元総合一位と生意気な少女   作:孤独なバカ

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木虎藍2

「……あの本当にこれ意味あるの?」

 

俺と木虎は二週間後近所の河川敷をランニングしていた。生身の体を鍛えるのはもちろん意味があり、あまり知られてないがそれでも必要なトレーニングの一つだ

 

「元々トリオン体の戦闘はリアルの筋肉は関係しないけど、操縦は生身の運動能力が元になっているんだよ。お前は機動力を生かすトレーニングをすることになる。俺は自分の欠点を補うやり方ではなく自分の長所を伸ばすようなトレーニングを組むからお前の当分の間は生身の体を鍛えることだ。」

「……なんか調子狂うわね。」

 

と少しため息を吐く木虎。正直なところ仮入隊時とは違い聞き分けがよく素直に練習方法を応じているのでこっちの方が調子が狂っているのだがまぁ見抜かれないようにしている

 

「そういえば佐藤くんのポイント私知らないんだけど。」

「まぁな。というよりも俺のポイント知っている人の方が少ないぞ。俺広報もやっているからそっちが主だしな。」

「……えぇ。少し前までA級隊員であったことは知っているわ。でも何で今でも固定給が支払われているのが不思議なのよ。」

「…俺の知らない間に元隊長とオペレーターができちゃった婚で寿退社したんだよ。」

「……へ?」

 

すると木虎が足を止める。俺だって信じられない話だった

 

「……俺がある日自分の隊オペレーター室に向かうともぬけの殻でさ。……いつのまにか退社してたんだよ。」

「……あの。嘘じゃないわよね?」

「嘘じゃないんだよ。これ機密事項だけど、A級では結構有名でその二人に罰金をボーダーが請求しているところだよ。元々付き合っていたのはしってたし、別に俺は広報とかで入隊式の準備やCM撮影の関係でいられなかったのは全員わかっていたし、ランク戦前に俺は何度も顔見せていたんだけど。まさか急に脱退するとは思わなかった。俺もそれで軽くペナルティー食らっているしな。B級の降格と800点の減点を受けるか。他のチームに移籍をするか、自分でチームを作るか。まぁさすがに広報をやっている俺のペナルティーは避けたかったんだろうな。」

「……機密事項を私に話していいの?」

「別に。こういうこともあるって覚えておいた方がいいってことだ。元々この件は俺が関与しているから俺が信用できる奴なら話してもいいってことになっているしな。だから口止め料として上層部が俺に支払っているわけ。」

 

俺は少しため息を吐く。事実後二ヶ月で固定給も終わりだしな

 

「なんか切実ね。」

「ボーダーって組織も今はチヤホヤされているけど一つ間違うと批判の的だからな。俺も今もアンチボーダー派はいるし、那須先輩の医療用のトリオンもその場持たせだしな。費用だってタダではないし。それを広報でおぎなっているって感じだな。」

「なんか、あなたってかなりボーダーのこと熟知しているみたいだけど。」

「ボーダー入ってから結構長いしな。お前も二、三年したら結構深くまで知ることになるんじゃないのか?とりあえず約束があるから走るぞ。残り3kmくらいだから頑張れよ。」

「……分かったわ。」

 

言いたいことがあったらしいが約束があるので俺たちは走り始める。ランク戦まで後一週間。

未だ俺たちはチームで悩んでいたのだ

 

 

「……はぁ。今日もマトモじゃなかったわね。」

「お前な。事実だけど。」

「二人ともそんなこと言わないの。」

 

すると歌歩先輩がいかにも私怒ってますみたいに頰を膨らませ俺たちを見る

木虎も無事正隊員にあがり、トリガー構成を考えているところだった

 

「歌歩先輩でも結構本当に微妙なんですよ。何というか。ちょっと赤一点の下心満載な奴とか……それを隠そうにしない奴とか。」

「それに多分トリガー構成的に合わないと思います。私もちょっと。」

「今の所加古隊と嵐山隊の二択ですね。トリガー構成的にも木虎の場合改造した方が圧倒的に戦力になる。」

「……なんか藍ちゃんのことを構うこと多いね。」

「指導役ですしね。師匠やチーム、トリガー構成は自分で決めた方がいいと思いますけどその間の練習メニューくらいは作りますよ。」

「こう見えても佐藤くんは面倒見がいいから藍ちゃんも安心していいよ。」

「は、はい。」

 

