩いていくはずだが、そんな中を傘も差さずゆっくりと下を向きながら歩く少年がいた。少年の服は雨でずぶ濡れになり、水を吸収しすぎて重く下に弛んでいた。しかし、少年は何も考えずただひたすら歩いていた。ゆっくりと重い足を上げ、一歩一歩進んでいた。そんなことを続けていた時、突然少年の身体に雨が当たらなくなった。少年は不思議に思い、顔を上げると一人の男が傘を差しながら少年を見下ろしていた。そして、こんな事を告げた。
「お前は、一人か?」
「............」
少年は無言であった。そして、また下を向いて歩き出そうとしたその時、
「可哀想に、僕と同じなんだな」
「!!」
と言った。少年は驚き振り返った。そして男は少年に優しい笑顔を見せた。
「僕と一緒に来ないか?お前と同じ仲間が沢山いる。そこで自分を強くしてみないか?」
「............」
少年は警戒していた。だが、心なしかこの男のことを信頼している自分がいた。少年は少し考え、
「分かった」
冷たい雨の中で小さな声であったがそう返事した。
****************
目的地まで一緒に歩いている中、男は少年に話しかけていた。
「名前は?」
「なまえ、、、、龍也しかない」
「そういえばそうだな。答えにくかっただろう」
「別に。もう済んだことだし」
「ふっ、強いな」
「そうなのか?」
「あぁ、大抵の奴は悲しんだりするものだ」
「悲しみ........」
「どうした?」
「いや、よく分からないと思っただけだ」
「その内分かるさ。さて、次だ。歳は幾つだ?」
「......6から9の中のどれかだ」
「ふむふむ。では...........」
男の質問に対して少年が答える。そんなことを繰り返しながら二人は歩き続けた。そして、目的地にたどり着いた。
「さぁ、ここが新しい家さ」
「でかい、、な」
それは、森の中にある大きな洋館であった。見た目は少し黒く、昔ながらの洋館という感じであった。男が扉を開くと少年を誘った。
「入りたまえ」
おずおずと少年は洋館に近づき、中に入った。
「お邪魔する」
「何を言っているんだ。お前の家でもあるのだから『ただいま』だろ?」
「別に何でもいいだろ」
「はは、恥ずかしがらなくてもいいじゃないか」
「............」
中に入ると、そこには一人初老が少年と同じくらいの子どもたちが多くいた。そして、男は初老に向かって少年を前に出した。
「今日からここで暮らすことになった子だ。ほら、自己紹介を」
「.....龍也だ」
「たつや?それがフルネームか?」
「いや、あの.....」
「何どもってんだ......って、あぁそういうことか。OK、入りな」
初老は瞬時に少年の状況を理解した。少年はここにいる人はすごいと感じた。そこが憧れたのか、少し親近感を抱いていた。
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それからというもの、少年はそこで男に様々な知識や経験を積んできた。家事や勉学、護身術といったあらゆる自身への研鑽に力を注いだ。少年は他の子たちと違い、覚えるのが早く、何でも出来ていた。男はそんな少年を特別に扱っていた。やがて時は流れ、少年は青年へと成長していった。そして、それは突然の出来事であった。
「お前にはこの仕事をやってもらいたい」
「何だこれは?」
「人殺しの依頼だ。まぁ、端的にいうと裏の仕事だな」
「裏の仕事?俺を危険人物にでもしたいのか?」
「お前は..............だろう?なら、誰も味わえない人生を謳歌するのも良いと思うのだが?」
「......いいだろう、引き受けてやる。どうせすぐに途絶える命だ。して、貴様は何故俺にそこまで尽くしてくれる?」
「簡単なことだよ。お前は僕と同じ.................だ。だから、復讐を果たすんだ。そうすれば、お前は幸せになれる」
「........そう言えばそうだったな。俺の最大の目標だ」
「その為には、こう言った仕事もこなしてみないとね。大丈夫、お前ならきっと上手く出来る」
そして、彼は裏の仕事を始めた。
****************
ある時は暗殺の依頼。またある時はターゲットに罪を着せる依頼など見つかれば一発で警察に捕まる内容ばかりであった。しかし、彼は一度も失敗をしなかった。彼が裏の仕事を初めて数ヶ月が経つ頃、その依頼が彼の心を大きく動かした。
「はい、今日の依頼書」
「あぁ」
いつものように依頼書の内容を見ていると、