木虎は歌歩先輩にも慣れたのか結構俺たちにくつろいでいる

 

「先輩。せっかくなんで先輩の好きないいとこの大福買ってきたあるんでお茶にしませんか?」

「えっいいの?」

「いいですよ。やっと俺の妹も来ますし。当真さん曰く自慢の一番弟子って言われてましたから。」

「あなたに妹なんかいたんだ。」

「いたっていうよりお前の同期だぞ。スナイパー組でも結構有名だし。せめて顔くらいは覚えろ。」

 

と俺がいうとガチャと扉が開く

すると長髪の黒髮。それも大人しげで見た目は大和撫子を彷彿させる女性が入ってくる

 

「恋きたか。」

「お兄ちゃんこの地図分かり辛いよ。てか遥先輩に地図書いてもらったんだけど左右対称全く逆なんだけど。」

「……何で遥先輩に頼んだんだよ。准さんや佐鳥先輩。時枝先輩はどうしたんだよ。」

「時枝先輩と嵐山さんのお兄さんは察してよ。佐鳥先輩は目線が。東さんは他の先輩たちに」

「……佐鳥先輩。」

 

俺は頭を抱える。まぁ確かに頼れるのは遥先輩くらいしかいないか

 

「恋?」

「佐藤恋。俺の妹で今年から入隊したスナイパー。絵馬と同時に入隊から三週間できっちり正隊員入りを勝ち取った天才少女ってボーダーの評価も結構高い。俺の隊に所属することになる。」

「佐藤恋です。兄共々よろしくね。」

「あっ。うんよろしく。」

「こっちは木虎藍。今季入隊なら知っているか?」

「うん。お兄ちゃんが鍛えている人だよね?いつも楽しそうに練習訓練組んでいるからかなり評価していることは分かっているよ。」

「まぁな。」

 

と次の話に移ろうとした時に

 

「お兄ちゃんも才能がある人好きだからねぇ〜。歌歩先輩のことも木虎先輩のこともかなり褒めていたから。」

「あの、恋もうそろそろ。」

「お兄ちゃん分かりづらいけどちゃんと買っている人にはかなり厳しいからね〜。それと結構饒舌になるよね〜。中学校じゃ静かなのに。それに前の隊にいた時はほとんど隊室に行っていなかったからこうやって隊室にいるのも結構レア。」

「黙れ。」

「ペプシ。」

 

俺は恋の頭にチョップを落とす。すると涙目で俺にブーブーと文句を言ってくる

 

「いった〜!!酷いよお兄ちゃん。」

「いい加減にしろ。お前家でそのテンションはいいんだけど、怒涛の言葉責めなんとかならんのか。」

「む〜。お兄ちゃんだってあんなに家で二人のことばかり話しているのに!!いつも私の話を聞いてくれるのに最近はずっと二人の話ばかりして。」

「……お前ブース行くか?」

「やめてください。死んでしまいます。」

「ネタに走るな。ベイルアウトするだけだろうが。もう疲れた。」

「クスっ仲いいね。」

 

すると歌歩先輩はお茶を持ってやってくるもちろん大福も4つ持って。

 

「はぁ、木虎もよく考えろ。最初に入隊する隊にこんなバカがいたらマジで疲れるぞ。」

「……あっうん。」

「でも藍ちゃんはガンナー志望なんだよね?」

「……それが最近よく分からないんです。」

「……ん?どういうことだ?」

 

俺も初めて聞く話に俺は少し戸惑ってしまう

 

「私は入隊時は確かに銃手としてやりたいと思ってました。正直入隊前から佐藤くんの噂は結構耳にしてましたし。」

「……マスコット部隊とかか?」

「はい。嵐山隊の人たちは基本褒めてくれたんですけど。佐藤くんだけは仮入隊期間私だけかなり厳しかったんで。それに武器を交代した方がいいとか、ボーダーの適正調査を受けているにも関わらずですよ。正直嫌いでした。」

 

まぁ結構口すっぱく言ってきたつもりだしな。正直嫌われても仕方ないと言いようがない

 

「でも、入隊してからちゃんと理由を話してくれて、指導も的を得ています。……佐藤くんが言っていることが正しいのかボーダーが言っていることがどちらか正しいのか分からなくて。」

「そりゃ簡単だ。どっちも正しくないんだよ。」

 

俺がきっぱりと言い切る。

 

「どういうことですか?」

「俺は現場で見ているからな。正直今の能力だったらということで考えているんだよ。一部の人を除いて未来を見ることなんてできない。俺が今木虎に教えてやっているのは一つの可能性でしかないんだ。」

「……」

「俺は木虎のことを負けず嫌いでプライドが高く自他ともに厳しい性格だと思っている。だから俺は銃手であるのが勿体無いっと思ったんだ。」

「もったいないってどういうこと?」

「言っただろ俺は正隊員になることなんて当たり前だ。お前はトリオン量が少ない。少ないけどお前の成績がボーダーでもトップクラスに高い。それはトリオン量が少なくてもお前には武器があるからだ。それが機動力と技術力。お前は明らかにその二つに関してはボーダートップクラスなんだよ。」

 

事実ここまでの大型ルーキーなんてかなり珍しいしな

 

「そして性格だけでいえばお前は明らかにエースタイプ。チームを引っ張る存在だ。だけど銃手は基本はサポートがメインのポジションだからな。だから攻撃手。それもポイントゲッターになれるようなポジションをやった方がいいと考えているんだ。ぶっちゃけ突撃手でもある程度の成績は残せるはずだった。でもA級を目指すとなると話は違う。自分の武器をちゃんと理解してそれを活かすことができてA級なんだ。」

 

今はA級で通用するようになったくらいであろう。でも俺は違う

 

「木虎にはエースとしてA級トップクラスを狙える素質は俺はあると思っている。」

 

A級で通じるのではなくA級でもトップクラス。もしかしたら俺を超える万能手になる可能性がある。

 

「……まぁ。俺の考えはこんな感じ。ぶっちゃけ俺の育成法に不満があるのは知っているしお前の希望と異なることは知っている。俺が正しかったのかボーダーが正しかったのかなんて将来のお前が決めろ。恨みたければ俺を恨め。ただ。俺はボーダー1のエースを目指せるだけの訓練をしているだけだ。」

 

するとニヤニヤと恋と歌歩先輩が俺の方を見る。

 

「……なんだよ。」

「いや〜別に。」

「……すっげぇうざい。」

「お兄ちゃん酷い!!」

 

ブーブーと文句を言っている恋に俺は少しため息を吐くと歌歩先輩が笑って木虎の方を見ると

 

「藍ちゃん。私たちの部隊に入らない?」

「「えっ?」」

 

俺と木虎の声がハモる

 

「ちょっと先輩?」

「だって藍ちゃんがオールラウンダーになるんなら佐藤くんもエースとして欲しいって言っていたでしょ?佐藤くんと藍ちゃんのダブルエースで恋ちゃんがサポート。攻撃型のチームを作るって。」

「いや。確かに言ってましたけど。でも。」

「…お兄ちゃんさすがにあんなこと言われて動かないはずないでしょ?」

 

俺はするとキョトンとする

 

「……佐藤くん一つ聞くわ。あなたの隊が目指すのはどこ?」

 

木虎が真面目に聞いてくるそんなものは決まっている

 

「「「当然A級1位(だよ)。」」」

 

木虎以外の全員がその言葉を発する

ただ簡単にそれも一言だけ告げる。すると恋も歌歩先輩も俺の方を見て笑い頷く。

俺だけではなくて全員と話そしてA級昇格ではなくてA級1位を最初から狙うことを決めていた

すると木虎は一度頷き

 

「はい。その話お受けしようと思います。」

「……マジで?」

 

俺が今度は驚く番だった。

 

「えぇ。……私のことをここまで買ってくれている人はそうそういません。それに……私も目標は当然一位なんで。」

 

真剣に答える木虎に俺も頷く

こうして、B級20位佐藤隊の全員が揃った瞬間だった


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