「ん?今回は強盗のくせに、俺の内容は『でかい家を探すこと』だけなのか?」
「どうした?何か不満か?」
「いや、いつもと違ってショボく感じる」
「そんな時もあるさ。まぁ何にせよ、報酬はもらうことだ」
「......任せろ」
彼はその依頼主に会い、様々な情報を訊いた。その依頼主は1人ではなく、複数であった。彼はとりあえず、家の情報を教え、いつ強盗するか決めた。そして決行日、強盗が始まった。
「おいっ!どこにも金目の物がねぇーぞ!」
「お前!俺たちに嘘の情報を教えたのか!?」
「いや?俺はあんたたちの依頼をこなしただけだが?『でかい家を探してくれ』と。金目のある家とか記載していないあんたたちにも責任があるのでは?」
「チッ!このクソガキが!!」
「まぁまぁ、そんなに怒るな。これでも食べて冷静になれ。甘いものは脳を落ち着かせる効果があるからな」
そう言って彼は強盗犯たちに1つずつチョコレートを渡した。それからいくら探しても見つからないと判断した強盗犯たちは、1人の少女にこんな事を告げた。
「お嬢ちゃん、あんたはこの家で一番賢い。お父さんお母さんが困ったときに使える物とかあるだろ?それを知ってるはずだ。さぁ、持ってくるんだ」
「知らない!あたしは本当にそんなの知らない!!」
「とぼけても無駄だ。早くしないと君の弟と妹が大変なことになるよ?」
「!?!?」
「10分に一人、これでやるからな?」
強盗犯はナイフを見せて脅した。
「ほ、本当に知らないの!!」
「もし、持って来れなければ君が悪いんだぞ?」
「そんな........知らないのに...........」
消え入りそうな声で少女は告げた。
「うるせぇ〜なぁ〜!!さっさと探さねぇ〜と殺すぞ!!」
「!!?!?くっ!!」
ダッ!!
少女は走り、家の中を探りまくった。その頃、青年はただその様子を見ていた。
「(この強盗犯、手練れではないな。ひたすら引き出しを漁ったり、タンスを蹴ったりとは、初心者か)」
「(あまつさえ小さい子を人質にし、脅迫とは。証拠を残しすぎだな。早々に撤退しないと)」
「くそッ!おい!」
「何だ?」
「テメェも共犯だからな」
「俺はあんたたちと同じことにはならない」
「ハッ!例え俺たちだけが捕まったとしても後でお前のことを話せば一発だろーが!」
「ふっ」
「な、何がおかしい!?」
「まぁまぁ、さっきあげたチョコでも食べてな?」
「チッ!」
強盗犯たちはチョコを食べた。それからというもの、少女は30分経っても金目の物を見つけることが出来なかった。また、強盗犯たちは、子どもを殺した後、急激な眠りによりしばらくの間、静かにしていた。
「バカな連中だな。まんまと俺の罠にハマるとは」
彼があげたチョコには秘密があった。それは、強烈な睡眠剤が入っていたのであった。彼は予めチョコに仕込んでいたのだ。それを強盗犯は何の疑いもなく食べていた。
「例え協力者であろうとも人から貰ったものを疑わないとは嘆かわしい」
「いや、こいつらに感情を出すのも可笑しなものだ。信頼に足るというのはな、自分のことをよく分かってる人しかいなんだよ......」
この時の青年の表情は、どこか哀愁を感じるところがあった。そして、青年は背中を向けて
「じゃあな」
静かに去った。後に、警察が来たことで強盗犯たちは逮捕された。彼らは捕まった後すぐに青年のことを何度も話していたが、その証拠が一つも見つからなかったため、迷宮入りとされた。この事件を機に彼は人に対してよく考えるようになった。
****************
新しい依頼が来た。その内容は、とある高校に在学している女生徒を依頼主の彼女にしたいであった。彼は高校に潜入しようと考えたが、一つ問題があった。
「苗字がない」
そこで、彼は男に相談した。
「そうだな、僕の母親だった奴の旧姓から『佐野』はどうだい?」
「何か繋がりがあるのならそれでいい」
「よし、お前は今日から佐野龍也(さのたつや)だ」
こうして、天才の男、佐野龍也が誕生した。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
次回は死んだ世界戦線に戻り、佐野くんが目覚めるシーンから始まります。そして、そこで遊佐さんの過去を自分なりに書いてみようと考えています。恐らく、相容れない内容かと思われますので、ご理解の程、宜しくお願い致します。
では、次回もお楽しみにしてください。
後、感想を書いていただくと嬉しいです。